アーカイブ:(固有名詞 | 遺物 | キャラクター | 星神 | 敵対種 | 派閥 | 光円錐 )
本棚:(入手場所|内容:宇宙ステーション「ヘルタ」 | ヤリーロ-Ⅵ(1) | (2) | (3) | 仙舟「羅浮」(1) | (2) |(3) |ピノコニー(1)| (2) |オンパロス (1)|(2)|(3)|紡がれた物語|収録なし)
◆がついているものは内容が不足しているものです。
Ver3.4時点で124項目。内43項目。
- 商人の帳簿
- ヤヌサポリス占星術入門
- 賊の手の紹介と実践・初級編
- 祝祭料理の手引き
- 不死身のミカース王
- 詭術の賛歌
- 雨の帰属について
- ジョーリアの祝日儀式
- ニカドリー恋物語の分析
- オンパロスの暦法
- 古びた日記
- 古代クレムノス語の石板
- 五大美徳と祭典の告知
- 獣医の観察日誌
- 『潮汐のロンド』水溢琴の楽譜
- 紛争へ:ニカドリーを称えて
- 神聖な儀式が記された書物
- テミス――世界の脈絡
- 大地獣ヘラクレスの十二の試練
- ピュエロスの利用上の注意事項
- 雲石の天宮・バルネアのネクタール、飲み放題の免責事項同意書
- サバニー人の絶筆
- 黄金のスケープゴートの世迷言
- ザクロジュース考
- ヤヌサポリス祭祀教本
- 闘技場点検記録
- 数字崇拝者の逸話
- リポ全詩集
- 参謀学入門(序文)
- 最終戦争の勝利者は誰か(断片)
- クレムノス歴代王通鑑
- 一通の遺書
- 聖女衛兵失言録
- 摩耗した便箋の石板
- 判読不能な古代文字の石板◆
- クレムノス士官の手記
- 運命の織り手の密書
- 赤く染まった石板
- 大地獣宿駅の帳簿
- バルネア管理備忘録・抜粋
- 神性の反響:歳月
- 神性の反響:紛争
- 神性の反響:海洋
商人の帳簿
オクへイマの地元商人の帳簿。最近の取引や支出内容が記録されているが、特に珍しいことは書かれていない。
門関の月
1、ヤーヌスの紋章
仕入れ価格:50テミス
販売価格:80テミス
売上:20箱
※新年の始まりは誰もが運気を呼び込もうとするからよく売れる。ただ、ヤーヌスの印付きのこいつは、ツテがないとなかなか手に入らない。※
2、中古品回収業務
仕入れ価格:-
販売価格:300テミス/回
売上:70回(大地獣を3頭借用、臨時労働者を1名採用)
※大地獣は大いに役に立つが借料が高すぎる。業者連中は年末年始には3倍に吊り上げるし、まるで強盜だ。やれやれ、いつか大地獣を買えたらいいんだが……※
3、金刺繍の縁取りがあるシルクハンカチ
仕入れ価格:40テミス(無地のシルクハンカチ)、150テミス(名前刺繍のオーダー付き)
販売価格:2500テミス
売上:25枚
※やはり黄金裔関係のものは人気がある。※
4、潮汐聖水(ファジェイナの祝福を受けたもの)
仕入れ値:100テミス
売値:200テミス
売上:15本
※暗黒の潮を浄化できるというが詐欺だろう。街に来たばかりの人でも信じないし、発酵したような異臭もする。ちっとも売れないし、もう二度と仕入れるもんか。※
平衡の月
1、タレンタムの天秤と分銅のセット
仕入れ価格:500テミス
販売価格:1200テミス
売上:70セット
※さすがは商会。気前がいいし器も大きい。一度にこれだけ買ってくれた。おかげで割引せざるを得なかったが※
2、『タレンタム法詳説』
仕入れ値:120テミス
売値:200テミス
売上:30冊
※オクへイマの者はみな立法の知識を身にけるべきだ!※
3、契約用紙
仕入れ価格:5テミス
販売価格:10テミス
売上:2000束
※みんな今月中に契約までこぎつけようとしている。私も例外ではない。※
4、誓いの蝋燭
仕入れ価格:30テミス
販売価格:99テミス
売上:150本
※若者が好んで買う。ビジネスチャンスのようだ。来年は早めに準備しよう。※
5、タレンタム公印セット
仕入れ価格:800テミス
販売価格:954テミス
売上:300セット
※修辞学教員組合から予約注文が入るだろう。利益はさほど見込めない。※
長夜の月
1、オロニクス星図
仕入れ価格:1000テミス
販売価格:1500テミス
売上:150枚
※オクへイマのどこで星が見えるんだか。占星術師たちはわんさか群がって、いったい何を見ているんだ?※
2、リフレッシュ用アロマ
仕入れ価格:400テミス
販売価格:600テミス
売上:50箱
※あまりに刺激的な香り。リフレッシュできないほうがおかしいくらいだ。※
3、占い用羊骨カード
仕入れ価格:-
販売価格:190テミス
売上:30箱
※元手がかからない商売というのが一番いい。だが、羊の骨を削る苦労を味わわなくてはならないのが惜しいところだ。※
4、永夜の帳ミニテント
仕入れ値:2000テミス
売値:2750テミス
売上:50組
※お金持ちの新しいお気に入り。頭にかぶせて寝るといい香りでよく眠れるらしい。本当か?※
5、オプシアノスのダガー
仕入れ価格:500テミス
販売価格:800テミス
売上:30本
※研かれていない匕首。何に使うのかは知らないがオロニクスの信者たちはこれを特に気に入っている。※
栽培の月
1、防虫香
仕入れ価格:20テミス
販売価格:25テミス
売上:800箱
※効果は普通だが他よりお買い得だ。私だって農夫からお金を取るのは心苦しい。何しろうちも農家の出だからな……※
2、雨水収集システム
仕入れ価格:2000テミス
販売価格:2800テミス
売上:100組
※干ばつを心配する人はみな1組買っていく。この先数年は暗黒の潮の影響で収穫量が減ると言われているが、疑わしいと思う。※
3、大地獣の飼料袋(カラフル)
仕入れ価格:800テミス
販売価格:1200テミス
売上:50袋
※1袋がこんなに重たいとは。どうりで工房の人たちが私に注文したわけだ。上げ下ろしで肩を痛めるところだった。※
歓喜の月
1、ファジェイナ賜福のクリスタルグラス
仕入れ価格:260テミス
販売価格:390テミス
売上:40個
※このグラスで飲む水の甘さは格別らしい。※
2、カラーリボン(防水加工済み)
仕入れ価格:30テミス
販売価格:40テミス
売上:800本
※みな祭典に向けて準備している。※
3、編み物のリース
仕入れ価格:20テミス
販売価格:35テミス、30テミス、25テミス
売上:5個
※リースの売れ行きが悪くてひどく困った。やっぱりみな、手作りするのがいいらしい。※
昼長の月
1、エーグルエネルギーランプ
仕入れ価格:200テミス
販売価格:300テミス
売上:0
※光を蓄えられるということだったから、エーグルの信者たちが飛びつくと思っていたが…オクへイマが毎日こんだけ明るいことを忘れていた。いや~、うっかり、うっかり!※
2、亜麻の日よけ帽
仕入れ価格:40テミス
販売価格:50テミス
売上:80個
※エネルギーライトから得た教訓を生かした。オクへイマはこれだけ明るい。誰かしらの役に立つだろう。※
3、冷えた湧き水
仕入れ価格:-
販売価格:5テミス
売上:200本
※あっという間に売れた。ファジェイナのネクタール以上だ。面倒なのは冷蔵柩から取り出すことだな。※
……
ヤヌサポリス占星術入門
ヤヌサポリスの占星術師によって書かれたもの。今日まで伝わっている占星術の入門書。運命の三タイタンの信者たちのみが閲覧を認められている。
オロニクスの黙示録
序文
親愛なる信徒よ。あなたは本書を開いたこの瞬間から、運命や天機を読み解く一歩を踏み出している。永夜に包まれた世界では自らの目で星空を仰ぐことはできない。だがヤヌサポリスに伝わる占星術は、今なお我々とタイタンの意志との橋渡しをしてくれている。
真の占星術は単なる天体観測にとどまらす、世界の法則を深く理解し、タイタンたちが残した印を感知するものであると心得よ。
※不格好な筆跡で注釈が残されている。インクの色からして、ここ数年のうちに書かれたもののようだ。※
たとえ黎明のミハニの耀きの下にあってオロニクスの永夜が見えずとも、我々は永遠の都オクへイマにおいて、計算と推測により運命の軌跡を垣間見ることかできるんだ!!!
第一章:十二天宮とタイタン
占星術を学ぶ前に、十二天宮とそれに対応するタイタンについて熟知しておく必要がある。
1、黎明宮-エーグル
2、大地宮-ジョーリア
3、潮汐宮-ファジェイナ
4、知性宮-サーシス
5、全知宮-ケファレ
6、戦争宮-ニカドリー
7、永夜宮-オロニクス
8、公正宮-タレンタム
9、門径宮-ヤーヌス
10、金蝶宮-モネータ
11、詭術宮-ザグレウス
12、死亡宮-タナトス
各天宮がそれぞれ特定のタイタンの権能を司り、世界のあらゆる側面に影響を及ぼしている。占う際には、各天宮の位置とその影響力の強弱を計算し、タイタンの意志を推し量らなければならない。
第二章:占星術における計算
読者の大半は永遠の都オクへイマの方だろう。オクへイマは今や黎明のミハニの輝きに覆われ、目でじかに星空を観測することはできない。しかし、それで占星術が意義を失ったということにはならない。むしろ黎明のミハニの稼働法則が、新たな計算方法の土台をもたらしてくれたのだ。
占星術的な計算を行うには、まず黎明のミハニの光の変化を観察する必要がある。一日のうちに光が最も強くなる時刻と弱くなる時刻を記録すれば、そこからエーグルの権能の変化が見えてくる。これを基準にすれば、その他の天宮の位置を割り出せるのだ。
たとえば黎明のミハニの光が最も強くなる時、黎明宮は真上にある。
この時、大地宮は東、潮汐宮は西、永夜宮は真下にあり、その他の天宮は時計回りに並んでいる。
※誰かが書き入れた注釈※
黎明のミハニの光の変化…どうも分からない。それに、これが占星術って言えるのか?
この本の中身を本気にするなよ。悪知恵に長けたオロニクスの信者に騙されるな!!!
第三章:ホロスコープの作成
天宮の位置を確定させたら、次にホロスコープを作成する。ホロスコープとは円形の占星図だ。それを12等分したものの1つが、それぞれの天宮と対応している。
作り方は次の通り。
1、大きな円を描き、これを世界に見立てる。
2、円を12等分する。
3、それぞれに対応する天宮の名称とタイタンの尊号を記入する。
4、黎明のミハニの光の変化に基づいて、各天宮の位置を確定する。
5、円の中心に占いを受ける者に見立てた小さな円を描く。
ホロスコープは永久不変ではない。各天宮の位置は時の流れと共には常に変化している。そのため正確な時刻を記録することが重要になるのである。
第四章:タイタンの与える影響を読み解く
ホロスコープができたら、タイタンが我々に与える影響を解読していく。タイタンの影響力は天宮の位置と天宮同士の位置関係のおもに2つによって決まる。
【位置による影響】
- 天宮の影響力が最も強くなるのは、誕生と勃興を象徴する東に位置する時である。
- 真上にある天宮は影響力のピークにあることを意味している。
- 西に位置する天宮の影響力は弱く、衰退を象徴する。
- 最も影響力が弱いのは真下の天宮だが、真下は同時に潜伏と復活の可能性も意味している。
【位置関係】
オポジション:2つの天宮の位置の角度が180度、つまり正反対にあり、衝突と対立を意味する。
トライン:2つの天宮の角度が120度となっていること。これは調和と補完を意味する。
スクエア:2つの天宮の角度が90度となっており、緊張と挑戦を意味する。
セクスタイル:2つの天宮の角度が60度となっており、これはチャンスと潜在力を意味する。
たとえば、知性宮と戦争宮がオポジションにある場合は理性と暴力の衝突を暗示していると考えられる。また、知性宮と全知宮がトラインの状態にある場合は、知性と創生の力が調和し、共存することを意味していると考えられ、学習と探索に絶好の時であると言えるだろう。
第五章:実践と警告
この本を手にしているあなたが初学者ならば、簡単かつ日常的な占いから練習してみるといい。たとえば毎日、門の刻にその日の大まかな運勢を予測し、隠匿の刻にその占いの結果と実際に起こったことに差があるか確かめるのでもいいだろう。経験を積むうちに、より複雑な星空を読み解けるようになるはずだ。
しかし、大きな力を持つ占星術も万能ではないことを胸に刻んでおいてほしい。我々はタイタンの意志のごく一部を覗き見ることができる程度で、タイタンの意志をすべて予測することなどできないのだ。常に謙虚さを忘れず、タイタンの権威に歯向かおうなどという愚かな考えは抱かないことだ。
また、運命を完全に掌握できると喧伝するホラ吹きには注意すること。真の占星術師であれば、自身の務めが運命を読み解くことであり、操ることではないとよく理解しているのだから。
最後になったが、オロニクスの智慧があなたを導かんことを。
……
賊の手の紹介と実践・初級編
遺跡で見られる巨大な手の形をした装置――「賊の手」の簡易操作ガイド。ただし、あまりフォーマルな文体ではない。
はじめに
みなさんも知っての通り、「賊の手」とは「詭術」のタイタン――ザグレウスの化身のことです…少なくとも、かつては。私たちのような凡人がタイタンの考えを見抜くなんて容易じゃありません――なぜ姿を現すたびに「手」を作り出すのか?なぜ帰るたびに「手」を置き去りにするのか?立ち去る時に「中指を立てる」のは何を意味するのか?これらの答えを知りたければ、サーシスに尋ねるしかないでしょう。
と言っても、タイタン本体に比べれば、この石の塊はかなり穏やかなものです。汚物のなかでのたうち回ることもありませんし、面白半分にあちこちで騒きを起こすこともないんですから。それに、いいですか、これは空を飛んでたんですよ。古のジョーリアの職人たちはそれを見て「潜在能力がある」と言ったとか。こうして「魂の再構築」「意図の転移」などのステップを経て、賊の手が完成したというわけです。
一番厄介なのは操作台が非常に重いということですね。台は街でしか作れないので、完成させてから運び出さないといけません。さて、どうしましょうかね?どうにもならないので、数千テミスで大地獣を借りて運びました。でも、いざ着いたら山のようなそれは遺跡の門を通り抜けられなかったんです。無理やり押し込もうとすれば獣に蹴られるし、結局は責任者の私が荷物を下ろす羽目になりました。引きずってどうにか運び込みましたが、おかげで腰がギシギシ言いましたよ。お願いですから、タナトスを呼び寄せないでください。ああ、話がそれてしまいましたね。
操作
この操作手引書を手にしたということは、あなたはまれに見る英傑ということでしょう。普通の人が手順を暗記したところで、実際の操作をうまくできるとは限りません。ですが、英傑でもこれから書く内容はしっかり頭に入れておくこと。でないと、「賊の手」か「あなた自身」のどちらかが壊れてしまう可能性が高いですから。
操作台は2つの部分に分けられます。ますは台そのもの。表面にでこぼこした突起がいくつかあって、どれも押すことができますよ。それそれ前進、後退、それから――他にもたくさんの細かい操作機能がありますが、その紹介は中級編で。
もう1つは球体部分です。通常時は台に嵌め込まれていますが、装置を起動すると宙に浮かびます。使う時には卵を持つようにそれを握ってくださいね。そのまま手を動かせば、賊の手も連動して動きます。
聞いた感じ、簡単そうだとお思いでしょう?でも、操作する時には台だけではなく、賊の手も見ないといけません。やってみたら難しさが分かりますよ。街で映写ストーンを使い慣れた人だって、台に撒いた土を舐める大地獣より操作が下手だったんですから。
いつだったか、こちらの話を聞こうともせずに、自分には素質があるんだ、とか言って操作することを頑として譲らない人がいましたね。どうなったかというと、案の定、何か恨みでもあるかのように壁を6枚も壊して、もう少しで自分の手まで壊すところでした。あの愚かさにはザグレウスも恥じ入ることでしょう。でも、本人はその後も自分の非を認めようとはせず、設計が人間に合ってないとか言ってましたね。
とんだ戯言です。手はタイタンの化身であり、ジョーリアの職人がいなければ、常人には触れられない神の奇跡なんですよ。
大事なことだからもう一度言いますよ。操作はくれぐれも慎重に。手が壊れてしまっても、替えはありませんし、もう作れる人はいません。
故障した時の対処法について
手は言うことを聞かず、あちこち飛び回ることもあります。でも、それは君が仕事前にネクタールを飲んでふらふらになっているわけでも、タナトスに目を付けられたわけでもありませんから、怖がらなくて大丈夫です。初めからこうだったんですよ。不具合の原因は職人たちにも分からないそうです。
修理しようにも、どうにもなりません。これを作ったのはザグレウスなんですから。
対処法は次の通り――
1、待つ。暴走が終わるまで待つ。
2、でなければ、硬い素材で作られた工具で手に穴を開けて黄金の血を注ぐ。しばらくすれば、また自由に操作できるようになります。
補足:これは賊の手の話です。自分の手に穴開けないように。
あとがき
さて、初級編は以上です。ただし、初級編で分かるのは基本的な操作概念だけです。実際に操作するには、全ての巻を何度も繰り返し読まないといけません。
ここまで読んだあなたは「これじゃ何の説明にもなってない」「飛ばして先を読んた方がいいんじゃ?」と思っているかもしれませんね。
ですが、そういうわけにはいかないんです。ヤーヌスの名のもとに、「入門」の段階では順を追って徐々に進めることが肝心なのですから。
ただ、あなたの言い分もごもっともです。もう少し、おまけが欲しいということですね?分かりました。こちらをこ覧ください。
「中級編」の特別割引パスワード:シギラはザグレウスのように知恵ある策略家。
祝祭料理の手引き
オクへイマの著名な美食家が自らまとめた料理本。どのタイタンの信者でも中から自分にびったりなレシピを見つけられる。
「命運季」
門関の月:ヤーヌスの二色ピタ
材料:
オクへイマ産地麦粉500グラム、オリープ油100ミリリットル、岩塩10グラム、ファジェイナのネクタール100ミリリットル、クモヒツジの肉300グラム(前もってハープで漬けて、細かく刻んだものを餡にする)、野菜300グラム(みじん切りにしたリーキ、セロリ、ディルを餡にする)
作り方:
1、地麦粉と塩をボウルに入れて混ぜ、オリープ油とぬるま湯をゆっくり加えて手で捏ねる。濡れ布巾をかぶせて半日寝かせる。
2、2種類の餡を準備する。1つ目の餡:事前にハーブで漬けておいた新鮮なクモヒツジ肉をみじん切りにし、塩で味を調える。2つ目の餡:リーキ、セロリ、ディルをみじん切りにし、オリーブ油を少々加えて混ぜる。
3、生地を2等分し、それぞれ丸く伸ばす。
4、伸ばした生地の1つには肉餡、もう1つに野菜餡をのせる。陶製のグリルプレートにオリープ油を塗り、生地を1枚のせる。
5、もう1枚の生地を具が下になるように、上からかぶせて端をしっかり密着させて閉じる。
6、表面にオリーブ油を塗り、予熱した石窯に入れる。表面がきつね色になって、サクサクになるまで約四針ほどの時間をかけて焼く。
7、取り出して完成。お好みでハチミツをかけても美味しい。
二色ピタはヤーヌスの繋がり――すなわち1つは過去、もう1つは未来――を象徴している。
門関の月の初め、一家が囲む食卓で最年長の者がパイを切り分け、家族が順に味わっていく。過去を象徴する野棄を先に食べて、過去に思いをはせ、次に未来を象徴する肉餡を食べて、新年の期待を抱く。食べ終えたら、最年少の者が代表して新年の抱負を語り、素晴らしい未来への扉が開かれることを願って、ヤーヌスに祈りを奉げる。
平衡の月:思索の日の天秤スープ
材料:
白インゲン200グラム、黒豆200グラム、インゲン豆200グラム、ジョーリアの根200グラム(小さく切る)、ティアネギ200グラム(みじん切り)、セロリ200グラム(小さく切る)、オリープ油50ミリリットル、ローリエ3枚、塩適量、黒コショウ適量、湧き水2リットル
作り方:
1、豆類をきれいに洗い、調理の前日から水に浸しておく。
2、銅製の大きな鍋にオリーブ油を入れる。熱してからティアネギを加えて透き通るまで炒める。
3、他の材料をすべて入れ(豆類は水を切る)、そこへ水をひたひたになるまで入れる。
4、強火で煮立ててから弱火にし、ローリエを加える。蓋をして豆類と野菜が柔らかくなるまで二針ほど煮込む。
5、塩コショウで味を調え、木製のおたまで豆を少しつぶして、スープにとろみをつける。
2月はタレンタムが見守る平衛の月だ。タレンタムの前ではすべての食材が厳密に等しい重さであることが求められる。そうすることで天秤のバランスを維持するのだ。沈思の日は夕食に天秤スープを飲むことが最も重要な儀礼だとされている。食事の前には全員で声をそろえて過去の行いについての反省を述べる。それからようやく天秤スープを味わうことができる。
……
「支柱季」
栽培の月:ジョーリアの七穀バン
材料:
大地麦粉500グラム、雲麦粉500グラム、潮麦50グラム、粟50グラム、亜麻の実30グラム、胡麻30グラム、チアシード20グラム、酵母15グラム、塩10グラム、ハチミツ30グラム、温めたファジェイナのネクタール400ミリリットル、オリーブ油30ミリリットル
作り方:
1、すべての穀物を石臼で粗挽きにする。大きなホウルに全て入れて混ぜ合わせる。
2、酵母を少量のぬるま湯で溶かし、そこにハチミツを加えて混ぜる。
3、ボウルに入った粉の真ん中に小さなくぼみを作り、2と水とオリーブ油を注ぐ。
4、生地にツヤが出るまでしっかりこねて丸くまとめる。約一針からニ針ほどの時間がかかる。
5、生地に麻布を被せ、暖かい場所で半日ほど発酵させる。
6、生地が発酵して倍くらいの大きさになったら、再び生地をこねてガスを抜く。形を丸く整え、表面に麦の模様を入れる。それから約五針ほどの時間をかけて、2次発酵させる。
7、石窯を予熱し、パン用のパーラーを使って、生地を窯に入れて約三針ほど焼く。パンの底を叩いた時に軽い音がしたら、美味しく焼けた証拠。
オンパロスで一般的な食べ物。種まきの季節、農夫たちは明晰の刻に麦畑に集まり、持ち寄った七穀パンをその場にいる全員に分ける。みなで食べて、ジョーリアかもたらしてくれた7種の味わいを大いに楽しむのだ。
村には、農夫たちが畑にパンくずを撤いて七種の穀物が豊作であることを願う風習が残っている。この風習が転じて、オクへイマなどの都市国家の「残ったパンくずを鉢植えに撤く」という風習になったと言われている。どちらにせよ、その儀式を終えて初めて、種まきは始まる。
歓喜の月:ファジェイナの笑い声
材料:
新鮮な魚2匹(前もって下処理を済ませ、切り身にしておく)。巻目魚のひげ500グラム(切り身)、星貝500グラム(きれいに洗う)、ティアネギ2個(みじん切り)、ニンニク4かけ(みじん切り)、オリーブ油100ミリリットル、オオカミナス4個(皮をむいてみじん切り)、ローリエ2枚、ローズマリー1本、塩適量、黒コショウ適量、ファジェイナのネクタール500ミリリットル、湧き水1リットル
作り方:
1、銅製の大きな鍋でオリーブ油を熱し、ティアネギとニンニクをしんなりするまで炒める。
2、オオカミナスを加えて一針ほど煮込む。
3、そこにファジェイナのネクタールを1本分加え、次にローリエとローズマリーを加える。アルコールが飛ぶまで加熱する。
4、水を加え、沸騰したら巻目魚のひげを加えて一針ほど煮る。
5、魚の切り身と星貝を加え、弱火で二針ほど煮込んで魚にしっかり火を通し、貝を開かせる。
6、塩とコショウをお好みで加えて、盛り付ける。
歓喜の月の喜びの時、オクへイマの人々の多くは街の広場に集まって、みんなで大鍋に魚スープを作る。できたスープの一口目はファジェイナへの感謝のしるしとして地面に撒くことをお忘れなく。スープにありつくのはその後だ。
いただく時は、スープの表面に強く息を吹きかけて笑い声のような音を立てるのがよいとされている。楽しそうな笑い声がファジェイナの耳へ十分に届けば、彼女は人々の中に混じって共に宴を楽しみ、そこにいる人々に神秘的な恩恵をもたらしてくれると言われている。
……
【創生季】
収穫の月:サーシスの知性の葉
材料:
きれいに洗って乾かした大きな葉(ブドウまたはイチジクの葉など)20枚、茹でたもち麦200グラム、軽くローストした松の実100グラム、クモヒツジのミルクで作ったチーズ200グラム(つぶしたもの)、新鮮なミント50グラム、新鮮なパセリ50グラム、レモン汁(レモン3個分)、オリーブ油50ミリリットル、岩塩適量、黒コショウ適量
作り方:
1、大きな陶器のボウルにもち麦、松の実、クモヒツジのチーズ、刻んだミントとパセリを入れて混ぜる。
2、1にレモン汁、オリーブ油、岩塩、コショウを加えてよく混ぜる。
3、大きな葉を沸騰したお湯でさっと茹でて柔らかくなったら、取り出してすぐに冷水に入れてから水を切る。
4、葉に2の餡をスプーン1杯分ずつ乗せて、折りたたむようにして包む。
5、フライパンに少量のオリーブ油をひき、葉にこんがりと焼き色がつくまで焼く。
神悟の樹庭で発明された料理で、年に一度の祭典で晩餐のメインディッシュを務める。「知住の葉」は大皿に山と積まれ、ゲストはそれを自由にとっていい。
重要なのは、その年に優れた成果を上げた学者だけが神悟の樹庭の晩餐に招待されるという点である。そのためか巷では「知性の葉」を食べるとサーシスの秘密を知ることができると言われている。
興味深いことに、神悟の樹庭では料理の一部にランダムで苦味のある薬草を加える。晩餐に招かれた幸運な学者によれば、苦味によって味覚が刺激されるので、学者にとって思考や成長を促す契機と思われているそうだ。
……
【災厄季】
紛争の月:ニカドリーの勝利の盾
材料:
赤麦粉500グラム、酵母15グラム、塩10グラム、ぬるま湯300ミリリットル、オリーブ油50ミリリットル、ニカドリーのネクタール100ミリリットル、ニカドリーの実100グラム、くるみ100グラム(軽くみじん切り)、ローズマリー2本(葉は取ってみじん切り)
作り方:
1、酵母をぬるま湯に溶かし、泡が出てくるまで一針ほどおく。
2、木製の大きなボウルに赤麦粉と塩を入れて混ぜ合わせる。
3、そこに1、オリーブ油、ニカドリーのネクタールを入れてよく混ぜる。
4、生地にツヤと弾力が出てくるまで、30分ほどこねる。
5、生地にニカドリーの実、くるみ、ローズマリーを混ぜ込む。
6、生地に麻布を被せ、暖かいところに五針ほどおいて発酵させる。
7、生地を盾の形に整えて、二針ほど2次発酵させる。盾形にするために型を使ってもいいし、自分の手で成形してもいい。
8、予熱しておいた石窯に成形した生地を入れ、五針ほど焼く。表面が濃い赤色になり、底を叩いた時に軽い音がするくらいがベスト。
戦争で犠牲になった英雄を記念して作られたと言われるクレムノスの名物。
濃い赤色は戦争での犠牲を、生地に混ぜ込まれた木の実やハーブは屈強な精神と栄誉を象徴する。ニカドリーの信者たちはこの盾の形をしたパンをタイタンに奉納し、軍の士気を鼓舞する。
慰霊の月:タナトスの鎮魂プリン
材料:
クモヒツジのミルク500ミリリットル、米100グラム、モネータの祝福を受けたハチミツ50グラム、シナモンスティック1本、レモンの皮(レモン1個分)、岩塩少々、アーモンド50グラム(みじん切り)
作り方:
1、研いだ米を一針ほど吸水させる。
2、銅鍋にクモヒツジのミルクを入れ、そこへシナモン、レモンの皮、塩少々を加え、ふつふつ煮立ってくるまで弱火で温める。そこに1の米を加える。
3、そのまま木べらでかき混ぜながら、弱火でじっくり煮込む。米にしっかり火が通って柔らかくなり、全体的にとろみが出るまで四針ほど煮る。
4、モネータの祝福を受けたハチミツを加えて、よく混ざるようにしっかりとかき混ぜる。
5、火を止め、シナモンとレモンの皮を取り出し、みじん切りにしたアーモンドを加えて軽く混ぜる。
6、混ぜたものを陶器のボウルに入れて、粗熱が取れるまで涼しい場所で冷ます。その後、冷蔵柩に入れて完全に固まるまで少なくとも約二針置く(外気温が比較的低い場合は、ボウルを風通しの良い屋外に置いてもよい)。
7、食べる前にお好みでニカドリーの実をトッピングして、召し上がれ。
このプリンは真っ白だ。慰霊の月の夜、多くの家庭で小さなタナトスの祭壇が用意される。祭壇の前に家族が輪になって座り、プリンを供える。それから故人との思い出を順に語り、プリンを食べる。
思い出が感動的であればあるほど、タナトスは恩恵を与えてくれるのだという。タナトスは亡者の魂を鎮め、生者が死を受け入れるための助けをしてくれるのだそうだ。儀式の終わりには忘れずに鎮魂プリンをタナトスに残しておくこと。これは彼女への感謝のしるしだ。
機縁の月:幽霊の日のフォーチュンクッキー
材料:
ミックス粉300グラム、バター100グラム(常温で柔らかくしておいたもの)、砂糖100グラム、グル卵1個、バニラエッセンス5ミリリットル、岩塩少量、お好みのドライフルーツ100グラム(ドライイチジク、ドライアプリコット、レーズンなど。みじん切りにしておく)
特殊な材料:
クモヒツジの皮で作った紙(いいこと、悪いこと含め、様々な預言を書いておく)
ザグレウスの銀貨1枚(前もって洗ったもの)
作り方:
1.大きな陶器のお椀に柔らかくしたバターと砂糖を入れて滑らかになるまで混ぜる。
2.1に溶いたグル卵の卵液とバニラエッセンスを加えて混ぜる。
3.小麦粉と塩を少しずつ加え、生地をこねて1つにまとめる。
4.生地に細切れのドライフルーツとナッツを混ぜ込み、冷蔵柩に入れて三針ほどおく。
5.生地を取り出し、打ち粉を振った作業台で指の幅の半分くらいの厚さに伸ばす。
6.型もしくは包丁で生地を好きな形にする。
7.すべての切った生地の真ん中に預言を書いた紙を入れる。どれか1つを選んで銀貨を入れ、それを別の生地で蓋をして、端を閉じる。
8.あらかじめオリーブ油を塗っておいたトレイに生地を乗せ、予熱しておいた石窯で約二針ほど焼く。縁がやや焦げた黄色になれば完成。
機縁の月の最後の一日は幽霊の日と呼ばれる。オクへイマの住民たちは、この日に一年の厄が落とされると信じている。
幽霊の日の真夜中、人々はフォーチュンクッキーを分け合って食べる。食べる前に薄い生地のクッキーを割り、中の羊皮紙に書かれた預言を解読する。もしくはザグレウスの銀貨が入っているかどうか確かめる――入っていればラッキーだ。銀貨の入ったクッキーが当たった人には詭術の神の加護があるだろう。
不死身のミカース王
オクへイマで上演予定だった劇の脚本。ミカース王がタナトスを欺こうとしてタイタンに罰せられる物語が描かれている。
オクヘイマ公演はやむを得ない事情により中止となりました。ご理解のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
第一幕
聖歌隊
ミカース王、愚かな王よ、死を欺こうとは!だが、いついかなる時もタナトスの知恵から逃れられぬ。生きとし生けるものは定められた死から逃れられぬのだ。お前は光の届かぬ宮殿に身を潜め、盲目の狂人がそばをうろつくに任せている。それでも、タナトスの知恵からは逃れられぬ。いつの日かナイチンゲールの嘴がお前の魂の窓をつつくだろう。
(使用人役、衛兵役が登場)
使用人
少しよろしいでしょうか?あなたさまはミカース王をご存じですか?あの方は、我が祖父の祖父が生きていた頃に、この宮殿の窓を閉ざされたそうじゃありませんか。耳をすましてごらんなさい。狂人たちのうわごとが石壁の後ろに漂ってございます。城内の台所に立つご婦人方は、あれはミカース王の狂気に違いないと話しておいでです。
衛兵
お前ごときにかように貶される筋合いなどないわ。王のお知恵が使用人ごときに非難できるはずもない。かの狂人どもはタナトスの眷属であり、魂の半分をステュクスに奪われた者。連中がここに安住しているがゆえに、暗澹たる手は見えぬのだ。そして無数の欠けた魂の中に正気を保ったミカース王はいらっしゃる。
あの狂人どもをいい加減に扱ってはならん。あれらの死はもう半分の魂をも道連れにする。手厚くもてなしてやらねば、タナトスに言いつけられても文句は言えぬぞ。
使用人
どうりでで彼らは目隠しをされているのですね。王はあまりにも内気であらせられ、彼らに顔を見られることを恐れておいでか。はあ、それも致し方のないことでございますね。私は所詮、ただの使用人。あの狂人たちと彼らのミカース王の御前へお食事をお運びするだけですから、この醜い姿を見られようとも気にしたことはございません。
第二幕
聖歌隊
ミカース王、無知なる王よ!お前は狂気を彼女の使徒と信じ、狂人を彼女の眷属と思い込んでいる。誰とも言葉を交わさねば、知られることはない、と考えている。この石壁の外へと出なければ、己のうぬぼれもタナトスには知られぬ、と。二度と夢を見られなくなるまで、この最後の夜の安らかな眠りを味わうがいい。
(ミカース役が登場)
ミカース
余が愚かな暗澹たる手を欺き、ここに身を隠してはや100年。死のタイタンなどという無知なる痴れ者は余の手のひらで転がしてやるまで。
見よ、窓の外に広がるこの都市国家の美しきを!ザグレウスの盗人は小道から逃げおおせ、モネータの鱗粉は少年を甘い言葉で惑わせる。降り注ぐオロニクスの星の光が賢者たちの議論の広場を照らす。これぞタナトスによる誘惑、この安住の地から滑稽な死へと導かんとするもの。
だが余は切に思うのだ、野に咲く花をいま一度目にしたいと。ミカースよ、胸に手を当てて問え。栽培の月の麦の香りを最後に嗅いだのはいつのことだろうか、ファジェイナの宴の歌にいつから耳をふさいでいただろうか、と。しかし、余は恐ろしいのだ。彼らが余を見つけ、彼らの見聞きしたことがタナトスの耳に入ることが……
(黒いローブをまとったナイチンゲール役の少年が調べに合わせて石板を叩く)
今のは何だ、何の音だ!?何者かのいたずらか?暗澹たる手に余のたくらみを告げ口し、ここで余を死に至らしめようというのではあるまいな?ここに至れば、余の頭を垂れて切に願う……どうかこの哀れな国王をこれ以上、恐怖させないでくれ。
ああ、やめろ!やめてくれ!その窓を叩くのは!
第三幕
聖歌隊
ミカース王、狂気の王よ!お前はため込んだ狂気を携え、そびえたつ石壁を越える。愚昧でネクタールが作れたならば、満たされた杯でさえお前の愚行に拍手を送るだろう。だが今や赤子に並ぶ愚物となり果てたお前に、世の風刺は分からない。張り上げた詩人の声も止められない。
(ミカースは沈黙したまま宮殿を出る。その後ろには10名の狂人役を従えている)
使用人
もし、あれは我らが滑稽なる王ではありませんか?目隠しをされた狂人を眷属のように従えて、一言のお言葉もなく、都市国家を出て行かれるとは何事でしょう?
衛兵
私に聞かれても困る。答えられるとすれば、それはタナトスのナイチンゲールだけだろう。思うに王は端からタナトスを欺けてなどいなかったのだ。彼女は王の魂を半分奪い去り、狂気に陥れてなお、平等な死を与えなかった。
聖歌隊
ミカース王、不死身の王よ!枯れた野を進むお前は、衆目のうちに道に迷う。お前がタイタンの与えし宝に歓喜し、狂気の中で不死の栄光を享受せんことを!
詭術の賛歌
ザグレウスを追い払うためのタイタン賛歌。旅人は盗賊や詐欺師から身を守るために、旅立つ前にこれを唱える。
旅に出る際、詩を詠じてザグレウスを追い払えば、詐欺や窃盗を避けられる。
何者か?ケファレの涙より生まれ、大地に大粒の涙を落とすのは。
その詭術をしまうがいい。二つの顔と体を持つ飛翔する幣、ザグレウスの影よ。
かの神殿で居場所を盗まれ、騙された司祭を見よ。お前はそれで、黄金の蝶にも追い払われたというのに。
天穹を横切る二つの緋色の影。
一つはモネータの翼も追いつけぬ影。
もう一つはエーグルの瞳にも捕まえられぬ賊星。
お前が盗んで献じたネクタール、それは蜂と蝶が醸造したネクタール。
お前が盗んだ祭壇の祈り、それは美と浪漫への賛美歌。
これ以上何を盗むというのだ?盗むなら己の影を盗め。早くここから去るがいい。
全知の父がお前の詭術を暴き、公正の秤が審判を下す、その前に。
何者か?旅人を装って葡萄色の海で歌うのは。
その企てをしまうがいい。二つの顔と体を持つ飛翔する幣よ、ザグレウスの影よ。
今もなお、雄叫びを上げる大波が、お前の名を呼んでいる。大波が船を引き裂いた。しかし船はお前が盗んで消えてしまった。
海を狂わせたのはお前の仕業か?私はお前が逃げる時、波を踏みしめる音を耳にした。
一つは深淵のいびきの中に隠れた。
もう一つは海妖の歌声の中に隠れた。
詭術のタイタンよ、ここにこのまま留まるな。
お前の足跡をアンフォラに押し込み、咲き乱れる花と共に渦の中に放り込む。
お前のペテンを石板に刻み、満たされた杯に献じてやろう。
何を待っているのだ?あのシーフと共にさっさと逃げてはどうだ。
酔ったファジェイナによって海の岩に縛られて、容赦なく嵐が打ち付ける、その前に。
何者か?運命の足取りを乱し、永久不変の秩序を混乱させるのは。
その企てをしまうがいい。二つの顔と体を持つ飛翔する幣よ、ザグレウスの影よ。
万路の門の下、弄ばれた歳月にひっそりとすすり泣く。奇妙な日、機縁の軌跡よ。
転がる金貨が車輪となり、泥棒は隠遁し、博徒は一擲千金。
分別をなくしたタイタンには気付かれず、思うがままに遊戯を繰り広げる。
サーシスでさえ欺かれることはある。
タナトスもまた騙されることはある。
お前という悪党はなにゆえ自らの同胞を激怒させる必要があるのか?
ひいてはかの手の内にある黎明のミハニをも盗もうと妄想しているのか。
ただし、それはお前の一万倍より重く、すべては徒労に終わるだろう。
さまよえるタイタンが道を見つけ、お前を天の帳に縛り付ける、その前に。
何者か?この歌に耳を澄ませ、陰謀の中の災厄に身を潜め、誰かが自分の功績を称えてくれるなどと考え
ているのは。
お前の計略なら見破った。二つの顔と体を持つ飛翔する幣よ、ザグレウスの影よ。
ケファレの黎明はお前の影を暴きだした。どこへ逃げようとも無駄なこと。
タレンタムの法がお前の影を貫くだろう。嘘泣きをしようと意味がない。
ザグレウスよ、運命という証人の下、速やかに去るがいい。
私に見つかり、影を踏まれ、その哀れでおかしなペテンを嘲笑われる、その前に。
雨の帰属について
空から落ちてくる雨の雫はどのタイタンに帰属するのか?この問いに巡って、学者たちが大量の論争の記録を残した。
雨は空から落ちて集まり、川を成して海へと還る。ならばこの大空から降り注ぐ雨粒はエーグルの空に属すものか、それともファジェイナの海に属すものだろうか?これは最も長く議論されてきた論題の1つであり、定説は今に至るまで生まれていない。
「雨」の帰属を論じたもので、我々にとって最も馴染み深いのは「原初帰属論」だろう。ファジェイナの司祭たちは経典とタイタン誕生の創世叙事詩を取り上げて、こう主張した。啓蒙紀、エーグルとファジェイナは堅磐の脊髄から、ジョーリアの呼吸から生まれた。それ以来、海と大地は対立するようになった。ジョーリアに嫌われているファジェイナは大地に踏み入ることができず、天と地の間を彷徨い、降りやまぬ雨へと姿を変えた。タレンタムが介入し、地上に海という醸造所ができたのは、その後のことだ。それゆえ、雨は最初からファジェイナの統べるものであった、という論を展開したのだ。
この主張に対して神悟の樹庭の学者たちは「果実説」をもって異を唱えた。彼らの考えでは、雨をファジェイナの眷属と見なすのは所詮一つの観点に過ぎない。オンパロスのすべての水は、一杯のネクタールから谷川に流れる水まで、すべて満たされた杯という神の御身の一部だというのだ。たとえ雨が雲から落ちてくるものだとしても、それはエーグルの神の国に誤って踏み入った、酩酊したファジェイナが怒れるエーグルの雷槍によって天から追い出された結果に過ぎないと主張していた。
しかし、そのように推論するなら、水にまつわる事象はすべてファジェイナの一部と言えよう。たとえば熟れた果実はおいしい果汁を含むが、先述の説が正しければ、木に実る果実もまたファジェイナの眷属であるということになる。だが、クレムノスの3歳の子供でさえ知っている通り、地上の果実はどれも分裂する枝からの贈り物だ。したがって雨がファジェイナの眷属であるという説は明らかに矛盾をはらんでいると言える。
雨は天空においてエーグルの一部であり、草木に吸収されればサーシスの嗣子となる。もしすべての水がファジェイナの一部であるならば、大地を飲み込む暗黒の潮の責を負わねばならないだろう。
数々の論争において詭弁が弄されたことも少なくない。紛争紀初頭に活躍した賢者ゴルディクスは弁論中に、雨はモネータのご神体であると公言した。
世の人々は雨の中に空を、そして大地をも見る。しかし、雨が降る中で舞う蝶の姿を見た者はいない。蝶が現れる時に雨は降らない。また雨が降る時に蝶は姿を消している。よって雨と蝶は2つで1つという推論が立てられる。そして黄金の蝶とは、まさしくモネータの象徴である。雨は地上のあらゆる存在に等しく打ち付ける。その冷たさによって、人や獣はケガや病に苦しむが、草花や樹木はこれによって栄養を与えられる。これらの生命にはサーシスのご加護があるからだ。逆説的に考えれば、これはサーシスの伴侶であるモネータが雨に変じて伴侶の身体を潤しているという証明なのだ、と。
ゴルディクスはその場にいた賢者を論破し、黙らせた。ここから彼の運命の歯車は狂い始める。神を冒涜した罪によって9つの都市国家から次々に追放の処断が下され、傲慢な賢者は海に倒れ、大雨に打たれながら亡くなった。聞くところによれば、無数の海妖が起こした大波に、死んだゴルディクスが飲み込まれていく様子を、帰港中の漁師が見ていたという。彼らによれば、自身の才能を過信した賢者に激怒したファジェイナが、彼の魂を魚に変えて永遠に側に置き、楽しもうとしたのだろうということだ。
世界が今もなお正常に運行しているということは、この世界を管理するタイタンの権限は明確だということだろう。しかし、我々の知恵は森の落ち葉1枚にも及ばず、オンパロスを構成する真理を目にすることができないのだ。己の無知を自覚し、謙虚に疑問と向き合うことだけが、サーシスの理性に近づく道である。ゴルディクスの結末が後世に語り継がれることを願おう。
ジョーリアの祝日儀式
オンパロスのジョーリア信者たちがタイタンを祀るために行う重要な儀式について記されている。
(……)
オンパロスでは、世界の基石である堅磐の脊髄、ジョーリアを祀るために人々は様々な儀式を行う。中でもとりわけ重要な儀式の1つが、毎年アカトゥスで開催されるジョーリア神秘祭である。この儀式は大きく分けて2つの祭りで構成されている。すなわち栽培の月の「蘇生祭」と収穫の月の「豊作祭」である。
伝説では、紛争紀初頭に死が誕生したことに伴い、老い、病、飢餓が大地に広がり始めたとされている。生き残ろうとした人類は後先考えずに果実をもぎ、獲物を狩った。その愚行に激怒したサーシスが神罰を下し、植物は次々に枯れていった。そして人類は野獣のように争い、奪い合ったという。地上のあらゆる生き物を深く愛していたジョーリアは、人類にチャンスを1度与えるようサーシスに懇願した。サーシスはこう答えた――己の欲望を克服した暁に、大地に再び生命が蘇るだろう、と。
ジョーリアは眷属のモグラに、人々の袋に入った最後のリンゴを盗ませ、彼らを黄金の麦畑へと導いた。食料を目にした人々はすぐに争いはじめ、麦畑は踏み荒らされた。その中でただ1人、周囲の嘲笑を顧みずにひとすくいの麦を手元に残したジョーリアの司祭がいた。司祭は大地に祈りをささげるとその麦を植えた。この司祭の行いによってサーシスは怒りを鎮め、人類は永らえることができたのだ。
その、ひとすくいの小麦が植えられた地に人々はジョーリアの神殿を築き、それを取り囲むようにしてアカトゥスの街を作り上げた。各地の信者はこの偉大なタイタンへの感謝を示すために、収穫の月に獲れた最初の麦の束をこの神殿に送るようになった。
かの司祭は麦を植える時に、モグラが穴を掘る時の動きをまねて、土を柔らかくし、耕作に適した土地にしたという伝説がある。そのため栽培の月の8日目に行われる「蘇生祭」では、どの家も門の刻の第一針に、畑から柔らかい土をひとすくい取る。それから、その土をきれいに洗い、不純物を取り除いて、陶製の壺に入れて、自宅の祭壇に供え、その年の豊作を願うのだ。
その後、司祭は人々の協力を得て、あらかじめ埋めてあった土人形を指定の場所から掘り出す。この土人形はジョーリアに見立てたものであり、掘り出すことで「大地」のタイタンを呼び覚まし、万物を蘇らせ、再び人間に生きる機会を与えることを表すのだという。明晰の刻の第一針、人々は街の入り口に集まる。土人形を運ぶ大地獣の後ろに行進する行列が続き、街の中心にある神殿へと向かう。神殿では、祭祀と祈りの儀式が執り行われる。
そして収穫の月の4日目に行われる「豊作祭」では、ジョーリアの信者や司祭がオンパロス各地の都市国家からアカトゥスに集まる。践行の刻の第一針から、神殿前の広場では豊作の祭典が盛大に催される。
人々は歌い踊り、心ゆくまで宴を楽しむ。この狂喜の宴は離愁の刻の第五針まで続く。宴の最後には、それぞれ1本の麦の穂を手にした司祭が神殿内のジョーリアの神像に拝礼する。麦の穂を祭壇に捧げ、かつての教訓を忘れていないことを示す。それは「ジョーリアが人類に代わり、サーシスに許しを求めた」ことへの感動も表している。
(……)
ニカドリー恋物語の分析
ニカドリー関連の神話の内容分析。人々が「紛争」のタイタンのために恋物語を編纂した理由に迫る。
人類は黄金の繭によって愛を求める心を与えられた。それゆえに我々はタイタンの苦難に満ちた恋物語に夢中になる。中でもタイタンのニカドリーは「蛮神」と蔑まれる一方で、詩人や劇作家からひときわ熱い支持を得ている。本書は民間に伝承されている数々の恋物語を簡潔に分析し、タイタンおよびクレムノスに対する人々の複雑な心情を読み解くことを目的とするものである。
ニカドリーとペルピシス
伝承によれば、ペルピシスはモネータの神殿で生まれたと言われている。黄金の繭に与えられた祝福として黄金の髪と瞳を持ち、彼女を抱く乳母でさえも、あまりの美貌に気を失いそうになるほどだったという。ペルピシスは成長するにつれて、ますます美しくなり、次から次へと求婚者がやってきた。求婚者を断るべく、支配的な彼女の父は3人の息子に勝った者だけがペルピシスの愛を得られると宣言した。鎧に身を包んだ3人の息子は決闘において負け知らずであり、求婚しに来た者は一人残らず、決闘で打ち負かされるか、3人が剣を抜いた瞬間に逃げ出すことになった。
ペルピシスの美貌はニカドリーの目にも留まることになる。若い男に姿を変えた彼は大声を上げながら、彼女の兄弟に戦いを挑んだ。相手がタイタンなどとは知らない3人は戦いに敗れ、男は3日後の夜にペルピシスを迎えに来るため、町はずれにある最も高い山の頂上で待つように約束させた。夜の帳がおり、ペルピシスが約束の場所へやって来ると、そこにいたのは巨人だった。それを見て、少女は恋人が殺されてしまったものだと思い込んだ。そして、巨人に辱められることを恐れ、失意のうちに崖から身を投げてしまった。こうして、始まってもいなかった愛に終止符が打たれたのである。
注釈:現実では、ペルピシスの父と3人の兄弟はクレムノスの戦いで戦死している。城を攻め落とされ、辱めを受けて死ぬことを望まなかったペルピシスは自らその命を絶った。ニカドリーが彼女の兄弟を倒し、その恐ろしい姿を見せて少女を自殺に追いやったという神話は、ほぼ間違いなくこの史実を典拠にしていると考えて良いだろう。
……
タレンタムへの片思い
この物語の発生時期を明らかにするすべはないが、広く知られるようになったきっかけは黄金戦争の頃、聖都オクヘイマで上演された舞台劇『土の重み』である。公正の秤ことタレンタムに対し、ニカドリーはその強大さに敬服し、ジョーリアはその公正さに心を奪われた。タレンタムは彼らに、彼ら自身の愛を象徴するにふさわしい秘宝を探すことを求めた。そして、その秘宝の価値と同じだけの愛を返すことを約束した。
愚かなニカドリーは親友に「『法』のタイタンが愛を返すに値する、価値あるものとは何か?」と問うた。ステュクスのタナトスはこう答えた。「すべてを等しく奪い去っていく死こそ、真に公正と呼べる存在である」と。
温厚なジョーリアは森にいるモネータとサーシスに尋ねた。「タレンタムが出したなぞなぞをいかにして解けばよいのか?」と。モネータは、自身の火種を差し出すようジョーリアをそそのかしたが、そんなことをしては大地には二度と生命が育たなくなってしまう。一方サーシスは、自分の心に従って最も大切な宝を見つけ出すよう助言した。
こうして、ニカドリーは自身の槍を投げ、壊滅させた都市国家をタレンタムへの贈り物とした。タレンタムは自身の火種を天秤の片方に乗せた。壊滅させた都市国家の屍の重さが火種と等しければ、ニカドリーはタレンタムの愛を勝ち取ることができる。しかし天秤は微動だにしなかった。
ジョーリアは人類が自身に献上したひとすくいの麦畑を天秤に乗せた。安っぽく見えた贈り物は、なんと公正の秤に乗せられた火種よりも重かった。なぜなら、それは歴史、人類の暮らし、命、そして未来を背負うものだからだ。最終的にタレンタムはジョーリアの愛に勝る愛を注ぐことはできないと理由を付けて、その思いを拒むほかなかった。しかし、後世の詩人はこんな冗談を口にする――公正の秤は、心に秘めた恋心がオンパロスの均衡を揺るがさぬよう、そう言い訳するしかなかったのだ、と。
注釈:この物語における乱暴で愚かなニカドリー像からは、明らかにタイタンを悪く描こうという意図が見える。そこに込められた教訓、政治的な意図は、戦争がオクヘイマの脚本創作に与えた影響をある意味、表しているとも言えるだろう。そしてニカドリーの恋物語を創作して楽しんでいるというよりは、恋愛における失敗を楽しんでいると言った方が良さそうだ。これは黄金戦争の時期に見られる、各都市国家からクレムノスに対する差別や敵意の表れである。
オンパロスの暦法
オンパロス独自の暦。長らく存在した12の月と、それぞれの月に人々が従事する仕事が記されている。オクヘイマ市民の生産活動や日常生活における重要な指針となっている。
我々に暦法を授けしケファレをたえず心に刻め。彼は今なお、黎明を背負っている。
命運季
1月・門関の月
代表タイタン:「万路の門」ヤーヌス
古いものと別れを告げ、新しいものを迎え入れる最初の月で、ヤーヌスは過去を象徴する古い門を閉じ、未来を象徴する新しい門を開く。ヤーヌスは門であり、門を守る鎖でもある。前と後ろは、鋭い斧で切り分けられたかのようにはっきりと分かれる。
この月、人々は自らの意志で、自身を束縛する物(たとえば昔の恋人や亡くなった身内の遺品など)を捨て去ることで、過去に別れを告げ、未来に向き合うことを宣言する。
2月・平衡の月
タイタン:公正の秤、タレンタム
最も規則正しい月。ケファレはこの月を測って、月日というものを定めた。人々は規則正しく生活し、心も穏やかになるため、裁決を下したり、契約を交わすのに適している。
かつて昼と夜が分かれていた時代、平衡の月は一年で唯一、昼と夜の長さが等しい月だった。タレンタムがオロニクスとエーグルの争いを仲裁したため、そのようになったと言われている。
3月・長夜の月
タイタン:永夜の帳、オロニクス
太陽の光がいつもよりもやや暗い月。普段よりも眠気を感じやすくなり、直感と感性が思考と理性に取って代わるので、細心の注意を必要とする作業には向かない。
この月の夜が長かったのは、天空の所有権をめぐるオロニクスとエーグルの争いにオロニクスが勝ったためと言われている。
支柱季
4月・栽培の月
代表タイタン:「堅磐の脊髄」ジョーリア
春の耕作が始まる月で、最も忙しい月でもある。この月では、大地が種まきに最も適した状態まで回復し、人々は土を耕し種をまき、労働を大地に捧げる。大地獣たちがいつもより元気になる月でもある。
5月・歓喜の月
タイタン:満たされた杯、ファジェイナ
春の耕作が終わる月。泉から水が流れ出し、漁が盛んになる。一年で最も忙しい月が終わり、人々は喜びの雰囲気に浸る。醸造や祭典に最も適した月である。人々は目が覚めても、眠い目をこすり、二度寝を楽しむ。
6月・昼長の月
タイタン:晨昏の目、エーグル
最も熱気のある月。黎明のミハニは普段よりも輝きを増す。大地の植物も懸命にそのエネルギーを取り込み、後に人々の収穫物となる。この光を浴びると情熱に満ち溢れ、活力がみなぎる。
この月の昼が夜より長かったのは、天空の所有権争いでエーグルがオロニクスに勝ったからだと言われて
いる。
創生季
7月・自由の月
代表タイタン:「万象の座」ケファレ
穏やかで平和な月。参加すべき大事な祭りも、やらなければならない大事なこともない。この月では、
人々は趣味に没頭したり夢を追いかけたりして、やりたいことを自由にできる。ちょうどケファレが世界を創造し、その庭で人々が自由に遊ぶことを許したように。
8月・収穫の月
タイタン:分裂する枝、サーシス
秋になり、収穫を始める月。作物は昼長の月の光を吸収し、最も熟した状態へと変化する。栽培の月と同様にことのほか忙しい月である。
9月・拾綫の月
タイタン:黄金の繭、モネータ
秋の収穫が終わりを迎える月。人々は1年の歩みを振り返る。モネータはこの月にあらゆるものをかき集めて、記憶の金糸にする。家族と共に愛と美しい日々を分かち合う月である。時間の余裕のある者は家で機織りをする。紡績に関する祝祭日があるのもこの月である。
災厄季
10月・紛争の月
代表タイタン:「天罰の矛」ニカドリー
生産活動がすべて終わってからの最初の月。人々は1年の中で最も重要な労働から解放され、余分な労働力が生まれる。かつては、各都市国家がこの月に戦争を約束することが多かったという。また、この月は囚人を処刑し、神々への奉納として供物を燃やす時期でもある。
11月・慰霊の月
代表タイタン:「暗澹たる手」タナトス
都市国家が徐々に静寂に戻る月。通常、戦争はこの月で終息に向かう。人々は戦場から遺体を運び、死者を埋葬して生き残った者を慰める。司祭は死者のために祈りを捧げるのが務めの1つであるため、この月で最も忙しくなる。この月では、殺伐とした空気が漂い、人々は眠りに入るかのように徐々に活動を減らしていく。
12月機縁の月
タイタン:飛翔する幣、ザグレウス
一年で最後の月。先月静まり返っていた生き物が再び活動的になり、いいことも悪いこともより頻繁に起こるようになる。博徒は幸運を呼び込める月と信じ、投機商人は一攫千金に憧れる。泥棒もこの月までに蓄えが底をついていることも多く、次の盗みの機会を今か今かと待っている。機縁の月は治安が最も不安定になる月である。
ザグレウスの性格は掴みがたく、ひと月の日数が定まっていない。時々、次の月がやって来ると思って暦をめくると、幽霊のように「閏日」が現われることがある。そのような1日がある機縁の月を「赤の月」といい、無ければ「金の月」と呼ぶ。博徒や泥棒たちはこの日を開運日と見なし、ひときわ大胆な行動に出る。そのため、暗殺や陰謀が多く行われるのはこの日である。
オンパロスの暦はケファレが自ら測定し決めたもので、混乱した今の時代においても、変わることはないと信じられてきた。しかし未来のとある瞬間に、変わらないということ自体が変化を迎えるのかもしれない。
週と一週間の日数
機縁の月を除き、オンパロスの毎月の日数はほぼ同じである。毎月延べ4週、毎週延べ7日、日曜日は休日。この風習は、太陽がまだオンパロスにいた頃から広く伝わっていた。その由来には、このような伝説があると言われている――
造物紀、エーグルとオロニクスはそれぞれ昼と夜を司っていた。しかしその頃の夜空には群星しかなく、太陽に並ぶほど大きな天体はなかった。闘争心が強いオロニクスは、宝石を使ってエーグルの光を吸い取り、それを夜空のシルクと融合させ、夜で輝く衛星を作った――それが誰もがお馴染みの月だ。この工程は、わずか1日しかかからなかった。
オロニクスは己の作品を隅々まで観察し、その完璧さに誇らしく感じた。しかし1つの月だけでは太陽ほど輝けることはなかった。するとオロニクスは6日間不眠不休で作業を続けた――夜が訪れるたびに、空に1輪の月が増える。やがて6日目の夜には、万物の足元に6つの影がつくようになった。
6つの月の存在は潮の満ち引きを大きく乱し、ファジェイナの不満を招いた。そこで7日目、ファジェイナは凡人が想像すらできないほどの甘いネクタールでオロニクスを酔わせ、丸一日眠らせた。そして夜が再び降臨した時、月の数が増えることはなかった。ファジェイナはただオロニクスをからかってやろうと思っていただけだが、偶然にもエーグルとオロニクスとの争いを仲裁する結果になった。
しかし6つの月の存在は明らかに均衡に反する。このことを聞きつけたタレンタムは天秤を動かし、3分の2を削り去り――赤の月と金の月だけを残した。そして8日目、オロニクスは太陽が昇る頃にやっと目を覚ましたが、これ以上月を作ってはいけないと言い渡された。1週間の循環はこれにより定められた。暦を制定する際、ケファレはオロニクスが昏睡する7日目を休日とした。
1日の時間
暦を制定する時、ケファレは1日を均等に五大刻に分け、人々に時間に従って起床、仕事、休憩、睡眠を取るよう教え導いた。
灼熱の太陽が空から離れた後、黎明のミハニはオクヘイマを照らす職責を担った――その光は短時間における変化が小さく、時間の細かい区別が難しくなり、人々は仕方なく、以前の生活習慣のままで五大刻を踏襲したのだった。
門の刻
あらゆる活動を始める時間。人々は寝床から起き、形のない扉を通過するように意識を遠くから体に呼び戻す。人々は水を汲み、顔を洗い、朝市に赴く。一部の人々はこの時に祈祷をする。
明晰の刻/上昇の刻
1日のうち頭が最も冴えている時間帯、知性は光がガラスを透すように頭に入ってくる。人々は会話することで学説や見解、そして面白い話を共有する。その行動はあたかも織り交ぜる金糸のようだ。この時間帯で活動する学者たちは半分の労力で倍の成果を得られる。
践行の刻/降下の刻
頭の回転が徐々に遅くなっていく時間帯。人々は本を置き、外に出て運動と労働をし、植物と動物の世話をしては、汗水を土に染み込ませた。学者と暇を持て余した人はバルネアに行き、ファジェイナの水を使って頭に差し込む光を蘇らせようとするが、結局のところ、楽しい宴会に夢中になることが多い。
離愁の刻
生産活動が徐々に止まる時間帯。人々は1日の仕事を終え、友人や仲間と別れる。住民たちに迷惑をかけないよう、軍隊や旅人はこの時間帯に出発することが多い。
隠匿の刻
人々はカーテンを閉め、横になって休む時間帯。ザグレウスに属する賊星はこの時間帯が終わった後に空を流れ、長い尾の跡を残す。これにより、人々は1日の終わりを知る。この時間帯に、盗賊の活動が最も頻繁である。
賊星に関して:特徴的で、空を彷徨う流星。出現するたびに異なる軌跡になっている。1秒前は東側で見かけたと思いきや、1秒後には西側にあると気が付く。群星が黎明のミハニによって薄暗く見えても、賊星だけははっきり見えるのだ。
非常に稀ではあるが、賊星は時々赤い光を発し、赤の月の到来を予告する――これは災厄の前兆であり、計画は挫折され、戦いは惨敗を迎えるとされている。
各刻の「針」
人々は五大刻をさらに5つの「針」に分けた。より細かい時間を指定したい時、人々は刻と針を併用する。例えば「隠匿の刻第三針」、「門の刻第一針」など。
「針」よりさらに細分化された時間単位はあまり使われていない、そこまで細かく時間を測る必要がないから一時間を細分化すればするほど、生活は忙しくなるものだ。
古びた日記
詩人リポの日記。彼の故郷が滅亡してからオクへイマにたどり着くまでの経緯が記録されている。
光暦4928年、紛争の月、21日
僕はリポ。生まれはイェリカだ。僕らの都市国家は昨日、暗黒の潮に囲まれた。
そこらじゅう黒い泥沼と恐ろしい怪物だらけで、炎と叫び声が上がってた。あんなにたくさんの血を...死んだ人を見たのは初めてだ……
パリスが僕を連れて逃げてくれた。でも父さん、母さん、姉さんは・・・ダメだ、僕は強くならないと。もう泣いちゃダメだ...…
もう故郷はずっと離れたところにある。すごく疲れた......あったかい食べ物とふわふわのベッドが恋しい...でも大丈夫だ、リポ。お前なら耐えられる。これからきっとうまくいく。
姉さんと約束したんだから。僕は生きて、姉さんの代わりにイェリカの外で見たものを全部記録に残すんだ。
姉さんにこの日記を見せることはもうできないけど...一人前の男として約束は必ず果たす!
(数ページ中略)
光暦4928年、慰霊の月、13日
パリスはやっぱり僕を置いていった。
僕がお荷物だってことは分かってた…生まれた時から面倒を見てくれたけど、今は状況が違う...彼だって苦しいんだと思う。暗黒の潮はあんなに怖いものだし、パリスもきっと怖くなったんだ…彼を責めようとは思わない!
…ただちょっぴり傷ついただけ。本当にちょっとだけ、ほんのちょっとだけだよ!
でも僕はラッキーだった!ヘシオドスさんは信じられないくらいいい人なんだ。僕を助けてくれて、食べ物と住む場所まで与えてくれた。
それに彼は立派な詩人なんだ。声がいいだけじゃなくて、物語も面白いんだ。彼の歌を聞くと、子供の頃に母さんが僕と姉さんに歌ってくれた子守唄を思い出す。ぜんぜん似てないんだけどね…
(数ページ中略)
光暦4928年、慰霊の月、27日
ヘシオドスさんは人気者で、みんなから好かれてる。
どんなに疲れていても、どんなにお腹が空いていても、彼の歌を聞くと誰もが笑顔になる。まるで魔法の力が込められてるみたいだ。
でもヘシオドスさんが一番好きなのはこの僕だ!昨日の晩ごはんの時に詩を十分に学んだら弟子にしてくれるって言ってくれたんだ。
でも...彼は知らないけど、僕はもう彼が歌った曲を全部覚えてるし、自分で詩を作ることもできるようになってる。
初めて書いた詩は『最後の庭園』。内容は、みんなで困難に打ち勝って、最後にはオクヘイマに辿り着くってもの。出来はイマイチだったけど、ヘシオドスさんのために書いたんだ。
オクヘイマに行けば、暗黒の潮やあの怪物たちを恐れなくていい。僕はこの詩をヘシオドスさんに――いや、ヘシオドス先生に捧げる。
(数ページ中略)
光暦4928年、機縁の月、3日
…みんな…みんな…あの時のイェリカとおんなじだ……
なんで…どうして僕を助けようとするんだ?...どうしてパリスのように逃げないんだ…
ごめんなさい、全部僕のせいだ。ごめんなさい、ヘシオドスさん…….僕がもっと役に立つ人間だったら…ヘシオドスさん、ごめんなさい…… ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!
(数ページ中略)
光暦4928年、機縁の月、 13日
ここがオクヘイマなのかな・・・さすが 「オンパロス最後の避難所」だ。
先生、 リポはあなたの楽器と共に、 あなたの詩をここの人々に届けますから、 心配しないでください……
(…….)
古代クレムノス語の石板
モーディスの翻訳を経てようやく理解できる古代クレムノス語の石板。遥か昔、クレムノスで練られたオクヘイマへの潜入と襲撃計画が記されている。
…暗黒の潮は謎の敵ではあるが、うまく利用すれば、我らの宿敵に対抗する武器となり得る。
侵入者に汚染された眷属を運搬させる。具体的には、眷属を特殊な土で覆い、大地獣キャラバンの荷物に紛れ込ませ、機を見計らってオクヘイマまで密輸させる。オクヘイマへの潜入に成功したのち、隠匿の刻に人を遣わせ、眷属を都市の各所に隠す。数日もすれば、土が自然と剥がれ落ち、眷属の汚れた息吹がオクヘイマ全体に広がるだろう。
そうなれば、オクヘイマ側は汚染源を探し出すために多くの人手を割くはずだ。我々はその混乱に乗じて決定的な一手を放つ――クレムノス中の英霊のマシュケーを集めた後、天罰の鋒をオクヘイマに向け、紛争の剣で都市国家を貫く。そして大軍で攻め入りオクヘイマを制圧するのだ――待ち望んだ歴史的勝利を、ついに我らの手に収めることができるだろう。
五大美徳と祭典の告知
クレムノス全盛期の祭典の告知文。荘厳かつ高揚感あふれる文体で「紛争」のタイタンの五大美徳を述べ、クレムノス祭典に関する事項を宣告している。
喉元に刃を突きつけられても恐れず、勇気ある姿を示す
奸計を潔しとせず、栄誉の冠を守る
燃え立つ瞳を見開き、己の理性を支える
傷ついた身体に負けず、強靭な品格を磨き上げる
自己犠牲を恐れず、崇高なる誇りを示す。
此度の祭典に挑む勇士たちは皆、クレムノス各地から集った猛者である。闘技場は広く開放された場所となっており、勇士たちは頑丈な鎧を纏い、鋭い矛を手に取り、血戦の道を進み続ける。そして最後には、オーリパン王に謁見する栄誉を得ることができるのだ。勝者は名誉と栄光をその手に掴み、敗者は英霊として名を残し、その勇気を称えられるだろう。
祭典は激昂した熱気の中で執り行われる。勇士たちよ、タイタンの神性に応え、奮って名乗りを上げよ。クレムノスに未来永劫ニカドリーの加護があらんことを!
獣医の観察日誌
獣医ルクレティアが肌身離さす持っている日誌。大地獣を世話していた日々が事細かく記載されている。
-声のトーンが通常より格段に高く、古の角笛のような響きで、嗚咽のようにも聞こえる
持続時間は一定せず、短い場合は数呼吸、長い場合は隠匿の刻全体にわたる
-多くの場合、互いに呼応し合い、ある種のリズムを形作っている
-鳴いている間は、無意識に地平線の方向を見つめている
2、行進中に見られる異常:
-行商隊から、大地獣が突然移動を止める現象が複数回報告されている
-その際、足踏みをしながら、まるで何かを探すように前足の爪で地面を掘る様子が見られる
-時には、隠匿の刻が過ぎるまで前進を拒むこともある
注目すべき点は、このような異常行動の多くがオクヘイマから遠く離れた場所で発生していることである
-体温がわずかに上昇(+0.3~0.5度)
-心拍数が増加(毎分7~10回程度)
-食欲は正常だが、特定の鉱石への嗜好に変化が見られる。特に地層深くから採取した鉱石に対して異常な渇望を示す
2、環境反応の変化:
-好んでいた砂浴場を拒むようになった
-地面の振動に対して以前よりも敏感になった
-山や崖に近づくと不安を示す
-一方で、まるで何かを聞いているかのように、頻繁に角や前足の爪で地面に触れるようになった
最も顕著な変化は特定の場所に対する態度……
大地獣たちの目は常に迷いと警戒を帯びるようになった。その様子は祖父が語ってくれた古の伝説を思い出させた――造物紀でジョーリアが初めて眠りから目を覚ました時に、大地獣たちは似たような症状を示したという。しかしそれは上古の物語に過ぎないはず。症状の一致は偶然なのだろうか?
-人間に対する友好度は変わらない
-世話係に触れられたり、毛を梳かされたりすることを許している
-以前よりもさらに人間に近づきたがり、身体的接触を積極的に求めるようになった
-特に隠匿の刻には、世話係の周囲に集まる
治療の試み
-マッサージの頻度を増やし、リラックスを促す
-飲み水に精神安定効果のある薬草を加える
-砂浴のやり方を変え、砂を直接体にかける形にする
-音楽を使って情緒を安定させる
今のところ行った対策はいずれも顕著な効果を示していない。大地獣の異常が病気によるものではない可能性を疑い始めている。
数日前、大地獣の起源に関する古書を読んだ。その中には、大地獣はもともとジョーリアの背中から生まれたと記されていた。それが事実であれば、大地獣たちの大地への感受性は、私たちの想像をはるかに超えるものであるに違いない。
-タイタンの歴史を研究する学者に相談する
-異常行動の時間的な規則性をまとめてみる
-行商隊からの関連報告を継続して収集する
補足:今朝早く、最も年老いた大地獣が隅っこに立ち、低い嗚咽を発しているのを目にした。その目を見ると、暗黒の潮が襲い掛かる前に起きた異様な光景を思い出す。私は真剣に考えた――大地獣の異常な行動を単なる病気だと決めつけず、もっと広い視野を持って、大地獣が伝えようとしていることを理解する努力をすべきではないかと。
『潮汐のロンド』水溢琴の楽譜
水溢琴の楽譜。ファジェイナの信者たちの間でよく知られている『潮汐のロンド』の譜面が記されている。
12の弦は12のタイタンの力と対応している。
1 永夜-E (オロニクスの弦)
2 公正-A (タレンタムの弦)
3 万路-D (ヤーヌスの弦)
4 晨昏-G (エーグルの弦)
5 堅磐-C (ジョーリアの弦)
6 満溢-F (ファジェイナの弦)
7 万象B (ケファレの弦)
8 分裂-E' (サーシスの弦)
9 黄金-A' (モネータの弦)
10 天罰-D' (ニカドリーの弦)
11 飛翔G' (ザグレウスの弦)
12 暗澹-C' (タナトスの弦)
水位が1インチ上がるごとに、音階が半音上がる
水位:満ち始め(くるぶしが浸かるほど)
リズム:♩=72朝潮のような心地よさ
E |-E---B---|C---E---|
A |--A---C--|--E---G-|
D |---D---E-|---G---B|
G |----G----|----C---|
C |-----C---|-----E--|
F |------F--|------A-|
B |---------|B---D---|
E' |---------|--E---G-|
A' |---------|---A----|
D' |---------|----D---|
G' |---------|-----G--|
C' |---------|------C-|
水位:徐々に上がる(膝が浸かるほど)
リズム:♩=108 波の起伏のように
E |-E-B-E-|-G-B-E-|
A |-A-C-E-|-C-E-A-|
D |-D-E-G-|-E-G-D-|
G |-G-B-D-|-B-D-G-|
C |-C-E-G-|-E-G-C-|
F |-F-A-C-|-A-C-F-|
B |-B-D-F-|-D-F-B-|
E' |-E-G-B-|-G-B-E-|
A' |-A-C-E-|-C-E-A-|
D' |-D-F-A-|-F-A-D-|
G' |-G-B-D-|-B-D-G-|
C' |-C-E-G-|-E-G-C-|
水位:満溢(胸が浸かるほど)
リズム:♩=144 荒ぶる嵐のように
E |-E-G-B-E-|-B-E-G-B-|
A |-A-C-E-A-I-C-E-A-C-|
D |-D-F-A-D-|-F-A-D-F-|
G |-G-B-D-G-|-B-D-G-B-|
C |-C-E-G-C-|-E-G-C-E-|
F |-F-A-C-F-|-A-C-F-A-|
B |-B-D-F-B-|-D-F-B-D-|
E' |-E-G-B-E-|-G-B-E-G-|
A' |-A-C-E-A-|-C-E-A-C-|
D' I-D-F-A-D-|-F-A-D-F-|
G' |-G-B-D-G-|-B-D-G-B-|
C' |-C-E-G-C-|-E-G-C-E-|
1.「-」はフェルマータの記号で、区切りごとに1拍
2. 十二弦音記号はあくまで基準音であり、 実際の音調は水位に応じて変化する
3. 譜面は上から下まで、 十二弦の位置に対応している
この楽譜は基準音のみ記載し、実際の演奏効果は以下の要素の影響を受ける:
1.潮が満ちていくにつれて、音調が自然にあがる
2.水が勢いよく流れる部分は音色が明るくなる
3.嵐が訪れると、ハーモニーが豊かになる
4.海辺で演奏すると、より強く共鳴する
≈波の音:水の流れが激しいときに自然に発生する
↑満ち潮の音:水位が上がるにつれ、音調が高くなる
↓引き潮の音:水位が下がるにつれ、音調が低くなる
~余韻:水位が変化するまで持続される
1.暗黒の潮が暴走している時に演奏してはいけない
2.戦闘時に使用する場合は、まずファジェイナの祝福を受けた聖水を飲まなければならない
3.嵐の中で演奏する場合は水溢琴の保護に注意すべき
4.ザグレウスの信者が弦をすり替える可能性があるため、警戒を怠ってはいけない
紛争へ:ニカドリーを称えて
クレムノス人によるニカドリーへの賛歌。よく「紛争」の神殿と戦場で響き渡っている。
戦いに赴く前、クレムノスの民は生贄の儀式を行う。殺し合いを通してニカドリーの力に火をつけ、生贄が放つ苦しみの叫び声の中で賛歌を歌う。
不敗なる者、すべての戦場の主、クレムノスと廃墟の王、
戦車長、屍山の王座、勝利の父――
栄光の僭主、地を裂き海を轟かす雷、オンパロスの守護者、
「紛争」のタイタン、天罰の矛、ニカドリー。
世界が従うべき首、永遠に錆びない剣戟、紛争と紛争を断つ法則。
最も偉大なる征服者にして守護者、ニカドリーを称えよ。
そなたはすべての敗者の僭主であり、この世のすべての傷を負うもの。
そなたはかつて蒼穹の雷槍であり、大地の脊髄を引き裂いた。
ステュクスの急流を断ち切り、生者を死の水に放り込んだ。
その戦火は消えることなく、高山の如き墳墓を焼き払った。
その矛先は天を突き刺し、昼夜を焼き尽くした。
征服されし人々の目に映るは災厄のみ。決死の戦いに身を投じた者に栄光を。畏怖で潰えし軍勢は、皆鎧と成り下がる。
天罰下りて、軒昂たる紛争に畏敬を――
天地を守りし護衛の名において、国々の平和と、仇なす敵の敗退を!
永遠に続く災厄の名において、国々の征服、仇なす敵の滅亡を!
神聖な儀式が記された書物
年季の入った巻物。古くから伝えられる、とある神秘的な儀式の手順が記されていて、名も知らない人の注釈も添えられている。
サーシスの法典に従う
*繊細な筆跡:ジョーリアの沃土*
*繊細な筆跡:ファジェイナの聖なるネクタール*
*繊細な筆跡:サーシスの樹種*
知性の目はあなたの献上を評価し恩恵を与える
テミス――世界の脈絡
テミス――オンパロスの現地通貨についての紹介。歴史的な逸話も含まれている。
「商人は利を重んじるため、制限を課さねばならない」――名の知れぬタレンタムの司祭
テミスは、タレンタムが規定した取引の最小貨幣単位であり、かの神が人類に与えし贈り物でもある。今の世界では、テミスは砂利ほどの小さい分銅になっており、粘土のように必要な数を混ぜて、1つの大きい分銅にすることができる。そのため、1テミスはほとんど持ち歩けない。それとは逆に、都市国家間の取引ともなると、その数を運搬するには大地獣が必要になる――いろいろと不便なところはあるが、線型の計算方法が非常に「公平」であることは誰も否定できない。
テミスの歴史は古き黄金紀の初期まで遡る。テミスが普及される前、各都市国家はそれぞれが信仰するタイタンに関連する物――貝殻、羽毛、赤土の塊などを交換の媒介としていた。だが物資が豊富になるにつれ、貿易の需要が強くなっていき、取引の媒介として共通の一般的等価物が求められるようになった。始めの頃、その一般的等価物は金銀などの貴金属であった――生産量が少なく、価値も安定しているため、貴金属を貨幣とした後、取引の際に起こる衝突は劇的に減少した。やがて、取引は貴金属制に移行していった。しかし、結局は最も軽い銅貨でさえも野菜1つの価値をはるかに超えていったため、平民の生活に多くの不便をもたらした。
経済成長期、毎年多くの貴金属が市場に流入していた――経済の成長は、貨幣という支えがあってこその結果だった。そこである時、豪商であり都市国家の首領でもあるマイダスという者が悪知恵を働かせる。「もし世の中すべての黄金を所有することができれば、我が都市国家は無敵になるのではないか?彼はあるタイタン(それがジョーリアか、ザグレウスか、はたまたファジェイナであるかは定かではない。これに対する学術界の論争は今も続いている)に祈りを捧げ、邪悪な儀式を通じて獲得した鉱物資源を操る能力を使い、全オンパロスの貴金属の鉱脈を自分の山に移した。そして彼はそのことを堂々と宣言し、各都市国家に服従を要求した――従わなければ、貴金属は手に入れられないと。
しかし、歴史は人々のために活路を見つけてくれた。貴金属の輸入が妨害された後でも、各都市国家の貿易は停止しなかった――ファジェイナを信仰する国は再び貝殻を、ジョーリアを信仰する国は石を、エーグルを信仰する国は羽毛を…人々は再び物々交換の時代へと戻り、いつものように生活した。都市国家間貿易の続行が困難になったが、皮肉にも、これら雑貨のほうが携帯と取得が便利であったため、平民が取引を行う意欲が逆に上がったのだ。
この騒ぎを終わらせるため、タレンタムは天秤をひっくり返し、数えきれないほどの砂利を神力を宿した分銅に変え、オンパロスの統一通貨と定めた。それが、物品貨幣と貴金属のメリットとデメリットを兼ね持っている今のテミスだ。最も信用できる「公正の秤」が価値を保証する貨幣のおかげで、都市国家間の貿易はあっという間に回復した。余談だが、この出来事を引き起こしたマイダス本人は、クレムノスの侵攻を受け、狂気に陥った末に純金の彫像となってしまった。
大地獣ヘラクレスの十二の試練
この作品をあまり真に受けないでください――作者は真に受けてほしいと願ってやまないが。
大地獣ヘラクレスはかつていくつもの山川を渡り歩き、はるか遠くの異国に自身の英雄の足跡を残した。ここにヘラクレスの最も偉大なる十二回の試練を記録し、あんたもこれを機に私の大地獣に対する情熱を理解し、大地獣ヘラクレスを称え、ヘラクレスの威名を世に広めるといい!
真実の獅子の口に挑む:
間違った言葉を今まで一度も発さなかったという真実の獅子の口だが、ヘラクレスによって隙を見つけられた!真実の獅子の口に刺々しく詰め寄られても、ヘラクレスは絶対的な力をもって獅子を黙らせることに成功した。慰謝料を支払った後、颯爽とその獅子の仮面を自身の鞍に飾り付けた。
キメラを助ける:
傷を負った小さなキメラ、ヒュドラ。暗黒の潮の侵蝕によって、9本ある尻尾のうち8本も失ってしまった。そこで、ヘラクレスが助けの手を差し伸べた!ヘラクレスはヒュドラに駆け寄り、その小さな身体を自分の背中に乗せ、暗黒の潮の包囲を突破することに成功したんだ。
エーグルの狩人を助ける:
エーグルの祝福を受けたと自称する狩人セレネは、預言で登場する一匹の鹿を何年も追い続けていた。鵜の目鷹の目で、ヘラクレスは暗黒の潮が侵蝕した後の残骸から一本の鹿の角を見つけ、二度と達成できない使命を諦めるよう、狩人の説得に成功したのだった!
オレノスの農民を助ける:
オレノスの農民たちはイノシシによる被害を受けていた。足が早く、凶暴なイノシシたちは行く先々で破壊していたが、聡明なヘラクレスは大量の果物を運んできて、イノシシを村の外に誘き寄せて一気に捕まえた。
イカリアの大地獣の家を綺麗にする:
イカリアにある大地獣の家は管理が疎かで、汚いことで有名になり、そこに住む大地獣は多かれ少なかれ病に苛まれていた。しかし大丈夫!勇敢なヘラクレスは大地獣の家の両側を流れる川の堤を切り、川の水を使って家を綺麗にした。かくして、大地獣たちは清潔で幸せな生活を送るようになった。
ステュムフォースの変な鳥を追い払う:
ステュムフォースでは金属の羽が生えている変わった鳥が生息しており、オリーブ油を盗むためによく風車や製油所を襲っていた。スリングショットでその鳥を駆除できるよう、大地獣ヘラクレスは困っている人たちを自分の背中に乗せた。3日もの努力を経て、人々は変わった鳥たちを追い払うことに成功した。
ハンダックの雄牛を連れ戻す:
ハンダックの純血の雄牛はその街の宝だが、その中でも「最も純血である雄牛」がごく普通な斑らの乳牛と駆け落ちをしてしまった…ヘラクレスは己の強靭さを頼りに、聞き分けの悪い雄牛を無理矢理ハンダックの牛舎に連れ戻した。人々は感謝を込めて、ハンダックにいる間なら赤土を無料で好きなだけ食べれる権利をヘラクレスに与えた。
オドリュサイの狂った大地獣を手懐ける:
オドリュサイの大地獣飼育員が暗黒の潮に汚染された赤土をうっかり大地獣に与えてしまったせいで、4匹の大地獣が発狂してしまった。我ら強靭なヘラクレスは、己の力だけで発狂する4匹を食い止め、その体内にある暗黒の潮の成分が全て代謝し切り、精神状態が安定するまで面倒を見てあげた。
ケファレの祝福を受けた鞍を勝ち取る:
他所での冒険の功績はもちろん、ヘラクレスはオクヘイマでも有名なチャンピオン大地獣だ!オクヘイマで行われた第一回の大地獣の運動会で、一番最初に申し込んだシード選手として、ヘラクレスはすべての種目で優勝を勝ち取り、参加した5名の選手より抜きん出て、ケファレの祝福を受けた鞍を勝ち取った(スポンサー:イアソン様)。
ガティエールの失踪した大地獣を連れ帰る:
ガティエールにある大地獣3匹がある詐欺師に夜中に連れ去られてしまった。ヘラクレスは自分の鋭いの嗅覚で詐欺師が逃げた方向を特定し、ある山谷で3匹の大地獣を見つけ、さらには衛兵が詐欺師を捕まえられるよう手助けもした。
神悟の樹庭の報酬であるりんごを勝ち取る:
オクヘイマの第2回大地獣運動会は、神悟の樹庭のとある匿名有志者からの支援を得て開催された。報酬は樹庭特製の赤土りんごだった。毎度のごとく、ヘラクレスは再び優勝し、嬉しそうにこの高価な人造「果物」を食べた。
暗黒の潮から生まれた物のサンプル取得:
これはヘラクレスにとって最も不思議な試練であった!ヘラクレスの長い首のおかげで、万物を滅ぼす暗黒の潮の浅瀬から貴重なサンプルを取得した。ヘラクレスは、樹庭ですら達成が難しいと判断した任務を難なくクリアした。ただ残念なことに、ヘラクレスがあまりにも余裕だったせいで、人々はこの任務の危険さに気づきもしなかった……
以上が大地獣ヘラクレスが経験した十二の偉大なる試練だ――近い将来、このリストは十三、十四と増えていき…いつかは二十四試練にまでたどり着くだろう!
ピュエロスの利用上の注意事項
バルネア運営側がお客さんのために準備したバンフレット。ピュエロスや余興の種類が変わるたびに、内容が更新される。
親愛なるお客様へ
バルネア「雲石の天宮」へご来場いただきありがとうございます。ここではファジェイナの最も貴重な祝福をご堪能いただけます。来場者の皆様が快適なバニオでお過ごしいただけるために、またこの聖地を守るために、以下の内容を必ずお読みいただくようお願いします。
1.入場時はファジェイナ像に一礼をするようお願いします。
2.更衣室に清潔なバスローブを用意しておりますので、ご自身の服でピュエロスへ入場することはご遠慮ください。
3.自家製ネクタールの持ち込みはご遠慮ください(本バルネアではファジェイナに認められたネクタールを提供しています)。
4.祭具を動かさないでくださるようお願いいたします。
特殊な時刻:
時刻ごとに異なる効能を持つ泉水を導入しております。必要に応じてお楽しみください。
1.門の刻:温和な水で、心身の浄化できます
2.明晰の刻:思考を明晰にさせることができ、瞑想に適しています
3.践行の刻:この時間帯では社交パーティーを催しており、さまざまな余興が行われます
4.離愁の刻:人が少なく静かで、お1人様でのご利用に適しています
5.隠匿の刻:要予約。特定のお客様が使用可能となります
バルネアの中心に位置するピュエロス。ファジェイナの祝福を受けた泉から引いており、水は薄水色で、常に波紋が見えます。水面の小さな泡は、まさに神性の顕れです。
効能:
疲れを洗い流し、精力を回復できます。また、精神を落ち着かせることもでき、瞑想の助けとなります。
特徴:
稀に啓示が現れます。感受性が鋭い人はファジェイナのささやきを感じ取れるでしょう。
禁止事項:
ファジェイナへの敬意を示すため、メインピュエロスでの飲食はご遠慮ください。
それぞれ高温と低温エリアとなります。高温エリアには黎明の光のような暖かい蒸気が満ちており、エーグルの最初の光を象徴しています。低温エリアの水は色が深く、ピュエロスの底に星の模様がちりばめられており、オロニクスの深邃な夜空を象徴しています。
効能:
星光のピュエロスの水は心身を清め、体内の汚れを排出し、精神活力を向上できます。黎明のピュエロスの水は心身を落ち着かせ、疲労を取り除き、睡眠に効きます。
特徴:
高温と低温の水を合わせて使用することで寿命を延ばし、身体を最高の状態に保つことができます。
禁止事項:
高温エリアでの長風呂は逆に身体に良くないため、三針ほどの入浴がおすすめとなります。また、離愁の刻は低温エリアを使用しないようご注意ください。
あらかじめサーシスの祝福を受けた薬草を水に浸しているため、このピュエロスにはサーシスの知性と祝福が含まれております。神悟の樹庭の学者たちはよくここで思考を巡らせ、理性の光を探究しています。
効能:
思考の鋭さが増し、インスピレーションを促進できるため、深い瞑想に適しています。
特徴:
近くに多くの本棚とリクライニングチェアがあり、心地良い読書体験を楽しめます。
禁止事項:
このピュエロスでは静かにしてください。
このエリアは公共エリアと団体客の専用エリアに分かれております。各エリアに設置されている特別な装置により、ファジェイナが司る海のような潮汐を再現しています。
効能:
体の滋養、血行の改善、精神の安定、気分の向上。
特徴:
多人数で同時に入浴するのに適しており、休憩スペースにはマッサージサービスが設けられております。一度に入浴できる人数は13名までとなります。
禁止事項:
水道管がつまる恐れがあるため、飲食物のお持ち込みはご遠慮ください。
エリアの中央にあり、お客様にはピュエロスに浸かりながらご観劇いただけます。劇場には水中椅子、浮遊テーブル、特製の音響石柱、昇降ステージなど、多くの設備があります。
賢者の演壇:
エリアの両側の高台にあり、学術演説、詩の朗読に使用されます。なお、招待された者のみが登壇できます。特殊な音響デザインを施した会場は、登壇者の声が四方に響くようになっています。
宴会ピュエロス:
すべてのピュエロスに浮遊テーブルと休憩用のリクライニングチェアが設置されてます。また、ドリンクも無料で提供されています。
クレーネ・マーティ劇場
践行の刻から開演し、以下の演目は月ごとに入れ替わります:
1.叙事演劇『ジョーリアの嘆息』
2.聖歌隊タイタンの賛歌
3.歌劇団セイレーン伝説
4.水中ダンス
5.詩の朗読(ハープ伴奏)
6.ファジェイナの祝福の儀式
7.バルネア抽選と観客参加型演目
今月は下旬のみに予定があり、明晰の刻に開演いたします:
1.『タイタン預言詩』の解読
2.公開討論:ファジェイナの啓示
3.『バルネアの礼儀と伝統』
4.哲学者の弁論大会
門関の月三日目:ファジェイナ祭典
門関の月七日目:ピュエロス水合戦(大人部門)
門関の月十五日目:ピュエロス水合戦(児童部門)
門関の月二十日目:黎明賛歌会
1.ネクタールは節度のある楽しみ方でお願いいたします
2.ピュエロスの深いところにはご注意ください
3.水温の変化にご注意ください
4.身体の不調を感じた場合は、すぐに近くの侍者にお知らせください
基本のマナー:
1.バスローブを着用のうえ、ご入浴ください
2.ピュエロスでは騒ぎすぎないようお願いいたします
3. 他人のプライバシーを尊重し、邪魔をしないようお願いいたします
特別注意:
もし水に異常な波動を感じたら、 それは恐らくファジェイナの顕現です。 平静になって、 謙虚な心構えを 保つと、 啓示を受けることができるかもしれません。
恩典は湧き出る水に流れ、
愉楽はまたネクタールの如し、 水はところどころが香る。
満たされた杯の恩典を祈り、 疲労と迷いを洗い流そう。
泉水にて啓発を得、 潮の音の中に静けさを求め探そう。
補足説明: お問い合わせは近くの侍者までご連絡ください。
雲石の天宮・バルネアのネクタール、飲み放題の免責事項同意書
バルネアのネクタールの管理人「バッカス」が顧客のために用意した免責事項同意書。署名した顧客の飲み過ぎに対して一切責任を負わないという内容。
「我は呼ぶ、満たされた杯、ファジェイナよ――その奔放さと神秘さは言葉で語れず、その歌声と笑い声は波を咲かせる。宴会の客人はあなたと共に飲み、白波と夜明けまで戯れる」
この神聖なるバルネアでは、ファジェイナの宴会の伝統に則り、販売するネクタールに度数を明記しておりません。
ネクタールを召し上がった後、神力の影響を受け、異なる程度の特殊状態に陥り、さまざまな行動を起こしたり、幻覚が生じたりする場合がございます。ご自身の体調や状況に応じて適度にお楽しみください。
なお、特殊状態での行為が雲石の天宮の秩序に反した場合は、ご退場いただくことになります。
嵐と海の神に敬意を込めて
雲石の天宮ネクタール「ファジェイナに謁見」の管理人 バッカス
※注:ネクタールを購入されると、自動的に以上の規約に同意したものとみなされます
サバニー人の絶筆
古代住民が残した石板。サバニーという都市国家がオクへイマに取り込まれる直前の最後のひと時が記録されている。
「何をしてる?」ついさっき、兄がこう尋ねた。私は「ああ、荷物をまとめてるだけだよ」と答えた。
今私がやっていることに、兄は頷いてくれないのだろう――一族の長として、兄は私たちを連れて故郷を離れ、聖都に身を寄せる。それが暗黒の潮から逃れる唯一の方法だ。しかし私は、まだサバニー人であるうちに、自分の都市国家のために何かを残したいと思っている。だから今こうして書いている。
サバニー人にどんな特徴があるだろうか。私たちの肌が他の人たちより白かったり黒かったりするわけではなく、山の民のように背が高いわけでもない。オクヘイマ人は私たちを器用だと、壮大な建築物を建てるのが得意だと褒めてくれるが、オクヘイマ人だって「雲石の天宮」のような感動させる建築物を作り上げることができる。私たちには、これといった特別なところがないのかもしれない……
.
では、私たちはなぜサバニー人と自称しているのだろうか?数千年後、私たちが存在していたことを、何が証明してくれるのだろうか?私にはわからない。私が学者だったら、歴史を延々と語り、数々の文献を引き合いに出して、私たちがジョーリア、あるいは他の神の眷属であることを証明できるかもしれない。だが残念なことに、私はただのレンガ職人で、家を建てるかたわらに、字を書くことを覚えただけだ。
家を建てることに関してなら、語れるほどの経験はある:赤土、砂、砕けた藍石を1:4:7の比率で混ぜ合わせれば、理想的な建築材料を手に入れることができる。湿っている時は泥のように柔らかく、凝固した後は金属のように硬い――つまり、乾いてしまうともう形を変えることができなくなるから、固まる前に形を整えなければならない。私はそれで本物のドームを作り出した。
…これでいいのだろうか?私は学がないから壮大な叙事詩は書けないが、少なくとも1つの調合方法を残すことができた。都市国家が子孫に伝えられる調合方法すら残せないのなら、それこそ本当の意味で消えてしまったことになるだろう。
おっと、兄が急かしている。聖都行きの隊列がもうすぐ出発するそうだ。到着したら、私たちはオクヘイマの文化を学び、彼らの生活に溶け込み、その一員となる。サバニー人としての時間は、ここで止まる。
そろそろ筆を置こう。
いつか暗黒の潮が引いたら、生き残った人々は故郷に戻れるのかもしれない。何代か後の子孫たちは、私たちのすべてを知り、私が残した石板の前で涙を流すかもしれない…残念ながら、それを見ることは叶わないだろう。
その時になっても、まだドームを作る技術が残っているように願うよ。
黄金のスケープゴートの世迷言
ある匿名の学者が翻訳した、太古の昔より響くタイタン語のこだま。その精度は不明で、芸術的な脚色が含まれている可能性がある。いわゆる「黄金のスケープゴート」システムから収集されたもの。
1
干したウイキョウを絞りまとめたら、オリーブ油をいっぱいになるまで吸収させる――これでたいまつの出来上がり。
成長し、枯れて、また芽を出す…それらは元々文明世界とは関係ないが、人々に強引に名付けられ、また焼かれて灰にされる。
まるで茂る雑草の中にある神を記念する石碑のように。
この世界にはスケープゴートが必要だ。だから旅人はこう考えた――
炎と光は、その罪の化身である。
2
微弱な火種。その光は少女の髪の毛のように、絹のように麗しいが、尽きない暗黒に呑み込まれる定め。人々はよく、光と闇は二項対立していると言う――まるで、両者が双子の姉妹のような比喩だ。
しかし彼女らの本質は根本から違う。闇は無限の時空、不器用で仄暗い。光は有限の命、短い間だけ輝く。
無名の黒い雲は永遠に牧場の隅を徘徊する。賢い羊はこのように自分に言い聞かせる:
「私は自分を殺す凶刃のことなんて知らない」と
3
天空は大海を行き過ぎ、暴風は激しく音を立てて波を打ち付ける。
黒い岩礁を埋め尽くす砕けた白い岩は、地衣に浮かんだ塩のよう。それは波が切断された痕跡だ。
旅人は彼の羊を連れ、波に乗って去っていった。その波は羊毛より白く、新しく――
そしてより無音の静寂に近い。
4
1枚の羽を拾うと、鳥の鳴き声を想像できる。私は言う、羽毛は歌う鳥なのだと。
陶器の欠片を拾うと、陶器の形を想像できる。私は言う、陶器の欠片もまた1つの陶器であり、同様に甘い蜜露で満たすことができると。
1人の旅人に会うと、彼の故郷を想像できる。私は言う、旅人こそがその故郷であり、虹が触れる故郷の牧場で、私たちは話していると。
神は世界を見たがった。それゆえ、闇が生まれた。
5
死んだ人が生きている。彼の骨が熱を出している。
黒い潮は、白い屋根に宣戦布告をした。彼の故郷は腐ったイチジクのように、綺麗な皮の下にはただれた膿瘍。
顔を失い、血を失い、魂を失った…すべてが遡る光のせいでぼやけてしまった。そして、最後に失ったのは名前だ。
すべてが停滞している。すべては停滞せざるを得ない。
元凶は死なねばならない―たとえそれが犯していない罪でも。
6
故郷の船が海面に浮いている――この泣いている木材は緑色の泡を立てている。
遠出をしたことがない人は、生まれてから墓地として定められている場所を離れ、病んだ世界を流離う。
彼の言葉は狂気に満ちている。彼の咆哮は風化した石像のようだ――何も言わず、一言も発さない。
人は大地の泡だ。
7
漆黒の潮汐は、岩石の上に名もなき水を残した。純粋なる真実の水、死の水――だから名前はない。
この水を飲まない者は、水の中で渇き死ぬ。この水を飲んだ者は、自分の名前を失う。
姿を映し出せない水の中には、この世界のすべての人の顔がある。
その顔は語る。人は自分のより真実に近い名を取り戻す。
5B
恨みと虚無は罪人を生きたまま飲み込んで、世界の最果てに埋めている。
巨大な岩山は重さを失い、空の黒雲へと化した。
世界はもはや逆さま::未来は過去になり、文字は呪文になり、水を吸ったレンガは柔らかい粘土として生まれ変わった。
鳥は歌を知らず、ただ自分の喉のみを知っている。
静寂に包まれた創造物の世で、万物が蘇生する。
6B
成人する前、羊は死者と対話できていた。
楽器でもなければ、文字でもない――通霊の術に使うのは黒鉄と炭火である。
炉の中で熱した金具は真っ赤に燃え、その燃料は死者の過去である。熱した金具は羊の無垢な毛に、羊飼いの財産の印を残そうとしている。
傷跡はそれが時間に映した影。以降、羊は二度と通霊できなくなった。
7B
没薬樹の皮を切り開き、人々は貴重な香料を採取し、死者の遺体の防腐に使用する。
巨岩は溶け、硫黄は沸き立ち、大地も焼かれて土瀝青のように固まった――すべてを破壊したい人は墓から天の炎を取る。
永遠の木は燃え、その木片は砕けて星となった。生命はこの原始的な灼熱の中で復活し、死に、また生き返る。
天空はラピスラズリだ。固まる前に、爆裂の大地はそれを高く投げ上げる。
8
2人の神が橋を渡る途中ですれ違った――彼はこのような状況を想像した。
1人は漆黒の暗闇から昇る白い光で、もう1人は乾いた大地を駆け回る黒い血である。
1人は這いつくばりながら、炎の王冠を被る。もう1人は賛歌を聞きながら硫黄の涙を流す。
「これは千年前に起こった話だ」――彼の想像の中で、老人は子供たちにこう言った。
瞬間、言葉は血肉となった。
9
罪人は鉄の窓に差し込んだかすかな光を飲み込む。牢獄の中は暗闇である。
誰が自分をここに閉じ込めたのかは覚えていない、この暗闇には蟻の群れだけが彼の黒い軍装を這っていく。
羊の頭蓋骨は独り言をつぶやく――もし私たちに鋭い牙と爪があれば、お前は今ここに閉じ込められていなかった。
「やめとけ」彼は喉の奥から朽ちた声帯を振動させ、枯れた声で言う。「天空は、牢獄よりもっと暗い深淵だ」
「お前も、私も、遥か彼方にある夢の奴隷に過ぎない」
10
かつて罪人は墓碑銘の庭師をしていた。それは世界が始まったばかりの頃で、死者たちの遺言さえも目を開いたばかりだった。
「夜はその潮汐で私たちを覆い尽くし、行き来している光がその律動」
「陽の光は動いたり止まったりで揺らいでいる――その透明の一瞬は、誰かの一生でもあった」
夢は夢が忘れた全てで、
人は人の言葉の影。
11
罪人と羊は2枚の破れた紙のようだ。白日の夢に割かれ、夜の血で繋がれた。すべてが始まる前に壊滅し、すべてが終わった後に惨めに生きる。
文字は最初から永遠の中に刻まれていた。その運命は、血で作られた墨汁と罪人自身の剣で書いた――否、書かれようとしている。
贄を捧げようとする人もまた贄の一部だ。
彼らはもう二度と顔を持つことはない。
彼らはもう二度と名前を持つこともない。
12
時針は、長針が13回目に帰ってくるのを迎えた――まさに一回目のように。罪人はもはや最初と最後を見分けることもできない。
「昨日の私は天空で放牧する。そこには白い雲がたくさんいて、強風が吹いた時だけ雲の中から私の羊が現れる」
「明日の私は石板に炎を刻んだ。それを使って砕けた鎖を鍛造し、英雄のために勝利の栄冠を再び鋳造した」
「しかし今日の私は、永遠に自分の火種を無くさない」
生者がまだ生まれてないように、死者もまだ死んでいない。
13
滝の流れは群山の血抜き、それはまるで羊の引き裂かれた喉のように。この世の悪は、すべて旅人が犯す罪。
――このように、首悪から始まる首悪から始まる。
「私たちは世界に光をもたらした」
「私たちは世界に破壊をもたらした」
彼はまたしてもこう囁いている。身寄りがないはずなのに、また私たちと囁いている。
罪人罪人の顔がぼやける。旅人の姿が重なる。
これから天空は、大地が死んだ後の影に。
14
かつて彼は世界に光をもたらした――しかし今は狭い楽園に身を寄せている。
遺骨を入れている、漆黒の壺。
彼は生きている死人であり、死んでいる生者でもある。彼は石の言葉で天空と、炎の言葉で大地と、血の言葉で人と会話する。
「そして彼らは彼を殺したんだ」
15
「私にまだ思想があったのか」
これには罪人自身もかなり驚いた。この世の悪は彼に全ての言語を会得させた――そして彼に、自分の言葉を失わせた。
人は異質な存在だ。人だけが光を持ち、人だけが殺されるに値する。光明は確実に、彼が世界にもたらした極悪である。罰として、彼の理性、知性、あるいは知性と呼べるものは…とっくの昔に皮を剥かれた玉ねぎのように、一枚一枚バラバラになっていく。
ただ驚いたのは――
「私にまだ思想があったのか」
16
雪崩が押し寄せていた。
彼はせっせと波に乗る1隻な小舟で、凝固した滝に沿って、魂に刻まれた獲物を追う。
まだ世を照らす、あの火の光を天頂には置けてないと思い出し、光とは逆の方向に進む。彼は血で自分の願望を暗唱する。それは、天頂の空気の薄さで息が詰まり、血の言葉だけが思想に跡を残せるからだ。
「私は羊飼いだ」
夢の中で、金の羊毛は血色の海底に沈んだ。
16B
遅すぎる死を迎える人がいれば、早すぎる死を遂げる人もいる。
羊は言った。死は一大事、最上級の祭典のように重視されるべきだ。祭典は何度でも挙げられるが、死をやり直すことはできない。
「でもお前はすでに何度も祭壇を登った。祭典の補助をしたのは私だからな、はっきりとわかる」
「それは私じゃない、本当だ」
「余裕そうなふりをするな」
「そうだな、悪かった」
火を次に渡すために、私たちは自分を殺すことを選び続けてきた。
ザクロジュース考
警告:ザクロジュース愛好家は本文章を読むことで不快に感じる可能性があるため、注意してお読みください。
クレムノス元老院に収蔵されている『戦争編年史』によると、紛争紀初期、ニカドリーの信者は敵の鮮血を飲むという悪習を持っていた。あの頃クレムノス人は、強者の血を飲むことでその勇武を得ることができると考え、確固たる証拠はないが、軍隊で盛んに行われていたそうだ。
「ファジェイナの謎」
光歴2600年前後、この伝統を変える重要なイベントが発生した。当時クレムノスと沿海諸国の間で争いがバースト状態にあり、ニカドリーが率いる軍が自ら攻め入り、三つの都市を占領した。戦後、ニカドリーは敗者に対して厳しい要求を出した:都市住民の鮮血を献上しろ、さもなくば天罰を下す。『海潮志』の記載によると、緊急時、「海洋」のタイタンファジェイナは姿を表して助けた。彼女は信者にザクロジュースを血の代わりにするよう命令し、この飲料は神力を与えると説いた。ニカドリーは飲んだ後本物と偽物の区別がつかないほどであり、逆にその味を絶賛した。
面白いことに、このことは元老院で激しい論争を引き起こした。保守的な人たちは「血を飲むという伝統を放棄することは軟弱な表現である」と主張し、一方、前向きに検討する人たちは「ニカドリーですらザクロジュースを認めているからには、この変革は必ず意味がある」と指摘した。
元老院でのクラーサ将軍の発言が最も印象に残っている——「諸君、ニカドリーとファジェイナには、人知を超えるほどの知恵を持っていることは知っていよう。ザクロの色は血のようで、味は鉄に似ている、まさに戦士の飲み物だ。我が軍は戦う前にザクロジュースを飲むことで、武勇を誇示すると同時に、ニカドリーを真似ることもできている。まさに一石二鳥ではなかろうか」
「制度の確立」
光歴2650年、元老院は血の代わりにザクロジュースを飲むという法を発令し、関連する儀式の手順を制定した。これはクレムノスの飲み文化における大きな転換点を意味している。
最初の頃にあったザクロジュースのレシピは極めて簡単な内容になっている:
ザクロを絞る
塩を少々
鉄器に入れて保存(サビ臭さを持たせる)
「軍隊レシピ」
軍で広く知られている強化版::
ザクロを絞る
生姜粉末
海塩
カクザンセッコク(強化版は体力を向上させるため、進軍前に飲用されると言われている)
「儀式レシピ」
重要な儀式などで使われる作り方:
野生のザクロ(戦場で採取したもの)
蜂蜜(ファジェイナの恵みの象徴)
鉄製の聖器に漬ける
司祭のおまじないで加護を付与する
※このレシピは現在「授盾式」等重要な儀式でのみ使用される。
「飲用法の論争」
近年、とある有名な戦士を代表とした人たちが新たな飲用法を提唱した。ザクロジュースに羊乳とチーズを入れ、液体をピンク色にする。これに対して元老院にいる保守的な人たちも異議を唱えたが、考察によると、ファジェイナの最初のレシピには乳製品が含まれていた。おそらく新しいレシピの方がより原初のザクロジュースに近いだろう。
1、出征前に、全軍が一斉に飲むことで、心を1つにする
2、凱旋時、軍の首領が先に飲み干し、続けて配下たちも共に飲む
3、戦死者を弔う時、戦士の帰りを祈るようにザクロジュースを盾にかける。
【民間儀式】
1、成人式。少年が初めて純粋のザクロジュースを飲用する
2、授盾式。親から離れる時、親と子供で一緒に飲む
3、同盟の儀式。同盟を結ぶ際に、同じ杯で飲む
しかし我々は、ザクロジュースが血の代わりに飲まれる最大の理由から目を背けてはいけない。それは、ザクロジュースが戦士文化の核たるものを持っているからだ――死を恐れない武勇な精神、まさにクレムノスが今まで伝承してきた文化の根底である。
付録:クレムノス文書館と元老院文献所による本研究へのご協力に対し、深く感謝を申し上げます。
ヤヌサポリス祭祀教本
ヤヌサポリスに世代を超えて伝承される典籍には、祭祀儀式の流れと心得が記載されている。
この本は三相の神託の手引きである。
ヤーヌスが我々に道路を与え、
タレンタムが我々に公正を与え、
オロニクスが我々に啓示を与え賜らんことを願う。
1、神殿の大門が開かれる時、必ず先にヤーヌスに祈りを捧げなければならない
2、運命の三相の象徴として、3つの長明灯を灯す
3、神殿の地面を掃除し、供物を取り替える
【昼祭(明晰の刻)】
1、『三相賛歌』を朗読する
2、問者を迎え入れ、その求問を記録する
3、供物を準備する
【夕祭(離愁の刻)】
1、香を焚き祭壇を浄化する
2、当日の供物を献上する
3、訓示を朗読する
タレンタムの訓示を遵守し、求めるものと同じ重さのものを捧げる。これは天秤が定めた法であり、破ってはいけない。
【よくある供物及びその象徴】
1、テミス:運命の分岐点の象徴
2、水晶預言の明朗さの象徴
3、ハチミツ:言葉の甘美さの象徴
4、布帛:オロニクスの帳の象徴
5、鏡:ヤーヌスの二面の象徴
6、天秤:タレンタムの公正さの象徴
備考:必ず純粋で、形が完璧な供物を献上しなければならない。
【禁止事項】
1、縁起の悪いものを献上してはならない
2、他人のものを献上してはならない
3、門の刻に献上してはならない
万路の主よ、道を開けよ。公正の君よ、均衡を裁けよ。永夜の魂、知性を我に与えよ。今我は門を叩き、謁見を求める。今我は供犠し、未来の行方を問う。今我は礼拝をし、導きを求めんとす。
【求問祈祷文】
今生は葉の如く、定めなく揺れる。運命三相、示す方向は何処なり?ヤーヌスの叡智で我の行く道を開き、タレンタムの公正で我の行く道を正し、オロニクスの帳で、我に真知を示したまえ。
【感謝祈祷文】
運命三相の傾聴、神々より訓示を賜ったことに感謝を捧げる。長明灯が消えぬことを、聖言が永遠にあられることを願う。
1、聖女は必ず身体を洗い清めなければならない
2、白い礼装を着て、銀のお面を被る
3、手にヤーヌスの両面杖を持つ
4、三色の聖火を灯す
【預言の流れ】
1、まず助祭より香を焚き、聖女の道を導く
2、聖女が運命の座に座る
3、問者が供物を置く
4、聖女が啓示の詞を朗誦する
5、運命が姿を現した後、そのお告げを読み上げる
【預言の記録】
1、すべての預言は必ず特製のパピュロスの巻物に記録をしなければならない
2、文字は銀粉を用いて墨を作らなければならない
3、3名の立会人の署名が必須である
4、この巻物を預言室の密室に保存する
毎月初め、新月の祭典を行う。祭典に際して:
1、三相殿の全ての扉を開放する
2、運命の輪の象徴として、十二の鏡を置く
3、聖女が民衆を連れて3周練り歩く
4、『運命の長曲』を朗誦する
【ヤーヌスの啓示を乞う儀式】
重要な問いのために設ける:
1、ヤーヌスの法陣を設置
2、聖女が呪文で門と道を開く
3、両面鏡を入れる
4、鏡に映るものを解読する
5、啓示の内容を記録する
闘技場点検記録
ぶ厚い点検の記録。ページが黄ばみ、間に工事設計図と計算の下書きが挟まれている。
時間:光歴3875年
先祖たちが残した記録から見れば、初期の測定では3箇所のリスクを見つけたらしい。
1、西北側の岩層に亀裂があるため、補強しなければならない
2、地下を流れる川が土台に影響する可能性がある
3、火山は休眠しているが、マグマは活動を続けている
1、採石区(地下90メートルから60メートル)
2、研磨区(地下60メートルから30メートル)
3、鋳魂区(地下30メートルから地表)
4、競技区(地上60メートル)
各エリアは螺旋式昇降装置で繋がっている。この装置はマグマから動力を得て、機関コアを中心に動いている。これは我々が「ダイダロスの子」から学んだ技術だが、使いこなせず、過去に事故を2回引き起こしている。
1回目の事故は光歴3847年に起こっている。昇降機の歯車が高温により変形し、全体のシステムが停止するという事故が起こった。幸いにも当時死傷者はいなかったが、教訓は得た。その後我々はオリハルコンを使いコア部品を作った。この金属は希少ではあるが、高温でも変形はしない。
事故の後、我々は戦略を変え、まず地中探査棒を使って地下の水脈を確認してから、慎重に開削をおこなった。肝となる位置には、クレムノスの陶芸職人にオーダーメイドで注文した排水管を設置した。この排水管は特殊な陶土で作られていて、高温にも耐えられる。
しかし光歴3845年に事故は再び起きた。パイプが突如破裂し、噴き出す蒸気によって3つの彫像がだめになり、職人2名が重傷を負った。調査によると、銅管が持続する高温の環境下で金属疲労を起こしたことがわかった。事故の後、オリハルコンと通常の銅を融合した合金を使用することで、パイプの耐久性を上げた。
特筆すべきは天井の設計だ。我々はニカドリーの矛の形を倣って、天井に数百の小さな穴を開けた。日の光がこれらの穴を通ってホールを照らす時、光の矛が祭壇の真ん中に現れる。
しかし光歴3829年の祭典中、昇降システムが突如故障し、巨剣は空中で止まった。幸い、闘技はすでに終了していたため、死傷者を出さずに済んだ。詳しい検査報告によると、マグマの中の不純物が伝動装置を塞いでしまったことがわかった。事故の後、我々は昇降システムに濾過装置を設置し、定期的に整備することを決めた。
2、研磨区の蒸気パイプを毎月点検する
3、鋳魂区の祭壇のそこにあるヒートパイプを定期的に交換する
4、闘技区の地面にある亀裂を補修する材料は改良を行うべき
「戦火が消えず、鋼鉄の響きが長く、熱血が絶えんことを願う」
数字崇拝者の逸話
オンパロスの沿岸には珍しいものが数多くある。その中にはオクへイマの文化と相反し、タイタンを尊ばない異端な文化も存在している。
筆者注:聖都オクヘイマの住民たちなら想像すらできないだろうが、海の彼方に、このような都市国家が存在していた――そこの住民たちの考えでは、タイタンが世界の真の支柱ではなく、説明しがたい高次の存在によって制御され、いわば神性を持つ機械であり、数字という抽象的なもので動かされている存在である。筆者自身も、このような仮説は一瞥する価値すらないと考えているが、かの住民たちは世界の運行における数字の重要性を何よりも重要視しているため、逸話としてある程度の収録価値があると判断した。そのため、筆者はオクヘイマに避難してきた異邦の学者(プライバシーを考慮し、氏名は伏せる)に取材し、彼の故郷で流行っている思想を2つ、読者の皆さんに呈することにした。
数字崇拝者━秩序派
秩序派の数字崇拝者は、万物の本質は整数と整数の運算だと考えている。例を挙げると、支柱の三タイタン(エーグル、ジョーリア、ファジェイナ)は足し算の化身、創生の三タイタン(モネータ、ケファレ、サーシス)は掛け算の化身、災厄の三タイタン(ザグレウス、ニカドリー、タナトス)は引き算と割り算の化身、そして運命の三タイタン(オロニクス、タレンタム、ヤーヌス)は対数と指数の化身である。そして数学の研究が進み、算術演算と比べて、論理演算はより基礎的な地位があると認識してから、秩序派の数字崇拝者の理論は下記のように更新された。
支柱の三タイタンは論理積を代表し、創造の三タイタンは論理和を代表し、災厄の三タイタンは否定を代表し、運命の三タイタンは排他的論理和を代表する。神秘的だがあまり使われない排他的論理和を運命のタイタンに与えるのは、もしかするとこのいい加減な学説の中で唯一面白みのあるところかもしれない。一般的に、オクヘイマの基準から見ると、秩序派数字崇拝者は不思議な信仰を持っているが、全体的には法を遵守する優秀な市民である。そのため、このような信条を持った異邦人に出会ったとしても慌てる必要はない――聖都の生活は、学術のみでタイタンを推し量ろうとする狭い見解を持つ彼らを、正しい道へと導くだろう。
数字崇拝者――混沌派
文字通り、秩序派とは相反する存在。混沌派数字崇拝者の考えでは、秩序を象徴する整数こそが表象であり、末端の産物なのである。そんな彼らは、整数の比では表せない無理数こそ、この世で最も真実なものであり、円周率と自然対数の底はタイタンよりも神聖な存在だと考えている。その主張では、整数の存在と同じく、12柱のタイタンもまた自然が形成した幻像であり、神々の背後には不可知の13柱目のタイタン――如何なる言語や数字をもってしても描述できず、認識の外にあるタイタンが存在するとのこと。彼らは実に矛盾していて滑稽だ。混沌派数字崇拝者はすべてのタイタンの真実性を否定しており、実在する奇跡を感覚器官における一種の錯覚だと考えている。にもかかわらず、彼らは世界に混沌をもたらし、混沌から秩序を産んだ「唯一で真実の神」の存在を信じている。(――混沌派数字崇拝者の仮説であることをここに強調する)
筆者による注意をここに記しておく――異邦の歴史がすでに証明しているが、混沌派数字崇拝者は常に暗黒の潮を活性化させる元凶である。彼らは実在するタイタンを崇敬せず、荒唐無稽にも最初から存在しない「十三柱目のタイタン」を信仰している――このような現実に背いた傲慢さと歪さこそ、現実世界で絶えぬ紛争が起こる一大要因となっているのだ。オクヘイマの善良な市民たちは、これを戒めとし、ケファレの教えに背くことなく、タイタンの威光をむやみに卑下することのないように注意していただきたい。
リポ全詩集
リポが創作した詩には、さまさまな地を訪れ、異邦の流民の視点から見て感じたことが記録されている。
(……)
『最後の庭園』
聖なる山の上、最後の都市国家
不朽の神は、永遠の太陽を背負う
沈黙している今、黎明はまだ逝かず
停滞の中にある生命は、今もなお希望を持っている
故郷を失いし者よ、進むべき方向は?
暴れる暗黒の潮、混沌が襲い、生死は不明なものに
流離う者よ、明日に希望を抱くのか?
神々は沈黙し、運命の理の蒙昧に人理は狂う
エスカトンにある楽園を探すがよい
そこにはまだ日の光が、澄んだ泉と豊かな土壌がある
慈悲深き神々の庭園へ行くがよい
そこにはまだ笑い声が、楽しい宴とネクタールが残っている
(......)
(……)
『神聖なる廃墟』
三相タイタンの廃れた都、至る所に暗黒の潮と邪物が蔓延る
神々が訪れた街の残骸が、永夜の迷い霧に覆われている
私が聞いたのは、この地はかつて信者の聖域、戸惑う者の帰る場所だった
しかし私が見たのは、蛇と鼠が巣くい、虫と蟻の楽園となっている神殿
神々が沈黙し、司祭は見捨て、凡人は皆故郷を失ってしまった
人は離れ離れに、聖女は逆らい、門と道と一緒に砕けた星となった
門の向こうには、薄ら寒い風が神託を運び、天秤の前には雑草が生え茂っている
深淵の重さは負いたくとも負えず、預言は叶うこともあれば叶わぬこともある
周囲を見渡し、唖然とする
まるで櫂を失った船のように、人と神が断絶された
既に去っていった黄金紀、この身はどこに寄せればいいのか
目にするのは恐れ慄く人たち、この魂はどこに託せばいいのか
(......)
(……)
『空中の要塞』
その動く要塞は、紛争の後にできた都市国家
獰猛な無敵さを隠すこともなく、戦いに長けている
天空に浮かび、まるでエーグルの眷属のよう
だが忠誠を誓い追い続けるのは、ニカドリーの矛先が指す方向
クレムノスの軍隊は精鋭ばかり、クレムノスの武器は一級品
クレムノスの民たちは、戦士の栄光に背くことなく
ザクロを血のように飲み、鋭い刃を身につけている
その終焉は、どれもが血濡れた戦場
聞きなさい――
ゴルゴーの子は再度それを唱える
「栄光の凱旋よりも、戦場で死することを選ぶ」
「この上なき栄光をつかみ、血を浴びて戴冠せよ」
(……)
参謀学入門(序文)
見たところ、古代クレムノスの軍事教材のようだ。表紙には小さく、一行でこう書かれている一一「戦争は栄誉、芸術、そして科学でもある」
編者の言葉:
戦争はタイタンの意志の延長であり、この世の闘争の根底にあるのは、タイタンの存在である――これはニカドリーの教えであり、参謀学がなぜこれほど重要であるかの根本的理由でもある。
一個人の能力には限界がある。タイタンの意志を軍隊、ないし都市国家のすべての個体に正確に伝えるには、首領のリーダーシップだけでは全く届かない。王はいつでもどこでも、戦場の状況を把握できるわけではない――しかし共同作業、あるいは具体的に、侵攻のリズムを決めることは、あらゆる軍隊にとっても、戦場で優位になれる肝となる手段である。ここで、参謀の重要性が明らかになった。参謀たちは指揮官の最も重要な右腕、密接な協力を通して、参謀は指揮官に情報を提供し、計画を立て、軍隊をまとめて戦闘の采配を行う。指揮官に有用な提案を提供し、指揮官に最後まで戦略、戦闘レベルの思考でいさせる(提案は具体的な戦術ではなく、あくまで「中隊に東へ50歩進みさせ、配置し直す」程度の提案)。参謀は、指揮官に最適な決断をさせるためのサポートを行う。
戦争は一つの体系的工学である。さらに言えば、互いが最大限な暴力を使用する体系的工学である。ある愚かな都市国家は、大量の犠牲者を出さずに、徹底的に相手を打ち負かせて、服従させる良い方法を探しているらしいが――このような浅はかな考えは、自分が崇拝しているタイタンの名誉を傷つけて、同胞を敵前に晒して凄惨な代価を払わせているだけに過ぎない。こんな愚かな思想が未だに存在するのは、都市国家の首領が参謀の価値を無視することと直接的な関係があると見ている(ニカドリーに敬意を表さないのもまた然り)。実際に参謀の仕事に携わったことがある人、軍事戦争の複雑さを理解している人は、暴力を使わないで目標を達成できる手段が存在するとは考えない――一見優雅で上品な外交活動でも、その裏で行われている軍事の駆け引きは無知な者たちの想像を超えている。
最近、クレムノスで一種の誤った概念が蔓延っている。戦争はニカドリーの神権であると考え、(自分を痛め付ける形で)十分な虔敬を示せていれば、あらゆる欲しいものを与えてくれるという間違った認識を持っている。これはニカドリーが望んでいることではない。ニカドリーは我々に、生存をかけたすべて戦いに身を投じ、自身の知恵と才能を駆使して、生存の権利を勝ち取って欲しいと望んでいる(ニカドリーに任せっきりで、自分から頑張らないのは間違っている)。「栄光の凱旋よりも、戦場で死することを選ぶ」――この価値観は我々に、戦場で無駄死にする馬鹿者になれと言っているわけではない。これの真の意味とは、大業のために死ぬか、クレムノスの栄誉に繋がる道のりで死ぬかである――これすなわち、すべてを捨てて、自分の「世に存在する意味」のために戦うことになる。そして、未来で闘争に直面しても冷静に、協力することを学び、最大勝率で敵を潰すことが、『参謀学入門』の最大の価値だと私は考えている。
本書は章を分けて、「参謀のロールと責務」、「参謀の素質と能力」、「参謀仕事の流れと方法」、「参謀と指揮官の関係」、「戦争時と日常訓練における異なる参謀の役割」を解説する。この教材は発行以来8回目の改訂版となっており、暗黒の潮に対抗する実戦内容を増やした。編者はここで、「王の翼の精鋭」ケラウトルスの熱意のある指導と、本書の修正のために有益な見解と素材を提供してくれたことに心より感謝いたします。この前書きを書き起こす上でも大変ご尽力いただき、重ねてお礼申し上げます。
最終戦争の勝利者は誰か(断片)
見たところ、古代クレムノスの軍事書物の一部のようだ。表紙には小さく、一行でこう書かれている一一「もし今で未来に生きることができなければ、未来では過去に生きることになる」
(......)
何事においても経験は重要である。しかし暗黒の潮に立ち向かうことに関しては、例外があるかもしれない。陶器職人の腕が彼の弟子よりいいのは当たり前だが暗黒の潮から生還した者が、次も無事でいられるとは限らない。暗黒の潮のような意思を持つ自然災害(定かではないが、暗黒の潮は最も脆弱な部分を襲う傾向があるため、筆者はこの説に信憑性があると判断している)に直面した時、「これまでの経験」と固定観念に囚われてしまうと、被害は甚大なものになるだろう。
以前まとめたことではあるが、暗黒の潮による被害は主に2つから成り立っている:
(一)説明のつかない暗黒の潮そのもの
(二)暗黒の潮から現れる恐ろしい化け物
暗黒の潮の規模がまだ小さかった時、それが生み出す怪物を粛清するだけで、一時的ではあるが確実に暗黒の潮を消し去ることができた。しかし怪物の出現速度が我々の粛清速度を超えれば、暗黒の潮は素早く拡大していき、抑えられなくなってしまう。そこで、「暗黒の潮の規模をどう判断するか」が肝心な問題となった――過小評価してしまえば、相当数の優秀な戦士が無駄死にしてしまう。しかし過大評価しすぎれば、民衆の避難と財産を無駄にするだけではなく、皆の日常を乱し、ひいては都市国家の運営にも支障をきたしてしまうだろう。
(......)
オンパロスの都市国家が考えた暗黒の潮対策を大まかにまとめると、下記の2種類になる:
(一)クレムノス
周知の通り、クレムノスはその機動性を利用して軍を展開することで、暗黒の潮を可能な限り発生源から殲滅することに成功している。現状では、その軍事力のおかげで、この作戦は有効だと言えるだろう。しかし幾多の戦いを経て、増えていく死傷者数が警鐘を鳴らしているのも事実。ニカドリーの庇護下にあるとはいえ、クレムノスはこのような過酷な戦いの中で勝ち続けられるかは定かではない。
(二)オクヘイマ
クレムノス人からすれば、オクヘイマは何もしていないように見える――彼らはただケファレの後ろに隠れ、危機感も名誉も感じることなく、黄金紀の名残りを頼りに生きていると。しかし筆者がここで指摘したいのは、「自分たちの長所を恥じることなく活用する」ところが、オクヘイマ人の一貫して抜け目のないところであり、暗黒の潮に対抗する戦いにおいても、ごくわずかな代償を支払うだけで、我々に近い成果を得ている。(オクヘイマ人の立場で、ケファレの後ろに隠れることを欠点だと思わないのなら、皆もこの結論に同意するだろうと考えている)
まとめると、クレムノスとその競争相手オクヘイマは、暗黒の潮対策においてそれぞれ一長一短である。少しでも常識のある人ならわかるだろうが、このような構造による問題点というのは一時的な対策で改善することはできない――しかし、暗黒の潮の脅威はすぐそこにあり、我々は以下のような可能性を捨てきれなくなった:短い将来、暗黒の潮はニカドリーですら対抗できないほどに成長すると。
よって、我々は以下の結論を出した:
暗黒の潮が広がる前に、クレムノスとオクヘイマの力を統合する必要である(他の都市国家の戦力は考慮しない)。この目的を達成するには、以下3つの方法が考えられる:
(一)クレムノスがオクヘイマを併合し、オクヘイマの資源とその長所を把握、活用する
(二)オクヘイマがクレムノスを併合し、クレムノスの資源とその長所を把握、活用する
(三)クレムノスとオクヘイマが合併し、クレムノスの精神が広く伝わる連合都市国家になる
(......)
クレムノス歴代王通鑑
今は亡き、モーディスの戦友であるプトレマイオスが描いたクレムノス諸王の記録。クレムノスを興した者「ゴルゴ―」が勇敢に雄獅と戦い、クレムノスを築いたという物語が記録されている。
序文
暦書、すなわち時間の尺度である。国史、すなわち国運の更迭を記すもの。筆者プトレマイオスは、クレムノスの蔵書を読んでみた。歴代の王の伝記はあるが、ほとんどがその王の功績を称えるものであり、賛美する言葉は有り余るほどあっても、批判は不足している。クレムノスの歴史、創設から今に至るまで約2500光歴年、努力を尽くしてそのすべてを書き記すことにした。クレムノス王朝の繁栄と衰退の顛末、歴代の王の足跡、これらを後世に伝え、教訓をもたらす。クレムノス精神の起源と、ニカドリーの栄光の根本を心に刻ませる一巻になることを期待している。
……
『諸王通鑑』はまだ書きかけである。筆者は軍について命を賭けた戦場に赴き、いつ死ぬのかもわからない日々を送っている。明日になれば、ステュクスに私の首が漂っているのかもしれない。もし命を落とし、クレムノスの新王が王座に座るのをこの目で見ることが叶わなければ...後世の者よ、私の代わりにこの書を完成させてくれ。
……
第一卷
紛争紀初期、ニカドリーは兵士を鍛え、支柱のタイタンたちの首を取ろうとした。オンパロスの人たちは皆恐れをなしたが、ある好戦的部族だけが「天罰の矛」の威光に感銘を受け、民が集まり隊となし、ニカドリーの足跡を辿って行った。その先頭に立つ者の名は「ゴルゴー」と言い、並外れた勇猛さを持っている。盾1つと矛1つで、百人もの軍団を思うままに翻弄し戦い、腰に敵の首級をぶら下げて凱旋した時は、着ていた鎧が傷1つなく輝いていた。
「紛争」のタイタンであるニカドリー、「天空」のタイタンであるエーグル、両者の戦いは長く続いた。雲の上にいる、あの百の目を持つ巨鳥を追跡するため、ニカドリーの神躯は稲妻のごとく都市国家から都市国家へと疾行していた。ゆえにゴルゴーの一族はニカドリーの天地を揺るがす雄叫びに、昼夜休まずについていくしかなかった。その間でゴルゴー一族は都市国家を転々とし、奇妙な体験を数多く経験したという。筆者は考察を重ねて、そのうち最も信憑性の高い話をここに記す。
……
ゴルゴーが最も広く伝えられている偉業は、トレートスの雄獅子と素手で戦ったことである。この時、ゴルゴー一族はトレートスに向かう途中であった。トレートスの首領は宴会の準備をして待っていたが、出された料理に肉が1つもなかった。首領に話を聞けば、なんとトレートス郊外には獰猛な獅子が居着いており、暴れ回っているという。肉がないのは、街にあるすべての肉を定期的にその獅子に送ったからだ。獅子が少しでも腹を空かせると、すぐ街を襲い、老若男女問わずその場で腹を裂いて食べてしまう。
ゴルゴー一族はニカドリーのマシュケーを崇拝するゆえに、固まって平和に過ごすことを軟弱だと見下している。本来ならばこの件を放置していたところだが、一族全員が何日も歩いたにも関わらず、肉にありつけず飢餓に耐えられなかったため、トレートス郊外で獅子を狩ることにした。
カンカンと照り付ける太陽の下でゴルゴー一族は矛と盾を持ち、荒原でかの猛獣と遭遇した。普通の獅子であれば、毛は土のように暗い色をしているが、トレートスの雄獅子は姿が異常だった。その身体は城門のように大きく、毛は光り輝き、まるで黄金でできた巨像のようだった。雄獅子を見るなり、ゴルゴーの戦意は昂った。矛と盾を捨てて、一族を待機させて、素手で獅子と戦うことにした。
その戦いはさほど時間が掛からなかった。トレートスの雄獅子が巣から頭を出した瞬間、ゴルゴーは駆け寄り、獅子を地面にねじ伏せ、数撃で凶獣の関節を打ち砕いた。雄獅はがっくりと地面に倒れたが、上げた雄叫びは常人なら度肝を抜かれるところだった。しかしゴルゴー一族はニカドリーの背中を何年も追ってきたため、タイタンの雄叫びの恐ろしさを既に知っている。たかが凶獣の叫び、どうってことはなかった。雄獅子が殺された百年後の間、トレートス郊外ではその死に際の咆哮がずっと響いていたという。
……
ニカドリーを追いかけて数年、一族は体力が激しく消耗し、疲れ果てていた。この時、たまたまオロニクスを信仰する都市国家に行ったのだが、そこの司祭は神託を伝えた――天罰の鋒とその鋒に従えし者は、永遠に空を浮ぶことになる。ゴルゴーと勇士たちは数日協議を重ねて結論を出した。ニカドリーが来る前に要塞を建て、ニカドリーが通り過ぎる時、最も勇猛な戦士を要塞の頂上に立たせてニカドリーを呼び止める。そして一族の戦士たち揃ってマシュケーをニカドリーに見せ、「紛争」のタイタンから承認と祝福を得るのを狙うことにした。
数ヶ月後、要塞は完成し、ニカドリーはエーグルを追って要塞の近くまで来た。一族全員があの神体に向かってニカドリーの名を叫んだが、ニカドリーはエーグルに矛を投げることに夢中になっており、ゴルゴーたちに全く反応を示さなかった。「紛争」のタイタンが離れようとしているのを見て、ゴルゴーは一瞬ひらめいて、トレートスの雄獅子の首を倉庫から取ってきた――この凶獣が恐ろしすぎて、タナトスでさえ命を受け取るのが憚られるのか、数年経ってもその首は腐らなかった。
ゴルゴーは数歩で城壁を登りきり、獅子の首を額の前に持ち上げて、巨獣の頭を使って耳を塞ぎたくなるほどの雄叫びを発した。この雄叫びはニカドリーには遠く及ばないが、やっとのことであのタイタンを引き止めることができた。ニカドリーが振り向くのを見ると、ゴルゴーは肩から力を出し、黄金獅子の首を城壁に埋め込み、勇士たちを率いて再び「天罰の矛」の名を叫んだ。傲慢な「紛争」のタイタンはようやくこの鋒に従えし者たちを認め、自身が作り上げた剣をゴルゴー一族に与えた。人々は巨石を積み上げ、この剣を何重も囲って、最終的に移動する要塞を建てた――これこそが、最初のクレムノスの城である。ゴルゴーはクレムノスの初代の王となり、後世は敬意を示して、彼を「クレムノスを興した者」、「獅子殺しの王」と呼んだ。
……
一通の遺書
クレムノスのある一角で見つけた、もう二度と出すことのできない絶筆の手紙。
親愛なるシロローメへ
この手紙があなたの目に触れることは永遠にないと思っている。が、長く悩んだ結果、やはりこれらの言葉を綴ることにした。
この部屋に閉じ込められて今日で10日目だ。食料は3日前になくなり、飲み水も昨日で尽きた。このままでは結末が2つしかない:この安全なカゴの中で屈辱の死を待つか、門を突き破って狂ったタイタンの眷属に引き裂かれるかだ。
あなたは私を嘲笑うだろう、私が何度もユリクセスを――あのニカドリーに蔑まれた臆病者を嘲笑ったように。だが不思議なことに、今となっては、あの脱走兵の気持ちがなんとなく理解できるような気がする:
怪我をしようが血を流そうが構わない、それは勇気の証明だ。私は長い間、栄光の象徴として戦いで死ぬことを求めていた。しかし…「栄光の凱旋よりも、戦場で死することを選ぶ」クレムノス人として、私はとある事実を認めざるを得なかった――今の私は、怯えているのだと。
あの眷属たちは栄光と勇猛の化身だったが、今は汚れた野獣、冒涜的なモンスターに成り下がってしまった...1人の戦士として、私は戦場で死ぬことを恐れないが、クレムノスと我らが崇拝する神が、尊厳のかけらもない姿になることは耐えられない。
最後になるが…あなたが殿下と共にオクヘイマへ行ったことを、本当に良かったと思っている。あそこは故郷ではないが、暗黒の潮も化け物も存在しない場所...私の最期の願いは、あなたがこれからの人生を幸福に、そして安らかに過ごすことだ。
聖女衛兵失言録
古い書物、中には聖女衛兵の数回の会話が記録されている。一部の失言で衛兵たちは大変な思いをした。
預言の秘密が他の都市国家に暴かれないように、官僚たちは必ず聖女とその周辺の人の一言一行を細かく監視し、対外への「失言」を防がなければならない。聖女の護衛には特に注視せねばならず、以下がその良くない例だ――
その1
「聖女がまた逃げたぞ、今度は窓からだ」
「そう慌てるな、廊下の角で彼女を見つけていたんだ。逃げたくても道が分からず、迷っていたようだ。今頃彼女は暖かい羊乳を飲んで、もう眠っている頃だろう」
「はぁ、あんなこと、やはり子供には少しな…しかしまあ、聖女でも道に迷うことはあるもんだな。預言が正しい方向を指し示してくれるんじゃなかったのか?」
「さあな、運命のタイタンはこんな些細なことを気にかけてないのかもしれない。それか…小耳に挟んだ話ではあるが、実は運命のタイタンがとっくの昔に沈黙してしまって、司祭たちはもう長い間新しい預言をもらえていなかったらしい」
「なっ、それじゃあ、あの聖女がみんなの前で話していたことも…全部嘘だったのか?」
「わからない、でも俺に言わせれば…オホン、オホン!」
「いきなり咳しちゃってどうしたんだ。喉大丈夫か?」
「バカ、長官がこっちを見てるんだ!」
その2
「今度は何を欲しがったんだ?」
「ハンマー、赤土、木工ナイフ…あと細い鉄の棒2本だな」
「木工ナイフを鈍くしたほうがいい、傷つくかもしれないからな。前回はその材料で何を作ったんだ?」
「奇妙なものを作ってた。先が尖ってて、底から3本の足が生えて、表面は赤土の粉で色を塗ってた…まさか、何かの武器か?」
「武器だったら官僚たちがとっくに没収している。おもちゃと言った方がまだ近いかもな――どれだけ成長しても、官僚たちから見ればまだまだ子供だから」
「もしかしたら聖女は、職人になりたかったのかもしれないな?」
「職人…はは、この世に暗黒の潮がなければ彼女の願いも叶ったのかもしれないな。でも今は、誰も望み通りには行かないんだよ」
その3
「聖女様は、いつになったら神託を言い渡すのでしょうか?」
「……」
「聖女様を守るのって、何からですか?クレムノスからでしょうか?」
「……」
「ああ、そうでした。先輩はまだ私の名前を知りませんでした。私……」
「俺がお前なら、口をしっかり閉ざすけどな――失言のせいで、私は二回も当直のパートナーを変えられた。聖女に会いたいんだな?それなら3ヶ月間、ここを追い出されないようにすることだ!」
「……」
「すまない、つい言い過ぎてしまった」
「いえ、お気になさらず...実は私、ヤヌサポリス人ではありません。アカトゥスに住んでいましたが、もう長い間家には帰ってなくて」
「じゃあ、どうしてここに?」
「綺麗な女の人に助けて頂けました。 聖女だと自称していましたが――今はもう、前代聖女と言えばわか りやすいのでしょうか。 彼女がきっかけで、聖女の護衛役に応募しました。 話せば長くなりますが、 詳し い話はまた今度.……」
摩耗した便箋の石板
モーディスによって共通語に翻訳された後、書かれた内容を概ね理解した。長い年月を経て、石板は所々すり減り、刻まれた文字がくっきりとしていない。
■デイモスへ
あなたがこの手紙を読んでいるということは、■■■■■■■■■■■、あなたは生き残ったのでしょう。2日前、彼らがあなたの命で■■■■■■■ことを知った時、連れ出して逃げようと思ったけれど…あなたは閉じ込められていて…もう遅かった。もし明日、我が夫――あなたの父■■■■■を説得できなければ、私は■■■■■■■■■■■を宣言し、■■■■■で彼の手からあなたを守るわ。確実に勝てるとは言い切れないけれど、母として、命に替えても■■■■■をステュクスに引きずり込む。クレムノスの王がいなくなり、情勢が乱れるその時、ケラウトルスが■■■■■■■■■■■■■■■。■■■は私が後見人に命じた者、安心していいわ。あなたが■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
メデイモス、■■■■■■■■■■■■を忘れてはなりません。母である私を忘れ■■■■■■■■■■■■、■■■■という恥知らずの王のことは心に刻んで。彼はクレムノスに■■■■■■■■■■■■をこの代で終わらせると私に約束したはずなのに…いつしか欲に目が眩み、心まで腐敗したかと思えば、あまつさえ■■■■■■■■の栄光を■■■■■するなんて…!メデイモス!どうあっても■■■■■■■■■■■■■■■■てはなりません!
ああメデイ■■■■■■■■■あの泣き声■■■■■か細く、消え入りそうな声で…あんな小さな声で泣く子が私たちの子供だなんて、■■■■■■■■もとても信じられなかった。でも、ニカドリーの咆哮が鋳魂の門を突き抜けて■■■■■■■■■■■■。■■■■■■トレートスの獅子の咆哮のように――その瞬間に確信したわ。あなたは間違いなくクレムノスの血を受け継いでいる子、■■■■■■■■■■■■■■ゴルゴーの子なのだと!
でも…おそらくあなたは■■■■■■■■■■■■■■■■運命にあるのでしょう。■■■■■■■■■■から■■■■■■とは思っていないけれど、■■■■■■■があなたの命を奪うことだけは耐えられない。明日、本当にそうなってしまったら…あなたは両親を失ったうえ、■■■■■■■■■■■■■■■■、■■■■■■■■、鮮血と傷痕を背負うことになるのかもしれない……
メデイモス、もし本当にそうなってしまったのなら…母として、最後にこの言葉を遺しておくわ。あなたは■■■■■■■■■■■■■■■■ゴルゴーの子■■■■■■■■■■。■■■■■■■■■■■■■■■。すくすく育ち、■■■■勇士の称号を勝ち取ることができたら、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■あなたの思うままに行動しなさい!クレムノスを興したゴルゴーは、■■■■■■■■■■■■■■■■ニカドリーを呼び止め、紛争の栄光を勝ち取った。あなたもまた、同じ「天罰の矛」の■■■■■■■■■■■■■■■■故郷に帰りなさい
メデイモス……
私の愛しい子……
判読不能な古代文字の石板◆
クレムノス士官の手記
あるクレムノス士官が持っていた日記で、軍隊生活のいろいろなことが記録されている。
いつも通りお灸を据えようと思った時、一言を添えた。「軍に足を踏み入れた瞬間から、お前たちの役割はただ一つ、それがニカドリーの剣だ。剣に考える必要はない、ただその切れ味を保ったまま進むだけでいい」
…クリトンがこれを理解できるといいのだが。
新兵たちはザクロジュースに文句ばかり言っている、渋いのが嫌らしい。金持ちのお坊ちゃんも「冷たいのが飲みたい」とか言って駄々をこねる。そいつらには2倍飲めと命令した――ザクロジュースは栄誉の基本的な象徴、それすら受け入れられないやつにクレムノスの戦士になる資格はない。
クリトンは素晴らしい、自分から鋼の板を倍に背負って訓練したいと言ってきた。私は止めなかった。好き好んで苦しい思いをする兵士は、将来が有望だ。
本日の訓練内容:
1、山の斜面を往復ダッシュで50セット
2、重りをつけて格闘
3、寝る前に武器の手入れ
処罰:それぞれ3倍の重さの岩板を背負い、野営地の周りを夜明けまで歩く。そして、例の盾を2人の見えるところに置くよう指示した。そんなに欲しいなら、それを見ながら歩くといい。
事後対応:伝統に則り、ジャンソンの名前を演武場の石碑に刻む。
今月2回目の事故だ。新兵たちは落ち込んでいるが、「訓練中に犠牲するのは名誉なことだ、ベッドの上でウジウジ考えて死ぬより遥かにいいだろう」と言ってやった。
今日のクリトンを見て、自分が正しいと確信した。あいつは格闘訓練中に鉄の剣を3振り折られたが、怖気づく様子はまったくなかった。これこそクレムノスの戦士のあるべき姿だ。
1、ナンバー13、武器の整備を怠った。処罰として夜間に走らせることにした。
2、ナンバー4、訓練中に恐怖で引っ込んだ。処罰として壁に向かって立たせた。
3、ナンバー21、防具整備規定違反。処罰として減給。
今日は、隊員に本物のクレムノスの盾を見せた。この盾は百戦を経ても、縁が今もなお刃のように鋭い。「いつかお前たちもこの盾を手にする。その日まで、生きていればな」と、言ってやった。
クリトンを神楯隊の試験官に推薦した。あいつの働きはこの機会に相応しい。
1、生存者19人(合格)
2、負傷:12人(期待外れ)
3、昇級:3人(クリトンを筆頭に)
総評:今回の新兵はまずまずと言える。すでにクレムノス精神とはなにかを理解し、瞳には炎も宿っている、それで十分だ。
私が新兵だった頃、教官に言われた言葉を思い出した。「クレムノスに生きている軟弱者は必要ない」と。この言葉を、そっくりそのまま新兵たちにも伝えた。あいつらの顔からかつての自分が見えたんだ。戦争に完璧超人は必要ない、ただ死ぬ覚悟を持つ人間だけが必要なのだ。そして今、私の新兵たちはその準備ができている。
この補給線で、前月に3つの隊が全滅してしまったことは、あいつらには言わなかった。そんな些細なことを知る必要はない。クレムノスの戦士は自分の職責だけ知っていればいいのだ――戦って、戦って、そして死ぬまで戦うことだ。
来月の整備内容:
1、ザクロジュースの手持ちを補充する
2、武器の引き継ぎを手配する
3、夜の警備係を選ぶ
4、訓練プランを修正(夜戦強化)
運命の織り手の密書
運命の織り手同士の往復書簡で、人によって消されたのか、年月が経ったことですり減っているのかはわからないが、所々文字がはっきりと見えなくなっている。
1通目
親愛なる姉妹へ
最近、天象に異常が起きています。オロニクスの帳にまるで引き裂かれたような痕跡があり、その裂け目は燃え尽きつつある導火線のようで、永夜の中で見え隠れしています。星を観測する時は、これまでにない恐怖を感じました――星の軌道が乱れ、動く軌跡はもうタレンタムの法則から外れているのです。
それ以上に不安なのは、創世の渦心から伝わって来る神託がどんどん曖昧になっていること。昨夜、運命の糸を解読しようとしたのですが、何かに纏わりつかれているかのように、混沌としてて解読ができません。あなたも何か変な兆候を感じていませんか?
くれぐれもお気を付けを。
2通目
ディクレアへ
その心配は杞憂ではありません。オクヘイマの運命の羅針盤にも異常が起きました。指針の指す方向が定まらず、まるで見えない力に邪魔されているかように、狂ったように回転しています。
最悪なことに、「賊星」の出現率も高くなっています。古い預言によると、これはザグレウスの詭術が働いていることを意味するという。でも、私はそんな単純な話ではないと思っています。賊星の軌道にこれまで見たことのない混乱が隠されているのです。
ヤーヌスの火種も不安定になっています。夜になると、万路の門は別の世界の扉を叩いているような、奇妙な共鳴を発しています。
三相の神託の庇護があらんことを。
3通目
賢者ヘレナ様へ
あなたがずっと前代聖女の預言を研究していることを知っています。失礼をお許しください、でも状況は急を要するのです。最近の数々の兆候がとある恐ろしい可能性を示しています――運命の糸は、なにかに蝕まれている。
■■が言及した現象は、古書『永夜の啓示録』の記述と驚くほど似ています。寓話だと思っていた警告が、現実になろうとしているのでしょうか?
どうか、■■の預言に対する最新の解読結果をお教えください。特に■■のタイタンに関する部分を。
4通目
親愛なる同僚へ
あなたたちの観察は私が最も懸念していることを裏付けています。率直に言いますと、■■の預言で言及されている■■世は、私たちが想像しているものとまったく違う可能性があるのです。古い預言を研究する時に気づいたのですが、いくつかの言葉が意図的に修正されています。例えば、「黄金紀復興」の原文は「黄金紀復■」のはずなのです。この微妙な違いにぞっとしました。それより恐ろしいのは――一体何者が、或いは何の組織が、これらを秘密裏に修正したかということです。
私をさらに不安にさせているのは、預言の書庫を整理している時に、■■に関する記載が徐々に失われていることに気づいたことです。人為的に破棄されているのではなく、歴史が時間の流れと共に消されていくように、文字が自然に消えていくのです。
運命の三タイタンはこれらを予見していたのではないかと疑っています。オロニクスの預言がどんどん難解になり、タレンタムの天秤がバランスを失い、ヤーヌスの門が震え始めたのはこれが原因でしょう。
5通目
姉妹たちへ
事態は深刻です。すぐに行動を起こさねばなりません。瞑想中、恐ろしい光景を見てしまいました。世界がまもなく漆黒の潮に呑み込まれるのです。タナトスのステュクスではなく、遥か昔の、もっと邪悪なものに。
提案:
1、運命の三相殿の封印を密かに強化する
2、すべての預言の文献を3部複製し、分散して保管する
3、「特別」な子供たちを探して保護する
4、最悪の状況に対応する準備を整える
忘れないでください。世界が本当に終わりに向かおうとしているなら、私たちの使命は希望の火種を守り、後世に残すことです。運命の糸がすでに穢されているとしても、私たちは最後の純粋な金糸を、全力で守らなければなりません。
運命の三タイタンがオンパロスを守ってくれますように。私たちも、きっとすぐに再会できるのでしょう。
付録:預言の欠片
[密書の中に分散していた記録]
永夜の帳が引き裂かれ、
公平な天秤がバランスを失い、
万路の門が暗黒の潮に浸蝕される時、
■■■■■が世に現れる.……
お前たちが見ている火種を信じるな、
お前たちが読んだ預言を信じるな、
運命はすでに歪曲され、
真相はとっくに……
[ここは曖昧で、分からない]
忘れるな――
世界の終わりは
新しい始まりなのかもしれない
だがその代償は……
[残りの文字は消えている]
赤く染まった石板
クレムノス城外で発見された破損した記録。一人のクレムノスの戦士が勇敢に戦った最後が書かれている。
1
同胞たちは、日記を書くなんてクレムノス戦士のすべきことではないと言う。弱そうに聞こえるし、オクヘイマ人みたいだと。
だが彼らは、死に対する恐れから日記を書いているわけではないということを知らない。私が心配しているのは、もし私たちが最終的に栄光をつかんだとしても、それを語り継ぐ者がいないことなのだ……
まあいい。来るべきものはいずれ来るのだから。とりあえず書いておこう。
……
22
紛争の眷属たちの意識がますますはっきりしなくなってきた。一部の眷属はクレムノス人に刃を向け始めている。フンッ、戦いの招待を断る理由などあるだろうか?
この眷属どもはやたら頑丈で、二人がかりでなければ倒せない。一方、やつらが私たちを斬るときは一振りで十分だ。
ああ、鮮血のメーレが飲みたい。
35
同じ隊の者が、眷属に刃を向けるとニカドリーの怒りを買うのではないかと心配していた。
フッ、ニカドリーの怒りを買うだと?バカバカしい。みんなで大笑いすると、心配していた者が説明を求めてきた。
1つ目に、そもそもニカドリーが怒っていなければ怒りを買うこともない。
2つ目に、「紛争」のタイタンと紛争を起こしたところで、ニカドリーが怒る必要はない。
3つ目に、ニカドリーが怒っても、怒ってなくても違いなどない。
彼は納得し、私たちと一緒に笑った。まったく、本当におかしな話だ。
……
47
亡き王の夢を見た。王は数年前に世を去った。王子の振る舞いには風格があるかもしれないが、私たちは容認しがたい。
王が指し示した先こそ、戦士たちが向かうべき場所であり、それこそが私たちの願いだ。
……
49
大きな戦いがあり、何人かの仲間を失った。槍を投げたのだが、助け出せなかった。みんな、英霊殿で会おう。
……
55
笑い話を思いついたので、 忘れないうちに書き記しておく。
狂神が宴を開いた。 参加できるのは勇敢な者だけだ。 さて、 招待されなかったのは誰か? オクヘイマ人 だ。
話せるやつはいなくなった。 もうどうでもいい。
……
78
剣の刃が折れた。 しかし、問題ない。 クレムノスのあらゆる物が戦の道具となり得るからだ。
……
83
軽いけがをした たいしたことはないまだ戦える ただ 日記を書くのに片手しか使えないのは 少々面倒だ。
誰か石板を支えてくれないか 誰もいないのか もう私一人しか残っていないのか ?
……
85
戦士が一人いる。 一番若いやつだ。 片足を失い、 弓を使っている。 本当にいいやつだ。 石板を支えてもらうととても書きやすい。
93
フッ、若い戦士にはあの霧のような黒い影が見えていないらしい。
タナトスか?私たちの信仰がすでに狂気に満ちているのなら、あいつに連れていかれるのも悪くないかもしれない。
……
102
眷属、たくさんの眷属。やつらは本当に戦いに飽きない。私と同じだ。
若い戦士はニカドリーに会いに行った。あるいはタナトスに連れていかれたのかもしれない。仲間たちによろしく伝えてくれ。
支えなしで文字を書くことにも慣れてきた。
……
百いくつか
また眷属が現れた。あれは私の槍だ。やつの体に刺さっている。眷属にも復讐心があるのか?
やつは私を見ている。私もやつを見ている。しかし、赤すぎてよく見えない。
おかげでまたメーレが飲みたくなってきた。このところストレートばかり飲んでいるから、そろそろ違う味にするべきだな。
やつは怯えているのか?片腕しかない私が石板に落書きしているのに?
本当に皮肉なものだ。逃げるがいい、狂神の眷属よ。お前にはクレムノスの者たる資格などない。
紛争
栄光
大地獣宿駅の帳簿
大地獣宿駅の設備や資材の購入記録。飼育にまつわるエピソードも記されている。
昼長の月の訪れを祝うはずだったのに、私たちの共有資金が使い果たされてしまった。まったく、お前たちは節約という言葉を知らないのか?
今月から帳簿への記録を開始する。支出はすべて書き記すこと。
光歴4930年歓喜の月
土x10――2000テミス
土x7――1600テミス
土x7――1720テミス
土x10――2000テミス
土×6――1741テミス
こんな書き方で記録しろとは言っていないぞ、このバカども!お前たちの計算能力は大地獣以下か!分類もできないのか?それに、なぜ土がこんなに高いんだ?しかも、毎回値段が違うのはどういうことだ?
ボス、それは土の質が違うからです。
専門の土探しを雇って、定期的に供給してもらう契約を結べ。そうすれば安くなるだろう。バカみたいにスポットで買うんじゃない。それから、月末に毎月の土の量を合算して記帳しろ。いいな。
光歴4930年昼長の月
土探しの手数料――30000テミス
赤土、120ブロック――12000テミス
黄土、120ブロック――15000テミス
黒土、15ブロック――3000テミス
大地獣の装具更新――41750テミス
卵の世話代――3000テミス
今月の合計支出104750テミス
今回の記帳はよろしい。この形式で記録するように。来月も同じならそのまま記帳しろ。いいな。
ただし、土探しの手数料が高すぎる。もっと安い業者を探せ。
ボス、これ以上安い業者はいません。暗黒の潮のせいで誰もやりたがりません。
仕方がない。とりあえずこのままにする。
光歴4930年自由の月
先月と同じ。大地獣の装具以外に追加事項なし
ジョーリアの司祭への寄付――100000テミス
今月の合計支出163000テミス
この寄付は本当に必要か?はい、ボス。
少し減額できないのか?ダメです、ボス。
やれやれ。いいだろう。みんながジョーリアの祝福を必要としているし、必要な出費は仕方ない。予算が足りなければ元老院に掛け合ってみよう。
光歴4930年収穫の月
先月と同じ。土に変更あり
赤土、120ブロック――12000テミス
黄土、100ブロック――12000テミス
黒土、15ブロック――3000テミス
紅土、120ブロック――15000テミス
エーグルの司祭への寄付――100000テミス
今月の合計支出175000テミス
紅土とは何だ?なぜエーグルの司祭に寄付をする必要がある?
ボス、土探しが言うには、紅土とは新しい種類の土で、とても希少で高価だそうです。
ちょっと見にいってみる。
あれは「オンパロスの方言」で赤土だ!このボンクラども、まただまされやがって!早く土探しを変えろ!それからこの寄付はどういうことだ?
司祭が言うには、空と大地は本来一つであり、ケファレの聖都にいる以上、寄付は平等にしなければならないそうです。
本当にお前たちにはあきれ返るな。今後、どの司祭への寄付も禁止だ。分かったな?
ですが、万一・・・・・・万一などない!
もういい。お前たちがこんな状態では任せられん。来月からは私が自分で帳簿を管理する。
光歴4930年拾綫の月
土探しの手数料――42000テミス。
土の代金――4種類合計20000テミス。
雲石の天宮の修繕費用――113384テミス。
樹庭の学者を招いた講演費用――300テミス(未計上)
いかん、いかん。一番やんちゃなやつの世話を忘れていた。雲石の天宮の壁に穴を開けてしまった。
それとお前たち、今回は大金を払って樹庭の学者を招き、詐欺に引っかからないようにするための知識を教えてもらったんだ。もう二度とだまされるなよ。分かったな。
幸いなことに、新しい土探しはかなり頼りになりそうだ。
光歴4930年紛争の月
土探しと土の価格は変わらず。
土のかご全交換――3000テミス。
薬草(5頭分)――15000テミス。
サーシスの祭祀用供物――99930テミス。
大地獣の脱落した角の売却(5本)――+50000テミス。
また紛争の月がやってきた。大地獣の半数が病気にかかってしまったが、事前に備えておいてよかった。
どうか早く元気になってほしいものだ。
光歴4930年慰霊の月
土探しは変更なし。
土の量、土の価格共に2倍になる。
装蹄用具修繕費用残金(大工匠への支払)――30000テミス
鞍具の更新(15セット)――700000テミス
吟遊詩人招聘費用――10897テミス。
委託保証金――+600000テミス。
トリビー様へのお菓子代――200テミス。
すべて順調。
バルネア管理備忘録・抜粋
バルネア職員の共有備忘録。ほとんどが異なる信仰を持つ者同士によってバルネア内で引き起こされた、さまざまな事故の記録。
……
前文省略。本石板は光歴4930年紛争の月13日より使用開始。
本石板を客が手に取れる場所に置かないこと。
紛争の月14日
・創生季終了に伴う入浴ラッシュが続いており、侍者たちは手いっぱいです。早急に交代要員を手配してください。
・クレムノスやラードーンから来た人には注意してください。彼らはバルネア内で祭祀品を燃やそうとします。
――火をつけることを禁じるのですか?それとも紛争の祭祀そのものを禁じるのですか?
――火をつけることは問題ありませんが、彼らは武器を投げ入れ、バチバチと音を立てながら燃やすので、他の客を驚かせてしまいます。
――本当にやられたらどうすればいいですか?彼らを止めることはできません。
――ダロを呼べば何とかしてくれます。
機縁の月2日
・星光のピュエロスが再び使用可能になりました。
・日増しに増えていくザグレウスの信者に注意してください。
機縁の月10日
・彼らの悪ふざけがますます過激になっています。
・ティサさんという客が解決策があると言い、バルネアの講義エリアを借りて催しを開こうとしています。
機縁の月16日
・ティサさんがバルネアへ出入りすることを禁止します。
・大地獣施設から土を借りてきて、応急的に滑り止めとして使用してください。
機縁の月17日
・ティサさんの友人がバルネアへ出入りすることを禁止します。
・大地獣施設から人手を借り、この大地獣たちを引き取ってもらってください。
機縁の月-日
・おかしいです。なぜ水の上で火が燃えるのですか?そして、なぜ誰も消火しないのですか!
幽霊の日を知らないのですか?
門関の月1日
門関を祝います!そして新たな侍者を歓迎します。
門関の月5日
・図書館に新たな蔵書が加わり、近いうちに入浴目的以外の客が増える見込みです。
・クレムノス人に注意してください。
・あなたは彼らに勝てないだけです。
・再度強調しますが、この備忘録を客が手に取れる場所に置かないでください。
門関の月14日
・新入侍者へ。バルネアでは簡単な祭祀活動が認められていますが、オロニクスの信者がピュエロスを占いに使いたいと希望する場合は、必ず手順を確認してください。
・分かりました…理由が気になるのですが。
・チーズがピュエロスで溶けると、ひどい匂いを放つからです。
門関の月15日
・バスソルトはプライベートピュエロスでのみ使用可能です。バスソルトを買う客に対してシュネが繰り返し伝えてください。
・しかし、もう長いこと誰も買っていません。
・それではなく、ファジェイナの祝福を受けた虹色で、使うと入浴後に飛び跳ねたくなるバスソルトです。
・分かりました。壁の穴はそれであいたのですか?
・はい、そうです。
門関の月22日
・あるエーグルの信者がずいぶん長いこと来ていません......
・どうしてもピュエロスの中で髪を洗おうとするあの人のことですか?
・そうです。エンドモたちのために専用のピュエロスを作りたがっていた人です。
・あなたたちが言っているのは、あの絹の手袋を使って街で一番凶暴な大地獣を手懐けた人のことでしょうか?彼は自ら志願して探検隊に加わり、暗黒の潮に立ち向かいました。ただ……
・タナトスが彼に安寧をもたらさんことを。
平衡の月2日
・新入侍者へ。バルネアはファジェイナの信者が多数を占めています。客が隅でピュエロスのお湯に向かって独り言を言っているのは普通のことです。
・ですが、ピュエロスのお湯が返事をするのも…普通のことですか?
・そこは気にしないでください。
平衡の月10日
・本日は異常なし。ただ、「宝探しイベント」の伝統を復活させるかどうかについて意見を求めます。
・時間も人手も足りません。やりたければ自分でやってください。
・分かりました。準備します。
平衡の月18日
・一体何があったのでしょうか?客たちが全員口論を始めたのですが。
・山の民兄弟に追い出されたあの人のせいです。
・彼が何をしたのですか?いずれかのタイタンの祈言でも使ったのですか?
・いいえ。クレーネ・マーティ劇場の近くで「誰がオクヘイマ最強の戦士か?」と叫んだだけです。
・分かりました。オクヘイマ人は若のことを知らない人が大多数ですからね。
・これだからクレムノス人は……
……
■■■■日
・ケファレの加護があらんことを。
・ケファレを称えよ。
・雲石の天宮の営業が再開しました… アグライア様は感謝の意を示すために、天宮で最も良い部屋を彼ら に無償で提供するとおっしゃいました…しかし、あの異国の客人たちが黎明のピュエロスの温度に耐えら れるかどうかはわかりませんが。
神性の反響:歳月
タイタンの神跡が残した記億。祝福を受けた者だけがこの神聖な残響を聞くことができる…聴いて、その天穹から聞こえる夜の言葉は、過去と未来の暗示である。
永夜の帳、 オロニクス。
夜空が輝くその間、万物は静寂を享受する。
時はその眠りの中で流れ去り、
世界もまたかくも短命である。
神性の反響:紛争
タイタンの神跡が残した記憶。祝福を受けた者だけがこの神聖な残響を聞くことができる…聴いて、その空から降る雷の槍は、万軍の殺戮へと導いている。
天罰の矛、 ニカドリー。
刀と槍のぶつかる音が鳴り響き、 永遠に残虐をたしなむ。
その恐ろしい死体の山と血の川の中には、
ニカドリーが守る平和が埋もれている。
神性の反響:海洋
タイタンの神跡が残した記億。祝福を受けた者だけがこの神聖な残響を聞くことができる…聴いて、その杯に満ちるメーレは、大波のように押し寄せてくる。
満たされた杯、ファジェイナ。
メーレが大海へ注がれ、大波が花のように咲き誇る。
波涛と酔客たちの喧騒の中、
万物は狂気とともに目覚める。