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1日目

眠りとは呼べない深淵からゆっくりと意識が浮上し、夢ではないさざ波のような何かが引いていく中、あなたは目を覚ました。
身を起こそうとした途端、あなたはその動きに既視感を覚えた。まるで、何度も繰り返された儀式の始まりのようだ。
星々が空に散りばめられ、見渡す限り果てしない荒野が広がる。文明を象徴する灯火は見当たらず、ただ暗紅の花が大地を彩っている。それらは四方へと伸び、やがてさらに深い闇へと溶け込んでいく。
そして地平線の果てには、1本の木が生えていたーーその根は大地を覆い、樹冠は天を貫く。空中を覆う光の幕でさえその枝に切り取られ、現実離れした光景が広がっている。
私:……
私:これは……夢?こんな巨大な木が現実にあるはずない……
???:おいおい、人は夢の中で溺れ死んだりしないよ。
???:今しがた、君を川から引っ張り上げてやったんだ。で、調子はどう?
私:言われてみれば、確かに頭が少しぼんやりするような……記憶が曖昧になってるみたいだ。
(あなたの服は濡れていなかったが、なぜか彼の言葉を疑う気にはならなかった)
???:生きていれば何よりだーーと言いたいところだけど、そういえば聞いてなかったな。君はまだ……生きてるんだよね?
◆見ての通りだけど
私:死人は喋れないと思う。
???:それはどうかな……ほら、あっちの連中を見てみなよ。
◆もう死んでいるのかも……私も、あなたも
(目の前の青年は笑みを浮かべたまま頷いた。あなたの発言を当然のように受け入れている)
???:おめでとう、君の新生活の始まりだ!でもその前に、少し体を動かす必要がありそうだね。
???:それとも……君と同じ状況の人たちに声をかけてみるかい?
彼が指さす方向に目をやると、荒野の中で立ち上がる人影が見えた。広々とした大地はたちまち、どこか窮屈な気配を帯び始める。
ーーしかも、向こうはあなたたちがいる方角へ押し寄せているようだ。
その中でもひときわ切迫した様子を見せる者たちがいた。彼らの衣服はぼろぼろに裂け、露わになった脛もすでに白骨化している。それでもなお、彼らは足を引きずりながら前進し続けていた。
脳が考えを整理する前に、あなたの足は動き出した。
左足を一歩踏み出そうとしてなぜか痛みを感じ、おぼつかない足取りになってしまったが……幸いこの両足はどこも欠けておらず、血が通っている。
私:どうしてあなたまで逃げるの?彼らは誰?ここの住民?
???:アハハ、君がどこまで逃げられるのか見てみたくてね。それに、君は道が分からないだろう?
???:後ろの連中はここの住民だけど、それだけじゃない。たぶん、その先祖たちも含まれてる。
私:こんな時に冗談はやめてよ……彼らを止める方法はないの?
???:冗談なんかじゃないんだけどなぁ。君にもいい方法がないなら、木に登ろうか!
???:普通、連中は木の上までは登って来れない。奴らがまた地面に倒れるまで待とう。
……
???:記憶がないって言ってたけど、木登りの腕前は悪くなかったな。
私:いつまでもこんな風に囲まれてたら、さすがに体力が持たないよ……彼らは、その……あれでも生きてるって言えるの?
???:生きてるわけないさ!君だってそう思ったはずだ。
私:でも、死んでるならあんな風に動くわけがーー
???:君は自分がどこに来たのかまだ分かってないみたいだね?ここは、死の世界なんだ。
???:死者はサウィンの魔力によって、まだ生命を持つ存在を追う「牙」となる。
木の下の住民たちが熱烈な咆哮を上げている。その過剰なまでの執着心を見て、あなたは彼らが永遠にここを取り囲み続けるのではないかと心配になった。
私:でも、飲まず食わずのまま木の上に居続けるわけには……まあ、私が彼らにとっての食料である可能性もあるけど。
あなたの推測を聞き、男はゲラゲラと腹を抱えて笑い出した。あなたは彼が木から落ちるのではないかと少し慌てた。
???:安心しなよ、僕らが飢え死にすることはないし、あいつらが僕らを食べることもない。ここでは、食事に意味なんてないんだ。
???:ただ、連中に掴まって命を落とさないよう気をつけなきゃならない。それだけさ。

私:さっきは助けてくれてありがとう……そういえば、まだ名前を聞いてなかったね。
???:ああ、誰かに自己紹介するなんて何時ぶりだろう。君に会えてうれしいよ。
光塵:僕は光塵。礼ならいい、僕も君に聞きたいことがあるからさ。何か覚えてることはある?全部教えてほしいんだ。
私:こんな時でも随分と礼儀正しいな……
◆思い出そうとする
私:大した手助けは出来ないかもしれないけど、断片的な記憶ならあるよ。仕事とか、お祭りとか……黒猫とか。
光塵:大丈夫、詳しく話してくれ。何かの役に立つかもしれない。代わりに、僕もここについて教えるから。
(彼はどこからかノートを取り出し、真剣な様子であなたの言葉を一字一句記録し始めた)
◆もう死んでいるのかも……私も、まずは状況を確認する
私:うっ……ごめん、まだ少し眩暈が……どうやってここまで来たのか、何も思い出せない……
光塵:構わないよ、そういう人は多い。なら、僕が先にここのことを教えよう。君の役に立つかもしれない。
光塵:ここは、全ての生命が終わりを迎える地だ。来たばかりの君にこういうことを言うのは忍びないけど……
光塵:さっき見た奇妙な「人」たちは、ここで長く過ごした者がなり果てた姿さ。
光塵:やっぱり早めに心構えをした方がいいと思うし……もちろん、信じるかどうかは君次第だ。
光塵:あと、これだけ忠告しておく。休みたければ、なるべく大地から離れること。正気を保ちたければ、空をあまり見ないこと。
光塵:木登りは上手かったから、ここでは非常に有用な能力になるだろうね。
私:ありがとう。
光塵:礼ならいいって。ただ、もし記憶が戻ったら、僕の質問にも答えてよ?
私:質問?
光塵:金色の鳥を見たことはある?ーー黄色じゃなくて、光り輝く金色の鳥を。
心からの懇願が天に届いたのか、あなたが木の上で死を予感するより先に、木の下にいた者たちは散り散りに去っていった。
すると、気品のある黒衣の女性が、騒ぎを聞きつけたようにこちらに近付いてきた。
???:お二人は……なぜ木の上に?
◆これには事情があって
私:(改めて先ほどの出来事を話すことで、あなたは自分の身に何が起こったのか再認識した。必死すぎて、どうやって木に登ったのかすら覚えていない……)
???:そう、地面がそんなに危険だったなんて……私も木登りを覚えた方がいいかしら?いざ逃げなければならない時のために……
◆月光浴をしてました
私:月明かりを浴びていたんです。
(あなたは自分の頭の中が珍しく空っぽになっていることを自覚した。何も考えずに済む感覚はとても気楽だ)
(あなたは月光浴の必要性について真剣に語った)
???:そう、健康にとてもいいことなのね。盲点だったわ。
私:えっ、早速登るの!?
光塵:中々行動力のあるお嬢さんじゃないか!良かったら教えるよ!
(二人の手を借りつつ、後から来た女性も枝に座った。彼女は興味深そうに周囲を見回している)
???:楽しい!覚えていないけれど、こうやって地面を見下ろすのは初めてじゃないような気がするわ……
???:でも、木登りなんてしたことないはず……変ね、だったらこの既視感はどこから来ているのかしら?
私:あなたも記憶を失ったんですか?
???:「も」?……もしかして、あなたもなの?
(共通点を見つけてほっとしたように、彼女はぐっと距離を詰めてきた)
朧夜:私は朧夜。ここへ来たばかりで、出口を探しているのだけど、全く見当がつかなくて……
(彼女は空を見上げた)
朧夜:少しお腹が空いたわね……せっかく意思疎通のできる仲間に出会えたのだから、あなたたちも一緒にどう?
私:この木の上で料理を?相当な技術が求められそうですけど。
朧夜:もちろん違うわよ。今なら地上も安全だし、木から降りるの。
彼女は木から跳び下り、軽やかに着地した。そのままふり返り、驚くあなたに向かって手を振っている。
私:すごい行動力ですね……
朧夜:私はまだまだ元気な年頃だもの。幼鳥で例えるなら……換羽期ってところかしら?
私:理論上、ここにいる私たちは全員、成鳥期に入っていますよ。
光塵:僕らも降りよう!ここじゃ食べ物なんて滅多にありつけない。貴重な食事だ!
私:でも、さっきは食べなくても問題ないって言ってなかった?
あなたはお腹をさすってみた。最後に食事をとってからどれくらい経ったのか分からないが、まだ空腹の合図はない。
光塵:必要かどうかと、できるかどうかは別物さ。ここで食べ物を見つけるのは難しい。食事を1回とるだけでも、昔の生活を思い出せるだろう?
(地面に戻ると、朧夜さんがすでに簡易的な鍋を設置し、食材を取り出して料理を始めているのが見えた。まるで手品みたいだ)
(いや、本当に魔法なのかもしれない。彼女は特に何もしていないのに、鍋の中の食材は奇妙な色に変わり始めている)
光塵:さあ、食べてみなよ。君も食べ物を欲しがっていただろう?
私:いや、今はそれほどでも……
