奥深き伝統 龍舞で春騒ぎ

Last-modified: 2024-04-11 (木) 01:51:11
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イベントストーリー

※イベントはこちら

茶を並べ龍の帰還を迎える(龍の帰還を迎えるお茶)

ストーリー

新年前の夕方、チャイナタウンは相変わらずの賑わいだった。
街の立ち並ぶ様々な店舗が店じまいを始める中、料理屋はまだまだ忙しくしていた。
熱々の鍋に手をかざして暖を取ろうとするも、看板の上から聞こえた鳥の囀りに顔を上げる者がいれば、慌てた様子で冷たい風の中を急ぎ、足を止めずに帽子を押さえる者もいる。
骨董屋は市街地から離れた場所にあり、古めかしい扉が大きく開かれていた。
門前の落ち葉は綺麗に掃除された後のようだ。

  • 1日目
    • 1.骨董屋前
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      骨董修復士:(……偶然知り合っただけだと思ってたのに、まさか骨董屋の店主を自称する若い女の人が私の修復の腕前を見込んで仕事を紹介してくれたなんて。これから……チャイナタウンで暮らすことになるのね)
      骨董修復士:(店主は小さい頃に東方からこの地へやって来たと言っていた。長らく各地で付き合いを広げていたけれど、しばらく前に有名な龍舞隊に加わったらしい)
      骨董修復士:(彼らは来週チャイナタウンに到着し、公園の準備を行う。時間通りに知らせを……あっ!あと事前に「特別な仕事」も片付けておかないと)
      【店内に入る】
    • 2.骨董屋
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      骨董修復士:(至る所からこだわりを感じるな……古い木棚の中には古びた置物が多く横たわっている。修復が必要なものというのは、これらのことなのかもしれない)
      骨董修復士:(花梨剤の匂いだ。ほっとする……向こうで黒と赤の帽子を被った店番が居眠りしてるみたい。彼に話を聞いてみよう)
      骨董修復士:ーーこんにちは!あの…
      骨董鑑定士:……誰?……ああ、店主から言伝を貰ってるよ。君が新しい修復士?
      骨董修復士:うん。これ、紹介状ね!
      骨董修復士:店主は来週、龍舞隊と一緒にチャイナタウンに戻って、龍舞公演の準備をするみたいなの。彼女曰く、「昔チャイナタウンへ来たことがある龍舞隊」で、あなたも知ってるはずだって。
      骨董修復士:それから、龍舞隊のお師匠さんは先代店主の古い馴染みだから、「特別な準備」も必要だと言っていたよ。
      骨董修復士:あとは……そうだ、龍舞隊の人たちは懸鑑楼の朝食茶の味が忘れられないとも言っていたな。それに好みもそれぞれ違うらしいから、あとで茶楼の女将さんに教えてもらわないと。
      骨董鑑定士:店主は相変わらず周到だね。あの龍舞隊がチャイナタウンに来た時なんて、まだモヤシみたいなちびっ子だったのにーー先代店主のもとでは骨董の知識だけでなく、経営のノウハウもしっかり身につけてきたみたいだ。
      骨董鑑定士:僕がどうしてこんな話を知ってるのかって……?先代店主が記録を残していたからだよ。今はこの商売も全然だし……暇つぶしに読んでたんだ。
      骨董鑑定士:そういえば……龍舞隊が前回チャイナタウンに来た時、店に古い衣装を預けていたっけ。龍舞に興味があるのなら、ゆっくり聞かせてあげられるけど……どうする?
      骨董修復士:いいの?ありがとう!でも、懸鑑楼の女将さんがもうじきここに来るかもしれない。店主が点心の作り方を教えてくれるよう、事前に言っておいてくれたはずだから……
      骨董鑑定士:ああ、彼女ならさっき店の入口で見かけたよ。ほら、あそこ……ここを出たらすぐに見えるさ。
      【扉から出て探す】
    • 3.骨董屋前
      懸鑑楼の女将:あら?見ない顔ね…あなたが点心の作り方を習いたいっていう新入り?
      骨董修復士:はい……はじめまして!龍舞隊の客さんをもてなすために、事前に準備しておくよう店主に言われたの。
      骨董修復士:彼らの到着は一週間後になるんだけど、お師匠さんはいまだに懸鑑楼の点心の味を忘れられないんだとか。
      骨董修復士:だから、まずは茶礼、それから点心の作り方を習って、歓迎の宴に向けて隊の皆さんの好物を用意しようと思って。
      懸鑑楼の女将:そうだったのね。問題ないわ!はぁ……龍舞隊の知らせを聞くのは何年ぶりかしら。
      懸鑑楼の女将:こうしましょう。毎日私が頼んだ食材を持ってきてくれたら、朝食茶の点心の料理法をみっちり叩きこんであげるわ……もちろん、私も手伝うから。
      骨董修復士:よかった。本当にありがとう!
      懸鑑楼の女将:遠慮はいいのよ。旧友がチャイナタウンに戻って公演をしてくれるのはとても喜ばしいことだもの。しっかり準備しないとね。
      懸鑑楼の女将:今日はチャイナタウンに着いたばかりでしょう?そんなあなたには、気持ちを落ち着かせるさっぱりしたお茶を用意しましょう。
      懸鑑楼の女将:お客さんが茶楼に足を踏み入れたら、店のスタッフがすぐにお客さんの人数と茶葉の種類を確認するのがマナーよ……今日は茶葉と茶礼から始めましょうか。
      懸鑑楼の女将:茶具の準備はできてるから、茶葉を探してきてくれる?
      【茶葉を渡す】
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      懸鑑楼の女将:朝食の茶には「一盅両件」という概念があって、これは客が茶楼を訪れ、香茶を1本、点心を2つ頼むことを指すーー茶は喉を潤し、点心はお茶を満たしてくれる。量は多くも少なくもない。これが茶楼の「定番」よ。
      懸鑑楼の女将:良い茶楼では、様々な種類の茶葉を選べる。プーアル、紅茶、鉄観音、菊花茶、風味はそれぞれ異なる。通な客は自分で珍しい茶葉を持ってくることもあるわ。
      懸鑑楼の女将:昔の茶楼は今ほど立派なものじゃなくて、適当な木の看板を置いて、簡素なテーブルと椅子を並べただけの場所だった。足を休めて雑談を楽しみたかった人たちは、直接席に座れば良かったの。
      骨董修復士:友人同士で集まっておしゃべりをして、点心を食べつつお茶を飲む。のびのびとした空間だったのね!
      懸鑑楼の女将:ええ、大事なのはお客さん同士の会話よ。だから朝食茶の「茶礼」にはーー「水の継ぎ足し」や「叩茶礼」というものができた。
      懸鑑楼の女将:これのおかげで、お客さんが何かをお願いしたり感謝を伝える時、話題を中断する必要はなくなった。礼儀の全ては、些細な行動の中に秘められているから。
      懸鑑楼の女将:まずは「水の継ぎ足し」について。急須のお茶が底をついたら、水を継ぎ足す必要がある。その時は、そっと蓋を開けて急須の口の部分に斜めに置けば、それが合図になるの。スタッフが気付けば、すぐに水を足してくれるわ。
      骨董修復士:なら、「叩茶礼」は?
      懸鑑楼の女将:「叩茶礼」は、店のスタッフが水を足しに来た時や誰かにお茶を注いであげた時、2本の指を合わせて軽くテーブルを叩くこと。この小さな動作が「ありがとう」の代わりになるのよ。
      懸鑑楼の女将:茶葉を浸した後、2杯目の最高のお茶を注いでくれた人がいたらーー
      【叩茶礼を行う】
      骨董修復士:(2本の指を合わせ、トントンと3回叩く)
      懸鑑楼の女将:そうそう、そんな感じ!

  • 2日目
    • 1.骨董屋前
      懸鑑楼の女将:「龍首」のお師匠さんが一番気に入っていたのは、懸鑑楼特製のチャーシューまんだった。
      懸鑑楼の女将:以降、龍舞隊がチャイナタウンへ来た時は、骨董屋の店主が打ち上げのたびに隊のメンバーを懸鑑楼に連れてきてくれたの。私は注文を取ることもなく、熱々のチャーシューまんを用意してあげていたわ。
      懸鑑楼の女将:チャーシューまんの質は使われる食材によって左右されるーー具に使うお肉は少し脂身があった方がいいの。それじゃあ、さっそくおいしいチャーシューを持ってきてくれないかしら?
      【チャーシューを渡す】
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      懸鑑楼の女将:脂身と赤みのバランスがピッタリね。最高の食材だわ!チャーシューまんは、ふっくらした皮が甘じょっぱい風味の具材を包む広州地域の有名な点心。チャーシューは砂糖と醤油の味付けよ。
      懸鑑楼の女将:朝食茶の中では「大籠蒸」と呼ばれる種類に属していて、この種類の点心の皮に使われている生地は発酵されたものが多いの。
      懸鑑楼の女将:朝食茶の種類は多く、値段も様々。どんなものを選ぶかは人それぞれだから、茶楼は「客を選ばない」。面子を重んじる旦那さんやお嬢さんも、新聞売りの子供も御者も、私の懸鑑楼に入れば誰もが満足できるのよ。
      懸鑑楼の女将:東方のお客さんは懸鑑楼で懐かしい味に出会える。初めて口にするものだったら、予想外な喜びを楽しむこともできる。
      骨董修復士:龍舞隊のお師匠さんが一番気に入った品が、このチャーシューまんだったんだね?
      懸鑑楼の女将:ええ。龍舞、特に龍首の位置となると、練習だろうが本番だろうが、とてつもない体力が必要になるわ。チャーシューまんは寒い時にお腹を満たすだけでなく、身体を温めることもできるからね。
      懸鑑楼の女将:蒸籠を開けると、真っ先に鳥かごのような形をしたチャーシューまんが目に入るでしょう?ふっくらした皮は真っ白で、頂に開かれた微笑むような小さな「口」からは、中の油と赤みを帯びた具が少し見えるの。
      懸鑑楼の女将:あの時、お師匠さんが思いっきり噛んだら汁が溢れてしまって。火傷しそうだったけれど、濃厚な味わいが口の中に広がって、しばらく味を噛みしめてから呑み込んでいたわ。
      懸鑑楼の女将:さて、ここまで話したけれど、チャーシューまんに「小さな口を開ける」秘訣は何か分かる?
      【「鳥かご」の見た目】
      骨董修復士:チャーシューまんを「鳥かご」の形にすること!
      懸鑑楼の女将:正解。あの形にすることで、「小さな開け口を作ると同時に中身が漏れない」。最も技術が試される部分ね。
      懸鑑楼の女将:そういえば当時、龍舞隊が初めて懸鑑楼へ来た時、お客さんも店のスタッフも見たことのない衣装に言葉を失っていたっけ……あの光景は今でも忘れられないわ。
      懸鑑楼の女将:骨董屋に預けられた古い衣装はその時に残されたものよ。事前にそれぞれの部位がどんな扮装をするか知っておけば、あなたがもてなす客のことも少しは分かるんじゃないかしら。
      【骨董屋に戻る】
    • 2.骨董屋
      骨董鑑定士:……やあ、おかえり。今、倉庫から舞台衣装を引っ張り出してきたところなんだ。結構大変だったよ。
      骨董鑑定士:ゴホッ……あそこはとにかく埃がすごくてね。まあ、長いこと掃除されていなかったから、仕方がないんだけど……ケホッ……あまり気にしないで。
      骨董修復士:本当に重たい衣装なんだね……特にこの被り物。これを被ったまま演技をするのは大変だろうな……
      骨董鑑定士:あとはこの上の埃を払えば、本来の姿が分かるはずだ。
      【掃除へ】
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      ◆龍角
      全体的に明るい金色をまとった龍角はやや上向きで、後方へと自然なラインを描いている。左右両側からは鬢毛(びんもう)が伸びており、生き生きとした美しさを持つ。
      ◆龍口
      龍口は小さく開いており、嘶きを発する形をしている。龍首の顎の部分には緑と金の二色で描かれた模様があり、縁起良さを象徴する紐結びが付けられている。
      骨董鑑定士:これでよし!この衣装を身につけた人が、龍舞隊のどの位置を担当するか分かる?
      【龍首以外】
      骨董鑑定士:もう一度チャンスをあげるよ。上から下までよーく見るんだ。全身で一番目立つのはどの部分だと思う?
      【龍首】
      骨董鑑定士:そう!衣装の中でも一番華やかで、威厳たっぷりな龍首だ。龍の目は丸く、龍の口は小さく開けられ、あちこちに金色の装飾が施されているーーこれこそが龍舞隊の顔役だよ。
      骨董鑑定士:これは、貫禄ある龍舞隊のお師匠さんのために作られた衣装なのさ。

  • 3日目
    • 1.骨董屋前
      懸鑑楼の女将:昔、龍舞隊の「龍尾」は懸鑑楼の「エビ蒸し餃子」を好んでいたーーこれは茶楼の看板を背負う点心よ。
      懸鑑楼の女将:エビなら準備できてるけど、皮の部分に使う小麦でん粉が足りないの。探してきてくれる?
      【小麦でん粉を渡す】
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      懸鑑楼の女将:うん、うん……綺麗な白色で粒も細かく、不純物もない……素晴らしい、正に私が求めたものよ。
      懸鑑楼の女将:エビ蒸し餃子も広州の名物でね。小麦でん粉で作られた皮は、蒸し上がると水晶のような見た目になるの。中には味付けされたエビが入っているわ。
      懸鑑楼の女将:エビ蒸し餃子はチャーシューまんとは違って、シュウマイと同じ「小籠蒸」の種類に属するのよ。
      「龍尾」が特にこの点心を好む理由はあるの?
      懸鑑楼の女将:「龍尾」が「エビ蒸し餃子」を気に入った理由は、この点心なら新鮮なエビの食感を味わえるから、じゃないかしら。
      懸鑑楼の女将:皮も具も両方大事。このチャイナタウンでは、懸鑑楼のエビ蒸し餃子が一番美しいと自信を持って言えるわ。
      懸鑑楼の女将:「龍尾」はこれを見る度に褒めてくれたけれど……おもしろいことに、龍舞隊のメンバーは担当する位置によって食事に対する見方も異なるみたいなの。
      【詳しく聞く】
      骨董修復士:綺麗な蒸し料理?
      懸鑑楼の女将:そう。蓋を開けると、4つか5つほど丸々とした、透明感のあるエビ蒸し餃子が姿を現すでしょう。
      懸鑑楼の女将:エビ蒸し餃子の皮は蝉の羽のほど薄く、白くて透明だから、包み込まれた真っ赤なエビと汁が少し透けて見えるのよ。
      懸鑑楼の女将:エビ餃子の皺も綺麗に折られていて、一口噛めば皮の歯応えと滑らかさが脳に伝わり、次に弾力のある大きなエビとコリコリのタケノコが舌を刺激する。
      懸鑑楼の女将:「龍尾」は噛んだ途端にあふれ出した汁を、すぐさま餃子と一緒に口の中に流し込んでいたわ。味付けも丁度良かったみたい。
      懸鑑楼の女将:さて、もうこんな時間ね。そろそろ店に戻った方がいいんじゃない?
      【骨董屋に戻る】
      骨董鑑定士:この衣装は一番派手でかっこいいけれど、当時の設計図とは少し異なっていてね……
      骨董鑑定士:具体的にどこが違うのかは、比べてみれば分かるよ。
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      ◆紐束
      風に靡く稲穂のような紐束。
      職人の手によって赤、金、青の三食に染められており、玉の装飾が施され、目を奪う鮮やかさを持っている。
      ◆龍形玉
      腰元にある龍形の佩玉。龍の体は半輪になっている。
      精巧な出来栄えで、質素で洗練された造型だ。
      骨董鑑定士:この衣装は龍舞隊のどの位置に属すると思う?
      ◆龍尾以外
      骨董鑑定士:この衣装のポイントは、頭の後ろに束ねられた髪と紐束だ。これをヒントにもう一度試してみるといい!
      ◆龍尾
      骨董鑑定士:うん。金と赤の紐束が動きの変化に応じて揺らぎ、生き生きとして筋を感じさせるだろう?だから、これは「龍尾」なんだ。
      骨董鑑定士:うちの店主は、素人ですら分かるほど良い腕前を持っていた。おかげでお師匠さんのお眼鏡に適い、あっという間に龍舞隊の一員として迎え入れられたのさ。

  • 4日目
    • 1.骨董屋前
      懸鑑楼の女将:最後の点心は、龍玉の担当者の好物よ。「糖沙翁」ーー黄金色でまん丸く、真っ白な細かい砂糖をからめた可愛らしい点心なの。
      懸鑑楼の女将:龍玉役者はいつも龍玉を操っているし、明るく自由な性格だから、この点心は彼にピッタリな印象があるわ。
      懸鑑楼の女将:糖沙翁の材料は割と手に入りやすい。本当の巷のグルメってやつね。ラード、小麦粉、砂糖、これらは全て揃ってるから……あとは卵だけ。
      【卵を渡す】
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      懸鑑楼の女将:沙翁は「氷花卵球」や「瑠璃卵球」とも呼ばれている。溶いた卵を混ぜた小麦粉の球を油で揚げて、砂糖の衣でくるんだ大衆的な点心よ。
      懸鑑楼の女将:朝食茶の「揚げ物」に属すわ。鹹水角、揚げ雲呑なんかもこの種類ね。
      懸鑑楼の女将:熟された黄色い油の中でコロリと転がせば小さな球が膨らみ、卵に完全に火が通って濃厚な熱気を発する。
      懸鑑楼の女将:真ん中から割ってみると、砂糖の粉がパラパラと落ちて、空洞の中身が露わになる。外側はサクサク、中はふんわり。甘みが舌先で広がるから、深い味わいを楽しむことができるの。
      骨董修復士:「龍玉」が好んでいたのはこの点心だったんだね。
      懸鑑楼の女将:ええ。以前龍舞隊がチャイナタウンを訪れた時、去り際に「龍玉」が懸鑑楼にふらりとやってきて、糖沙翁をいくつか持って帰りたいって言い出したことがあるのよ。それほど気に入ってくれてたみたい。
      懸鑑楼の女将:それじゃあ、「沙翁」の本来の意味が何か当ててみて?
      【白髪の老人】
      骨董修復士:もしかして……微笑んでいる白髪の老人のこと?
      懸鑑楼の女将:その通り!……これで食事の準備はひと段落ね。
      懸鑑楼の女将:ここ数年で懸鑑楼も大分変ったわ。チャイナタウンに戻る旧友が、昔と変わらない茶楼の味を楽しんでくれると良いのだけれど。
      【骨董屋に戻る】
    • 2.骨董屋
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      骨董鑑定士:この玉を見てみなよ。カエル、鯉、カニ……すべて水の中を生きる生物だ。
      骨董鑑定士:わざわざ手のひらに収まる大きさにしたのは、投げたりキャッチしたりしやすくするためさ。
      骨董鑑定士:今日の質問は……簡単だ。この玉は龍舞隊の誰の所有物だと思う?
      ◆龍玉以外
      骨董鑑定士:コホン……まだ知り合って間もないけど、君の思考は時々飛躍することがあるな。複雑に考える必要はないんだ……
      骨董鑑定士:落ち着いて、この玉が何に見えるか考えてみなよ。
      ◆龍玉
      骨董鑑定士:そう。実際の公演で使われる龍玉はもっと大きいけれど、この道具が誰の物かは明らかだ。
      骨董鑑定士:龍玉は途中からこの業界に入った、気まぐれな性格の若者らしい。お師匠さんはどうして全く経験のない素人を受け入れたんだろうね……?

個別会話

  • 懸鑑楼の女将
    • 懸鑑楼の女将:あけましておめでとう、懸鑑楼でお茶でもどうぞ!
  • 骨董鑑定士
    • 骨董鑑定士:新春の良い兆し、チャイナタウンで年を越そう!
    • 骨董鑑定士:自分でこの玉を試してもいい。何かあったら、いつでも僕に聞いてくれていいからね。(龍玉体験)
  • 獅子舞
    • 獅子舞:チャイナタウンにもうじき龍舞隊が来るそうだな。最近、巷はその話題で持ちきりだーーまだ到着すらしていないのに、ずいぶんご立派なもんだ!
      獅子舞:俺に言わせれば……「真の腕前」があるかどうかは、本番になるまで分からない。ふん!よくも俺の商売を奪いやがって……
    • 獅子舞:もうすぐ新年か。どいつもこいつも浮かれた顔してやがる!
      獅子舞:金に余裕さえあれば、俺も今頃広場で騒いでたのによ……大晦日になると、いろんな掘り出し物が広場に集まるんだ。商人たちの呼び売りを聞いてるだけでも楽しいんだぜ!
      獅子舞:そういえば、しばらく手品師匠を見てないな。
    • 獅子舞:べっ、別に……ここへ来たのは、その……そう!外が寒かったから、ちょっと風を凌ごうと思ってな!
      獅子舞:なあ……龍舞隊の技ってのは、そんなにすごいもんなのかよ?お前はここへ来る前にも見たことがあるはずだ。教えてくれ!
      獅子舞:竹林でできた龍は、本当に生きたように見えるのか?
  • 学徒
    • 学徒:最近、骨董屋がいつもよりずっと賑やかな気がするの。あなたが新入りの骨董修復士さんなんでしょ?
      学徒:この前、現店主は数日すれば到着するって言ってたよね?彼女のことなら聞いたことがある……店の対応は全然だけど、身についている武術は確かなものだって。龍舞公演に出るって話も、たしかに彼女らしいかも。
    • 学徒:龍舞隊は明後日に到着するって。今は正に人手が必要な時期だね。店の鑑定士に掃除を頼まれて来たのーー私のロボットも。
      学徒:今、チャイナタウンのあちこちで大掃除が行われてるよ。古い壁には真っ赤な切り絵が貼られ、部屋の中も外も綺麗に掃除されてる。そうすることで、温かい新年を迎えることができるんだ。
  • 劇団長
    • 劇団長:龍舞隊のお師匠さんは、数年前にも一度チャイナタウンを訪れたことがあるらしいわ。噂によれば、彼の龍舞隊はとにかく厳しくて……技の一つ一つを完璧にこなすことを求められているそうよ。
      劇団長:当時、実際に見に行けなかったのが今でも心残りだったの。メンバーの入れ替わりもあっただろうし、楽しみね……
  • 易学先生
    • 易学先生:かつて賑わっていた骨董業は、先代店主の引退と共に衰退していきました。今はスタッフが一人店番をしているくらいです。
      易学先生:今、この店は元店主が育てた弟子のものになっています。ここ数年は街を出ており、店の骨董商売には一切手を出していません。
      易学先生:彼女はあと数日すればチャイナタウンに戻ってきますが、龍舞隊の一員という身分が増えたのは予想外でしたね。港の「骨董品」たちが偏見など持たれなければ良いのですが。
    • 易学先生:骨董屋の先代店主とお師匠さんは古い馴染みでした。骨董屋の記録を読んでいると、ついつい思い出に浸ってしまいます。
      易学先生:人生で数少ない、気の置けない友人。そんな相手とどこかの茶楼で茶を飲みながら会話を楽しむことができれば、自分が天涯孤独で……拠り所がないなどと言い出すはずもないでしょう。
    • 易学先生:骨董屋には日の目を浴びていない蔵書がたくさんあると聞きます。新しい店主が戻ってきたら、少し読ませてほしいものですね。
      易学先生:龍舞公演の準備で何か手伝えることがあれば、何でも言ってください。
  • 新春の予言
    • 新春の予言:龍舞公演には人々の新年に対する期待が託されている。花火と銅鑼の音の中、神龍が雲を突き抜け、チャイナタウンに祝福をもたらす。
      新春の予言:そちらが骨董屋の新入りであることは承知している。君がここへ来たことで天気が訪れるかもしれないが……もちろん、それには努力が必要だ。
    • 新春の予言:大晦日が近づくにつれ、日々寒さが増していっている。獅子舞が懸鑑楼で酒を飲んでいたのを見かけた。安酒だったが、飲み干せば少しは体が温まるだろう。
      新春の予言:そういえば、彼に手品師匠のことを聞かれて……ん?君にも聞いたのか?
      新春の予言:去年のことだが、チャイナタウンでは密かな変化が起こり始めていた……今回も、手品師匠のことを一番気にかけていたのは獅子舞だったみたいだ。
  • 質屋のオーナー
    • 質屋のオーナー:ああ……扉を開けた途端、お茶のいい香りが……用がなければここで点心でもつまんでいったのに。
      質屋のオーナー:数日後、君のオーナーが着いたら、彼女と大事な話をさせてほし……いや、大したことじゃないよ。商売について、ちょっとね。
      質屋のオーナー:実は数年前、先代店主がうっかり「お宝」を割ってしまったらしくて……模範となる人が躓いたことで、チャイナタウンの骨董業も徐々に廃れてしまったんだ。
  • コバン
    • コバン:ボンボンボン、ボンボンボンボン!(ここで点心の勉強してるって聞いて、コバンも来た!)
      コバン:ボンボンボンボン……ボンボン!(コバン、真っ白で熱々のチャーシューまんが一番好き……コバン、龍舞隊も好きになると思う!)
      コバン:ボンボンボン……!(コバンはロボットだけど、好きな点心がある!)
    • コバン:ボンボンボンボンボンボンボン!(変面王が火鍋屋の食材の準備を忘れたらしいんだ。コバンも大慌てだよ!)
      コバン:ボンボンボン……ボンボン!(幸い広場の市に何でもあったから、足りないものは広場で買えるけどね!)
      コバン:ボンボンボンボン、ボン!(点心の火加減が足りなかったらコバンに言うといいよ。コバンは火を噴けるんだ!)


奥深き伝統 龍舞で春騒ぎ

2月1日(旧暦12月22日)~

ストーリー

夜明け前、新年間近の夜幕がまだ空を覆う中、チャイナタウンはゆっくりと目覚めの時を迎えようとしていた。
周囲の商店から、客寄せの声が徐々に聞こえてくる。
食材もお茶も準備できたし、茶礼もしっかり覚えてきた。
熱をまとった蒸気が竹編みの蒸籠から昇り、食欲をそそる匂いが鼻をかすめる。
骨董屋の窓がゆっくりと歩を進める人々の影を映すと、やがてその影は店の入り口で止まったーー龍舞隊が到着したのだ。

???:先頭に立つ者は逞しい体つきで、背が少し丸まっており、四肢には筋肉が盛り上がっている。大きな龍の頭を被っているせいか、とてつもない力を秘めているように見える。
???:彼に続き、背筋が伸びた身軽な人影が軽やかな足取りで姿を現した。彼は手品のように丸い宝玉をヒョイと投げながら、悠々と店内の様子を覗っている。
???:隊の最後尾に揺れる人影は見覚えのあるものだった。長い髪を後頭部の高い位置に束ねている、すらりと若い女性だ。歩く度に揺らぐ髪は妖艶で、とても美しく見えた。
骨董屋店主:ーー誰かいるかしら?
【出迎える】
骨董修復士:いらっしゃい、疲れたでしょう。とりあえず荷物を置いて、中に入って休んでいって。
骨董修復士:龍舞隊を出迎えるために、懸鑑楼の女将にお茶の入れ方を教えてもらったの。
骨董鑑定士:お師匠さんがチャイナタウンへ来たのは、これで二度目なんだろう?あなたが率いる龍舞隊は素晴らしい技術を持つと聞いていたけれど、今日見たところ、確かに凄まじい気迫だった。
骨董鑑定士:懸鑑楼の女将が、あなたが好きな菓子をずっと覚えていたんだ。どうぞ召し上がれ。
龍舞隊師匠:ありがとう。
龍玉舞役者:今日はやけに冷えるな……ここでは熱いお茶が飲めるんだよね?少し温まりたいんだ、一杯もらえないかな?
骨董屋店主:そういえば最近、「あの品」がチャイナタウンに運ばれたと聞いたわ。でも、大晦日までは龍舞公演の準備を優先しないと。
骨董屋店主:皆は先に店に入ってて。私は新入りの修復士さんに話があるから。
骨董屋店主:チャイナタウンを離れてから大分経つけれど、まさか師匠がよく口にしていた龍舞隊にめぐり会えるとは思わず、気が付けば私は彼らに声を掛けていた。
骨董屋店主:隊を率いるお師匠さんは、すぐに私が幼いころから武術を身につけていたことを見抜いた。まさか幼少期の努力がこんなところで報われるとは思わなかったけれど、こうして私は龍舞隊の「龍尾」を担うことになった。
骨董屋店主:お師匠さんとはすぐに意気投合したわ。だから私たちはチャイナタウンに戻り……かつてないような龍舞公演を披露することを決意したの。
骨董屋店主:私はどうしても故郷が気がかりだったのかもしれない……龍舞をチャイナタウンに広めたいと思ったのも、恐らくそれが原因ね。あなたはどう?チャイナタウンに来てから、何かおもしろい噂を耳にしたことはある?

◆龍舞について
骨董修復士:ここ数日の街は龍舞隊の話題で持ちきりだよ。
骨董修復士:客足が少ない骨董屋にまで賑やかな雰囲気がうつったくらいだもの。皆龍舞がどれほど素晴らしいか、その光景を生き生きと語ってる……
骨董修復士:実は私も楽しみにしてるんだーー神龍が広場の狭い道を切り開き、数十もの大銅鑼や太鼓が音を奏でて、暗い夜にキラキラと火花を散らせるんでしょ?
骨董修復士:大晦日までまだ時間はある。小さいものでもいいから……自分の手で龍を作ってみたいよ。
◆料理の準備について

骨董屋店主:それくらい問題ないわ。私もお師匠さんも、喜んで手を貸しましょう。
骨董屋店主:これから毎日、龍に関する基本的な知識を話してあげるから。外の世界で耳にした……最高の龍舞公演の話もね。
骨董屋店主:それと、十分な材料を手に入ることができたら、骨董屋にいるお師匠さんにも教えを乞うといいわよ。

龍舞制作

龍舞隊師匠:……何か用か?
【店主の提案を伝える】
骨董修復士:店主さんに言われたの。自分だけの龍を作りたいなら……あなたに指導してもらうといいって。
龍舞隊師匠:(親方はしばらく考え込んだあと、彼女の両手を観察した)
龍舞隊師匠:作業に向いた器用な手だ……さらに生まれつきの大胆さも兼ね備えている。あの若い店主は過去に囚われているが、確かに才能を見抜く慧眼を持っているようだな。
龍舞隊役者:(「才能」という言葉が聞こえ、俯いた)
龍玉舞役者:師匠は滅多に龍舞や龍の作り方を教えたりしない……君ならきっとうまくできるよ。
龍舞隊師匠:引き受けた。お前が十分な材料を集めて来れば、お前だけの龍を作る手助けをしよう。
龍舞隊師匠:完全なる一頭の龍は、竹材、金属、紙などでできている。部品によって、必要な材料は少し異なる。

  • 龍骨制作
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    竹龍の「骨組み」は通常竹材と鉄線でできている。制作は段階ごとに行い、最後に全体を繋ぎ合わせる。
    龍舞隊師匠:いいか?
    龍舞隊師匠:まず、竹材と鉄線で龍の体を模ることが火龍を作る第一歩だ。身体部分は崩れないようしっかり接合させる必要がある。
    龍舞隊師匠:骨董品の修復が得意なら、造型作業も得意なはずだ。粉飾を疎かにしても、「筋骨」で後れを取ってはならぬ。
    龍舞隊師匠:形が崩れてしまえば、たとえ金や銀の刺繍で飾り立てても……観客の心は動かせない。
    龍玉舞役者:僕も手伝うよ!龍骨をたくさん作るのは骨が折れるからね!
    龍舞隊師匠:……この前のように竹材に火をつけてはならんぞ。細かい部分までしっかり作り上げなければ成功できない。

  • 龍衣制作
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    白い布に縁起良い模様をたくさん描き、鮮やかな色を塗って乾かせば、龍身に被せることができる。
    龍舞隊師匠:……龍衣の材料を見つけてきたみたいだな。
    龍舞隊師匠:ここに十分な長さの布を用意してある。あとは昨日組み立てた龍骨の上に糸錦紙を貼り、龍衣に着色を行い、模様を描けば完成だ。
    龍舞隊師匠:新年の龍は鮮やかな方がいい。縁起良い模様も取り入れる必要がある。この中でお前が好きな模様はあるか?
    ◆鱗
    骨董修復士:生き生きとした龍を作ることで一番大切なのは、鱗の表現なんだよね。
    骨董修復士:一頭の龍が自分のすぐ隣を横切る姿を想像してみよう……強い風が起こって、キラキラ輝く鮮やかな鱗が目の前に広がる……
    ◆雲紋
    骨董修復士:龍は空を飛ぶ生き物だもの。風が渦巻く雲の間を金の龍が翔ける姿を私は何度想像してきたことか。
    骨董修復士:竜身に美しい雲を描けば、観客を雲の向こうまで連れて行くことも、龍と一緒に踊ることも叶うかもしれない。
    ◆八宝紋
    骨董修復士:新年の龍舞儀式は人々に祭りの祝福をもたらす。八宝紋には縁起の良い意味合いがたくさん託されているから、私が一番好きな模様なんだ。
    骨董修復士:私はこれまで、ずっと一人で年を越してきた。狭く長い雪道を抜ければ、遠くから祭りの準備をしている人たちの声が聞こえてきて、ちょっぴり嬉しかったのを覚えてる。
    骨董修復士:私は冬の冷たい風が過ぎ去り、大地が春を迎えた頃には、ここの誰もが満たされることを願っているの。
    ◆ない
    龍舞隊師匠:模様はお前自身が描くといい。残りは私がーーいや、二人で完成させよう。
    龍舞隊師匠:龍衣の模様を描き、乾かせば準備完了だ。

  • 龍首制作
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    一頭の龍の「顔」の制作過程は他の部品と同じだが、目の部分だけは点睛儀式を行ってから色を塗る必要がある。
    龍舞隊師匠:龍首は龍の「顔」だ。龍の威厳や表情を見せるには、この龍首の表現が肝要となる。
    龍舞隊師匠:この部位も竹材と紙でできている。龍首の構造は身体よりも細かく複雑で、更なる集中力が必要だ。
    龍舞隊師匠:龍の口が大きく開かれると、牙と舌が露わになる。目は憤るように丸く、闘志あふれる雄姿を見せる。これらが「真に迫った」龍の特徴と言えよう。
    骨董修復士:そういえばあの龍玉を持っていた若い人を見かけないけれど、彼はどこへ行ったの?
    龍舞隊師匠:奴は勝手気ままな意気地なしでな……私にも分からないのだ。
    龍舞隊師匠:今は年越し前でどこもかしこも賑わっているから、その辺りをほっつき歩いている可能性が高い。恐らく、初めてのチャイナタウンに浮かれているのだろう。ここには大道芸を披露する役者もいれば、店もたくさんある……
    龍舞隊師匠:奴にとっての龍作りなんぞより、己の好奇心を満たすことのほうが大事なのかもしれん……

  • 龍爪制作
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    龍の爪は鋭く、威厳がある。細かい部品であるため、単独で制作し、形を模った後、最後に龍の身体に繋げる必要がある。
    龍舞隊師匠:「龍首」を完成させたら、残るは龍爪と龍玉だ。
    龍舞隊師匠:まず鉄線と紙で龍爪を作れば、龍身の部品はすべて揃う。お前には簡単な作業のはずだ。
    骨董修復士:見て、机に龍爪の完成品が置かれてる……とても丁寧に作られたものみたい。
    骨董修復士:そんなところで何をしているの?しかも一人で……でも良かった、戻ってきたのね!
    龍玉舞役者:(返事はなく、彼は両手を背後に隠した。よく見ると何かに引っかかれたのか、手を怪我しているようだ)
    龍舞隊師匠:この龍爪は先端の丈夫さが足りない……本番中に外れる可能性がある。
    龍舞隊師匠:もっと入念に取り組んでくれ。
    龍玉舞役者:(ギュッと拳を握った後力を抜き、振り向きもせずその場を立ち去った)
    龍舞隊師匠:……手間暇かけて作ったのが分かる。立派な進歩だが……あの傷は負うべきではなかった。
    龍舞隊師匠:龍爪を固定し直そう。今日はまだ時間があるから、龍玉も完成させるぞ。材料を集めてくるといい。

  • 龍玉制作
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    竹材で編まれており、中は空洞で色は鮮やか。舞者が動かせるよう下部に細長い竹の棒が付けられている。
    骨董修復士:塗料も竹材も全部揃えてきたよ。でも、龍玉を作る準備はできたとしても、龍玉の担当はまだ戻ってきていないんだよね……?
    骨董修復士:彼と一度話し合った方がいいんじゃないかな……この前だって急に出ていっちゃったし……
    龍舞隊師匠:構わない、制作作業はお前が続けるといい。あいつは……不器用が過ぎる。
    龍舞隊師匠:龍玉は軽く、丸みを帯びた形に作れ。こうすれば、玉を操る者は龍の動きを自由に導くことができる。
    龍舞隊師匠:……実のところ、龍舞公演に「命」を吹き込むに当たって一番大事なのは龍玉の位置なのだ。龍の頭は龍玉の後を追って動きーー隊全体を率いることで、全身を引っ張っていく。
    龍舞隊師匠:龍玉舞が軽快なら龍隊も軽快に、龍玉舞がぱっとしなければ、龍隊もまるで芋虫のように見えてしまう……
    骨董修復士:本当は彼に期待しているんでしょう?違う?


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龍舞隊師匠:……
龍舞隊師匠:こういった話はまたの機会にしよう。私はもう……竹でできた龍を生かすことに期待を抱く歳を過ぎてしまったのかもしれない。
龍舞隊師匠:さあ、お前の龍が完成した。あとは大晦日に点睛儀式を行うだけだ。それまではゆっくりと休むといい。
龍舞隊師匠:大晦日の前のチャイナタウンは相変わらず騒々しいな。かまどの火を起こし、新しい服を纏い、めでたい雰囲気の中で新年を迎えるのが東方の風習らしい。お前もそうするべきだろう。
龍舞隊師匠:才能ある若者よ、お前ならチャイナタウンの骨董屋を生まれ変わらせることもできるやもしれない。


2月9日(旧暦12月30日)~

大晦日の午前、銅鑼や爆竹の音がチャイナタウンで鳴り響いた。
白い煙の向こうで、紐束と明るい魚灯が街の両脇にぶら下げられているのが見える。
龍舞隊のメンバーは赤い服に着替えており、見慣れないその姿に通行人たちは足を止め、興味深そうにお師匠さんを囲んだ。
点睛儀式に必要な人員も、物資も全て揃った。
木製の長いテーブルを合わせ、香炉と赤い蝋燭に火をつけていく。
白瓷の大皿には、饅頭や干し肉が積み上げられていた。
お師匠さんは黄酒が注がれた盃を並べ、丁重に礼をしたーー
これらが味わわれることで、チャイナタウンが良き新年を迎えられることを祈って。

骨董屋店主:本来は「白沙茅龍」という筆が最も点睛に適しているのだけど、あのお宝はまだ手に入っていないから……この筆で点睛儀式を行いましょう。
骨董屋店主:まずは両手で祥龍に血肉を、筋骨を与える。そして、「点睛」で命を宿す……これで、あなたの龍は完成よ。
骨董修復士:はい!
【筆を受け取る】
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骨董修復士:これで完成ね……
龍舞隊師匠:「点睛」が無事に終了したな。これでこの龍も正式に公演に参加できる。
骨董屋店主:小さいけれど、軽くて素早い。チャイナタウンの年越し儀式ーー「火海渡り」にピッタリなんじゃないかしら?ゲン担ぎに丁度いいわ!
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骨董屋店主:竹龍で火の海を越え、銅鑼を叩き新春を祝う!良いお年を!
骨董屋店主:今日から新しい一年になるけれど……骨董屋に囚われる必要はないから、あなたはここに残って、好きな仕事をしてちょうだい。
骨董修復士:店主さん。私に修復を任せたい品があるって言ってたよね……?
骨董屋店主:ええ、骨董屋にあるわ。ここ数日であなたも目にしたはず。案内しましょう。

1日目:扇子(懸鑑楼の女将)

  • 1.修復準備
    骨董屋店主:修復して貰いたいのは、あの古い木棚に置いてあるものよ。
    骨董屋店主:ほとんどチャイナタウンの住民から預かったものなんだけど、骨董品もあれば、酷く破損してしまって価値を失った品もあるーーでも、それらには物を惜しむ依頼人の思いが託されているの。
    骨董屋店主:ここ数日は依頼人たちも骨董屋が龍舞公演の準備を進めていると聞きつけたそうで、修復作業の合間にできる限りのことを言ってくれたわ。
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    骨董屋店主:龍舞公演に必要な道具も、楽器も、人員も全部揃ったわ。依頼人たちも、大事なものが修繕されたのを見ればきっと喜ぶでしょう。
    骨董屋店主:あなたみたいな優良な修復士が必要だったの。
    骨董修復士:任せて!今日はどこから始めたらいい?
    骨董屋店主:今日は、新しく届いたこの扇子をお願い。丁度……この前あなたに朝食茶を教えてくれた女将からの依頼よ。
    骨董屋店主:懸鑑楼で使った新年の飾りがかなり余っていると言っていたから、龍舞公演に縁起良い雰囲気を提供できるはず。
    骨董修復士:わかった!
    骨董修復士:心を落ち着けてテーブルに向かい……扇子の洗浄や修復が必要な部分をじっくり観察してみて。ゆっくりやればいいわ、あなたの特別分野なのだから。
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    修復分析:扇子の面の破損・扇子の骨組の破損・汚れ
    骨董鑑定士:道理で練習もなしに店主が修復を任せたわけだ……かなり注意深く見てるんだね。
    骨董屋店主:対照確認の作業は終わった?その調子よ。
    骨董屋店主:扇子の破損個所は、主に骨組みと織物にある。次は龍舞広場で必要な材料を探しに行きましょう。
    骨董屋店主:そうそう、今回は多めに買ってきて!本番までに、もう一頭の「最長の龍」を作らないといけなくて。これは私と龍舞隊がチャイナタウンへ戻ってきた……目的の一つでもあるの。
    骨董屋店主:数日後、修復作業をある程度終わらせた後に、この龍の制作も始めたいと思っているわ。

  • 2.龍舞広場
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    骨董鑑定士:店主、チャイナタウンは数年ぶりだろう?僕のほうが詳しいから、案内は任せてよ。広場に馴染みの店がいくつかある。そこの材料なら、品質も保障できるから。
    骨董鑑定士:品物の準備はオーナーたちがなんとかしてくれるけど、材料制作にも時間が必要だ。一定時間ごとに品を取りに行こう。
    骨董修復士:定期的、というのはつまり……「自然に成長した作物」を収穫するような感じってこと?
    骨董鑑定士:まあ……その例えでも間違ってはいないかな。適切な時間に回収すれば、より多くの材料を集めることができるーーこれらの材料は骨董の修復だけでなく、龍の制作にも使えるんだ。
    骨董鑑定士:新年の間、チャイナタウンの住民たちはやることが多い。彼らと依頼を任されるほど良好な関係を築けば、きっと材料の収集作業にも役立つはずだよ。
    骨董鑑定士:修復に必要な材料はこれで全部だね。もう少しここにいてもいいし、店に戻って修復作業を始めてもいいよ。

  • 3.材料提出
    骨董修復士:似た材質の布地と、修復用の糸を見つけてきたよ……この糸はとっても細いから、痕がほとんど残らない。それに十分な強度もあるし、絹製の扇子の面の修復にはピッタリなはず。
    骨董修復士:どれも貴重な材料だから、頑張らないとね!
    骨董屋店主:あなたが材料を買いに行ってる間、扇子の面を「整える」過程が必要だと思って、扇子を洗っておいたの。確認をお願い。
    骨董修復士:えっと……うん、これで十分!あとは修復材料を扇子の欠けた綿の下に敷いて、針と糸で縫合するだけだから……
    骨董修復士:(色も模様の細部も扇子に馴染むよう、細かく、集中しながら材料を破損した箇所に縫いつけた。骨董屋の照明に照らされても、その真珠のような光沢を持つ扇子の面に破損した痕跡があったようには見えなくなるまで)
    骨董屋店主:……そういえば、あなたはどうして修復士になることを選んだの?
    ◆古い物に対する愛しみ
    骨董修復士:真新しいものよりも、私は思い出がたくさん詰まった古い物が好きなの。
    骨董修復士:物は使われている時、あるいは壊れる過程にある時に特別な生命力を宿す……この扇子と同じようにね。
    骨董修復士:(こうして、扇子の骨組みと刺繍部分の修復作業が終わった。元の主人が早く受け取りに来てくれるといいな)
    ◆職人に対するあこがれ
    骨董修復士:様々な人たちと触れ合うのもいいけど、私は「物」に集中したい。物はいつも忠実で静かだもの。古い物の修復は、この子たちと会話するようなものだと思ってる。
    骨董修復士:骨董修復士にならなかったら、私は……そうだなぁ……土を弄るのも好きだから、庭師にでもなっていたかも。
    骨董修復士:林も、庭園も……手袋に土が付くのを気にしたことはないんだ。それに、そういうところでは時々、カナリアにも出会えるから。
    骨董修復士:(こうして、扇子の骨組みと刺繍部分の修復作業が終わった。元の主人が早く受け取りに来てくれるといいな)

  • 4.修復後
    懸鑑楼の女将:あけましておめでとう!丁度お店が落ち着いたところだから、古い友人に会いに来たのよ。
    懸鑑楼の女将:さっき、扇子を直していたでしょう?……確認してもいいかしら?
    骨董屋店主:もちろん、女将もどうぞおかけになって。でも最後の固定作業がまだだから、返せるのは年明け後になりそうね。
    懸鑑楼の女将:もう元通りにならないと思っていたのに……まさかまたこの姿を目にすることができるなんて。本当に懐かしいわ。
    懸鑑楼の女将:この扇子は、家に収蔵されていたコレクションだったの。小さい頃、茶楼で扇子を使った舞を披露していた舞踊家が羨ましくて、いつも椅子に登って手を伸ばそうとしてた。
    懸鑑楼の女将:もうずいぶん使い古されていて、表面はひどく脆いし汚れもあるけど……それでも、幼い頃の私は毎日のようにこれで遊んでいたわ。今思えば、大切な宝物だったのね。
    懸鑑楼の女将:後になって、新しい扇子にも大好きな梅の花を刺繍したけれど……私と時間を共にしてくれたこの扇子がなければ、私が舞を習い始めることもなかったでしょう。
    骨董修復士:そんな過去があったなんて……
    懸鑑楼の女将:どんな祝いも、「失ったものが返ってくること」とは比べ物にならない。以前約束した龍舞公演の装飾品なら、全部準備できてるわ!
    懸鑑楼の女将:それから、今後懸鑑楼に来た時はうちの新商品をたらふく食べていって!もちろん、無料で!
    骨董屋店主:織物と記憶はとても似ている……時の流れと共に、鮮やかで緻密だった織物は少しずつ淡く、緩くなっていき、細かい部分がが失われていく。
    懸鑑楼の女将:でも修復を通せばそこに宿る記憶をはっきりしてくるから……これに勝る喜びはそうそうないでしょう。
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    懸鑑楼の女将:これを受け取って。梅の花びらで作った匂い袋よーー寒い冬の終わりの匂いをたっぷり詰め込んだの。
    懸鑑楼の女将:あなたたちの公演の成功を祝っているわ。
    懸鑑楼の女将:特に、あなたにはお礼を言わないと!器用な修復士さん、本当にありがとう……それじゃあ、私はそろそろ懸鑑楼の厨房に戻るわ。

  • 5.龍舞練習
    骨董屋店主:ここでなら、いつでも龍舞公演の練習ができるわ。
    骨董屋店主:練習すればするほど、収穫も多くなるはずよーーさあ、やってみましょう!
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2日目:金の算盤(質屋のオーナー)

  • 1.修復準備
    骨董屋店主:龍舞隊がチャイナタウンに到着した日、「あの品」がチャイナタウンに運ばれてきたと言ったでしょう?……私が探しているのは、まさにそれなの。
    骨董屋店主:この3つの骨董は龍をテーマとしている。どれも珍しいもので、1つは「白沙茅龍筆」、残りの2つは龍灯と、竹葉臥龍の形をした玉雕よ。
    骨董屋店主:この3つの品が手に入れば、きっと龍舞公演にも役立つーー「白沙茅龍」は龍の点睛にも使えるし、玉雕は龍舞の技の参考に、龍灯は装飾に仕えるわ。
    骨董修復士:どうすれば見つけられるの?
    骨董屋店主:質屋のオーナーの「金の算盤」を直しましょう。そうすれば、彼は龍灯に関する手掛かりを提供してくれると約束しているの。
    金の算盤.jpg
    修復分析:汚れ・破損・緑色の錆
    骨董屋店主:どれどれ……修復前の基本的な状況は分かったかしら?
    骨董修復士:(比較結果を店主に教えよう)
    骨董修復士:付着している土の塊はほとんどが硬く、他にも細かい砂が少し付いているーーこれはブラシと彫刻刀で取り除けるはず。それから、金属部分にも欠損が見られるね。
    骨董修復士:えっと、それからもう一つ……店主もきっと気づいてるだろうけど、これは持ち主が言うように「純金」でできているわけではないと思う。
    骨董修復士:錆の色を見ることで、骨董の材料はある程度判断できる。この「金の算盤」には緑色の錆が薄く付いているでしょ?だから、かなりの量の銅が混じっているはずだよ。
    骨董屋店主:ーーまあ、あの依頼人のイメージにはピッタリね。
    骨董屋店主:彼の言うことは信用ならないけど、骨董業関連の情報なら彼の耳が一番早い。
    骨董屋店主:修復用の材料が足りなければ、また龍舞広場に行ってみるといいわ。

  • 2.材料提出
    骨董修復士:修復用の金属パーツに質がいい花梨材……それから錆を取るための銅針と、溶剤ね。
    骨董修復士:これで準備完了!
    骨董修復士:緑色の錆を取り除けば、本来の金色が見える……算盤の木の軸も、元の形に合わせて取り換えないと。
    骨董修復士:(硬い土の塊を丁寧に算盤から剥がし、辛抱強く磨いたり拭いたりした後、算盤の角が日差しのような黄金色を見せた)

  • 3.修復後
    質屋のオーナー:おお……!さすが修復士さん、店主も人を見る目は確かみたいだ。
    質屋のオーナー:金の算盤がもうすぐ直るって聞いて、すっ飛んできたんだよ!
    質屋のオーナー:純金の算盤なんて滅多に見られないから、大勢の人たちに羨ましがられるんだよね。
    骨董屋店主:この算盤を返すのは、もう少し先になると思うわ。錆を取った後、またすぐに錆びないように特殊な処理を施さないと。
    質屋のオーナー:で、でたらめ言うな!純金の算盤が錆びるわけないじゃないか!
    質屋のオーナー:ほら、この光沢に重み!正しく純金だろう!
    骨董屋店主:そもそも純金は柔らかい性質を持つから、使用頻度の高い、摩擦の多い道具の材料には適さないわよ。
    骨董屋店主:むしろ今の配合の方が黄金の光沢を残しつつ、算盤を長持ちさせることもできて……
    質屋のオーナー:コホン……全く口が達者な娘だな。君の師匠とそっくりだ……
    質屋のオーナー:当時、彼は市場に存在する贋作商人を一掃したーーどれほど聡明な贋作商人も、特定の痕跡を残すものだから。
    質屋のオーナー:贋作が市場に流れ着いた時……彼は迷わずそれを叩き壊した。こうして蔓延っていた贋作商人はなりを潜め、骨董業の規律と信用が成り立ったんだ。
    質屋のオーナー:ただ、残念なことに……本物も偽物も山ほど見分けてきた骨董業の英雄たる人物も、結局は……まあいい、気が滅入る話は止めにしよう。
    骨董修復士:(以前質屋のオーナーが口にしていた話だろう……ここでは良からぬ噂のせいで先代店主に対する信用が失われ、人々は新しい店主のこともいいようには思っていないという)
    骨董屋店主:分かっているわ。骨董業の「長老」たちは昔のことにーーもちろん私のことにも、憶測を巡らしていると。
    骨董屋店主:彼らは、師匠があの「本物」を割ってしまったのは、人に陥れられたからだと信じてくれなかった。あの一件がきっかけで、師匠は真偽を分かつハンマーを振るい上げる勇気をなくしてしまった。
    骨董屋店主:骨董業界の掟を立ち上げたのは、まごうことなくあのハンマーだったというのに……彼らはあの噂ばかり嬉々として話すようになった。
    骨董屋店主:私がこの家業を担えるかどうかも、聞き耳を立ててばかりの人たちが決めることじゃないわ。
    骨董屋店主:……この算盤が純金だと言い張るならーーオーナーの意を汲んで、欠けた部分に使った材料も黄金の価格で計算しましょうか?
    質屋のオーナー:それはーーは、話せば分かる。笑う門に福来ると言うじゃないか……
    質屋のオーナー:確かにこの算盤は合金製だ。でも、僕が自分で手に入れたお宝であることには間違いない。僕の面子のために、どうか口外はしないでくれ……
    骨董屋店主:なら、修復作業が完了した以上、約束通り龍灯の手掛かりを提供してもらうわよ。
    質屋のオーナー:もちろん問題ないけど……君は龍灯を買い取る気なのか?
    骨董屋店主:この世には不思議で、珍しい物が山ほど存在する。うちにそんな不相応な欲はないわ。
    骨董屋店主:それに、骨董収集は各々の観察眼と情報、そして運が大事でしょう。私は人が大切にしている物を奪う趣味はない。
    骨董屋店主:あなたも聞いたと思うけれど、今度龍舞隊がチャイナタウンで龍舞公演を行うの……その隊を導くには、明るい龍灯が必要よ。
    質屋のオーナー:分かった、教えよう。……少し前、よそから流れ着いた流浪者がいてね。汚い上着のポケットに入れていた何かを、うちで質に入れたいと言ってきたんだ。
    質屋のオーナー:ずいぶん良いものに見えたし、彼の落ちぶれた様子を見て、「いい値段」で買い取ろうとしたんだけどーー逆に断られてしまった。とんだ赤っ恥だよ。
    質屋のオーナー:悔しくてこっそり後をつけたら、龍舞広場で見失ったんだ。
    質屋のオーナー:再び彼を見た時、龍灯はすでに手放されていた。でも、彼の手には土や枯れ葉がついていたから……龍灯を一時的に隠した可能性がある。
    骨董修復士:(龍舞広場で土と枯れ葉がある場所……どこだろう?)

  • 4.龍舞広場
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    骨董屋店主:あった……!これが龍灯ね!
    骨董屋店主:記載によれば、龍灯の灯火はいつまでも消えず、水生生物の形が灯の表面で刻々と切り替わり、山間の雲霧がうっすらと見えるそうよ。まるで灯の中に別天地が存在しているかのようだって。
    骨董屋店主:夜間の演目には方向を示す目印が必須だから、この龍灯は龍隊が前進する時の「道しるべ」に丁度いいの。
    骨董屋店主:持ち主がいつ探しに来るかは分からないけれど、こんな貴重なものをここに置いておけないわ。書き置きを残して、持ち主が来たらうちを訪ねてもらいましょう。

4日目:絵(骨董鑑定士)

  • 1.修復準備
    骨董屋店主:あら……?
    骨董修復士:どうしたの?
    骨董屋店主:残りの依頼書を確認していたのだけれど……この絵の修復が完了したら、匿名の依頼人から報酬として「白沙茅龍筆」がもらえるみたい。
    骨董屋店主:この筆を使って公演で使う龍に「点睛」できるのは、とっても素晴らしいことよ。
    骨董屋店主:でも、この依頼人はどうしてこんなに貴重な宝物を報酬にしようと思ったのかしら?
    骨董修復士:(この品物は公式に売買できないから、依頼人にとっては大した価値がないのかな?)
    骨董修復士:(絵の背景はチャイナタウン、モチーフは臉譜をつけた人物……
    骨董屋店主:でもこの絵、そんなに古いものでもないみたいよ?それにこのタッチ、見覚えがあるような……
    骨董屋店主:とにかく、持ち主が新しく修復してほしいと言っているわけだし、私たちも龍舞公演に必要な道具がもらえるんだから、ひとまず手を動かしましょう。
    絵.jpg
    修復分析:帆布破損・額縁断裂・カビ
    骨董屋店主:絵画の修復って、ものすごく大変なことだと思わない?とてもデリケートだし、色あせやすいし……どう?これを修復する方法は見つかった?
    骨董修復士:額縁もキャンバスもかなり破損してる……誰かが故意に壊したのかも。
    骨董修復士:絵の具が塗ってある部分もかなり色あせてる。保存条件が悪かったのか、カビや油もついてるね。
    骨董屋店主:適当な材料を探しに出かけましょう。

  • 2.材料提出
    骨董修復士:元のキャンバスに近い紙と、額縁と同じ木材、それから汚れやホコリを落とすためのシルクの布を見つけてきたよ。
    骨董修復士:私は、修復士がよく使う絵の具をーーどれも天然の鉱物で作られたいい画材なの。カオリンは柔らかい光沢を、辰砂と鉛丹は古風な赤をもたらしてくれるわ。
    骨董屋店主:でも……修復士の腕が最も試されるのは絵画の修復よ。技術の複雑さに関わらずね。
    あなたはどんなスキルを持った修復士になりたいの?
    ◆幅広い知識
    骨董修復士:修復士が身につけるべきなのは……幅広い知識かな。
    骨董修復士:この手で時を越えて、構想と技術を通じて違う時空をつないでこそ、本当の意味で骨董品を再現できると思っているから。
    ◆豊富な経験
    骨董修復士:修復士が身につけるべきなのは……豊富な経験かな。
    骨董修復士:時間の経過とともに劣化した骨董品の一部は……とても貴重なものだから。修復作業中にうっかり傷つけてしまうと、その度に心が痛むんだ。
    骨董修復士:鍛錬を続ければ、骨董品をこれ以上傷つけなくて済む……これは修復士の骨董品に対する……そして、そこに込められた思いに対する敬意の表れだよ。

    骨董屋店主:そうね……私もあなたの考え方に賛成するわ。でも、修復士には、「自制心」も欠かせない。
    骨董屋店主:色あせてボロボロになった絵に向き合う時、修復士は主観的な想像を全て捨て去る必要がある。
    骨董屋店主:こうしてこそ、元の作品が持つ全ての特徴とディテールを残すことができるーー忠実かつ慎重に、美しく、しかし飾らず。
    骨董屋店主:今修復しているこの絵もそう。
    骨董修復士:(キャンバスの汚れを軽く拭い、ピンセットを使って細心の注意で補強用の紙を貼り付け、平らにする。そして慎重に比べながら、絵の具を調合していく)
    骨董修復士:(表装をし直せば、これで修復作業は一段落……)

  • 3.修復後
    骨董修復士:(絵の修復は終わったけど……この謎の依頼人は誰なんだろう?)
    骨董修復士:……鑑定士さん、何してるの?
    骨董鑑定士:ーー!
    骨董鑑定士:(手に持っているものを背中にさっと隠した)
    骨董鑑定士:いや、僕は何も……これは……
    白沙茅龍.jpg
    骨董修復士:(後ろに隠したのは……筆?)
    骨董修復士:(……筆の軸には生き生きとした金色の龍の彫刻が施されている。年代物の骨董品ながら、その筆先は一度も使われたことがないように見える)
    骨董修復士:それは……白沙茅龍筆?あなたがこの絵の修復を頼んだ依頼人だったの?
    骨董鑑定士:……本当にすまない。僕は君に隠し事をしていた。この絵のことも、白沙茅龍筆をどこで手に入れたのかも。
    骨董鑑定士:絵の修復が終わったら、こっそり「報酬」を店に置いておくつもりだったんだ……この筆は元々僕の物ではないし、もう興味もないからね。
    骨董修復士:だとしたら、この絵はどうしてボロボロに壊されていたの?
    骨董鑑定士:それは……その……自分で壊したんだよ。スランプに陥って、もう人物画は二度と描かないと決めたから。
    骨董鑑定士:人の顔を描くとなると、いつも絵の中の人物との関係や性別、年齢に関わらず、毎回気が重くなって描き進められなくなるんだ。
    骨董鑑定士:キャンバスが破け、額縁が壊れた時、初めて自分がどんなに悔しかったか気づかされたよ。
    骨董屋店主:芸術家として、長年理想にたどり着けなかったことでますます執念が強まり、プレッシャーも重くなっていったのね……
    骨董屋店主:そして、最後の望みを白沙茅龍筆に託すも、その悲願が叶うことはなかった……そういうこと?
    骨董鑑定士:……
    骨董鑑定士:そうだよ。外的な要因では何の助けにもならない。何が白沙茅龍だーーこんなものデタラメじゃないか。
    骨董修復士:(でも、鑑定士さんは店でよく絵筆を手に取っていた。彼の芸術に対する探究心は本物だ……)
    骨董屋店主:克服できない難題の原因は心の中にあるのかもしれないわ……不思議な道具でも簡単には埋められないようなね。
    骨董屋店主:でも、この筆はどこで手に入れたの?
    骨董鑑定士:……流浪者から買ったんだ。この筆を初めて見た時、目がくぎ付けになってしまってーー
    骨董鑑定士:僕の鑑定経験から言うと、これは絶対に並大抵の品じゃない。
    骨董鑑定士:流浪者は、僕の目の前で自由自在に絵を描いていた。細い竹をするすると描くと、筆先を少し動かして葉の上に新鮮なつゆを乗せた。
    骨董鑑定士:そして、そのつゆはひとりでに消えてしまった……なのにあの流浪者は、この筆は「点睛」に使うのが最適だと訳の分からないことを言っていたよ。
    骨董屋店主:なるほどね。でも、そんな貴重な宝物を買うお金はどうやって用意したのかしら?
    骨董鑑定士:当時の僕にしてみれば、その唯一の突破口をつかめなければ、もうチャンスは二度と訪れない可能性があった。
    骨董鑑定士:彼ももう、なす術がないようだったし……だから値切って、この筆を買い取ったんだ。
    骨董屋店主:骨董という商売は、信用を失えば長くは続けられない……
    骨董屋店主:師匠は常に、「商売で大事なのは正直さ」だと言っていたわ。「正直」が一体何なのか、いい加減なことは言えないけれど……師匠がいなくなった今、チャイナタウンの骨董市場を汚すような真似は看過できない。
    骨董鑑定士:分かったよ……龍舞公演が終わったら、貼り紙を出す。元の持ち主が見つかればいいけど。

  • 4.最長の龍
    骨董屋店主:骨董屋を再開してからだいぶ経つから、店に材料がたまっているわね……次はここにある余ったものを使って、「最長の龍」を作ってみたいわ。
    骨董屋店主:実際、これは前話した不思議な物語に関係しているの。十分に長い龍なら、物語のワンシーンを再現するのに役立ってくれるかも。
    骨董屋店主:修復作業の合間に、できるだけ多くの材料を集めて龍を作りましょう!
    龍舞名簿1.jpg

6日目:日月の鍵(易学先生)

  • 1.修復準備
    骨董屋店主:白沙茅龍……龍灯……残るは「竹葉臥龍」の玉雕だけね。
    骨董屋店主:あの玉雕があれば、生き生きとした龍の動きを表現できるから、龍舞の技の参考に丁度いいのよ。
    骨董屋店主:今は易学先生の手に渡っているみたいだけど、先生は古い鍵を直せば玉雕を貸すと約束してくれたわ。
    骨董修復士:(つまり、今日の任務はこの奇妙な形をした鍵の修復ってわけか……)
    日月の鍵.jpg
    修復分析:汚れ・錆・歪み
    骨董屋店主:確かに相当年季が入っているわね……両端にそれぞれ程度の違う欠損と腐食があるせいで、素材も少しもろくなっているみたい。
    骨董屋店主:特に先端部分の歪みが顕著かしら……この状態では、鍵穴に挿して使うこともできないはずよ。
    骨董屋店主:骨董屋では時々、古い道具の修復作業も請け負っているの。
    骨董屋店主:持ち主は急いで開けたい箱があるのかもしれないわ……
    骨董修復士:この鍵、変わったデザインだけど、所々にこだわりを感じるよ。銀と銅を特殊な技術で溶接して作られているから、酸化した部分を取り除くことさえできれば、きっと本来の輝きを取り戻せるはず。
    骨董修復士:(こんな鍵で開ける箱には、一体何が入っているんだろう……?)
    骨董屋店主:じゃあ、修復に必要な材料を集めに行きましょう。

  • 2.材料提出
    骨董修復士:鍵の元の形をたどって、欠損している部分に合わせて作った金属のかけらと、はめ込むための彩色磁器のかけらを用意したよ。
    骨董屋店主:鍵はもともと複雑なものだけれど、この鍵は特に精緻に作られているわね……
    骨董屋店主:異なる材料でできている太陽と月が合わさっている部分にたくさんの隙間があるせいで、処理がさらに難しくなっているわ。
    骨董修復士:(拡大鏡を使えば、修復が必要な部分がもっと細かく観察できるかも)
    骨董修復士:(照明用のランプをつけて、拡大鏡と銅針を使って欠損や腐食の箇所と程度を記録しながら、時々ハンマーで形を整えよう)
    骨董修復士:(細かい部分までは完璧に仕上げられなかったけど……これも仕方ないよね)
    骨董屋店主:お疲れ様。温かいお茶でも飲む?懸鑑楼の女将からもらったお茶よ。
    骨董屋店主:……ちょっと落ち込んでいるみたいだけど、何かあったの?
    骨董屋店主:……細かいものほど処理が難しいんだって、改めて思い知らされたの。今の条件では限界があるから……ベストは尽くしたつもりなんだけど。
    骨董屋店主:大丈夫よ。誰だって、その時の力だけで全部の問題を解決できるわけじゃないから。
    骨董修復士:じゃあ、これでもう十分ってこと?
    骨董屋店主:そう。拡大鏡さえあれば見える部分は増えるけど、細かい欠損部分が全てわかるわけじゃない。手探りだけで調べつつ修復を進めても、完全に正確にはできない。
    骨董屋店主:私たちが時の流れから形ある物を引き留める力には限りがある……今は今できる最善を尽くすしかないわ。
    骨董屋店主:でも何十年……もしかしたら百年後には、誰かがあなたが修復した品物に残る遺憾に気付いて、その時代の新たな方法で昔の問題を解決してくれるかもしれない。
    骨董屋店主:……所謂、リレーみたいなものよ。少なくとも、この鍵はもう使えるようになったんでしょ?

  • 3.修復後
    易学先生:ありがとうございます。作業が終わったと聞いたので、依頼した鍵を取りに参りました。
    易学先生:お二方のおかげで、急場をしのぐことができそうです。
    骨董屋店主:先生の問題を解決できて、私たちもうれしいわーー新しく来た修復士さんに感謝しないとね。彼女が頑張って仕上げてくれたのよ。
    易学先生:実は今日、この鍵で開けたい箱も持参しておりまして。
    骨董屋店主:箱に何が入っているのか、そんなに急いで確認したかったの?
    易学先生:箱の中身なら、元の持ち主が教えてくれましたーー「竹葉臥龍」の玉雕です。
    易学先生:これまで、玉雕は長らく箱の中に封じられており、鍵を修理しなければ開けられない状態にありました。ちょうど龍舞の技の参考にしたいとのことでしたので、骨董屋にお願いすることにしたのですよ。
    骨董屋店主:この品物をどこで手に入れたのか聞いても?
    易学先生:この古い箱と壊れた鍵は、偶然手に入れたものです。
    易学先生:この間、チャイナタウンの外にある朱橋に行きました。橋の整備作業が突然の大雪で中止になっていたため、人気はなかったのですが……橋の下でかすかな物音が聞こえまして。
    易学先生:まさかと思い、橋の下を覗いてみると、みすぼらしい恰好をした人がよろよろと地面に倒れ、吹雪の中で凍死しそうになっていました。
    易学先生:橋の下では吹き荒れる吹雪をしのぐことも、身を落ち着ける場所を見つけることも不可能でしたので……その人を家に連れて帰ったのです。
    易学先生:彼は意識を失っていましたが、冷えて紫色になった手にいくつかの品物をきつく抱き締めていました。この箱は、その内の1つです。
    骨董屋店主:(質屋のオーナーと易学先生が言っているのが、同一人物である可能性が浮上してきたかも……)
    易学先生:体を温めるショウガ湯を飲ませると、元気を取り戻したのか、彼は私と少し会話をしました。発音が聞き取りづらかったので、恐らくここの住民ではないと思われます。
    易学先生:……彼を何日か泊まらせたのち、うっすらとした雪が地面に残っていたある日、彼はチャイナタウンを去ると言って発ちました。家を出る前に、玉雕の入った箱を私に残して。遠慮したのですが、彼は頑なに譲らず……
    易学先生:彼の身の上に関しては、あまり聞いていません。ただ、少しばかり食べ物を分けてあげただけです。
    易学先生:もしチャイナタウンにとどまることを望んだなら、楽しく年越しもできたでしょうに。
    骨董屋店主:先生は献身的なのね。
    易学先生:とんでもありません。私は何もしていませんから。ただ、またしてもこの世の……無情を感じていただけです。
    易学先生:流浪者が去った後は、彼が残した箱をじっと見つめていましたーー変わった花の模様、精巧な装飾。しかし鍵は壊れている。
    易学先生:私は宝箱を壊さないよう気を付けながら、一筋の望みを抱いて骨董屋に鍵の修復を依頼したのです。
    骨董屋店主:(修復した鍵をはこの鍵穴に入れて少し回すと、穴の中で「カチッ」という軽い音がした)
    竹葉.jpg
    骨董屋店主:箱が開いたわ……これはまさに「竹葉臥龍」の玉雕!
    骨董修復士:(玉雕は、完全無欠の透き通った翡翠玉でできていた。色が明るい部分には満足気な表情の臥龍が彫られており、龍の背中は金で装飾されている)
    骨董修復士:(一方、色が暗い部分には深緑色の生き生きとした竹の葉が形作られていて、同じく金で装飾されている。紫雲のような勢いのある金の模様は、山の霧がかかっているかのようだ)
    骨董屋店主:この玉雕の不思議なところは、これだけじゃないわ……
    竹葉2.jpg
    易学先生:ーー!
    骨董修復士:(ふいに翡翠の龍が首をもたげ、両目と口の中から金色の光を放つと、玉雕が全身に柔らかい七色の光を帯び始め、言葉にできない美しさを纏わせた……)
    易学先生:それでは約束した通り、この玉雕を報酬として店に置いていきましょう。
    易学先生:好きなだけ借りていって構いません。龍舞の技の参考になると良いのですが。
    骨董屋店主:感謝するわ、先生。
    易学先生:……それと、骨董屋に関する噂もいくらか耳にしましたが、ああいった偏見を気にする必要はないかと。
    易学先生:時間は多くの物を変えてしまいます。物の価値も人の情も、皆そうです。塀がいったん崩れればーー誰かが手を伸ばして押そうとするもの。
    易学先生:ここ数日のお二方の仕事ぶりには、チャイナタウンの住民たちも皆感心しています。「物」が修復できるのなら、他のものもきっと修復できるはずですよ。

自由選択:琵琶(劇団長)

  • 1.修復準備
    骨董修復士:今日はこの琵琶にしようかな!皮影劇団の劇団長からの依頼なんだよね。
    骨董修復士:(滑らかな形に美しい彫刻。きっと大事にされてたんだ……)
    骨董修復士:この子が奏でる音を聞いてみたいな……それに、劇団長は音律をよく理解しているから、龍舞公演の音楽にも貴重な意見をいてくれると言っていた。
    劇団長:この琵琶、裡板は丈夫な紫檀でできているの。表面は繊維がより柔らかめの木材が使われているから……とても澄んだ音が出ていたはずよ。
    劇団長:楽器全体に塗られてある糸漆は、割と珍しいものでね。朱と黒の二色ではなく、月白の中に穏やかな青色が混じり、淡い影が差したように見える。
    劇団長:表面には「天女空を飛ぶ」の絵が描かれているけれど、汚れで霞んでしまっているわ……
    琵琶.jpg
    修復分析:琴軸欠損・汚れ・弦の断裂
    骨董修復士:ふぅ。この琵琶を直すには……複雑な工芸や材料が必要になりそうね。
    骨董修復士:表面にある天女が描き直すとして……湿気がある場所から乾燥した場所に移されたのか、表面の漆が少し縮んでいるみたい。
    骨董修復士:琵琶の先、弦の軸にも欠損があるから、対応する金属と木材も集めてこなくっちゃ。欠けた金属は補い、直射日光を浴びて割れてしまった木材は取り換えないと。
    (あとは、修復用の材料だけかな……)

  • 2.材料提出
    骨董修復士:絵に使う紙、補修用の木材と金属、それから絵を描き直すために使う生漆と顔料。
    骨董修復士:(木製の琵琶はしばらく自然乾燥させたから、保存状態も良好ね……さっそく修復を始めようか)
    骨董修復士:(慎重に弦を外し、楽器の欠損部分を補う。そして筆を取って調合した色漆をつけ、息を殺して集中する)
    (天女は再び生き生きとした色彩を取り戻した。彼女はまるで風に乗って舞うように空を見上げている)
    骨董修復士:よし。絵の描き直しはこれでバッチリ!

  • 3.修復後
    劇団長:すごい。記憶の中の「影弄り」と全く同じよ……
    劇団長:琵琶が直ったと聞いたから、新しい弦も持ってきたの……調律すれば、すぐに音を確認できるわ。
    劇団長:(弦を張り、調律を終えると、劇団長は琵琶を抱え、骨董屋の椅子に腰かけた。澄んだ音が響き渡り、一同はその音に引き込まれる)
    骨董屋店主:噂に聞いた通りね……まさか劇団長の琵琶の音が聞けるだなんて、私たちはなんて幸運なのかしら。
    劇団長:そんな大げさな……こちらこそ、修復士さんにお礼を言わないと。「影弄り」が蘇ったのはあなたのおかげよ。
    劇団長:この琵琶は祖父が大切にしていたもので、この「天女空を飛ぶ」の絵も、実は2年前に取り戻した皮影とほぼ同じものなの。
    劇団長:琵琶の本体はもっと昔からあったのだけれど……この絵は、祖父が後から絵師に依頼して描いてもらったのよ。
    骨董修復士:(だから表面の顔料だけ新しく見えたんだ……)
    劇団長:『天女空を飛ぶ』の初公演時、劇団は正にこの琵琶を使って音楽を奏でた……
    劇団長:何度もリハーサルが繰り返されていくうちに、「影弄り」の音色はとうに私の心の奥に刻まれたわ。繊細な弦の音だけが、空を美しく舞う天女を表すことができる。
    劇団長:祖父の話だと、当時彼の古馴染みの絵師も初公演の場にいて……その旋律と動きの流れに感銘を受けたらしくて。
    劇団長:その感動が忘れられなかったから、琵琶に絵を……天女が空へ飛び立つ瞬間を描くことに同意してくれたんだって。
    骨董屋店主:二人は互いに得難い知音だったのね……追求する芸術の道は違えど、心を通わせることができるのは本当に素敵なことよ。
    劇団長:ええ!私も……形や音律、物語には、互いに共通する部分があると思っているの。
    劇団長:元々チャイナタウンに住む隣人同士だし、「影弄り」も直してくれたのだから……約束通り、龍舞公演の音楽に手を貸しましょう。
    劇団長:何か困っていたことでもあったのかしら?
    骨董屋店主:実は、銅鑼隊の音楽が理想的だとは言えなくて……可能なら銅鑼のリズムも、龍舞の多様な動きに合わせてほしいというのが私たちの要望なのだけど。
    骨董屋店主:例えば、龍が身を伏せて一気に突進する時は高ぶらせ、うねる時はもっと活発にしたい、そういう細かいところが、どうも上手く調整できないらしいのよ。
    黒盤レコード.jpg
    劇団長:劇団は様々な皮影戯を上演してきたから、参考にできる黒盤レコードがたくさんあるわ。
    劇団長:その中には、雰囲気が賑やかで変化に富んだ銅鑼の音楽も入っていたはず。
    劇団長:龍舞公演の参考になるのなら、どうぞ使って!

自由選択:模範マシーン(コバン)

  • 1.修復準備
    骨董修復士:今日は……この時計にしようかな。コバンからの依頼ね!
    骨董修復士:(年代物の機械式時計。外装は主に銅製、文字盤は陶器でできてる)
    骨董修復士:(依頼人は「模範マシーン」と呼んでいたけれど、この機械式時計の動きは……メチャクチャとも言えるな)
    骨董修復士:コバンは火噴き芸が得意で、賑やかな場所も好きだから、龍舞公演の盛り上げ役を買って出てくれたんだよね。本当にありがたいことだよ……すぐにこの修復を始めよう!
    骨董屋店主:針が規則なく動いているのも「何らかの不具合」のせいかしら……でも、一体どうして?
    骨董屋店主:とりあえず、細かいことは見た目だけでも修復してから考えましょう。
    模範マシーン.jpg
    修復分析:塗料剝落・欠損・錆
    骨董修復士:欠損がある以外は、銅と漆の処理くらいかな……他の品とほぼ変わらないね。これなら問題ないと思う!
    骨董修復士:(材料を集めに行こう!)

  • 2.材料提供
    骨董修復士:金属と陶器の欠損部分をしっかり見比べて、補修の材料を選んで……緑と近い色の塗料も手に入れた。
    骨董屋店主:再劣化を防ぐため、材料を探すついでにコーティング剤も買ってきたわ。
    骨董屋店主:これで空気中の汚染物も、砂ぼこりや酸性雨も……本体を傷付けにくくなる。
    骨董屋店主:骨董屋にある他の品にも使えるし……コーティング剤は乾いても一切痕跡を残さないから、理想的な仕事道具なの。
    骨董修復士:(時計の破損したパーツを1つずつ補い、コーティングも施した)
    骨董修復士:(古い木棚にある他の品もコーティングしよう。特に脆い粘土の王冠は……あれ?)
    骨董修復士:摩耗による痕跡も多いけれど、妙に新しく見える部分もあるな……)
    骨董屋店主:依頼人が店に着いたら、またいろいろと聞いてみましょう。

  • 3.修復後
    コバン:ボンーー!ボンーー!(コバン、来たよ!あけましておめでとう!コバンの時計が直ったんだって?)
    コバン:ボンボンボンボン!(火鍋屋が落ち着いたから、すぐに来たんだ!)
    コバン、あけましておめでとう!
    骨董屋店主:あなたの時計なら、綺麗になったわよ。ただ、まだ少し問題があってね。
    骨董屋店主:申し訳ないけれど私たち、機械の原理には疎くて。時間を正しく刻むようにしたいのなら、他の人に聞く必要があるかもしれないわ。
    コバン:ボン……(うーん、そうだなあ…)
    コバン:ボンボン……(時計を正常の状態に戻すには……他の人に聞く……)
    骨董修復士:(あれ……コバンが珍しく迷ってる。どうしたのか聞いてみよう)
    骨董修復士:コバン、もしかして何か悩みでもあるの?
    コバン:ボンボン、ボンボンボン……(コバンはね、時計の針が勝手に動く「問題」は直さなくてもいいんじゃないかと思ってて……)
    コバン:ボンボン、ボン!(コバンと同じで、機械の身体だけど自分の考えがあるのかもしれないし!)
    コバン:ボンボン、ボンボン?(コバンは、好きに動く時計が好きなんだ。だって、理想的な「模範」は……永遠に疲れを知らず、求められた歩幅に合わせることだとは限らないでしょ?)
    コバン:ボンボン!(コバンにとっては、もう十分素敵な宝物だよ!)
    骨董屋店主:ええ、もちろんよコバン。そういうことなら、このままにしておきましょう。
    骨董屋店主:針が正しく時間を刻まないことが、使用者にとって「問題」とならないのなら、「直す」必要もなくなる。
    骨董屋店主:あなたも、この時計と一緒に自由な一年を過ごしてちょうだい。ただし、持ち帰るのはまた後日ね。それでもいいかしら?
    コバン:ボンボン!ボン!(コバン、分かった!)
    コバン:ボンボンボン!(龍舞を盛り上げる火噴きショーをやるって、骨董屋に約束した!時計を取りに来るまでに、たくさん練習しておく!)
    骨董屋店主:ありがとう、コバン。新年だから、火は大きい方がいいわ。あなたがいてくれれば、きっとより多くの観客を集めることができるはずよ。
    コバン:ボンボンボン!(コバンは喜んで力になるよ!)

自由選択:粘土の王冠(獅子舞)

  • 1.修復準備
    骨董修復士:今日は……獅子舞さんの王冠にしようかな!
    骨董修復士:(陶製の王冠……造りはここにある他の品よりも少し粗い。断面を見ると、胎質も少しおかしいような気がする)
    骨董修復士:彼は毎年獅子舞ショーの花火を担当しているから、ついでに私たちの分も用意くれると言ってくれた。彼のためにも、これをしっかり直してあげないと。
    骨董屋店主:これはうちで請け負ったもう一つの依頼で、この王冠を元の姿に戻してほしいというのが持ち主の要望よ。
    骨董屋店主:年季の入った痕跡が所々に残っているわね……それに、特殊な形の痕も。確か小さい頃、どこかで似たような痕を見た覚えがあるような……うまく思い出せないわ。
    骨董屋店主:これは、ここにある骨董の中で唯一の陶製品よ。引き受けた以上、本来の姿通り、忠実に修復しましょう。
    粘土の王冠.jpg
    修復分析:欠損・細工の抜落・汚れ
    骨董修復士:陶製品は粘土を焼いて作られるもので、粘土は様々な比率の鉱物で構成されている……
    骨董修復士:だから陶器の構造は他の品よりもゆるく、隙間も多くて吸水性に優れているんだよね。
    骨董修復士:嵌め込まれていたものが落ちているみたいだし、壊れやすい材質だから、折れた断面がいくつかできてる。あとは汚れかな……
    (どうしてかはわからないけれど……何だか奇妙な感じがする。とりあえず修復用の材料を集めよう)

  • 2.材料提出
    骨董修復士:対応する顔料を買い、王冠本体と一緒に送られてきた破片だけでなく、その他の補修材料も準備できた。
    骨董修復士:あっ、いけない!危うく接着剤を忘れる所だった……これなら流動性が良くて断面全体に広がるから、理想的な接着効果を得られるはず。
    骨董修復士:(しっかり洗浄して、王冠の破片を繋ぎ合わせ、色も本来の色に近付けた)
    骨董屋店主:あとは持ち主が来るのを待つだけね……

  • 3.修復後
    獅子舞:おおっ、綺麗になってる!ガッハハーーお前、いい腕してるじゃねぇか!
    獅子舞:道理で今日は気分が良かったわけだ。やっぱ、いいことは立て続けに起こるもんなんだな!
    獅子舞:まあ、毎日街中を歩いていりゃあ、そのうち幸運は降ってくるだろうが……
    骨董屋店主:この王冠はどこで手に入れたの?
    獅子舞:そいつはーーまあ、偶然だな。あの日、いつも通り龍舞広場を通ろうとした時、道端で商人が露店を出してたんだ。
    獅子舞:商人は見ない顔だったが、何人もそいつを囲んでて、何やら言い争っているのが聞こえたもんだから、様子を見に行ってよ。
    獅子舞:この王冠は珍しいお宝だが、うっかり壊してしまったのだとそいつは言っていた。破片も全部取ってあるってな。
    獅子舞:新年間近で――金の足しにするためじゃなければ、あんな風に安売りはしなかっただろう。
    骨董屋店主:その言い争いというのは、王冠が本物かどうかに関するものだったんじゃない?
    獅子舞:ああ。通行人が詐欺師のやり口だと言って、商人は「家に代々伝わる」証拠とやらを出してきた。
    獅子舞:もう一人の学がありそうな男が、ペラペラと商人の代わりに分析したり論証したりーーよく分からなかったが、この古傷は偽造できないのだそうだ。
    獅子舞:そしたら、どうなったと思う?最初に疑問を口にしていたやつが説き伏せられちまって、慌てて買い取ろうとしたんだよ。だが商人は……了見が狭いやつには譲らないと、そいつを断った。
    骨董屋店主:だから、あなたはこの王冠を買い取ったの?
    骨董修復士:(成り行きが……怪しくなってきたかも。獅子舞さんが見た二人は結託していて、芝居を打っていた可能性がある)
    獅子舞:ああ、そうだ。いいことをしたと思わないか?
    獅子舞:別に掘り出し物が目的だったわけじゃない。商人があまりにも不憫だったからーーせっかくの新年だし、路頭に迷うのはかわいそうだろう。
    獅子舞:最近、獅子舞の人気はすっかり龍舞隊に持っていかれてるが、「慈善事業」をしたと俺を褒めてくれてもいいんだぜ?
    獅子舞:手品師匠に自慢すれば、きっと羨ましがられるだろうなーークハハハッ!
    獅子舞:ああ……そういえば、帰りにあの商人がずいぶん昔にチャイナタウンに来たことがあるという噂を耳にしたんだが……どうも商売をダメにされて、追い出されたらしい。
    骨董修復士:(似た境遇を持つから、困っている人の気持ちが分かるんだね……でも……)
    骨董屋店主:この王冠、いくらで買い取ったかは覚えてる?
    獅子舞:おお、大したことなかったぞ。「いいことがあった」って言っただろ?
    獅子舞:俺が道端で家財を売ることになったら、宝石もお宝もーー食えないし寒さもしのげない。温かい肉まんやスープの方がよっぽど価値がある。
    骨董屋店主:そう。なら良かったわ……
    骨董屋店主:実は、この王冠にはまだ確認できていないところがあるの。数日後にもう一度骨董屋へ来てくれる?
    獅子舞:ああ、構わない。王冠は好きに見てくれ。何かとんでもない発見があるかもしれないしな……
    獅子舞:とりあえず、今日見た限り本当によく修復できている。すぐに約束していた龍舞道具を準備しに行こう。
    獅子舞:俺に頼んで正解だったな!獅子舞も花火を使って盛り上げるんだ。
    獅子舞:だから、チャイナタウンの花火師匠とは仲がいい。いろんなサイズのものを揃えてくれるぜ。あとは俺に任せとけ!
    骨董修復士:獅子舞さん、本当にありがとう!

自由選択:ハーモニカ(学徒)

  • 1.修復準備
    骨董修復士:今日は……学徒さんから依頼された、このハーモニカにしようかな。
    骨董修復士:(工場で生産されたものではなさそう。文字があったみたいだけど、何と書いてあったかはもう読み取れない……)
    骨董修復士:(ハーモニカの専門職人によって作られたもの……っぽくもないな。長い時間と心血をかけて作られた、高価な商品に見えないもの)
    骨董修復士:学徒さんも骨董店へのお礼に、ロボットを操って遠隔で花火を点火してくれると言ってた。
    骨董修復士:龍舞公演は人手が足りないし、機械なら人工でやるより精確だから、すっごく助かるんだよね。
    骨董屋店主:なるほど……これもまた、個人の痕跡が多く残された品ね。
    骨董屋店主:古い私物を直すのは、骨董屋の業務範囲には含まれないとだけど……こういった思い出詰まった品を修理すると、自然と穏やかな気持ちになれるわ。
    骨董屋店主:家庭で手作りされたものは、最初から完璧ではない場合が多い。例えばこのハーモニカも、よく見ればネジの位置があっていないでしょう?でも、使用者はその痕跡を温かいものとして受け止めて、問題だとは思わないの。
    骨董修復士:店主にもそういう物があったの?
    骨董屋店主:私は……小さい頃に師匠が武術を教えてくれたのだけど、その時練習に使っていた人形がそうだったわ。日々伸びている私の身長に合わせられるようにと、軟木が使われていたのよ。
    骨董屋店主:細かいところは粗削りだったけれど、尖った部分は丁寧に平らに磨かれていた……私に怪我させないためにね。
    ハーモニカ.jpg
    修復分析:塗料剝落・ネジの緩み・筆跡の摩耗
    骨董修復士:このハーモニカは表面の文字がすり減っているほか、隙間にある汚れの除去、それから欠損部分と緩んだ部品の処理も必要ね。
    (材料を集めに行こう!)

  • 2.材料提出
    骨董修復士:取り換える金属パーツと……ごく普通の白い塗料を用意した。
    骨董修復士:店には絵や書き物に使う筆がたくさんあるから、それを使えばハーモニカの文字を緻密に再現できると思う……
    骨董修復士:(文字が書かれていた手作りのハーモニカ。どんな思い出が宿っているんだろう……?)
    骨董修復士:(ハーモニカの汚れを丁寧に取り除き、欠損部分を修復した後、文字を書こうとして手を止めた)
    骨董修復士:(これは、持ち主が店に来てからにした方がいいかもしれない……)

  • 3.修復後
    学徒:こんにちは、あけましておめでとう!店に預けたハーモニカが直ったんだって……?
    学徒:ボロボロだけど……私にとってはすごく大切なものなんだ。
    骨董屋店主:丁度いいところに!もうほとんど終わったのだけどーーハーモニカに書かれていた文字がまだ修復できていなくて。
    骨董屋店主:修復士さんは、あなたの意見を聞きたいと言っているわ。
    学徒:そうだったんだ……もちろん、このハーモニカのことなら全部覚えてるよ。
    学徒:でも、正直ーー新しい文字には書き直したくないかも。本当はそういたほうがいいんだろうけど……それは本来の姿じゃない。まるで店に並んでるものと同じに見えちゃうから。
    学徒:実際、このハーモニカを作った人は……優しくて、少しそそっかしくてーーでも、そんなところも嫌いじゃなかった。
    骨董修復士:(ハーモニカを作ったのは誰なんだろう?)
    学徒:当時……ハーモニカに文字が書かれた直後、それが乾くのを待たずに吹こうとしたら、文字が指で少し擦れてしまったの。
    学徒:もちろん、こんな手作りハーモニカの小さな欠点を気にする人はいないし、むしろ少しぼやけた文字の方が親しみと温かさを感じられたんだ。
    学徒:修復士さん、難しいかもしれないけれど……その文字を私の記憶通りに再現してくれないかな?
    骨董修復士:(「修復」って……欠けたところを全て直さなければならないわけじゃなかったんだね)
    骨董修復士:(偶然残された痕跡は何らかの伏線となり……何年も後に温かい思い出を呼び起こす鍵となることもある)
    骨董修復士:もちろん!私が書いている横で、できる限り細かく教えてくれる?
    骨董修復士:(学徒の説明を聞きながら、しばらく筆を進めた。力強い手で書かれたような筆跡を残し、軽やかにカーブを描いたのちに、筆先を持ち上げる)
    学徒:そう、こんな感じ!あとは……
    骨董修復士:(指をまだ乾いていない白い塗料につけ、文字の上で掠らせた)
    学徒:正しくこれがハーモニカの本来の姿だよ……約束通り、骨董屋にはお礼をしないと!
    学徒:前々から龍舞公演は広場で行うと聞いていたし……龍舞の道はとてつもなく長いから、人手も足りないだろうと思って。
    学徒:実は、ロボットの調整ももう終わってるんだ。これで龍舞の道の花火を遠隔で点火できる……龍舞公演の成功を祈ってるね。

自由選択:鳳凰の彫像(新春の予言)

  • 1.修復準備
    骨董修復士:今日はこの彫像にしようかな!
    骨董修復士:(神鳥が羽ばたく姿。光り輝く翼は埃を被っているけれど、本来の煌びやかな姿が十分想像できる……)
    骨董修復士:わざわざ修復に届けてきたくらいだし、きっと占い師さんの大切なものなんだろうな。
    骨董修復士:彼も龍舞公演を楽しみにしてくれるみたいだから、修復作業が終わったら、龍舞公演の幸運祈願をお願いできるかも。
    骨董屋店主:この彫像、ほとんど異なる貴金属で作られているわね。黄金は安定した性質を持つから、その部分は綺麗にするだけで問題ないでしょう。
    骨董屋店主:神鳥の両目には宝石が嵌め込まれていて、羽の先は綺麗な赤色をしている。一体何に使うものなのかしら……
    鳳凰の彫像.jpg
    修復分析:羽先の色落ち・汚れ・歪み
    骨董屋店主:この彫像の依頼人は、チャイナタウンにいる占い師さんよ。まだ修復前とは言え、ただならぬ雰囲気を感じるわね。
    骨董修復士:欠けていたり、歪んでいる部分の形や材質の記録はこれで全部かな。羽先の赤色も色軸を使って焼き直さないと。
    骨董修復士:汚れた部分も、本体を傷付けない前提のもとで洗浄する必要がありそう。
    骨董修復士:(あとは材料を集めるだけね……)

  • 2.材料提出
    骨董修復士:欠損部分の金属や、両目に嵌め込む宝石は用意できたし……色を付けるための材料も揃った。
    骨董修復士:色軸を焼くのと、黄金の形の調整作業は、少し時間がかかりそうだな……
    骨董屋店主:脆く、不安定な性質を品ほど保存は難しい……多くの場合、保管条件も理想的ではないわ。
    骨董屋店主:気体や埃、水、温度の変化から月日の流れまでが、物の状態に影響を及ぼしてしまう。
    骨董屋店主:それに加え、時には植物の根、砂ぼこり、生物、酸性雨などといった要素も考慮しなければならないから、かなり厄介なのよね。
    骨董修復士:(洗浄し、宝石を嵌め込んで調整を行った後、神鳥の翼は徐々に光沢と明るさを取り戻した。天然の宝石が嵌め込まれた両目は、まるで炎を宿しているように見えた……)

  • 3.修復後
    新春の予言:あけましておめでとう。そろそろかと思って……彫像の修復状況を見に来た。
    骨董屋店主:驚いたわ。まだ知らせにも行っていないのに……
    骨董修復士:(本当にすごい占い師なんだ……)
    新春の予言:大切な品だから、ずっと念頭に置いていたのだ。それに、逐一客に知らせるのも手間だろうから、省いてやった。
    新春の予言:さすがの腕だな。これは形だけを再現すれば本来の神々しさを取り戻せるような代物ではない。
    骨董屋店主:骨董屋には多くの貴重品が集まるけれど、これは群を抜いて珍しいものよ……やっぱり特別な品なのかしら?
    新春の予言:この神鳥の彫像は、材料こそ贅沢に使われているが、その輝きや技術をひけらかすためにできたものではない……不思議な鳥のイメージを通して、一種の……重要な法則を刻むために作られた。
    骨董修復士:重要な法則?
    新春の予言:チャイナタウンへ来る前、私は森で暮らし……森の一部となった。
    新春の予言:私たちからすれば、草木も石ころも、人間と同じくらい豊かな感性をを持っている。
    新春の予言:人々が新春の訪れを祝うこの時期、それらの命も間もなく目覚めの時を迎え、喜びを感じることだろう。
    新春の予言:私は啓示を受け、常人には見えない「軌跡」を目にすることができるーー万物に宿る魂は、絶え間なく輪廻を繰り返しているのだよ。
    骨董屋店主:彫像の鳥も、その法則を表しているの?
    新春の予言:ああ、いかにも。
    新春の予言:ーーこの鳥は自身を燃やすことで、灰の中から再び生まれ変わる。こうして私たちが想像もできないような、長い時を過ごしてきた。
    骨董屋店主:だからあなたは、この彫像を大切にしているのね。
    新春の予言:……それだけではない。実際のところ、これは私個人の好みでもある。……鳥類が好きなんだ。
    新春の予言:長年ずっと私の傍にいてくれたのも、この使い鳥だったからな。
    (隻眼のフクロウが占い師の周囲を一周し、その肩にフワリと留まった)
    新春の予言:店主殿と龍舞隊の師弟は、それぞれわだかまりを抱えているようだ。そのわだかまりが解けることを心から祈ろう。
    新春の予言:修復の依頼は完了した。感謝として、龍舞公演のために祈りを捧げさせてもらう。
    新春の予言:占い師とて、未来の全てを把握することはできないが、私が知る限り、君達はきっと龍舞公演で望むものを手に入れられるはずだ。
    新春の予言:寒い冬もまもなく終わり、雪解けの水は石を潤す……縁起の良い龍舞にはピッタリだろう。
    骨董屋店主:ありがとう。

7個修復後

最後の客を送り出すと、骨董屋の店主とスタッフたちはようやく一息つき、テーブルを囲んで座った。
新年間近ともなると、束の間の休暇ですらありがたいものだ。
修復が終わり、まだ持ち主が取りに来ていない品物が古い木棚に並べられている。
色がくすんでさびた金属は輝きを取り戻し、色あせた織物やキャンバスには再び色が付けられていた。
そして龍舞公演のためにお客さんが提供してくれたたくさんの協力と、「ありがとう」の声。

骨董鑑定士:僕が骨董屋の仕事を引き継いでからずいぶん経つけど、こんなに繫盛したのは初めてだ。いっぱい助けてもらったんだから、龍舞公演はきっとうまくいくさ。
骨董鑑定士:何日も忙しく立ち働いた後でやっと休めると思ったら、前みたいに静かだとかえって落ち着かないな。
骨董鑑定士:今まで、年末年始はどうやって過ごしていたかって?そりゃあ……店で一人、銘茶をいれて、湯飲みから昇ってくる湯気と外のにぎやかさを眺めていただけだよ。
骨董鑑定士:実は、店主と一緒に店で年を越すのも今回が初めてなんだ。
骨董屋店主:……新年は集まった人々が過去を振り返り、心残りを洗い清めて、そこから未来に向かって踏み出すための時期よ。
骨董屋店主:昔はこんな時でも、チャイナタウンに帰ったことはなかったーー他人との繋がりなんて、胸の内に留めておいたほうが私にとっては気楽だったの。
骨董屋店主:正直、骨董屋の商売が少しずつ盛況を取り戻すまでは、こういう「気持ちを新たにする」祝日にいること自体、場違いなんじゃないかとも思ってた。
骨董屋店主:根も葉もない噂が流される中、この骨董屋は師匠がいなくなったことで時代に取り残されていったわーーおまけに新たな店主には、この事業を担うだけの技量が少ない。
骨董修復士:(やっぱり、店主も悩んでたんだ……)
骨董修復士:(この骨董屋の先代店主は鋭い鑑識眼と数多の偽物を打ち砕いたハンマーで骨董業界の風格と規律を打ち立てたと聞いたことがある)
骨董修復士:(でも最後は間違って「本物」の骨董品を打ち壊してしまい、失意の中で引退し、この店を当時まだ若かった新しい店主に受け渡したって……)
骨董屋店主:でも、今は……新しい一年を迎える節目で、骨董屋と一緒に進むべきだと思ってる。
骨董屋店主:この変化は、あなたの力なしには起こせなかったわ、修復士さん。
骨董修復士:私のほうこそ、お礼を言いたいよ!私はあなたのおかげで職に就けたんだし、このチャイナタウンで身を落ち着ける居場所を持てたんだから。
骨董屋店主:……
骨董屋店主:師匠のハンマー、あれからずっとこの店に仕舞われたままなの。そろそろ出して、磨いておかないと。
骨董屋店主:ーー実はここ数日、店で修復作業をしている間も……私はずっと、この中にも「偽物」が1つあるんじゃないかと疑っていたのよ。
骨董修復士:(おかしいな……依頼人が持ってきた品物は、全部が全部骨董品というわけじゃなかった。なのに、そのいずれかが「偽物」かもしれないってどういうこと……?)
骨董修復士:その「偽物」というのは……具体的に何のことなの?
骨董屋店主:「本来あるべき姿でない物」が、偽物……これも、師匠が骨董商売を長年続けてきた中で教えてくれたことよ。
骨董屋店主:つまり、「本物」と「偽物」に分けられるのは骨董品だけじゃない。昔の思い出が込められた品物は、たとえ長い歴史の洗練を受けていなくても、貴重な価値なんてなくても、それは「本物」なの。
骨董屋店主:そして、不誠実な心で作られ、噓や下心が込められた品物はーー「偽物」。
骨董屋店主:師匠は若い頃、このハンマーでたくさんの「偽物」を打ち砕いたわ。盗掘された宝物のほかにも、骨董業界から追放された所謂「贋作」が無数に壊されたことで、大勢の投機者たちの噓が暴かれた。
骨董屋店主:武道も商売も、正直でいることが大切なのよ。
骨董修復士:(なるほど……)
骨董屋店主:私は、修復の依頼を受けた品物のうち、1つが下心のある人間が作った「偽物」だと確信している。
骨董屋店主:私の見立てによれば、偽造者は常習犯ね。偽造の痕跡と手口から考えて、師匠があの年に追放したのと同じグループの人間よーーめっきり見なくなっていたけれど、師匠の不在をいいことに舞い戻ってきたと考えるべきかしら。
骨董屋店主:だから、私は骨董屋の従来の規律に立ち返って対処するつもり。偽物をこれ以上譲らせたり、流通させたりしてはダメ。可能であらば、廃棄してしまうのがベストだけどーー持ち主を説得してみましょう。
骨董屋店主:でも、その前に……あなたはどれが「偽物」だと思う?

◆粘土の王冠以外を選択
骨董屋店主:……いいえ。「贋作」は粘土を焼いて作ったもので、表面には劣化処理が施されているわ。でも残念ながら処理が不完全だし、取引の手口もそこまで巧妙じゃなかった。
骨董屋店主:この「粘土の王冠」は獅子舞の依頼ね。大きな損失を被らずに済んだのは、不幸中の幸いよ。
◆粘土の王冠を選択
骨董屋店主:ええ。この「粘土の王冠」に違いないわ。わざわざ劣化処理までしてあるけど、手落ちがあった……それに、取引の手口もそこまで巧妙じゃなかったし。
骨董屋店主:この品物はチャイナタウンの獅子舞のものね。大きな損失を被らずに済んだのは、不幸中の幸いよ。
骨董修復士:(獅子舞さんは元々、今日店に来る予定のようだ……)

(店主が鑑定の結果を伝えると、獅子舞は新しく修復した「王冠」を一目見てため息をついた)
獅子舞:偽造者めが……憎たらしいな!何だか様子がおかしいと思ってたんだ。
獅子舞:あの贋作商人たち、ついこの間までチャイナタウンでぶらぶらしてたってのに、今日行ってみたらもう跡形もなく消えてたんだぜ!
獅子舞:はあ……せっかく気持ちよく年末年始を過ごせるよう、俺が親切にしてやったのに。コホン……いいだろう。小利をむさぼろうと考えたことがないわけじゃないが……嘘はついてないぞ!
獅子舞:王冠は壊したければ壊してもらって構わない。どうせ偽物だしな!金が惜しくないわけじゃないが、めでたい時期にこんな物を家に置いておきたくない。
骨董屋店主:ありがとう。
獅子舞:小さい事だーー感謝はいらん。礼がしたけりゃ、懸鑑楼の女将から点心をいくつかもらって来ればそれでいい。
獅子舞:それにお前たちの店は、今回のことで規律を立て直さないといけないんだろ?……コホン、噂の1つ2つは聞いたことがあるからだ。
獅子舞:でも今は、稀に見る頑固者以外、チャイナタウンの住民は皆お前たちのことを認めてる……偽物を壊した話が伝われば、あの贋作商人たちももうここへは来ないだろう。
獅子舞:まあ、要はあれだーー砕砕平安(訳注:物が砕けるのは縁起がいいという意。「歳歳平安」と字音が同じ)だ。骨董屋の商売もますます繁盛するだろうよ。それに、あと何日かすれば龍舞公演も見れる。最高じゃないか!
骨董屋店主:(皆が見守る中で、ハンマーを振り下ろすと偽物の粘土の王冠はガラガラと音を立てて砕け、あたりに飛び散った)
骨董修復士:(これで、ホコリをかぶっていたハンマーはまた日の目を見ることになった……これは間違いなく骨董屋の、新たなスタートを象徴する出来事だよね)
獅子舞:何見てるんだよ……?だから、惜しくなんてねぇって!もういい……俺は行くぞ。
獅子舞:今度の龍舞公演、楽しみに待ってるからな。
骨董屋店主:ええ、絶対にがっかりさせないわーーそうだ、言い忘れてた。あけましておめでとう、獅子舞さん!
獅子舞:おう、あけましておめでとう!
骨董修復士:(獅子舞の姿がチャイナタウンの街角に消えていく。骨董屋と道沿いの他の店は、ほぼすべて店じまい済みだ……)
骨董修復士:(街の空気が前ほどは冷たくないように感じる。つり下げられた赤い提灯が片付けられる頃には、新しい春が来ているのだろう)

終わり

街角事件

  • 龍舞隊メンバー
    • 龍舞隊メンバー:あけましておめでとうございます!リハーサルの合間に龍舞隊広場へ来てみたのですが……チャイナタウンは噂通り賑やかですね。
      龍舞隊メンバー:このチャイナタウンで一番印象に残ったのは、やっぱり懸鑑楼の点心です。
      龍舞隊メンバー:中々話す機会がなかったのですが、改めてお礼を言わせてください。私たち龍舞隊のためにいろいろと準備してくれて、本当にありがとうございました。
      骨董修復士:いえ、お礼なんて……
      龍舞隊メンバー:叶うことなら、公演前にもう一度懸鑑楼で点心を食べたいものですね!ですが、懸鑑楼は龍舞広場にはないようで……
      龍舞隊メンバー:懸鑑楼への行き方はご存知ですか?
      龍舞隊メンバー:本当に何とお礼を言えばいいか……そういえば、色々な材料を集めていると聞きましたよ。ぜひこれを受け取ってください!
    • 龍舞隊メンバー:お待ちください、修復士さんーー
      骨董修復士:あ、龍舞隊のメンバーさん……何かあったの?
      龍舞隊メンバー:実は……龍舞公演で使う衣装を確認していたら、一部の衣装が破損していることに気付きまして。
      龍舞隊メンバー:龍舞公演は花火と合わせて行うため、どうしても火花が衣装を傷付けてしまうのです……
      龍舞隊メンバー:見てください。ここ、それにここも!
      龍舞隊メンバー:……なので、本番までに新しい衣装を仕立ててもらえるよう、裁縫屋へ新しい布を届けに行く途中なのですが……
      龍舞隊メンバー:往来する時間を考えると、今日のリハーサルに間に合わないかもしれないのです……ご存じの通り、うちの師匠は相当厳しいですから。
      龍舞隊メンバー:お願いします!どうか私たちの代わりに、この布を裁縫屋まで届けてくださいませんか?余分にあるので、余ったらそれはあなたに差し上げます。
      骨董修復士:それは大変!皆、龍舞公演を楽しみにしているもの……私に任せて。
  • 骨董鑑定士
    • 骨董鑑定士:やあ、また会ったね。まだ広場で材料集めを続けていたの?
      骨董鑑定士:うん、修復もいい感じだよ……鑑定士さんは?
      骨董鑑定士:僕はちょっと、文具店に用があって。オーナーが珍しい顔料や紙を仕入れたと聞いたから。
      骨董鑑定士:貝がらを砕いて作られた紫に、孔雀石や瑪瑙製の岩彩。見逃すわけにはいかないよ……
      骨董鑑定士:原料や製法の違いによって、顔料の着色力や沈殿具合も異なるんだ。君も一緒にどう?
      骨董鑑定士:今は特売中らしいから、興味のある商品があれば、いい値段で手に入ると思うよ。
      骨董修復士:いいね、おもしろそう!
      骨董鑑定士:最近、夕焼けをテーマにした風景画を描こうと思ってるんだ。この赤い顔料なら、僕の目に映る空の色と完全に一致している……
      骨董鑑定士:余った画材は、骨董屋の修復作業に使えるかもしれないしね。
    • 骨董鑑定士:奇遇だね。君も龍舞広場をうろついているのかい?
      骨董鑑定士:でも、君の様子を見る限り、ただ散歩に来たわけでもなさそうだ。もしかして、店主に材料集めでも頼まれた?
      骨董鑑定士:僕……?いやだな、誤解しないでよ……店番から抜け出したことは、店主には内緒ね。鑑定士とは、市場でたくさん観察して、自分の手で触れることで経験を積むものだから。
      骨董鑑定士:骨董屋はもう何年も稼働してないけど、世の中の贋作技術はその間も日々進化している。
      骨董鑑定士:贋作商人は仕事がない鑑定士を待ってはくれないから、よくここら辺を見て回ってるんだ。
      骨董修復士:何か発見はあった?
      骨董鑑定士:……あった。まだ確証はないけど、当時先代店主に追い払われた贋作商人が、またチャイナタウンに戻ってきた可能性がある。
      骨董鑑定士:もしかしたら、うちの店にも注意してもらわなきゃならないものがあるかもしれない。たとえば、ほら……ケチで鑑定の経験がない依頼人が来た時とか。
      骨董鑑定士:僕も店主のために良質の木材を少し買っておいたから、代わりに持って帰ってくれる?
  • 劇団長
    • 劇団長:ああ……残念。
      骨董修復士:どうかしたの?
      劇団長:自分にピッタリな龍舞道具を見つけたと思ったんだけど――ほら、これ。手のひら2つ分くらいの折り紙の龍。
      劇団長:龍身は2本の細長い木の棒で繋がれていて、皮影よりも簡単に操作できるの。
      劇団長:でも、棒が1本緩んでしまって……あっ、そうだ!修復士さんなら直せるかしら?
      骨董修復士:うん、簡単に固定すれば元通りになるよ。
      劇団長:ありがとう。店主さんは賢くて器用な修復士さんを見つけてきてくれたのね!
      劇団長:丁度余ってる布があるから、お礼に差し上げるわ!
    • 劇団長:あけましておめでとう!また会ったわね!
      骨董修復士:急いでるみたいだけど、どこへ行くの?
      劇団長:この間、あなたたちの「点睛儀式」を見た後、龍舞に関する資料を調べてみたら、もうワクワクしちゃって!
      劇団長:だから今度は、空を舞う龍をテーマにした型を作れないかと思って。材料はもう揃ってるんだけど、こんな時に彫刻に使う刃物が錆びてしまったのよ……
      劇団長:この刃物は幅が狭くて形も独特だから、普通の彫刻刀で代用できるものじゃなくて……陰、陽の掘り方、虚、実の線、どれもちゃんとしたこだわりがあるの。
      劇団長:だから急いで文具店に注文したんだけど……
      劇団長:今はちょっと、手が離せなくて。代わりに文具店に行ってきてくれないかしら?
      骨董修復士:うん、いいよ。丁度あちこちのお店に材料を取りに行くところだったから!
      劇団長:この彫刻刀があれば、すぐに劇団の新しい演目を上演できるかもしれないわ!
      劇団長:この材料を受け取って。私からの感謝の印よ!
  • コバン
    • コバン:ボンボン!ボンボン!(コバン、また広場で修復士に会った!コバンは今急いでる!)
      骨董修復士:どこに行くの?
      コバン:ボンボン、ボンボン……(コバンは変面王のために、 臉譜製作用の塗料を買いに行くところで……)
      コバン:ボンボン、ボンボンボン……(コバンは変面王のために、店に貼る福の字も買いに行くところで……)
      骨董修復士:……それって、まだ間に合うかな?
      コバン:ボンボン、ボンボンボン!(新年はいつも忙しないからね!コバンが不器用なのも問題だけど……)
      コバン:ボンボンボン?(コバンを助けてくれる?)
      骨董修復士:もちろん!取りに行く手助けならできるよ。
      コバン:ボンボンボン、ボンボン!(コバン、助かった!コバンの代わりに、文具店から塗料を取ってきてほしい!)
      コバン:ボンボン!ボンボン!(やった!これだよ!)
      コバン:ボンボンボンボン!(コバン、お礼に塗料を少し分けてあげる!)
    • コバン:ボンボン!ボンボン!(あけましておめでとう!修復士さん!)
      骨董修復士:あけましておめでとう、コバン。今日は広場で何をしているの?
      コバン:ボンボン、ボンボンボン……(コバン、自分の新しいモデルについて考えてた……もうすぐ新年で、チャイナタウンの皆は新品の服を着てる……)
      コバン:ボンボンボンボン!(まあ、防寒具とかはコバンに必要ないんだけどね!コバンは寒くないから!)
      コバン:ボンボンボン!(新しい色を塗って、新しい模様を描けばいいんだ!)
      コバン:ボンボン、ボン?(だから、骨董屋の鑑定士にお願いしようと思ってるんだけど……コバンの代わりに聞いてくれないかな?)
      骨董修復士:分かった。鑑定士さんもきっと了承してくれると思うよ。
      コバン:ボンボンボン!(よかった!コバンが選んだペンキがもし余ったら……骨董屋にあげるよ!)
  • 新春の予言
    • 新春の予言:あけましておめでとう、修復士さん。何か悩んでいるようだが、おみくじでもどうだ?
      骨董修復士:おみくじ……再開した骨董屋の今後を祈って、引かせてもらおうかな。
      骨董修復士:(筒を揺らす)……はい、引けたよ。これはどう読み解けばいいの?
      新春の予言:籠の中から飛び出さなければ、東西南北に続く道があることに気付けない……こうして金鳥は羽を広げ、空の彼方へと飛び立つ。
      新春の予言:最も肝心なのは、心の中にある「籠」の存在に気付くことだ。
      新春の予言:自在に各地を飛び回れたとて、それが真の自由とは限らないからな。
      骨董修復士:それは……うちの店主のことを言っているの?
      新春の予言:いかにも……骨董屋の諸君が過去とけじめつけ、新たな願いを叶えられることを願おう。
      新春の予言:ここに余った物資がある。君らの助けとなればいいが。
    • 新春の予言:あけましておめでとう、修復士さん。おみくじでも引いていかないか?
      骨董修復士:あけましておめでとう!せっかくだし……新年一発目の運試しといこうかな!
      骨董修復士:(筒を揺らす)……はい、引けたよ。これはどう読み解けばいいの?
      新春の予言:来年は苦労するかもしれないが、夜空に高々と浮かぶ明るい月のような心境が持てる。
      新春の予言:清風に皓月、燕が土を咥え巣へと戻る。来年は望みが叶い、順風満帆となるだろう。
      骨董修復士:ありがとう、占い師さん!
      新春の予言:ここ最近、私の「商売」もかなり好転した……いい年を越すには、来年への期待が必要だからだと思われる。
      新春の予言:これは私が皆から頂いた物資だ。君の助けとなればいいが。
  • 質屋のオーナー
    • 質屋のオーナー:また会ったね。新年の商売繁盛、金運招福を祈ってるよ!
      骨董修復士:あけましておめでとう。オーナーさん、今日はご機嫌ね!
      質屋のオーナー:こういう祝日は質屋が繁盛するんだ。オーナーたる僕も、思わず笑みがこぼれるのさ!
      質屋のオーナー:遠出や贈り物、食べ物に新しい服、どれもかなりの出費になるからね……だからこそ、お金が回らない客もいる。質屋はいろんな品を良い値段で仕入れることができるんだ。
      質屋のオーナー:そのお宝たちを見ているだけで、僕はいい年が越せた気分になれるんだよ!
      骨董修復士:(質屋のオーナーって、本当に商売しか考えてないんだな……)
      質屋のオーナー:でも品物が増えすぎると、うちの小さな店構えじゃ入りきらなくなるんだよね……そういえば、骨董屋は今材料を集めてるんだって?安く売ってあげようか?
      骨董修復士:本当、ありがとう……!
      質屋のオーナー:商売なんだから、礼はいいよ。骨董屋とはこれからも長い付き合いになるだろうし!
    • 質屋のオーナー:あけましておめでとう!
      質屋のオーナー:どうやら修復士さんは、龍を作るためにあちこちを奔走して材料を買い集めてるみたいだね?
      質屋のオーナー:丁度いい商売話があるんだ。おつかいを頼まれてくれるとありがたいんだけど……
      骨董修復士:おつかいって?
      質屋のオーナー:実は、雑貨屋のオーナーが大量の品を質に入れていてね。「端数合わせ」のために木材をくれると言っていたんだけど……
      質屋のオーナー:うちみたいに小さな質屋に、木材なんて必要ないんだ。
      質屋のオーナー:一方、良質な品がいくつか入ってきたから、それを骨董屋の皆さんに鑑定してもらいたくて……知らない相手が鑑定したものは信用できないし。
      質屋のオーナー:そういうわけだから、ちょっと一仕事してくれたら、あの余分な木材は好きに使っていいーー雑貨屋に預けてあるからさ。
      骨董修復士:確かにそれなら、お互い損しないかも。
      質屋のオーナー:でしょ!これからも持ちつ持たれつ、協力し合っていこうよ!
      骨董修復士:良かった、まさにこれが欲しかったの!
  • 易学先生
    易学先生:あけましておめでとうございます。
    骨董修復士:あけましておめでとう、易学先生。あなたも龍舞広場に来てたんだね。何か美味しい物を買いに?それとも、服や生活用品かな?
    易学先生:春が近づくと、書斎の書物に虫が沸き易くなるのです。それで、文具店のオーナーから芸香を譲ってもらおうと思いまして。
    易学先生:古い書籍も、過去にやり取りした手紙も、虫に食われてしまえば復元するのは難しい……
    易学先生:幸い骨董屋が再開したので、脆い紙の修復作業にも対応していただけますが、それらの主人としても事前に予防できるに越したことはありません。
    骨董修復士:故人の手紙を保管する習慣をお持ちで……?
    易学先生:残念なことに、人の手紙のやり取りが途絶えて初めて、その紙切れへの思い入れを深めるようになるのですよ。
    易学先生:私の代わりに、文具で芸香を取ってきてくれませんか?
    易学先生:ありがとうございます。骨董屋はあちこちで材料を集めているそうですね。お礼にこれを差し上げましょう。
  • 学徒
    • 学徒:うーん、どうしよう……
      骨董修復士:どうしたの?何か悩み事?
      学徒:あっ、骨董屋に新しく来た修復士さん。あけましておめでとう。
      学徒:龍舞広場の新年の飾り付けは毎年、チャイナタウンの住民で力を合わせて行うことになってるんだ。それは私は今年、広場中央の古い槐樹の装飾を担当することになったの。
      学徒:あの樹で高いけど、ロボットと連携できる私なら、どんな場所にも手が届くでしょ。
      学徒:でも、肝心のデザインが全然思いつかなくてさ……歴代の装飾と同じにするわけにもいかないし……
      学徒:君はたくさんの彫刻や絵画を修復したことがあるんだよね?今すぐ古い槐樹のとこへ行って、いろんな角度から古い槐樹の形を記録してきてくれないかな?
      骨董修復士:うん、いいよ!
      学徒:すごい……細かいとこまでしっかり記録されてる。
      学徒:お礼にこの材料をあげるよ。骨董屋の商売繁盛と、龍の制作が上手くいくことを祈ってるね!
    • 学徒:ねえ……そこの君!今、時間ある?
      骨董修復士:平気だよ。どうしたの。
      学徒:ロボットを操作して質屋のオーナーのところへ荷物を配達する予定だったんだけど……ほら、人間ってロボットより貧弱でしょ?
      学徒:でも、肝心なロボットが途中で故障しちゃってさ……荷物の状況が心配だから、今すぐにでも確認しないとダメで。
      学徒:事は急を要するから……ちょっと陶器屋まで行ってきて、状況を説明してきてくれないかな?
      骨董修復士:分かった、すぐ行く!
      学徒:あ、戻ってきた。おかえり!確認したところ、ロボットが持っていた荷物に問題はなかったよ。
      学徒:ふぅ……たまにこういうことが起こり得るから、ロボットにも欠点があるのは認めざるを得ないね……でも、この子たちへの愛は変わらない!
      学徒:チャイナタウンには、私の「同類」がほとんどいないけど……コバンにはかなり興味があるんだ。
      学徒:お礼にこれあげる。
  • 龍舞隊の師匠
    龍舞隊の師匠:失礼する……お嬢さん。うちの若造を見かけなかったか?
    龍舞隊の師匠:龍舞隊のリハーサルがもうすぐ始まるのに、また「日課」のことを忘れてどこかへ行ってしまったんだ。
    骨董修復士:「龍玉」担当の彼なら、さっき古い塊樹のところで見かけたよ。
    龍舞隊の師匠:とにかくあいつを連れ戻さねば……もちろん、凧を取ってやってからだが。
    龍舞隊の師匠:チャイナタウンへ戻ったのは数年ぶりで、まだ道がよく分からない。古い槐樹への行き方を教えてくれないか?
    骨董修復士:もちろん。古い槐樹なら……
    龍舞隊の師匠:感謝する。余った木材があるから、お前にやろう。役に立てばいいが。
  • 獅子舞
    • 獅子舞:おかしいな……どこに行ったんだ?
      骨董修復士:獅子舞さん、何してるの?
      獅子舞:ーーっ!?ビックリさせるなよ!俺は……ここで、ある商人を探している。
      獅子舞:見慣れない顔で、先日ある物を売ってもらったんだが、あれから全然見かけなくてな……
      骨董修復士:その人、どんな見た目だったの?
      獅子舞:分厚く着こんだ爺さんさ。これといった特徴はない。人ごみの中にいたら見つからないだろうが、大きな荷物を背負っていた……
      骨董修復士:(怪しいなぁ……)
      獅子舞:もういいから、これ以上邪魔すんな……それともーー手分けして探すか?
      獅子舞:お前は裁縫屋の方も頼む。俺は反対方向へ行く!
      獅子舞:数日前まではいたのに……一体どこに行ったんだ?
      獅子舞:でもまあ、手伝ってくれてありがとよ。これはお礼だ!
    • 獅子舞:……
      骨董修復士:獅子舞さん、また会ったね!一人で何をしていたの?
      獅子舞:腹ごしらえだ……広場で静かな場所を探して、この景色を見ようと……見栄を張ってやってるわけじゃないからな!
      獅子舞:単純にここで点々としている赤い提灯が綺麗で……縁起良いなと思っただけだ。
      獅子舞:こうしていると、こんな祝日を過ごせるありがたみが湧いてくる。今までじっくり見たこともなかったから……チャイナタウンが毎年こんな綺麗に飾られるなんて知りもしなかった。
      獅子舞:俺は筆なんか握ったことないし、詩歌も絵もてんでダメだ。ただこうして景色を眺めるくらいしかできない。
      獅子舞:赤い紙をまだ少し持っているんだ。お前は器用だから、俺の代わりに切り絵にしてくれないか?
      獅子舞:ほんの数枚だけ、願掛けのつもりで、な?
      骨董修復士:分かった、やってみるよ……
      獅子舞:そう、これでいい!十分だ、残った紙は全部お前にやろう。
    • 獅子舞:(片手で筆を動かしている)
      骨董修復士:獅子舞さん、あけましておめでとう!何をしているの?
      獅子舞:うわっ……なんだ、お前か!骨董屋の「新役」、あけましておめでとう!
      獅子舞:実は今……俺の獅子舞道具をどう改良すべきか考えてたんだ。お前らが、骨董屋で龍を作ってるのを見ていたら、色々と新しい閃きが浮かんだもんでな。
      獅子舞:……べっ、別にアイデアを盗んだわけじゃないぞ!お前らの目の前で見てたんだから……あれは黙認されていた!
      獅子舞:例えば、龍の「点睛」とかよーー獅子が瞬きする時も、どうすればもっと生き生きしているように見せられるんだろうな?
      獅子舞:顔料なら大分買い込んだ。この筆もな。だがいざ点睛しようとなると、変に緊張してきて……
      獅子舞:むむ……やっぱりお前がやってくれ!
      骨董修復士:(塗料が載った皿に筆を伸ばし、獅子の瞳を描いた)
      骨董修復士:……これでどう?
      獅子舞:おお……良いじゃないか!骨董屋の店主は敏腕の修復士を招いたみたいだな!
      獅子舞:余った顔料は全部お前らにやろう!普段は絵なんて描かないし、お前らに渡した方が役に立つだろう。
  • 懸鑑楼の女将
    • 懸鑑楼の女将:寄ってらっしゃい、見てらっしゃいーー
      懸鑑楼の女将:お茶も点心もなんでもござれ、決して損はさせません!
      懸鑑楼の女将:あら、また会ったわね!良かったら懸鑑楼の新しいメニューを宣伝してくれない?
      懸鑑楼の女将:いいの?私、呼び売りなんてしたこともないのに……
      懸鑑楼の女将:別に上手い宣伝文句を言ってほしいわけじゃないわ。私の傍で急須を持っていてくれればいいの。淹れたての茶葉が入っているのよ。
      懸鑑楼の女将:この時季はまだまだ冷えるから、お客さんに熱いお茶をおもてなししようと思って。気に入ってもらえれば、常連さんになってくれるかもしれないでしょう?
      骨董修復士:(女将さん、本当に茶楼のために頑張ってるんだね……)
      懸鑑楼の女将:後で懸鑑楼の厨房にいらっしゃい。新しい点心を開発したから、それの味見をお願いできる?
      懸鑑楼の女将:まだ材料を集めてるのよね?丁度茶楼にポスターを貼るつもりで、紙は結構余ってるの。よかったらもらっていって!
    • 懸鑑楼の女将:あけましておめでとう!懸鑑楼で朝食茶でもどう?
      懸鑑楼の女将:龍舞隊の好物以外にも、興味があるものがあれば何でも教えてあげるわよ。
      骨董修復士:ありがとう、女将さん!
      懸鑑楼の女将:新年の間、懸鑑楼は大繁盛でね。龍舞隊が来てからはチャーシューまんやエビ蒸し餃子、糖沙翁も供給が追いついてなくて……
      懸鑑楼の女将:龍舞隊の到来にはチャイナタウンの皆で関心を持っていたから、懸鑑楼もその勢いに乗じて点心の宣伝を行ったんだけど、まさかここまで売れるなんて……
      懸鑑楼の女将:蒸籠が足りなくて雑貨屋のオーナーに注文したのはいいけど、厨房から離れるわけにもいかないし。
      懸鑑楼の女将:だからお願い、代わりに雑貨屋から蒸籠を取ってきてくれる?お礼に材料をいくらかあげるから……
      骨董修復士:女将さんの頼みなら、喜んで!
      懸鑑楼の女将:ありがとう、本当に助かったわ……これで一件落着ね!
  • 龍玉舞役者
    龍玉舞役者:はぁ……
    龍玉舞役者:(服に付いた塵を払った)
    骨董修復士:また会ったね!どうしたの?ずいぶん汚れてるし、息も上がってるみたいだけど。
    龍玉舞役者:ゲホッ……練習だよ!……見ての通り、また失敗だったけど……
    龍玉舞役者:龍舞公演の本番はこの広場で行われるーーここはリハーサル会場よりも遥かに大きいんだ!
    龍玉舞役者:事前に何度か練習して、場所をよく知っておこうと思ったんだけど……
    龍玉舞役者:この辺りは急な曲がり角が多すぎやしないか?ついさっきも時計屋の店主と正面から激突したし!
    龍玉舞役者:ぶつかったところが未だに痛むよ……イテテッ。
    龍玉舞役者:気が付けば店主は慌ててその場を後にしていて……時計を落としたみたいだから、店まで返しに行ったんだ。
    龍玉舞役者:時計は貴重な品だと言って、店主がお礼に金属をたくさんくれたよ。
    龍玉舞役者:丁度君たちが使えるかもしれないと思っていたところに、君が現れたから……はい、全部あげる!

エピローグ

骨董屋店主:龍舞公演が間もなく始まります。まだ手元に制作材料が残っているようです。龍舞広場へ行き、龍舞公演の最後の準備をしましょう!
骨董屋店主:公演日までに龍の制作を完了させる必要があります。骨董屋にまだ保管されている材料があるようです。それらを利用して、公演までにより理想的な効果を目指しましょう。
龍舞名簿2.jpg
骨董屋店主:今までの準備も全て、今夜の公演のため。
骨董修復士:(龍舞隊が一列に並び、花火もすでに設置済みだ。広場で賑わった店たちは早々に店じまいし、代わりに龍舞隊を迎える赤い提灯をぶら下げていた)
骨董修復士:(店のスタッフも、礼帽を被った紳士も関係なく、チャイナタウンの老若男女が全員道を囲み、歓迎の意を示している)
骨董修復士:(ワイワイと賑わう人ごみは春が訪れる前の寒気すら吹き飛ばし、子供の明るい笑い声がどこからともなく聞こえてきたーーチャイナタウン全体が、公演が始まる合図である銅鑼の音を待ちわびているのだろう)
龍玉舞役者:こんな晴れやかな夜空はーーもうずいぶん長いこと見てなかったよ!星も空の上で僕らを照らしてる。きっと完璧な公演になるさ!
龍玉舞役者:何だか今日は、特に調子がいい気がするんだ。龍神の祝福を受けて、あの龍玉を空の上まで届けられちゃったりして。
龍玉舞役者:師匠、足の怪我は……大丈夫なの?
龍舞隊師匠:問題ない。
骨董修復士:(ふと、広場の方から歓声が上がり、銅鑼の音と号令が響いた)
骨董修復士:(龍舞隊は口を閉ざし、集中した。隊の先頭に立つ少年の傍で明るい玉が軽やかに弧を描き、織錦の身体を持つ祥龍が顔を上げる)
骨董修復士:(すると年長の「龍首」が両腕で棒を天へと掲げ、ピクリとも動かずにその姿勢を保つこと数秒)
骨董修復士:(掛け声とともに振るわれた棒は龍の動きを牽引しーー大きく上半身を起こさせた。古傷を負ったはずの両足が、大股で前へ数歩伸ばされる。痛みなど微塵も感じさせないような、自然な動きだった)
龍舞隊師匠:せいっーーはっ!
骨董修復士:(龍尾は多様な動きで大きく揺らぎ、風のせいか、あるいは龍身の動きのせいか、火龍の尾に使われた竹の葉がシャラシャラと音を鳴らした)
骨董修復士:(これが、無我の境地……)
骨董修復士:(花火、銅鑼、歓声……その音の中には、うっすらと聞き覚えのない長い嘶きが混じっているように感じられた。空の彼方から聞こえる声のようにも思えるし、胸の奥に響く轟きにも感じられる)
骨董修復士:(炎の光、煙、そして鮮やかな油彩が夜空に煌めき、眩暈を誘うような美しい景色の下、私は眠りにつく寸前のような恍惚とした気分になった……)
学徒:金色、金色の……あれは何?
骨董修復士:(辺りに飛び散る火花の中、爽やかな風が広場の建物の間を吹き抜ける。それが連れてきたのは祟山、あるいは海の匂いだろうか)
骨董修復士:(隊はまるで金色に輝く鱗を帯びているように見えた。近くにあるようにも遠くにあるようにも感じられ、蠟燭の炎のように明るい)
骨董修復士:(夢と現のの境が分からなくなるような心地は一瞬だけその場に留まり、夜の喧騒に消えていったーーしかし、銅鑼の音は途絶えない。龍舞公演はまだまだ続いていく……)
易学先生:……
易学先生:どうやら、骨董屋の記録にまた新しい内容が付けたされることになりそうですね。題名は……あなたならいかがなさいますか?
骨董修復士:「神瑞」、という題名はどうだろう?

龍舞絵巻(ログイン)

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骨董屋店主:見ての通り、これは未完成の絵巻よ。龍についてもっと詳しく知りたいのなら、描きながらお話をしましょう。
骨董屋店主:私が持っているこの巻物も、入手するのが難しい貴重な品物なの。最後まで描き終えれば、あなたもきっとその価値に気づけるはず。

  • 1日目:龍骨
    骨董屋店主:龍は「鱗虫の長」と言われていて、爬虫類と水生生物の王よ。泳ぐことと飛ぶことを好んで変化に富み、神通力を持った神秘的な動物で、吉兆と威厳と象徴でもあるわ。
    骨董屋店主:心を込めて作られた龍は、その龍骨の多くが竹材でできていて、体はいくつかの節に分かれている。そして龍の「筋骨」作りは、最初にして最も重要な工程なの。
  • 2日目:龍首
    骨董屋店主:東方龍のモチーフと言えば、一番目を引くのは威厳に満ちた「龍首」ね。神龍は「九不像(訳注:9種類の動物に似ているようで似ていない)」とも呼ばれていて、いろいろな動物の特徴を合わせてできているの。
    骨董屋店主:それを踏まえて、龍首をよく見てみて。龍首のモチーフの起源に関しては諸説あるけれど、「角はシカ、頭はラクダ、目はウサギ」が一番有名で、特徴の一つ一つが全て吉兆を表していることが分かるわ。
  • 3日目:龍身
    骨董屋店主:東方龍のもう1つの特徴は、力強く細長い龍身よ。だから龍身のモチーフは蛇だと言われているの。
    骨董屋店主:昨日の話の続きをするなら、東方龍は「襟首は蛇のよう」と言われており、そのモチーフは雲や虹といった気象的な特徴とも合わさっていてね。普段は山と海の間に潜んでいて、自由に空を飛び回っているんだって。
  • 4日目:龍尾
    骨董屋店主:巻物の中の龍に風格を持たせたいのなら、龍尾の描写に力を入れることーー流れるような線で描いて、洗練された自然美を表現するのよ。
    骨董屋店主:龍尾のデザインには魚尾や火炎、荊葉、蓮花などなど、たくさんの種類があるわ。龍尾が「生きて」いないと、龍の変化に富んだ姿を表現することはできないの。
  • 5日目:龍爪
    骨董屋店主:面白いことに、「龍爪」は一見「爪」のことを指していそうで、実は龍の「足」という意味でね。龍のモチーフが長い歴史の中で、たくさんの変化を経てきた証拠なの。
    骨董屋店主:龍爪は二爪、三爪、四爪と今よく見られる五爪まで、すべて存在していたんだって。この絵巻に描いてある龍は、四爪よ。
  • 6日目:龍玉
    骨董屋店主:龍の絵でよく見かけるものには、この「龍玉」も入っているわ。龍玉の意味に関してはいろんな解釈があるけれど、炎が立ち上る様子から「太陽」を表すと言われることもある。
    骨董屋店主:あるいは、水生生物や爬虫類と密接な関係がある、「卵」や「真珠」とかね。
  • 7日目:龍鱗
    骨董屋店主:東方龍の体は、コイが持つものとはよく似た鱗で覆われていてね。だから空を飛べるだけでなく、魚みたいに泳ぐこともできるの。
    骨董屋店主:そして、龍鱗は珍しい宝物とも見なされているわ。


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骨董修復士:すごい……この龍、今にも動きだしそうよ!本当に不思議……
骨董屋店主:この世界にはたくさんの不思議な宝物があるわ。私は故郷を離れて転々とした挙句、この町に流れついた。旅の道中や商売を通して見聞きし、感動した物事は、決してこの絵巻だけじゃない。
骨董屋店主:「白沙茅龍」という名前の筆を聞いたことはある?これまで多くの人々の手に渡り、長年使い込まれてきたというのに、今も新品のような輝きを帯び、握れば閃きを与えてくれるーー鳥でも獣でも人間でも。
骨董屋店主:皆生き生きとした姿で一気に描き上げることができるそうなの。
骨董屋店主:だから、点睛に使う筆は「白沙茅龍」が一番よ。それが最近、チャイナタウンに入ってきている骨董品の中にまぎれているという情報を聞いてね。

龍舞公演の物語

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骨董屋店主:今日から教えましょう……私が聞いた、あの龍舞公演の物語を。
骨董屋店主:あれは数年前……盗賊たちが蜂起していた時代。花火が長い火の龍のように舞い上がり、煙と色とりどりの光に包まれた小さな村の山に、一匹の長龍が凄まじい勢いで姿を現した。
骨董屋店主:盗賊たちは度肝を抜かれて、龍舞隊が本物の龍を連れてきたと叫びながら、恐れおののくように逃げていったわ。こうして、村は平和を取り戻したの。
骨董屋店主:これは私が龍舞隊に加入した理由でもあるけれど、世にも奇妙な摩訶不思議はさておき……龍舞隊の技術を存分に活かせば、当時の長龍を完璧に再現できれば、チャイナタウンに一風変わったパフォーマンスを提供できるかもしれないし、師匠の……旧友の悲願も果たせるかもしれないと思ったのよ。

  • 8日目:龍灯
    骨董屋店主:話が逸れてしまったわね。あの年の龍舞公演は、街という街の両脇にたくさんの龍灯がつり下げられていて、点滅する明かりで光り輝く龍の通り道ができていた。
    骨董屋店主:景色を引き立てる龍灯に誘われて龍は目を輝かせ、山の地形に沿って急降下しようとしたけれど、そのままそこにとどまった。
  • 9日目:龍旗
    骨董屋店主:道の向こう側の龍旗は激しき風を起こした。赤と白のサテンで作られていたそれは、山の月に照らされてとても美しかったわ。
    骨董屋店主:龍旗役者が両手に持った旗で風を切り、リズムは雨のように規則正しく、龍舞公演の勢いもどんどん増していく中ーー鳴りを潜めた金龍が、最初の花火が鳴るのをじっと待った。
  • 10日目:神龍降臨
    骨董屋店主:遠くの夜空に花火が次々と打ち上げられ、白い煙の中ではらはらと散っていけば、山に霧が立ち込めた……意識は朧げだったけれど、舞い踊るメンバーたちがだんだん透き通った龍身に見えていたのは覚えている。
    骨董屋店主:それからーー金龍が煙と火の海の中から驚いたように飛び立つと、身を起こして雲の中を隠れては現われた。宙を悠々と泳ぐ姿は、まさに「神龍降臨」だったわ。
    骨董屋店主:龍が姿を現した時が、龍舞公演開始の合図よ。
  • 11日目:漫衍魚龍
    骨董屋店主:最初の陣形は、比較的変化に富んでいてね。山の麓から上を見ると目の前に不思議な蜃気楼が現れて、清らかに澄みきった夜風が水のように山林を越える。舞者も観客も皆、流れる水の中に呑み込まれるような気分になれるの。
    骨董屋店主:龍と一緒に舞う鯉灯が続々と活気づいてきて、集まったり、散らばったり……鯉と龍は熱気のある雑踏の中で互いを融和し、怪しく変化していく。これこそ本物の「漫衍魚龍」よ。
  • 12日目:蟄竜聞雷
    骨董屋店主:魚灯も月も突如として暗くなり、村全体が暗闇に包まれると、残るは冬の枯れ葉が擦れ合う音と土のかすかな息吹だけ……金龍も山に隠れ、眠りにつく。
    骨董屋店主:でも、一息ついた後、夜の帳を引き裂く急雷が数百里先の空まで白日のように明るく照らし、その音は鐘のように大きく、山並みを震わせんばかりで、金龍は雷の光に誘われて頭を上げる。
    骨董屋店主:この陣形はーー蟄竜聞雷と呼ばれているわ。
  • 13日目:双龍戯珠
    骨董屋店主:雷の音と霧が次第に消え、再び満天の星の清らかな天幕が下がると、鏡のような空の中からもう一匹の金龍が現れた。驚いたことに、その形や大きさはさっきの金龍を全く同じだった。
    骨董屋店主:龍玉役者が龍玉を高く持ち上げると、2匹の龍は龍玉を追いかけてじゃれ合い、飛び跳ねては回り、興に乗じて踊り続ける。これを「双龍戯珠」というのよ。
  • 14日目:回龍奪珠
    骨董屋店主:山頂には翡翠色の太鼓が置かれていて、太鼓と爆竹の音が夕立みたいに山頂から流れ落ちる。龍玉役者は機敏な動きで身を乗り出すと、すぐに龍玉を持って山頂へ駆けていったわ。
    骨董屋店主:太鼓の音と龍玉に誘われた金龍は興味津々で、口から明るい火の玉を1か2個噴き出し、その勢いで振り返り、さらに高いところを目指して飛んでいく。「回龍奪珠」のシーンは一番にぎやかなの。
    骨董屋店主:……賑わいは夜遅くまで続き、空が少し白んでくる頃になると龍舞の祭りは終わる。龍舞の役者は山の中で夢から目覚めるけれど、不思議と疲れは感じない。はっきりとした意識で、呼吸を乱すことなく動作を緩める。
    骨董屋店主:今後はもう、あんなに素敵な公演は二度とないでしょう……だからこそ、本に記されている奇跡を望むのではなく、この素晴らしい物語を聞いている人の願いをかなえるために、大きくて機敏に動ける龍を作りたいと思っているの。
    骨董屋店主:でも……あの龍舞の伝説は、本当に金龍が現れたと思う?それとも、夢想家の荒唐無稽な妄想だったのかしら?

個別会話

  • 龍玉舞役者
    • 龍玉舞役者:(彼が袖から様々な形の電球を取り出し、その指先で弄ると、電球はまるで生きているかのように両手の間を飛び交った)
      龍玉舞役者:なっ……!今の……見てたのか。
      龍玉舞役者:いや、そんな大したものじゃないよ……暇つぶしのつまらない手品だ。褒められた技術があるわけでもない。
      龍玉舞役者:師匠には「落ち着きがない」って叱られるし、泣いている子供を笑わせる以外の使い道もないし。
    • 龍玉舞役者:はぁ……実は僕、チャイナタウンに来る前にやらかしてね。
      龍玉舞役者:そ、その……作りかけの龍を燃やしちゃったんだ。竹材は火で炙らなければならないこともあって。
      龍玉舞役者:あの時の師匠、おっかなかったな。髭に火がつきそうなほど激怒して……いや、物のたとえだけど!でも、本当に厳しい人だし、僕のことを龍舞隊の役立たずだと思っているはず。
    • 龍玉舞役者:僕はまだ隊に入ってから日が浅い。それまでは龍舞なんて知らなかったし、他のメンバーみたいな才能も経験もない。
      龍玉舞役者:僕はただ、盛大な龍舞公演を一度観劇しただけなんだ。あの龍舞が忘れられなくて……夜な夜な自分で竹を使っては練習していた。
      龍玉舞役者:叩いたり担いだり、決まったやり方なんて誰にも教わらなかったから、旋回する金の龍のイメージに駆られるままクルクルと動き回ったよ。……気が付けば竹のトゲが手のひらに刺さって、そこから血がにじんでいたけど。
      龍玉舞役者:龍舞隊に入れるなんて思ってもいなかったから、師匠が頷いてくれた時は本当に嬉しかったな……ねぇ、師匠は今頃後悔してるとおもう?
    • 龍玉舞役者:ふわぁ……眠い、眠すぎる!今朝はまたこっぴどくシバかれたよ……
      龍玉舞役者:実は最近、いつか師匠を驚かせてやろうと思って、夜の龍舞練習を再開したんだ。
      龍玉舞役者:時間があるなら、君の意見も聞かせてくれないか?……毎日ため息ばかりなのは嫌だろう?少なくとも……僕は嫌だ。
      龍玉舞役者:たとえ「能なし」って額に刻まれても、僕は何とかして立ち上がりたいーーだって、それでこそ僕だから。
    • 龍玉舞役者:あっ……やあ、修復士さん。あけましておめでとう!
      龍玉舞役者:最近、お店がちょっとにぎやかになったね。皆忙しそうだったから、君に話しかけられる機会がなかなかなかったんだよ。
      龍玉舞役者:この前、師匠に僕が練習している新しい技を見せたんだーーまあ、その……まだ全然うまくできなくて、今回もダメダメだったけど。でも、そんな落ち込んでないから、心配しないで!
      龍玉舞役者:師匠、最近何かあったのかな……いつもならお叱りの言葉しかもらえないのに、あの日の彼は珍しく……褒めてくれたんだ。
      龍玉舞役者:年を越したら、人間も変わるんだろうか?
    • 龍玉舞役者:はははっーーやった、やった!
      龍玉舞役者:今日のリハーサルでさ、僕が「龍玉」の役をやることを師匠が認めてくれたんだ!今日は配役の最終確認があって、てっきりもっと経験のあるメンバーと交代させられると思ってたんだけど……
      龍玉舞役者:僕のために喜んでくれてありがとう!僕はぶきっちょだから、よく笑い者にされるし……正直、公演の準備が完璧にできてるわけでもない。
      龍玉舞役者:でも、ベストを尽くすことはできると思う。もう少ししたら本番だから、絶対に見に来てね。
  • 懸鑑楼の女将
    • 懸鑑楼の女将:龍舞隊のお客さん、あなたが出したお茶に大満足だったみたい。さすがね!
      懸鑑楼の女将:お茶を入れるタイミングもバッチリだったし、お茶の色は綺麗な琥珀色で濃さも最適。
      懸鑑楼の女将:それに加え、お客さんの興を削いだり、会話のテンポを乱すことすらなかった……私でさえ、こんなに快適だったのは久々よ。
    • 懸鑑楼の女将:あけましておめでとう。おせちはもう食べた?
      懸鑑楼の女将:ここ数日、懸鑑楼の厨房は肉や調味料の香りで充満しているの。料理長が鍋を翻せば、美味しい料理の出来上がりよ!
      懸鑑楼の女将:大晦日当日の夜まで、かまどの火は消えない。友人たちと円卓を囲み、談笑の声が遠くの花火と鐘の音を遮るまではね。
      懸鑑楼の女将:チャイナタウンの大晦日をどうか楽しんで!ご縁があれば、また来年も会いましょう!
  • 骨董鑑定士
    • 骨董鑑定士:龍衣には模様も描かないといけないのか。あの画材を見ていたら、僕も腕を振るいたくなってきたよ。
      骨董鑑定士:でも……残念だけど、僕が得意なのは風景がだけなんだ。人物の絵になると、どうしても筆が進まなくて。
      骨董鑑定士:たとえ魔法の筆があったとしても、僕の状況は改善されないだろう……いや、そもそもこの世にそんな不思議なお宝があるわけもない。ただの作り話だしね……
    • 骨董鑑定士:この師弟ってあからさまに誤解し合ってるけど、部外が首を突っ込むのはどうなんだろう。
      骨董鑑定士:店の記録によると、お師匠さんは若い頃に観たとある公演がきっかけでこの業界に入ったそうだよ。人は時に、一瞬の感銘に人生の決断を委ねてしまう生き物だから。
      骨董鑑定士:彼は半生をかけてあの龍舞を追い続けた。数多の歓声を得ても、彼自身はまだ自分を認めていない。だから龍舞のこととなると、一切の妥協を許そうとしないんだ。
      骨董鑑定士:お師匠さんは勉強熱心で根気もあるけれど、口下手なのが難点だよね。数十年も自分を褒めたことがない人間が、他人への賛美を簡単に口にすると思う。
    • 骨董鑑定士:長年この商売に就き、依頼人が持ってくるいろんな骨董品の一つ一つを仔細に鑑定してきた身として言うけど……
      骨董鑑定士:店に置いてあった品物のうち、1つの「骨董品」はちょっと怪しいんじゃないかと思ってるんだ。
      骨董鑑定士:……どれのことかって?ヒントをあげよう。この「骨董品」の材質は特に珍しいものじゃないし、結構壊れやすい。
      骨董鑑定士:それを修復する機会があれば、もしかするともっと多くの情報が得られるかもしれない……
    • 懸鑑楼の女将:あけましておめでとう、修復士さん!
      懸鑑楼の女将:この前はありがとう。あなたとは朝食茶をいっしょに作った思い出もあるから……いつの間にかお互い、すっかり気の置けない相手になっちゃったわね。
      懸鑑楼の女将:これは懸鑑楼の経営哲学でもあるの。人と人はもちろん、商人と客の間にも、何気ないやり取りを繰り返していくうちに自然と信用が湧いてくるのよ。
      懸鑑楼の女将:あなたたちのお店もそうでしょ……最近、評判がますます良くなっているそうじゃない。私も嬉しいわ。
  • 獅子舞
    • 獅子舞:あの親方があんたに龍の作り方を教えただって?どこまでやったんだ、見せてみろ!
      獅子舞:おお……これはーーゴホン、悪くない。
      獅子舞:……あいつはとっつきにくいように見えて、人に物を教える時は頼りになるらしいな。
    • 獅子舞:おう、あけましておめでとう!流石に俺への挨拶は忘れなかったか……まあいい、面倒な祝辞は省いちまってもいいよな?大事を成せるとか、万事順調とか。
      獅子舞:俺はな、自分が決めた生き方で暮らせるだけの稼ぎがもらえりゃあ、もうそれで十分なんだ。あとは上手い料理でも食えれば、他には何も望まねぇ。
      獅子舞:要するにあれだ……おれはあんたの無病息災と、安全で健康に過ごせることを祈ってやる。ありがたく思えよ!
  • 劇団長
    • 劇団長:龍舞用の龍を作っている様子をずっと陰から見ていたの。これ、あなたの案なんでしょう?素敵……
      劇団長:竹龍の制作過程は複雑よ。手先の器用さも問われるし、辛抱強さも必要になる。おいそれとできる作業ではないわ……
      劇団長:なのに、作業中のあなたはすごく集中してて、動きも繊細だった。そう……まるで私のおじいちゃんみたいに!
    • 劇団長:はあ……骨董屋に入ろうとしたら、入口で転んでしまったのよ。
      劇団長:龍舞隊のお師匠さん、いろんな薬品を持ち歩いているみたいで、傷口の処理も手慣れていたわ。彼のお陰で、傷はもうほとんど痛くないの。
      劇団長:ただ、彼がしゃがんだ時、少し動きが鈍いように感じてね。もしかしたら、彼も足を怪我しているんじゃないかと思って。
      劇団長:普段の様子からは分からないけれど、肝心の彼があの調子では……公演を成功させることはできるのかしら?
  • 易学先生
    • 易学先生:龍舞隊のお師匠さんの人を見る目は確かです。彼の目に適わない者であれば、誰がどう言おうと隊に受け入れないでしょう。
      易学先生:まさか、当時骨董屋で武芸を習っていたあの少女が龍舞隊の一員になるとは。
      易学先生:店主の拳法でしたら、一度拝見したことがあります。足のつま先まで力が入っていたにも関わらず、どの技も軽やかで美しいものでした。それが「龍尾」に選ばれた理由なのかもしれませんね……
    • 易学先生:大晦日が間近に迫っています。少し早いですが、よいお年を。すでにお気づきかもしれませんが、チャイナタウンの正面からまっすぐ進んだところにある橋が、真新しい赤色に塗り直されていました。
      易学先生:毎年と変わらない新年ですが、それを見て少しめでたい気持ちが増したのは、私に限った話ではないはず。快晴の空の下、橋の上を連れ合う人々が通り、風はまだやや肌寒いものの、午後の日差しに春の気配を感じる今日この頃です。
      易学先生:あなたも家族や友人たちの傍で、楽しく新年を迎えられることを祈っております。
    • 易学先生:あけましておめでとうございます。
      易学先生:龍舞広場の市場は特ににぎやかですね。見慣れない商人もいつもより多く見かけます……珍しい物がお目当てなら、目を光らせておかなくてはなりませんよ。
      易学先生:数日前から、いつかの露店が少しばかり普通ではないことに気付きました。なにも、入手しづらい「陶器」を格安で販売しているとか。
      易学先生:骨董屋の先代店主がいた頃は、そんな心配もなかったのがーー偽物の売人がチャイナタウンで活動することなど、決してありませんでしたから。しかし、あれからもう何年も経っているとなると……
      易学先生:特に、あなたには気を付けていただきたい。もし偽物が骨董屋に入ってきたら、必ず皆に伝えてくださいね。
  • 質屋のオーナー
    • 質屋のオーナー:最近、おたくの店主は心ここにあらずみたいだ。また自分の師匠のことを思い出してるんじゃないのかな?
      質屋のオーナー:当時の店主は骨董業界でも屈指の人物だったよ。チャイナタウンにおける骨董業の「掟」も彼が定めたもので、異を唱える者は一人もいなかった。
      質屋のオーナー:偽物を売ったり、無断で墓を掘り起こしたヤツらは全員元店主に暴かれ、叩きのめされた。でも、英雄にだって失敗することはある。
      質屋のオーナー:君のところの店主にとって、根拠のない憶測や中傷は心に響くだろうね。
    • 質屋のオーナー:どうも、どうも。あけましておめでとう!
      質屋のオーナー:前にも言ったけど、君たちの店の新しい店主は本当に素敵な人なんだねぇ。龍作りも店の経営もきっちりこなしていて、いやあ、敬服したよ!
      質屋のオーナー:これからは質屋も大いにお世話になりそうだ……コホン、この前の失言をどうか許しておくれ。
      質屋のオーナー:ただ、一つ言わせてほしい。この前、店で随分と立派な品物を見かけたんだけど……あれが本物かどうかは、もう一度見極めたほうがいいかもしれない。僕に鋭い鑑識眼はないけどーー「古馴染み」の作品に見えてさ。
  • コバン
    • コバン:ボンボン!(あけましておめでとう!)
      コバン:ボンボンボンボン、ボンボン!(コバンが好きな塗装を選んでみた。コバン、これがいい。君にも気に入ってもらえたらうれしい!)
      コバン:ボンボンボンボンボンボン、ボン!(新しい一年でも、君がありのままの自分で幸せな日々を送れることを祈るよ!)
    • コバン:ボンボンボン、ボンボンボン!(ここに残って何してるのかってコバンはね……今度の龍舞公演に向けて火を噴く練習をしているんだ!)
      コバン:ボンボン、ボンボン!(公演で使う竹龍がどんどん長くなってる……骨董屋の店主さんの願いが本当にかなうかも!)
      コバン:ボンボンボン?(公演が終わった後に追加される内容のこと……「おまけ」?とか言うらしいけど、コバン、全然わかんないや)
      コバン:ボンボンボンボン!(あと数日で龍舞公演が始まるよ!良かったら見に来てね!)
  • 龍舞隊師匠
    龍舞隊師匠:ついに大晦日だな。竹龍の点睛を無事に終え、火の海を越えたら、いよいよ新たな始まりを迎える時だ。
    龍舞隊師匠:私が思うに、骨董屋にとっての新たな始まりとは、店主がついに戻り、店のホコリを払い、正式に再び商売を始めることではないだろうか。
    龍舞隊師匠:先代店主がいなくなってから、もう随分と経っていると聞く。あのようなつまらん噂話も、そろそろ打ち消す頃合だろう。

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