秋の文通

Last-modified: 2023-10-08 (日) 21:43:41
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イベントストーリー

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プロローグ

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こんにちは、友人。
僕はビクター・グランツ、ポストマンだよ。
また秋が来て、ベルワートの花も咲いた。
そこで君にとある秋の物語を話したいんだ。
ーー郵便局、昔の僕、そして1匹の「喋る子犬」について。
そうそう、この話のことは秘密にしてくれ。
かつて僕が銅鈴を揺らし、君の秘密をその手の中から受け取った時のように。

アイテム

※日数経過でイベント画面をタッチすることで閲覧できるアイテムが増えていく

  • 1日目:メモ用紙
    メモ用紙.png
    毎日すべきことを記録できる。
    好きな時に本の感想を書いたりすることも可能。
  • 2日目:オフィステーブル
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    自分より年上のテーブル。
    手紙をたくさん読んだそれは、深夜に長いため息をついた。
  • 3日目:風鈴
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    盗み見を楽しむ時、それは笑いながら傍にいてくれる。
  • 4日目:15歳のプレゼント
    15歳のプレゼント.png
    秋の川辺でハーモニカを吹いたことはある?
    これは彼女からもらった唯一のプレゼントなんだ。
  • 5日目:スタンドライトの友達
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    「ビクター、電気を消すよ。くだらないおとぎ話はほどほどにしなよ!」
    学校で、彼らはいつもそう言っていた。
  • 6日目:ドッグフード
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    ウィックは有能な配達犬だ。
    ただ、時間通りにドッグフードをやる必要がある。
  • 7日目:タイプライター
    タイプライター.png
    タイプライターの文字はまるで全く同じ殻を被せているようだ。
    送信者が誰かなんて誰に分かるだろう?

ログイン受信

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1日目

ビクター・グランツ:また風が吹いた。
ビクター・グランツ:強風、落ち葉。この気持ちはいつもそうだ。ね、ワンちゃん?
ウィック:……
ビクター・グランツ:今日こそは宛先不明の手紙の整理が終わるかも……
ウィック:……盗み見るのか?
ビクター・グランツ:え?
ウィック:盗み見はよくないぞ!ああ、忘れてた。人間に「動物は喋れる」っていう常識はなかったな。
ビクター・グランツ:喋る……犬?
ウィック:失礼な!僕の名前はウィックだ!
ビクター・グランツ:えっと……ご、ごめん、ウィック。てっきり君は郵便局に迷い込んだのかと。
ウィック:迷い込む?僕は探し物をしに来たんだ。でも……フン、とんでもない場面に出くわしたよ。覗き見もポストマンの仕事の一部だったのか?
ビクター・グランツ:ぼ、僕はただ整理しているだけだ。
ビクター・グランツ:2か月ごとに郵便局で配達できない手紙を点検しているんだーー宛先が汚れてしまったものや、差出人が間違っているものとか。
ビクター・グランツ:それで時々中を見て、そんなそそっかしい奴らの手掛かりが見つからないか確認しているだけなんだよ。
ウィック:はっ、僕の主人もちょうど手紙を失くしたんだ!僕も探す、一緒にやらせろ!
ビクター・グランツ:だ、だめだよ!
ウィック:(くんくん)ああ、インクのにおいーーここは最高の場所だな!
ウィック:風を凌ぐために郵便局に「迷い込んだ」子犬を、あんたは断れない!そうだろ?
ビクター・グランツ:……
ウィック:ふふん!

2日目

ウィック:ふふん。天気がいい秋の午後は、手紙を配達したり、散歩したり、子犬と喋るのに最適だ!

上半期の借金も結局滞納しただろう!
どうやらもう一度会って話をする必要があるようだな!
いつも「儲け話がある」と言う割には返済日になると「資金巡りが悪い」だって!?
ふん、そんなお前を信じると思うか?
小僧、来週の返済日には新しい請求書をお前の顔に貼り付けてやる!
覚悟しとけよ!

ビクター・グランツ:どうやら借金の催促の手紙みたいだ。
ウィック:催促、催促!なんだそれは?なんでこんな怒ってるんだ!
ビクター・グランツ:手紙は情報だけでなく、感情も宿るものだからね。
ビクター・グランツ:例えばこの手紙は、実際に会わなくても行間から彼が相手の胸倉に掴みかかろうとしている姿が読み取れる。
ウィック:つまりこれは怒りの手紙なのか? 
ビクター・グランツ:うん、そうだね。手紙はいつも様々な感情を伝えてくれる。怒り、悲しみ、情熱……時には、顔を合わせて会話する時よりも多く。
ウィック:ふんふん、ポストマンは行間の感情を読み解くのが得意なんだな?あんたも誰かに手紙を書くのか?
ビクター・グランツ:僕は……いや、分からない。誰に送ればいいか分からないから。
ビクター・グランツ:それに、今までもらったことも……

3日目

ビクター・グランツ:道が家と家を繋ぐなら、ポストマンは人と人を繋ぐと言えるんじゃないかな?

なあ、どうして返事をくれないんだ?
こんなに君を愛しているのに……
私が何かしたのかな?それとも待ちくたびれて傷ついてしまったのかい?
次のお忍びデートは絶対、君の両親にバレないようにするから!
お金を稼いだら、ここを出ていける。
一緒に、私たちのことなど誰も知らない場所に逃げよう!
頼む、もう少しの辛抱なんだ!私から離れないでくれ!

ウィック:求愛の手紙?すごいな、真摯で口調も情熱的だ!
ビクター・グランツ:誰かに何かを願う時はそういうものだよ。手紙の中だと、人は顔を合わせた時よりも真摯に語ることができる。
ビクター・グランツ:でも時々、文字の裏に隠された内容を読み解いてしまうこともある。飾りと哀願の言葉を暴けば、そこにあるのは無責任な嘘だけだ。
ウィック:嘘にはどんな意味があるんだ?
ビクター・グランツ:責任から逃れ、他人を宥める。嘘にも良いものと悪いものがある。ほとんどの場合、悪い方が多いんだけど。
ビクター・グランツ:……これは僕が小さいころ、母さんに教えてもらったことだ。
ビクター・グランツ:直接交わされる約束や会話は、どれも演技に見える。でも手紙は、面白い謎解きゲームなんだ。

4日目

ウィック:(くんくん)この手紙、出来立てのナッツクッキーのにおいがする!

母さんへ:
この前届けたプレゼントはもう受け取ってくれた?
大分涼しくなってきたから、母さんが言っていた「猫のしっぽみたいにモコモコのマフラー」を送っておいたんだ。
都会の秋はやっぱり実家と違って、まだ葉が落ち始めたばかりだ。
街の人たちはもう次の祝日の準備を始めている。
ショーウィンドウには様々な装飾が煌めき、そこら中にマロンケーキの香りが漂っていてさ……
よければ、今度身に来てよ。
少し残念なのは、落ち葉がすぐに片付けられてしまったことかな。
川辺の道に積もった落ち葉を踏んで「パリパリ」と音をならしていたのが懐かしい。
それと、父さんと釣りに行ったあの河も。

ウィック:この手紙は好きだ!こいつが言う川辺にも行ったことがある!あそこにはフワフワの木の葉や、リスもいた!
ビクター・グランツ:これは家書だね……故郷を離れた人は、自分の生まれた地を、故郷のものを懐かしむ。
ウィック:リス!あんたはリスが好きなのか?
ビクター・グランツ:いや、あの河のことだよ。
ビクター・グランツ:よく覚えていないけれど、5歳の時、初めて母さんと遠出して……たくさんの街や村を通った。あれも、秋だったな。
ビクター・グランツ:あの日、僕はずいぶんと眠ってしまって、目が覚めると丁度畑と綺麗な夕焼けが見えたんだ。小川の橋を通ると母さんは僕の手を放して、橋の傍に立って待った。
ビクター・グランツ:そして叔父さんが僕の手を取って……母さんもどこかへ行ってしまった。
ウィック:リス!
ビクター・グランツ:……彼女はどんな顔をしていたっけ?

5日目

ウィック:手紙は「ピリリ」と裂かれる、風鈴は「チリンチリン」と鳴る、風は「ヒューヒュー」と吹くーー

兄弟、思えばもう10年も会っていないな。
あまりに連絡を取っていなかったから、ここ数日アルバムをひっくり返してようやくお前の宛先を見つけたんだ。
学校に行っていた頃、授業をサボって河に遊びに行き、樹皮と教科書で小舟を作ったのを覚えているか。
あの頃の俺たちは草笛で汽笛の音を真似たり、船乗りになって航海するのを夢見たりした。
その後俺は本当に船乗りになり、海へ出た。
引っ越しもしたから、再びお前に会うことはなかったがな。
まだそこに住んでいることに期待して……手紙に船のチケットを同封した。
いつでも俺たちの船に来い。一緒に海の景色を見よう。

ウィック:何だこれは!封筒の中に紙切れが入ってるぞ!(くんくん)しょっぱいーーインクのにおいもする!
ビクター・グランツ:うん、船のチケットだ。でも、この封筒の受取人はいなかった。差出人の期待は外れたわけだ。
ウィック:ああ、航海!人間はどうして犬を航海に連れて行かないんだ!
ビクター・グランツ:でも、彼はどうしてもっと早くこの相手を探しに来なかったんだろう?友達なのに、これでは悔いが残る。
ビクター・グランツ:だから口約束は嫌いなんだ。人はいつも約束を破る。
ウィック:「約束を破る」って何だ?
ビクター・グランツ:他人に何かを約束してもらって、それが果たされないことだよ。例えば「すぐに戻る」とか、「ここは君の家だ」とか、「また連絡する」とか。
ビクター・グランツ:15歳、寄宿学校を出た年、また連絡しようと言ってきた人はたくさんいた。でも、それを実行した人はいなかった。
ウィック:そいつらはあんたの本当の友達じゃなかったんだろ!
ビクター・グランツ:わ、分からない。あの頃はずっと1人でいたから。夜消灯した後も、彼らはこっそりおしゃべりしていたけれど、僕は話を聞いているだけだった。
ビクター・グランツ:あそこの夜は、いつも強風が吹いていた。今日の風と同じだ。
ビクター・グランツ:僕のベッドの傍には小さな窓があって、カーテンの隙間から外の雨や落ち葉、雪も見えた……

6日目

ビクター・グランツ:仕事が終わった後、たまにハーモニカを吹くこともあった。
例えば、『グリーンスリーブス』を吹くのが好きだったな。

ロレンスさんが病死した。葬式は水曜日に行われる。
彼は窓の下から、胸元の手に添えるための雛菊を摘むだけでいいと言っていた。

ウィック:へえ、手紙って良くない情報を伝えることもあるんだな。
ウィック:僕が死んだら、あのドッグフードと一緒に埋めてくれ!
ビクター・グランツ:僕、死んだ後のことを考えたことはなかったな。
ウィック:盗み見た手紙と一緒に埋めてやろうか?
ビクター・グランツ:……
ビクター・グランツ:ハーモニカを墓まで持っていきたい。それ以外は特にないかな。
ビクター・グランツ:元々何もない人間だから、深く考えなくて済むんだ。
ウィック:可哀そうだな、僕にすらドッグフードがあるのに!
ビクター・グランツ:それは僕が昨日買ってあげたやつでしょ!
ビクター・グランツ:ぼ、僕は幼いころから叔父さんの家に預けられて……その後は学校にいた。分かると思うけど、人に住まわせてもらっているんだから、自分の物はないんだ。
ビクター・グランツ:秘密を守る人間は信頼に値すると言うけれど、僕を頼ってくれる人なんているだろうか?
ビクター・グランツ:口先では親切だけど、真摯な文字を言葉にして、手紙に書いてくれる人はいない。
ウィック:いい考えがある。この手紙を全部自分のものにするといい!
ビクター・グランツ:……ウィック、笑えない冗談だね。慰めてくれてるのかな?

7日目

ウィック:懐かしい匂いがする!

よく考えろ、こんなにデカい商売は滅多にないぞ!
ちょっと指を動かしてあの荷物を運ぶだけで、警察署で稼ぐ給料よりも遥かに多くの金が手に入るだろう?
おやじの言うことを聞き、この秘密を守ればさ。
あとは、口が堅い「伝令ベル」を探すだけだ。

ウィック:これだ!僕が探していたもの!
ビクター・グランツ:どうやら……秘密みたいだね。
ウィック:大きな秘密だ!あ……でも、僕たちも知ってしまった!
ビクター・グランツ:秘密はちゃんと守るさ。
ウィック:本当か?「口が堅い」「伝令ベル」みたいに?
ウィック:それじゃあ、一緒に配達できて嬉しかったよ。ぜひ僕の主人のところにも遊びに来てくれ!
ウィック:……もう僕らは友達、だよな?
ビクター・グランツ:もちろん。
ウィック:親愛なる友よ――良い秋を!
ビクター・グランツ:うん、良い秋を。

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