| 本編 | |||
| 1. 騒がしい探偵部 | 2. 旅立ちの時 | 3. 決裂した応答 | 4. マジック協会の来客 |
| 5. 学院の片隅に潜む暗雲 | 6. 優雅な刃 | 7. 水車に隠された秘密 | 8. キャンバスの裏 |
| 9. 光と影の彼方 | 10. 完璧な答案 | 11. 失われた反響 | 12. スポットライトの下 |
| 13. 物語の終着点 | |||
| その他 | |||
| サークル運営 | 時間割 | 学園 | 個別会話 |
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第十二章「スポットライトの下」
| 拍手と歓声は、マジックショーにおいて何よりも誠実な答えだ。 |
- 1. サークル棟(マジック協会)
「タッチダウン」:探偵部の緻密な推理の結果、お前が一時的にウィックを「保管」していることが分かった。哀れな子犬を出してもらおうか!
探偵部はマジック協会の部室に突入した。
「ラビッツ・フット」は真っ黒な舞台の中央でぼんやりしており、その足元には……黄色い尻尾をブンブン振り、楽しそうに「ラビッツ・フット」の靴を噛むウィックがいた。''
イノシシさん:フンフンーーフン!
気まずい空気が流れる中、イノシシさんが率先してウィックに近付いた。
「野生児」の相棒が「ラビッツ・フット」の傍の箱に体当たりをしているが、彼は俯いたまま黙り込んでいる。
「野生児」:君に悪意はないと信じている……実際、彼はこうして元気だった。確かにサプライズステージには頼もしい助手が必要だ。ただ、「信号」にも……ウィックは必要なんだ。
「ラビッツ・フット」:悪かった……もう、二度と客は集まらないだろう。だから、これが最後の舞台なんだ。そして、私の助手になってくれそうな相手は……ウィックしかいなかった。
「ラビッツ・フット」:本来は昨日のリハーサルが終わったら、彼を「信号」のもとに帰すつもりだったんだが……ショー自体、もう無理かもしれない。
「アンサー」:無理?やめるつもりなのか?
「ラビッツ・フット」:あいつの手紙を受け取った……ぜひ自分のショーを見に来てくれって……あいつがもうあんな大舞台に立っているなんて、私は知らなかった。
「ラビッツ・フット」:マジシャンの舞台に失敗は許されない……鳩がシャンデリアにぶつかったあの瞬間、私のマジシャン人生は終わりを迎えたんだ。
「野生児」:いいや、違うね。そんなのただの言い訳じゃないか。
「タッチダウン」はその場でポカンと固まり、「試金石」は頭を搔いた。
「ラビッツ・フット」は真っ青な顔で「野生児」を見つめている。
堂々たる探偵部の部長は、その言葉がどれほどの威力を持っているか気付いていないようだった。
「野生児」:本当に諦めたなら、こっそり会場を探したり、自分一人でマジックを練習したり、ウィックを捕まえて助手にすることもなかったはずだ。
「野生児」:本当に舞台に失望した人間は、練習する意欲なんて生まれない……そうでしょ?イノシシさん。
「ラビッツ・フット」:……
「ラビッツ・フット」:昔、こっそり比べたことがある。同じ舞台に立つ者として、お前と私の何が違うのか。
「ラビッツ・フット」:私は……お前よりも、自分が愛するものに近い場所にいる。それはきっと、私だけの幸運なのかもしれない……
「野生児」:君は確かに幸運だよ、兄弟!
「試金石」:だったらほら!助手、舞台……それに観客!マジックを披露する準備は整ってるぜ。
まだ落ち込んだ様子の「ラビッツ・フット」に構わず、一同は準備を始めた。
「信号」はカラーテープを用意し、「人形部屋」は舞台を飾り、「花蕊」は出来立ての星型クッキーの香りで部室を満たした。
そこへ突然「乾杯」がひょっこり現れ、誰も飲む勇気のない「レモンジュース」を持ってきたり、「タッチダウン」が「晩鐘」と「逆位置」を無理やり引っ張ってきたり……
「ラビッツ・フット」が舞台の中央に立つと、「試金石」がライトを点けた。
全員の視線が一点に集まるーーたとえ粗末で狭くても、この瞬間だけは、輝きに満ちたステージへ。
「ラビッツ・フット」のマジックショーに参加!

「ラビッツ・フット」:実は昨日、ウィックを隠した後、彼のバッグに入っていた配達先を見て……図書館に行ったと嘘をついたんだ。
「ラビッツ・フット」:すまない、「信号」……
「信号」:……
「信号」は舞台を指さした。ウィックとイノシシさんが楽しそうに駆け回り、デモリー学院の穏やかなひと時を楽しんでいる。
「野生児」:(この空気を壊したくはない!……でも!「信号」の手紙に気になるものがあったことを思い出した)

ウィックが届けた手紙には全て、浅い歯型がついている。「七弦琴」の手紙もそうだった。
「野生児」:「信号」、ウィックを見つけられてよかったよ。それじゃあ、早速だけど……君と「七弦琴」にどんな関係があるのか教えてくれるかな?
「野生児」:ウィックが届けた手紙には全て、浅い歯型がついている。「七弦琴」の手紙もそうだった。君はもしや「七弦琴」とつながりがあるんじゃないか?
「信号」:……!!
「信号」:……
「信号」はブンブン手を振って否認した。
手紙に向けるその眼差しには、怯えが滲んでいるように見える。
彼は探偵部の面々に深く一礼すると、慌てて遠くへ逃げていった。
残された探偵部は、互いに顔を見合わせた。
キャラ
生徒
- 「野生児」
- 所属クラス:S1-1組
- 担当職務:探偵部副部長
- 生徒ファイル:
サーカス団の出し物として、「野生児」は幼いころからサーカス団で動物の子供として育てられた。
有名教育者たちは彼の経験に関心を持ち、彼を救い出してデモリー学院に入学させた。
入学式当日、彼の相棒が旧探偵部室に迷い込み、「戴冠の謎」を解いてしまったことから探偵部の新任副部長(対外的には部長を名乗っている)となり、現在1年前の時計台出火事件の真相を調査している。
- 「アンサー」
- 所属クラス:S1-1組
- 担当職務:霊能部部長/探偵部部員
- 生徒ファイル:
「野生児」と同じスポンサーを持つが、全く異なる経験を持つ。
幼い頃に故郷から離れた後、彼女は上流貴族家庭で当時最も優れた「エリート教育」を受けた。
しかし、彼女の心の中に根付く炎が消えたことはなく、今も世の中の偽善の仮面を焼き払いたいと思っている。
- 「試金石」
- 所属クラス:S1-1組
- 担当職務:探偵部部員
- 生徒ファイル:
「野生児」同様、落第ギリギリの成績を維持している。
鉱員家庭出身の彼が外部入学テストに合格してデモリー学院に入学したことで、当時は世間を騒がせていたが、それはデモリーの外に限った話だ。
学院の中での彼は最も影の薄い生徒の1人で、蔑まれることも注目を浴びることもない。
「エリート」たちはこの小汚いクラスメイトの存在を、たとえ突然いなくなっても気に留めないほど徹底的に無視している。
- 「タッチダウン」
- 所属クラス:R1-2組
- 担当職務:クリケットボールチームメンバー/探偵部部員
- 生徒ファイル:
元ラグビーチームメンバー。
チームメイトとのトラブルが原因でチームから追い出され、クリケットボールチームの顧問教師に拾われたものの、過去や才能を恐れられ補欠に甘んじていた。
栄光の馬車交通事故事件の後、花蕊に誘われて探偵部へ入部する。
そこで彼は、溢れんばかりの情熱をもって人々に証明するのだーールールを破らなければ、分からない真相もあるのだと。
- 「花蕊」
- 所属クラス:R1-2組
- 担当職務:園芸部部長
- 生徒ファイル:
顧問教師の娘。
平民出身だが、どの階級の生徒も彼女には友好的に接する。
親しみやすい甘い笑顔のためか、明るく元気な挙動のためか、あるいは……人知れぬ特殊な才能があるためか。
- 「ラビッツ・フット」
- 所属クラス:A1-1組
- 担当職務:マジック協会会長
- 生徒ファイル:
彼が率いるマジック協会は、かつて学院で最も人気のサークルだった。
しかし、ショーの最中に起きたアクシンデンとをきっかけに、誰も彼の舞台を見に来なくなった。
「ラビッツ・フット」の努力もむなしく、サークルは解散寸前まで追い込まれていた。
- 「信号」
&ref(): File not found: "「信号」.png" at page "失われた反響/キャラ";- 所属クラス:R1-2組
- 担当職務:学院メッセンジャー
- 生徒ファイル:
寡黙だが非常に頼もしい学院のメッセンジャー。
学院の各所へ手紙を届けている。
- 「晩鐘」
- 所属クラス:R2-1組
- 担当職務:不明
- 生徒ファイル:
入学早々生物学における並外れた才能を発揮し、視覚器官を造物主の最も素晴らしい傑作だと称える彼は、常に人気のない部室で独り解剖学に没頭している。
一方で、寮の周辺をうろつく小動物が減っているという噂が広がり始めていた。
- 「面取り」
- 所属クラス:R2-1組
- 担当職務:実験室の助手
- 生徒ファイル:
複雑な機械を組み立てることに熱中している。
優秀な物理の成績によって、実験室で「自在継手」の助手を務めることになった。
- 「テレビン油」
- 所属クラス:A2-1組
- 担当職務:美術部部長
- 生徒ファイル:不明
- 「乾杯」
- 所属クラス:A2-1組
- 担当職務:不明
- 生徒ファイル:不明
- 「戒告」
- 所属クラス:A2-1組
- 担当職務:不明
- 生徒ファイル:不明
- 「白鳥」
- 所属クラス:A2-1組
- 担当職務:不明
- 生徒ファイル:不明
- 「ベイル」
- 所属クラス:S2-1組
- 担当職務:クリケットボールチームメンバー
- 生徒ファイル:
クリケットボールチームメンバー。
優れた技術を買われて、遥か遠い東からクリケットボールの伝統を持つデモリー学院に推薦で入学した。
時計台出火事件の目撃者の1人。
教師
- 「暴君」
- 所属授業:ラテン語
- 担当職務:校長
- 教師ファイル:不明
- 「羽根扇子」
- 所属授業:現国
- 担当職務:現国教師/寮監
- 教師ファイル:不明
- 「金床」
- 所属授業:図工
- 担当職務:図工教師/クリケットボールチーム顧問教師
- 教師ファイル:不明
- 「自在継手」
&ref(): File not found: "「自在継手」.png" at page "失われた反響/キャラ";- 所属授業:科学/図工
- 担当職務:科学教師
- 教師ファイル:不明
事件記録
- 今回の事件

学院のメッセンジャー「信号」の配達犬ウィックが昼前に配達に出かけたきり、次の日まで戻っていない。
突然の大雨によって痕跡を辿るのは難しく、探偵部は昨日手紙を受取った者たちに話を聞き、ウィックの手掛かりを探すことにした。
そんな彼らの行動によって、穏やかに見えた学院に潜む不穏な気配が露わになっていく。
- 時計台出火事件

1年前、時計台で火事が起こり、「ナイチンゲール」が不幸にも命を落とした。
元探偵部部長「七弦琴」が事件を調査し、「社交シーズン」の「公開日」に真相を明らかにすると宣言したが、彼は何の予兆もなく「公開日」前夜に行方不明になった。
学院側は「六ペンス」が時計台の傍でタバコを吸っていたことが火事の原因だと判断し、彼を退学処分にした。
探偵部の新任部長「野生児」は、「ベイル」から重要な証言を得た。
事件当日、「ナイチンゲール」は「戒告」、「白鳥」と共に時計台に入り、その後に火事が起こったらしいーー事の真相は、見かけよりもずっと複雑なようだ。

