Tier 10 スウェーデン 駆逐戦車
正面上部に設けられているのは、対HEAT用防護柵という特殊な増加装甲であり、飾りではない。
その名の通り、HEATに対して無類の防御力を発揮する。
また、上部の傾斜装甲の大半には予備履帯や追加装甲が施されており、本装甲の40mm部分は思ったよりも範囲が狭い。
正面下部にも排土板(ドーザーブレード)が追加され、こちらも防護柵ほどではないが空間装甲として機能する。
OVMが数多く装備されており、現代戦車らしい素敵な外観。
Strv 103-0からキューポラが変更された他、機銃やスモークディスチャージャーも追加されている。
側面には浮航用の防水スクリーンが折り畳まれているが、本ゲームでは特に機能を有していない。
スペック(v1.10.0)
括弧外は移動モード時、[括弧内]は射撃モード時の性能
車体
耐久値 | 1,800 |
---|---|
車体装甲厚(mm) | 40/30/30 |
最高速度(前/後)(km/h) | 50/45 [10/10] |
重量(t) | 40.3 |
実用出力重量比(hp/t) | 18.11 |
主砲旋回速度(°/s) | 35 |
視界範囲(m) | 360 |
モード切替時間(s) (移動→射撃/射撃→移動) | 2/1.3 |
本体価格(Cr) | 6,100,000 |
修理費(Cr) | |
超信地旋回 | 可 |
ロール | 狙撃型駆逐戦車 |
武装
名称 | 発射速度(rpm) | 弾種 | 平均貫通力(mm) | 平均攻撃力 | AP弾DPM | 精度(m) | 照準時間(s) | 弾速(m/s) | 総弾数 | 弾薬費(Cr) | 重量(kg) | 俯仰角 |
10,5 cm kan strv 103 L/62 | 8.57 | APCR APCR HE | 308 350 53 | 390 390 480 | 3,343 | 0.3 [0.25] | 3 [1] | 1,500 1,450 680 | 50 | 1,160 4,800 810 | 1,645 | +1°/+1° [-11°/+11°] |
---|
エンジン
名称 | 馬力(hp) | 引火確率(%) | 重量(kg) |
Motoraggregat 9 | 730 | 10 | 700 |
---|
履帯
名称 | 積載量(t) | 旋回速度(°/s) | 重量(kg) |
Strv 103B | 43 | 35 | 7,000 |
---|
無線機
名称 | 通信範囲(m) | 重量(kg) |
Ra 421 | 850 | 27 |
---|
乗員
1 | Commander(Gunner) | 2 | Driver(Gunner) | 3 | Radio Operator(Loader) |
---|
拡張パーツ
Class2 | Class2 | × | Class1 | Class1 | Class1 | ||||||
× | × | Class1 | Class2 | Medium |
隠蔽性
非発砲 | 発砲時 | |
---|---|---|
静止時 | 23.03% | 4.81% |
移動時 | 13.79% | 2.88% |
派生車両
派生元 | Strv 103-0(TD/240,800) |
---|
射界
射界 | 左0°/右0° |
---|
開発ツリー
10,5 cm kan strv 103 L/62 (初期/330,000) | |
Ra 421 (初期/57,200) | |
Motoraggregat 9 (初期/110,000) | |
Strv 103B (初期/82,500) |
車両に関する変更履歴
v0.9.17 | 新規実装 |
解説(v0.9.17)
- 火力
- 10,5 cm kan strv 103 L/62
Strv 103の史実砲。
通常弾のAPCRは貫通力308mmと非常に高く、同格駆逐戦車の通常弾ではFV4005 Stage IIやFV215b (183)に次ぐ高貫通である。
課金弾のAPCRは貫通力350mmと十分な数値があるが、弾速がごく僅かに低下する。
単発火力390はTier10駆逐戦車最下位だが、その他の諸性能はStrv 103-0から順当に強化されている。
単発火力の低さを補いつつ、いかにその砲性能を活かせるかが重要だ。
HEは履帯切りや対紙装甲に加え、同じStrv 103Bに対して一定の効力があるが、他の砲弾と比べて弾速がかなり遅く、汎用性は低め。
なお、総弾数50発は決して余裕がある数量ではなく、弾種配分には気を使う必要がある。
射撃モードへの移行時間は2秒、移動モードへの解除時間は1.3秒と前進から変化はない。装填時間は強化して5秒前後なので、射撃後に移動モードに切り替えて六感発動の有無を確認してから再度射撃モードに切り替えるということも可能。- 移動モード
Strv 103-0同様、主砲が車体に完全に固定されており、このモード時は仰俯角は全く取れなくなる。
このモードでの射撃は接射に近い状態でなければ、命中は見込めないだろう。
一応、前後移動時の急停車で車体ごと俯仰角を取ることはできるが、射撃タイミングがシビアなため余程の場面でない限りは射撃モードに移行したほうが良い。 - 射撃モード
俯角は-11°と優秀であり、積極的にハルダウンしていこう。
このモードでは旋回中の照準拡散がほぼ0に近く、それでいて照準時間は驚異の1秒。
さらに精度は全車輌中第1位を誇り、DPMと弾速もトップクラスに位置している。
総じて単発火力以外はTier10駆逐戦車屈指の凄まじい性能である。
- 移動モード
- 10,5 cm kan strv 103 L/62
- 装甲
装甲厚が部分的に増厚されたのに加え、新たに車体前方に対HEAT用防護柵が搭載されている。
この防護柵は、他車両の課金弾に多いHEATをほぼ非貫通にする高い防御性能を誇る。*1
正面装甲は上部・下部ともに鋭い傾斜で守られている上に、空間装甲が各所に設けられている事でHEATに対しても圧倒的な防御力を発揮する。
Strv 103-0の弱点であったHEATを克服したことで、装甲により優位に立つことができる相手がより増えている。- 正面上部
Strv 103-0から順当に強化された。
大部分に10mmの増加装甲が装備されて実質50mmとなり、さらに予備履帯の部分は60mmにまで増強されている。
50mm部分は口径150mm以下、60mm部分なら口径180mm以下のAP・APCRを強制跳弾する。
ただし、砲身に沿った中央付近・車体先端は40mmのままの弱点となっている。
加えて前傾気味になると角度が緩やかになる為、貫通の容易な部位が著しく拡大してしまう。
対HEAT防護柵は10mmの空間装甲となっている。HEAT防御力の目安としては、予備履帯の60mmより前まではHEATの減衰は20%程度で柵を超えて貫通の可能性があるが、それより上はHEATをほぼ無効化でき、砲身より上は100%減衰する為にいかなるHEATも貫通することは無い。 - 正面下部
車体下部は一見傾斜が緩く見えるが、これは追加装備された空間装甲扱いの排土板*2である。
その奥にある本装甲には非常にきつい傾斜がつけられている。
とはいえ装甲厚が40mmのままであるため、口径121mm以上のAP、APCRには三倍ルールによってほぼ貫通されてしまう。
また排土板から本装甲まではあまり距離が無いため、HEATの減衰は20%~30%程度であり、高貫通HEATには貫通を許してしまう。 - 弱点
明確な弱点は、僅か20mmしかないキューポラである。
もっとも防護柵などで見えづらい事もあり、遠距離で狙うのは容易ではない。
一方、車体先端部分にHEやHEATを撃たれる事は本車にとって苦手となる。
装甲厚自体は40mmしかないので口径120mm級のHEでもそれなりのダメージが入り、空間装甲の距離が少ないためにHEATも貫通しやすい。
車体正面が被弾するとエンジンが損傷しやすく、時には火災が発生する事もある。
エンジンの損傷は機動力低下だけでなく、油気圧サスペンションの切換時間も倍加させるのでかなり致命的だ。
また、側面は空間装甲があるとは言え30mmしかなく、僅かな露出であっても殆どの攻撃を防ぐことができない。
加えて、耐久力1,800はGrille 15らと同じく自走砲、軽戦車を除いたTier10戦車で最低の数値である。
傾斜に頼った装甲や横に広い車体は、自走砲の砲撃で甚大な被害を受けやすい。
- 正面上部
- 機動性*3
前進までとは異なり、モード切り替えによる旋回速度の変化がなくなり単純になっている。旋回速度は同格駆逐戦車の中では優秀な値だが、数値的には重戦車の砲塔旋回速度と同程度である。砲身の旋回がないため快速戦車に取り付かれると重戦車の砲塔旋回だけで対処するようなものでありまず助からない。接近戦では積極的に履帯の破壊も狙われるため可能ならば修理スキルは習得しておきたい。
履帯性能の関係から通常地面でのデフォルトの車体旋回速度は30°/s程度。- 移動モード
前進は最高速度50km/h、後進は最高速度45km/h。
履帯性能が少々低いが、強力なエンジンが搭載されている。
出力重量比は良好であり、Strv 103-0から加速力が強化されている。 - 射撃モード
最高速度は10km/hとなる。
移動には全く使えないが、ハルダウン時に必要とされる一定の瞬発力は有している。
旋回性能はそれなりだが、駆逐戦車らしく軽・中戦車との接近戦は不得手。無砲塔ゆえに一度取り付かれると自力での対処が難しい。
ちなみに、本車両は超信地旋回が可能であるが、俯仰角を取った状態で左右に旋回を繰り返すと何故か僅かに車体が前後に移動する。この時もカモネットやカニメガネの効果は解除されない。
- 移動モード
- その他
- 視界・隠蔽
視認範囲が360mしかなく、装輪車輌と自走砲を除いたTier10最下位である。
隠蔽率は非常に高いが、偵察には向いていない。 - 搭乗員
UDES 03やStrv 103-0と同じく、車長が砲手、操縦手が砲手、無線手が装填手をそれぞれ兼任する独特な構成であり、兼任の多さから救急キットの効果が大きい。
逆に言えば、たった一人の負傷でも性能低下が激しいという事でもある。
特に操縦手と無線手は車体中央左側*4に密集しており、同時に負傷すると車長以外の全能力が低下してしまう。
余裕があれば車長スキルの「なんでも屋」を取得すると有事の際に役立つ。
- 視界・隠蔽
- 総論
Strv 103-0を順当に強化した油気圧サスペンション搭載型駆逐戦車である。
射撃モードにおける単発火力以外の砲性能はゲーム内でトップクラスであり、Tier10駆逐戦車としては申し分無い。
防御面も前身の欠点であった口径120mm超の主砲やHEATへの回答として、部分的な追加装甲や防護柵などが追加され、重駆逐戦車にも劣らない堅牢さを手に入れた。
機動性もエンジンの更新により加速力が強化され、迅速な展開や陣地転換が一層やりやすくなった。
しかし、油気圧サスペンション特有の「攻勢時や撤退時にワンテンポの遅れが生じる」という欠点は改善されておらず、とりわけ自分から攻撃を仕掛けに行くのは苦手のままだ。
また、防御を傾斜装甲と空間装甲に頼っている為、被弾箇所や彼我の位置関係、砲弾の性能によって大きく変動するので過信はできない。
全体的に似た性能へ集約されていくTier10戦車の中にありながら、独特の操作感による面白さと一定の強さを兼ね備えており、「迎撃」という目的に特化したスウェーデン駆逐戦車の集大成として相応しい車輌と言える。
史実
「Stridsvagn 103B(ストリッツヴァグン エットフンドラトレ ベー)」*5はスウェーデンが運用していた第2世代主力戦車である。
別名「Stridsvagn S」から英語圏では「S Tank(Sタンク)」と呼ばれる事も多い。
・開発
ことの始まりは1956年、Stridsvagn 74の開発にも携わったスヴェン・ベルゲ(1919~2004)という技術者*6が無砲塔戦車を提案した事にあった。
ベルゲはドイツの突撃砲や駆逐戦車といった無砲塔戦車に興味を持っており、無砲塔化によって車体に完全固定された主砲を自動装填装置と直列して搭載し、それを油気圧サスペンションで照準させ、車両自体に鋭い傾斜装甲を取り入れようと考えた。
↑スヴェン・ベルゲとStrv S
大戦期の戦車の分析から、主砲の大口径化は装填手用の作業スペースの拡大を招き、それが戦車の大型化・大重量化を誘発させている事が判っていた。
大重量の戦車がまともに戦えない事は戦車先進国のドイツが証明しており、各国は装填手を廃する為に自動装填装置の搭載を目論んだが、アメリカのT57 Heavy Tankやソ連のT-64などに代表されるように、当時の自動装填装置は極めて信頼性に欠ける代物であった。
まともに実用化できたAMX-13軽戦車はその名の通り軽戦車の域を出ず、結局主力戦車に安定した自動装填装置を搭載できる国は無かったのである。
その為、ベルゲはこの計画を実現できれば、コンパクトで低コスト・低重量でありながら十分な走攻守を有した次世代戦車が開発できるとしたのであった。
↑Strv Sと思われる戦車に搭乗するスヴェン・べルゲ
KATF(Kungliga Arméförvaltningens Tygavdelning=王国陸軍兵器部門)に勤めていたべルゲは、休日を無砲塔戦車の研究に費やした。
同僚たちにその概念を熱く語ったが、そんな突飛な発想が受け入れられる訳もなく、誰もが呆れてしまっていた。
しかし、べルゲの上司であったエリク・ギルナーだけはこれに興味を抱き、彼に推されたべルゲは新型戦車の草案を昇華していった。
当時の戦車は行進間射撃の精度が悪く、敵に命中させるには静止して狙い撃つ必要があり、それが無砲塔戦車に説得力を与えていた。
他の技術者から懐疑的な声が上がってはいたものの、ベルゲは報告書でサスペンションを中心に力説し、これを上層部に評価されて新型戦車開発グループの一員となった。
もちろん、これはギルナーが上層部に対してべルゲを強く推した事が要因の一つである。
1950年代初期、スウェーデンはStridsvagn 81としてイギリスからCenturion Mk.IIIを輸入していた。
しかし、当時のスウェーデン陸軍は30トン級かつ良好な火力・装甲・機動性を併せ持つ「中戦車」を欲していた。
約50トンで最高速度35km/hのCenturionは、スウェーデン陸軍的には「重戦車」であり、要求性能を満たしているとは言えなかった。
また、将来的にCenturionが性能不足になる可能性も危惧しており、Centurion導入以前から進めていたKRV(EMIL)計画を継続開発していた。
そのKRV計画が技術不足によって失敗と判断されると、スウェーデン陸軍は1957~1958年頃にさらなる新型主力戦車の開発を決定した。
↑Strv 103とCenturion
技術者たちから提案されたのが、M60やChieftainに近いStridsvagn A(America=アメリカ)、Leopard 1やAMX-30に近いStridsvagn T(Tyskland=ドイツ)、そしてベルゲの提案を元にしたStridsvagn S(Sverige=スウェーデン)の3種だった。
これは同時期に西ドイツで開発が始まった新型戦車が30トン級であるという報告を受け、コンセプトを比較をする目的があった。
しかし、ドイツ型の提案であるStridsvagn Tは装甲があまりに薄すぎるという理由から早期に開発を打ち切られてしまう。
結果としてスウェーデン陸軍の興味を引いたStridsvagn Sを本命とし、Stridsvagn Aを予備案として開発を開始した。
↑左からStrv 81、Strv A、Strv T、Strv S
一連の開発と製造は、既存のスウェーデン戦車を開発していたランツヴェルク社ではなく、Bofors 40mm機関砲で有名なボフォース社が担当した。
1958年~1959年にかけてStridsvagn Sの実用性を検証する各種試験が行われた。
その試験で用いられた車両の一つが、KRV(EMIL)計画で車体のみが試作されていた重戦車Kranvagnであった。
Kranvagnには20ポンド砲と油気圧サスペンションの実証試験の為の各種装備が取り付けられ、試験に供された。
他にもIkv 103やM4 Shermanを用いた試験も行われた。
これらの試験に併行して、エンジンには従来のハイパワーのガソリンエンジンからガスタービンエンジンとディーゼルエンジンを組み合わせたハイブリッド式とする事が決定された。
また、導入していたStridsvagn 81をStridsvagn 101・Stridsvagn 102(Centurion Mk.Xのスウェーデン版。101は新規生産型、102は81からの改修型)へと更新した事に伴い、Stridsvagn Sの主武装も同じく105mm砲(51口径→62口径へと長砲身化)とする事とした。
↑上がKranvagn、左下がIkv 103、右下がM4 Sherman
・試作~先行量産
1960年~1961年にはStridsvagn S1とStridsvagn S2という2両の試作車両が造られた。
S1は油気圧サスペンションと指揮官用キューポラを搭載した実験車両であり、主に照準の調整などの試験に用いられた。
S2はモックアップをベースにした車両であり、完全に上部構造を再現し、エンジンなどの主要パーツを搭載した車両だった。
1962年には世界へとその存在が発表され、独特な形状が各国を大いに驚かせた。
大戦中に駆逐戦車を運用していたアメリカ陸軍は、すぐにStridsvagn 103が防衛・迎撃戦に特化した駆逐戦車的車両である事を見抜き、ジョン・F・ケネディ大統領に報告書を提出したとされている。
↑試作車両とモックアップ
1963年にはSeries-Zero(ゼロシリーズ)と呼ばれた先行量産型が製造された。
この先行量産型と量産型の主な違いは正面上部装甲の「うねり」の有無やキューポラの形状である。
先行量産型では円形のお椀型キューポラだが、量産型ではLeopard 1やCenturion、Chieftain等と同様の最高品質のものへと換装している。
↑ソミュール博物館に展示されている旧型キューポラのStrv 103A*7
量産型はより防御力を高める為、エンジン区画を中心に「うねり」のある小規模な追加装甲を採用している。
これは本装甲への被害を軽減する目的で装備されており、下の画像でも「うねり」部分は断裂しているが本装甲への被害は殆ど見られない。
ちなみにこの部分は、乗員が戦車へ搭乗する際に転倒してしまうのを防止する役割もあった。
傾斜装甲の表面が凍結しうる雪国スウェーデンらしい配慮である。
↑「うねり」部分の耐久実験の様子
・量産
1964年に量産の決定が下され、1967年よりStridsvagn 103Aの量産が開始された。
初期型をA、追加生産型をB、改良型はCに大別される。
↑Strv 103A
排土板(ドーザーブレード)と水上浮上航行用の防水スクリーンが標準装備され、ガスタービンエンジンをボーイング502(300馬力)からキャタピラー553(490馬力)へと置き換えたのが本ゲームに登場するStridsvagn 103Bである。
B型ではキャタピラー553ガスタービンエンジンとロールスロイスK60ディーゼルエンジンの組み合わせにより730馬力を出す事ができ、出力重量比は18hp/tだったとされている。
また、このB型からオプションとして対HEAT用防護柵の装備も行われた。
防護柵の開発自体は1966年頃だが、冷戦終結後の1992年までは機密装備であった為、一般的にはC型から装備したと勘違いされているようだ。
↑Strv 103B
↑対HEAT用防護柵
1980年代半ばにはA・Bの両型はC型へと改修された。
アップグレード版であるStridsvagn 103Cは、エンジンの換装、ギアボックスの修正、履帯の改修、A型に対する排土板の追加などが行われた。
加えて、車体側面には予備燃料兼サイドスカート扱いの燃料タンクを複数装備した。
↑Strv 103C
・性能
- 攻撃面
主砲は自動装填装置付きの62口径(6.51m)105mm戦車砲、通称「L74」を搭載している。
これはイギリスのロイヤルオードナンス製51口径105mm戦車砲を延長した派生型であり、車体に完全固定する事で精度の向上と自動装填装置の搭載を可能にした。
発射速度は最大で毎分15発であり、薬莢は後部から車外へ排出される。
車体後方には砲尾を挟んで左右に各25発ずつ、合計50発の105mm砲弾を収容する弾倉を持つ。
弾種はAPDS(装弾筒付徹甲弾)25発、HE(榴弾)20発、Smoke(発煙弾)5発。
のちにAPDSに代えてイスラエル製のAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)を搭載した。
弾倉への装填時間は約10分であり、弾薬庫への積載に約25分必要だったCenturionの半分以下となっている。
仮想敵であるT-62などを遠距離から撃破可能な砲性能であった。
なお、「行進間射撃は精度が悪いので実用的ではない」という理由から無砲塔を採用したStridsvagn 103だが、1970~80年代頃から照準系が進歩してくると行進間射撃が実用化されてしまった。
ゆえに無砲塔としてのデメリットのみが浮き彫りとなり、とりわけ攻勢時には他国の主力戦車に遅れをとりやすくなっていたのである。
↑モジュールの配置が分かる内部構造図 - 防御面
上部装甲はおよそ50~60mmの鋭角の傾斜装甲であり、実厚は150mm超に相当する。
しかし、当初の想定よりも砲弾や対戦車兵器が進化した事により、単純な防御力はあまり期待できないものとなっていた。
HEATは防護柵で補う事ができたものの、傾斜装甲の効力の薄いAPFSDSには分が悪かった。
ただし、車体正面のエンジンを乗員保護に用いる事を設計段階から想定しており、搭乗員の生存性に関してはかなり気を使っている。
とはいえメリットだけではなく、エンジンのメンテナンスハッチが原因で大規模な増加装甲が施せない欠点もあった。
↑土砂を用いてハルダウンするStrv 103 - 機動性
前進後進共に50km/hで走行し、戦術的に求められた迅速な陣地転換ができる。
通常走行時や起動時は燃費の為に低出力のディーゼルエンジンのみを用い、戦闘時にはガスタービンエンジンを起動させて最高出力を発揮する。
また、通常戦車に比べて高速かつ正確な超信地旋回が可能*8である。
一見すると接近戦に弱そうに思えるが、後述の乗員構成と機動・旋回性がそれを補っており、総合的には通常戦車と同等以上の対応力を有する。
ただし、履帯の接地長の短さから路外走行性能にやや難があり、車高が低い&車体が前に張り出しているので超壕性能がやや低いという欠点があった。
↑走行中のStrv 103A - その他
B型以降から装備された水上浮上航行用の防水スクリーンを展開する事で渡河が可能である。
河川が多く、大重量に耐えられる橋の少ないスウェーデンにとって渡河装備は必須であった。
↑渡河中のStrv 103
1967年にノルウェーのLeopard 1と比較試験をした際、キューポラのハッチを閉じた状態ではStridsvagn 103が多くの標的を発見して撃破し、ハッチを開いた状態では車高のあるLeopard 1がより良い成績を出したと言われている。 - 乗員構成
最終的な乗員構成と役割は以下の通り。
なお、搭乗員が3人と少ない割に自動装填装置・油気圧サスペンション・ハイブリッドエンジンなど故障しやすい要因が多く、野戦整備が大変だった。- 車長
車長 / (緊急時)砲手 / (緊急時)操縦手 - 操縦手
操縦手 / 砲手 - 無線手
無線手 / (後進時)操縦手 / (緊急時)装填手
通常の戦車は敵に接近された場合、車長→操縦手に伝達する為、反応するまでにラグが生じる。
一方、Stridsvagn 103の場合は車長が自らの判断で即座に対応する事ができるのである。
操縦桿は照準器と一体化した特殊な形状をしており、それを左右上下に可動させて照準する。
Stridsvagn 103は迎撃に特化している都合上、有利なポジションを転々と移動する必要があり、即座に射撃地点から退避しなければならない。
前進・後進が同速という利点を最大限活かす為、後進は無線手の仕事となっている。
- 車長
↑操縦手と無線手が背中合わせとなった独特の乗員配置(公式動画より)
・配備~退役
Stridsvagn 103は1971年までに300両ほどが量産され、本来はStridsvagn 81(Centurion Mk.III)と完全に代替される予定だった。
ただ、Centurionの拡張性が優れていた事やスウェーデン陸軍に対する予算削減により、結局は両戦車が併用される事になった。
なお、1960年後半~1970年代に共同演習を行ったアメリカやイギリスは「(有砲塔戦車と互角に戦える事は分かったものの)無砲塔戦車ならではの有利性は認められず、自国で開発する必要性は無い」とStridsvagn 103を評価したと言われている。
とはいえ、イギリスはComet巡航戦車の車体をベースにした試作空挺戦車FV4401 Contentiousを製作している辺り、かなりStridsvagn 103に興味を持っていたようだ。
↑英国版SタンクことFV4401 Contentious
1970年代にはStridsvagn 103の開発者スヴェン・ベルゲを中心としたUDESというグループによって軽量型や複数の発展型が設計・試作され、1980年代からは後継車両のStridsvagn 2000の開発も開始された。
Stridsvagn 2000はUDESの研究や他国の戦車の技術を参考にした有砲塔戦車であり、自動装填装置付き140mm滑腔砲や40mm機関砲、複合装甲及びモジュラー装甲といった最新鋭の装備を導入する予定だった。
しかし、冷戦の終結などの国際情勢の変化、研究開発費の高騰などから1994年にはStridsvagn 2000の開発は中止となってしまった。
他にも暗視装置などの改良や爆発反応装甲を追加したStridsvagn 103D、リモートコントロールを搭載した無人Stridsvagn 103などの興味深い実験も行われたが、コスト面からいずれも採用されなかった。
↑爆発反応装甲を装備した試作車両Stridsvagn 103D
Stridsvagn 103は1990年代後半までに全て退役し、スウェーデン陸軍は後継車両を通常戦車であるドイツのStridsvagn 121(Leopard 2A4)/Stridsvagn 122(Leopard 2A5改)とした。
1995年にスウェーデンは近世以来の中立政策を転換し、EUに加盟して国際協調路線へと舵を切っており、この主力戦車の移り変わりが時代を象徴していると言えるだろう。
↑Strv 2000の実物大のモックアップ
・余談
Stridsvagn 103の血脈は絶えてしまったものの、油気圧サスペンションはアメリカ・ドイツが開発していたMBT-70/KPZ-70や日本の74式戦車が参考とし、車体正面にエンジンを配置して乗員保護に用いる構造はイスラエルのMerkavaへ、戦車にガスタービンエンジンを用いる発想はアメリカのM1 Abramsへと受け継がれた。
ちなみにStrv 103の開発者スヴェン・ベルゲはMerkavaの開発者であるタル将軍とも親交があった事が分かっている。
かの有名なMerkavaの搭乗員保護を重視した設計は、ベルゲからのアドバイスだったのかもしれない。
なお、Strv 103はイスラエル製のAPFSDSを用いており、両国には密接な協力関係があったと思われる。
仮想敵をソ連とするスウェーデンにとって、ソ連製戦車との交戦経験どころか、Tiran(アラブ連合軍のT-54/T-55/T-62)として鹵獲・改修運用するイスラエルは絶好の協力相手であった。
逆に国際的に孤立していたイスラエルは軍事技術の支援を欲したのだろう。
↑老博士スヴェン・ベルゲとStrv 103の模型を持つイスラエルの軍人
のちにベルゲはスウェーデン軍向けの研究開発を引退すると、タル将軍やM48 Patton・M60 Patton・M1 Abramsの開発者フィリップ博士と共にジェネラル・ダイナミクス・ランド・システムズの専門諮問グループの一員を務めたとされている。
実車映像1 実車映像2 公式紹介動画
Chieftain's Hatch Part.1
Chieftain's Hatch Part.2
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