10日の思い出
段階1:出会い
薄暗い灯火を借り、私はこの屋敷の中で意外なものを発見した。
スーツケースが1つ、黄ばんだカルテ1冊、そして……霞んだ2人の写真が1枚。
これらは誰かに残された品のようだ。分厚い埃をかぶっている。
……さて、これらのアイテムから、その主人に関する情報を得られるだろうか?
- カルテ(患者)
すでに紙質が脆くなっているカルテ。
中には分厚い何かが挟まっている。
表紙から、カルテの主人はエミールだということが分かる。 - 古いケース(「心理学者」)
埃をかぶった古いケース。
中には医学書、小物が数点、そしてバラバラの記録が数ページ入っている。
患者視点
- 1枚のボロボロの布
襟元の布きれ。
うっすらと「エミール……闘犬場」という文字が縫い付けられている。
エミール:……目が覚めたのか?
エミール:俺は……エミール?
エミール:ここはどこだ?俺は夢を見ているのか?
この部屋……
◆選択肢1:周りを観察してみよう
エミール:壁、鉄の扉、カルテ……この腕はベッドに拘束されている……
◆選択肢2:……他の連中はどこだ?
エミール:他の連中は?声が……声が出ない。
エミール:医者が入ってきた……医者、なのか?
ああ……思い出した。俺はここに住んでいる狂人だ。
- 2日目:診断記録
普通の診断記録。
精神病院の病人によく見られる症状。
エミール:ここは精神病院……なら今日は何日だ?
エミール:なんだか……いつも疲れている気がする。
あの薬のせいか……錠剤もあれば、気持ち悪い液体もあったな……
エミール:薬は俺を空中に浮かび上がらせる……
空中から、無数の瞳が俺を睨んでいる……
◆選択肢1:目を覚ませ!
エミール:俺も目を覚ましたい……或いは、足掻きたい……
だ、だが、奴らはいつだって俺を拘束する!俺を閉じ込める!
エミール:……あ、あああああ!
◆選択肢2:このまま寝よう、ただの悪夢だ……
エミール:まだ寝ていたい……でも……
エミール:痛い……体が少しずつ引き裂かれて……奴らが俺を見ている。
奴らの涎がーー
あーーああ!これは夢じゃない!
エミール:痛い、痛いーー無数の影が重なってーー
エミール:電気短針、ナイフ、注射器……なら、俺は?俺は誰だ?
俺はなぜーー治療を受けている?
エミール:思い出せない、どうして思い出せないんだ……
- 3日目:メモ
1枚のメモ。10月1日のページに貼られている。
エミール:今日は、初めて見る顔が来た……
エミール:よく見えない……だが、香りがする。
顔は……ぼやけている顔だ。
その時、1匹の怪物が俺の頭の中に潜り込んだ。
そして俺は……声も出せない……
エミール:まだ夢を見ているのか……影が俺に向かってきた……
◆選択肢1:危ない!避けろ!
エミール:あ、あいつらか?
く、来るな……
俺から離れろ!俺から離れろ!
◆選択肢2:考えるな。幻覚じゃないのか?
エミール:これは幻覚なのか?どうでもいい。
どうせ俺は奴らに連れていかれるんだ。
あの怪物が俺に近づいてきた……
そいつはーーそいつは俺のことを食べようとーー
エミール:……笛の音が、聞こえたような?
エミール:全部……終わったのか?
- 4日目:薬物説明
手書きの薬物説明
エミール:意識を保てるのはとても贅沢なこと……医者たちは皆そう言っていた。
エミール:今日は……あまり眠くない。新しい医者に出会った。
彼女は他の医者とは違い、俺に笑いかけてくれた。
彼女からは……良い香りもした……
エダ・メスマー……この名前はどういうスペルなんだろう?
エミール:電気治療の時、あいつらは俺を椅子に縛り付け、彼女は俺の傍に立っていた。
エミール:だが今日の治療は……痛い!
全身が震えて……耳鳴りがして……ちぎれてしまいそうだ!
◆選択肢1:奴らから逃げろ!
エミール:あの医者たちは俺をしっかりと椅子に縛り付けた。
電気ショックの痛みはまるで無数の錐で全身に穴をあけられているみたいだーー
俺はーー必死に足搔いたが、拘束によって俺は動けなかったーー
エミール:と。止まれ!医者ーー誰が止めてくれる?
◆選択肢2:エダに助けを求める
エミール:苦しい、吐きそうだーー
まるで無数の錐が俺の体に穴を空けているようでーー
エミール:エダーー助けてくれ!彼女はどうしてーー
エミール:……
何も、何も覚えていない……息ができない……
エミール:寒い、寒い……彼女が俺に笑いかけてくれたのが見えた。
それに、笛の音も聞こえて……
- 5日目:診断記録Ⅱ
診断記録……筆跡がこれまでと違う
エミール:俺はエミール……精神病院の狂人だ。
今、俺は少なくともそれだけ思い出せる……
治療の痛みは増したが、なぜか俺はようやく目を覚ました。
意識が朦朧としていた日々は、まるで長い眠りの中にいたようだった。
エミール:喋れる、物をはっきり見ることができる。
素晴らしい感覚だ……今なら病室の窓の柵が何本あるか数えることだって……
1本……2本……前までは、朧げに窓の光が見えただけだったのに……
エミール:今日、エダが病室にカルテを書きに来た……来たのが彼女で良かった。
彼女は他の医者よりも優しそうだ。
彼女が腰をかがめた時、1本の薬瓶が彼女のポケットから落ち……俺の前まで転がってきた。
鎮静剤?いやだ、あれは嫌いだ!
◆選択肢1:エダの薬瓶だ、彼女に返そう
エミール:だが、あれは彼女のものだ。
彼女はただの責任感ある医者だ……俺は薬瓶を拾い、彼女に返した。
◆選択肢2:拾ってーー捨てろ!
エミール:気持ち悪い味がする上、知覚を奪っていく薬なんてーーこの機に捨ててしまえ!
エミール:「エミール。」エダが急に俺に呼びかけた。「あなたに話があるの。」
エミール:「ここ数日、あなたの薬を減らしたのよ。」
彼女は俺を見据え、そう言った。
「薬の過剰摂取は神経を損傷させるわ。私はあなたの意識をはっきりさせたけれど、痛みは増す。」
エミール:「私はあなたを治療したい、エミール。せめて混濁したまま眠ることはなくなると思う……」
彼女は返事に期待している様子で口調を和らげた。
エミール:……待て、エダが……俺が目を覚ました理由?
だったら彼女は何がしたいんだ?俺の目を覚ますためだけに……
- 6日目:1輪の枯れた花
枯れてしまった花。だが丁寧にカルテに挟まれている。
エミール:ーー俺の夢に潜り込んだ犬ども、あいつらの涎がずっと地面に滴り落ちている。
暗くて冷たい隅で、排泄物が悪臭を放っている……
俺は片隅に縮こまり、鉄の鎖を「カチャカチャ」と鳴らしながら、真っ赤な瞳で俺を睨みつけるそれらの姿をただ眺めていた。
エミール:……これは長い間俺に付きまとう悪夢だ。
でも今はーー吼える野獣も果てしない悪夢も、全てなくなった。
エミール:これはメスマー先生と、勝手に減らされた薬のおかげだ……
これまでは、昏睡と痛みのどちらの方が酷いのか区別がつかなかった……
だが今は、彼女が他の医者とは違うことが分かる。
エミール:彼女に会うのが楽しみになってきているほどだ……
今日、俺は彼女から花をもらった。
エミール:エダが残したものだ。だが……どうして?
誰もが狂人をここまで哀れんでくれる訳ではない。
病室に現れるべきではない、この花と同じようにーー
◆選択肢1:ここにあるべきではない花を隠す
エミール:そうだ、これをあのカルテに挟んで……誰にも見られない場所に置いておこう。
十分安全で、長く保管できるよう……
◆選択肢2:花を一番目立つ場所に飾る
エミール:これは本来俺が持つべきものではない。
可能な限り長く見つめていたい……
俺はそれをテーブルに置いた。意識の有無にかかわらず、目に入る場所に。
エミール:これはプレゼントなのか?
一般的な礼儀だと、俺はどうするべきなんだ?
ありがとうと言うべきだろうか。
狂人に対する彼女の優しさに感激し、そして……お礼を返す?
- 7日目:1つの鉄製リング
針金を曲げて作られた簡易的な指輪。
すでにところどころ錆びている。
エミール:……指輪を作った。
質の悪い、ベッドの針金を使って。
エミール:部屋が暗すぎて、それは……爪を刺し抜いてしまうところだった。
構わない。これくらいの痛み、電気ショックと比べたら大したことじゃない……
エミール:これは……お礼だ。俺にはこれしかない……
メスマー先生は発狂した俺を見たことがある。
彼女は怖がるだろうか?どうやって彼女に渡そう?
◆選択肢1:狂人として、静かにあげるべきだ
エミール:狂人からの劣悪なプレゼントだ。静かにあげた方がいい……
◆選択肢2:勇気を出して、「礼儀」通りに感謝を伝えよう
そうだ……俺は……ただ礼儀正しくお礼を言い、説明すればいい。
彼女はいつも狂人に寛容だ……俺が間違わなければいい。
エミール:夜になった後、俺はようやくあの指輪を彼女に渡すことができた。
エダは受け取ってくれて、そのまま手に付けてくれた。
彼女は……気に入ってくれたみたいだ。
エミール:俺は……間違ってなかったのか。間違っていないよな?
エミール:……
突然、エダからこの精神病院との契約が終わると告げられた。
3日後には去ることになるそうだ。
エミール:3日、それはあまりにも早すぎる。
だが彼女は……新しい考えがあると言った……
「心理学者」視点
- 1日目:ホワイトサンド精神病院患者リスト
精神病院の患者リスト。
院内の全ての患者の氏名、病因と病室番号が記されている。
エダ:私はエダ・メスマー、心理学研究者よ。
少なくとも、以前はそう呼ばれていた。
エダ:……ここはホワイトサンド精神病院。
9月29日から、私はここで11日間の医療実習を行うことになった。
エダ:まさかここで働くことになるとは思わなかったけど……これも悪いことではないのかもしれない。
準備ができている人間は、興味を持てるものを見つけることができる。
エダ:ここへ来た初日、看護師が私にホワイトサンド精神病院の患者リストをくれた。
◆選択肢1:看護師に情報を訊ねる
エダ:看護師によると、ここでは軽症の患者は集団病室に、危険な患者は「檻」と呼ばれる1人部屋に置かれているらしい。
◆選択肢2:……1人でリストを確認したい
エダ:私は1人でリストを見た。
病室の欄には「檻」という奇妙な単語が書かれており、その後ろには「危険な病人」と注意書きが記されている。
エダ:「檻」、なんて独特な名前でしょう。
可哀想な狂人を閉じ込めるのに適しているわ。
エダ:リストの中に、ファミリーネームがない患者ーーエミールを見つけた。
情報には記憶喪失、躁病、攻撃傾向と書いてある。
彼は今、「檻」に住んでいる。
エダ:檻……それは一体どんな部屋なのかしら?
- 2日目:1枚のスケッチ
「檻」に関するスケッチ。狭く、閉ざされた1人用病室。
エダ:精神病院では、暴走する狂人よりも愚かな医者の方が多い。
エダ:血抜き、電気治療、薬物鎮静……これらは医者たちが無能である表れだわ。
こんなものが精神病院の常套的な治療方法だとは認めない。
たとえ、私も病人に対して同じようなことをしていたとしても。
エダ:でも、あれはもうずっと昔の事。
それに、少なくとも私の目的は間違っていなかった……
エダ:今日の治療時間に、診療室であのエミールという病人に会った。
◆選択肢1:治療過程を観察する
エダ:電気治療の過程はとても苦しい。
でもエミールは、他の人たちのようには恐れなかった。
治療が終わった後、医者に自然な、無意識の笑みを浮かべるほど。
◆選択肢2:病人と交流してみようか?
エダ:私は彼の電気治療を受け持った。
彼と交流を試みた時、彼は他の人たちのように恐怖を示さなかった。
医者に自然な、無意識の笑みを浮かべるほど。
エダ:こんな反応は初めて見た。
痛みを感じた後も避けることなく、意識が朦朧としていても本能的に愉悦を表すなんて。
エダ:彼は盲目的な犬や、実験室のモルモットを想起させた。
ーー「檻」と言う名の小さな部屋は、やはり優れた鑑賞性を有する動物を閉じ込めているらしい。
- 3日目:1枚のメモ
誰かの身分情報
エダ:数年前、私は催眠療法を研究していたーー
暗示と指令を通して催眠をかけ、病人のマイナスの感情や痛みを消すというものだ。
エダ:誰も私を評価しなかった。
精神科でかなりの権威を持っていた私の父も含めて。
私が勤めていた学校が提供した病例たちは、痛みを感じている最中に睡眠をかけることができなかった。
何度も失敗した後、私は特殊な方法を探すことにした……
エダ:秘密裏に行っていた実験が見つかり、彼らは私に研究を中止するよう命令した。
でも、彼らに何が分かると言うの?あの藪医者たちだってそう。
彼らにとっての「研究」は、ただ流行りを追いかけているだけ。
そして狂人たちは、彼らが私利を得るための道具に過ぎない。
エダ:……私はエミールに興味を持ち、彼の普段の治療担当を申請した。
今日、私が「檻」に彼を見に行った時、彼はひどい頭痛を起こしていた。
◆選択肢1:他の医者を呼ぶ
エダ:彼は歯を食いしばり、震える息を吐き、意識はすでに朦朧としていた。
精神病院の他の医者を呼ぼうとしたけれど、当番は私1人しかいないーー
◆選択肢2:自分で治療する
固有セリフなし
エダ:私は彼を宥めようとしたーー私は、笛を吹くと彼が異様に落ち着くことに気づいた。
エダ:これは……催眠を思い出させる。
病人の多くは笛を通した命令しか分からない。
なぜ彼は痛みを感じている最中にもかかわらず、笛によって落ち着くことができるのだろう?
エダ:私はエミールの情報を調べた:
身分不明、高熱による記憶喪失、唯一の手掛かりは襟元の闘犬場のマークだけ。
エダ:……そう、犬は主人の笛の音には特に敏感だ。
エミールは私に新しいインスピレーションを与えた。
- 4日目:数枚の錠剤
「過剰摂取は神経の損傷を招く。程度によって幻覚、思考の鈍りなど……」
エダ:笛の音は催眠の1種だけれど、私が受け持った患者の中で、エミールは唯一痛みを感じている最中に催眠を受けられる人間だった。
エダ:当時の実験が失敗した原因は……私が与える痛みに耐えられない人が多かったから。
そして、ほとんどの人間は痛みを感じている最中に催眠に対して反応を起こせない。
エダ:でもエミールは違う。
私は適切な方法を見つけたのかもしれない。
彼と話すべきだわ。
エダ:……精神病院は病人たちに大量の鎮静薬物を使用した。
これは病人たちに酷い損傷を与える。
10月2日、私はエミールの薬の一部をこっそりすり替えた。
こうすれば彼はもっと意識がはっきりするはず。
でも、痛みにはより耐え難くなるわ。
◆選択肢1:今日の治療を傍観する
エダ:今日の治療では、薬物の減少によって痛覚が増強された。
彼は電気ショックによって叫び声をあげ、痙攣を起こした。
薬の量を減らし過ぎたため、「檻」に帰っても彼は震え、息を切らしていた。
エダ:でも私が笛を吹くと……エミールは痛がらず、私の懐の中で落ち着きを取り戻した。
◆選択肢2:治療時に「検証」を行う
エダ:今日の治療で、私はこっそり電気ショックの強度を強めた。
鎮静剤の減少によって彼の痛覚は強まり、叫び、震え、何回か意識も失った。
エダ:病室に戻っても、彼は震え、息を切らしていた。
私は再び笛で彼に催眠を試してみた。
やはり、彼は段々と静まり、落ち着きを取り戻した。
エダ:これは私が思った通り、エミールは催眠に対して明らかな反応を示し、痛みに対する強い忍耐力も持っている。
エダ:正に私が求めていたものではないかしら?
あの人たちと比べるとーー彼は私の実験台に最も適する人材だわ。
- 5日目:1枚のメモ
1つの名前。1つの……返事?
エダ:ずっと困惑していたことがある。
催眠を研究するために病人を苦しめるなんて、私はあの薮医者たちと変わらないのではないか、と。
エダ:私は数日間にエミールの薬をすり替え、ついに彼が目を覚ます時を迎えた。
私は彼に、エダ・メスマーが痛み止めの薬を持ち去ったために彼により苦痛な思いをさせていると告げた。
エダ:私は彼の返事を聞きたかったーー治療のために痛みを与える。
これは正しいのか、間違っているのか。
病人として、彼は私を恨むだろうか?
◆選択肢1:痛みを与えた後に彼を宥めるから、彼は許してくれる
エダ:これまで催眠を使った医者はいない。
意識を保ったまま、薬物の危害を与えることなく痛みを止めることは誰にもできなかった……
エミールはきっと途方に暮れた私を許してくれるわ。
◆選択肢2:なぜ恨まない?私は加害者だ
エダ:やっぱり彼に恨まれるかしら……かつての病人たちのように。
切羽詰まった人間は医者の善意に報いることを知らない。
彼らにとって、私は決して優しい医者ではない……
エダ:私は彼のベッドに腰かけ、紙に文字を書いたーー「エダ?薬?」
エダ:彼はペンを取りーーエダ、と書いた。
エダ:その瞬間、私は歓喜した。
エミールは「エダ」が「もっと痛い」に繋がると理解したのだ!
それでも彼は私を選んでくれた!
エダ:そう……私は何も間違っていない!
……私が与える痛みに耐えられる人が決していないわけではない。
痛みと治療は元々コインの表と裏なのだから。
- 6日目:1輪の枯れた花
枯れてしまった花。だが丁寧に保管されている。
エダ:エミール、私だけが彼の目を覚まし、彼だけが私の催眠を受け入れられるーー
エダ:こんな絶妙な組み合わせによって、私は彼を重要視するようになり……
彼に惹かれるようになった。
エダ:私は彼にもっと優しくできる。私たちはもっと正常な方法で交流できる……
今日は治療がない。昼に花を2輪摘んで、彼に1輪渡そうと思った。
エダ:エミールは昼寝していた。
発作を起こさない時はまるで静かな子供のようだ。
◆選択肢1:こっそりと花を枕元に置く
エダ:病人である彼には休みが必要だ。
私は花を彼の枕元に置いた。
だが、エミールは目を覚まそうとしているかのように身動きをしてーー
◆選択肢2:彼を起こして、私を見てもらう
エダ:私は彼を起こして、直接花を彼にあげようとした。
エミールを軽く揺さぶってみたが、彼はほんの少し身動きをしただけでーー
エダ:どうやら寝言を言っているようだ。
耳を傾けてみると、彼はーーエダ、と言っていた。
私の名前?
エダ:あと4日で私はホワイトサンドを離れる。
でも急に何だか……私は1人でここを離れるべきではない気がしてきた……
- 7日目:1つの鉄製リング
針金を曲げて作られた簡易的な指輪。
すでにところどころ錆びている。
エダ:私はエミールを連れて離れることにした。
もうこんなに完璧な実験台は、催眠で治せる病人は見つからないかもしれない!
私は、彼を治したい。
ここに居続けたら、彼が治る可能性はゼロに等しいわ。
エダ:10月7日、時間は残り2日。
私が再び彼に会いに行った時、彼は私に小さく、冷たいものを押し付けたーー
エダ:「花の……お礼。」彼は私を見つめながら、静かにそう告げた。
それは針金をねじって作った指輪だった。
月明かりの下で、キラキラと光を放つ指輪。
その時ーーああ、この感情をどう言葉にしていいか分からない!
◆選択肢1:エミールは私に感謝してくれた
エダ:エミールが私に感謝した?
数年来の研究で、私は初めて病人の理解と感激を得た。
相手が狂人である分、それがどれほど得難いことか!
◆選択肢2:これはエミールの「愛」だ
エダ:指輪?これはエミールの私に対する「愛」だろうか?
分からない。
でも、彼は初めて私に善意を示してくれた患者で……初めて本当に私を理解してくれた男性だわ!
エダ:いいえ、エミールはあの病人たちとは違う……
彼は薬と私の間で私を選び、混濁と痛みの間で痛みを選んだ。
彼は私と同じ。私たちが本当に必要なのは薬ではない。
痛みと、意識の覚醒よ!
エダ:エミール、エミール……
エダ:あの指輪は契約であり、私たちを繋ぐ枷でもある。
私は必ずーー彼と一緒に、精神病院の外の世界に行ける。
段階2:3日計画
患者視点
- 1日目
エミール:(俺はエミール、ホワイトサンド精神病院の病人だ。)
エミール:(記憶喪失によって、俺はほとんど全てを忘れてしまった。
俺の生活にあるのは、混濁と悪夢だけだった……エダに出会うまでは。)
エミール:(彼女はホワイトサンド精神病院に臨時で勤務することになった医者だった。
可能ならば……俺はずっと彼女と一緒にいたい……)
エダ:私がここを去るまであと3日よ、エミール。
エミール:……エダ。
エダ:私は、あなたを連れてホワイトサンド精神病院を離れるわ。
そう……一緒に。
◆選択肢1:……どこへ行くんだ?
エダ:安全な場所を見つけて、あなたを治療するまで。
私はあの医者たちとは違う……ずっと傍にいてあげる。
◆選択肢2:ずっと一緒にいるのか?
固有セリフなし
エダ:そう、ずっと一緒に。
あなたはもう悪夢を見ることもないし、精神病院に入ることもない。
どこへ行っても、あなたはずっと私の傍にいるわ……
- 2日目
エダ:今日、精神病院から病人が1人失踪したの。
私たちは明日の明け方に発つ。
その時は恐らく見張りが厳しくなっているはずよ。
エミール:誰が?
エダ:若い女の子。
彼女がどうやってここを離れたのか分からないけれど……
◆選択肢1:エダ……俺にできることは?
エダ:道具を用意して。
縄や、鉤爪とか……ここを離れる時に使えそうなものなら、なんでも。
◆選択肢2:エダ……危険だ。
エダ:危険?そんなことないわ。
これは必要な選択よ……人は、欲しいもののためなら対価を払うものだから。
エミール:うん。
エダ:誰にも気付かれてはいけない……
- 3日目
エダ:十分長い針金なら2つに曲げられる。
そうでしょう?
エミール:……
エダ:だからーーエミール、ささやかなプレゼントを用意したのーー
出来がいいとは言えないけれど、生まれ変わったあなたを祝うことはできるわ。
エミール:何?
エダ:さあ……手を伸ばして。
エミール:……
エダ:これは新たな始まりと新しい関係であり……
私たちが持つ、相手に関わる初めての品でもある。
エミール:エダ……
エダ:しっ……夜が明けるわ。
「心理学者」視点
- 1日目
エダ:(私は心理学研究者のエダ・メスマー。
ホワイトサンド精神病院で医療実習を行っていた時、患者エミールと知り合ったーー)
エダ:(彼は特殊な病人だった。
痛みを恐れず、催眠に良好な反応を示していた。
私に相応しい、最適な実験台。)
エダ:(私の興味と好奇心のほとんどが彼に寄せられたーー
催眠研究のために、そして彼を治療するために、私は彼を連れて精神病院から離れなければならない……)
エダ:あと3日よ、エミール。
エミール:……ああ、ここを、離れるのか?
エダ:そう……一緒に。
エミール:エダ……どこへ?
◆選択肢1:安全な場所を探して、あなたを治療する。
エダ:私たちはこの精神病院を離れて、誰にも見つからない場所であなたを治療するわ……
時間はかかるかもしれないけれど、きっと良くなる。
◆選択肢2:あなたは私の傍にいればいいの。
固有セリフなし
エダ:私たちはこの精神病院を離れる。
あなたは目的地を知らなくてもいいわ。
どこへ行っても、あなたはずっと私の傍にいるから……
- 2日目
エダ:今日、精神病院から病人が1人失踪したの。
私たちは明日の明け方に発つ。
その時は恐らく見張りが厳しくなっているはずよ。
エミール:誰が?
エダ:若い女の子。
彼女がどうやってここを離れたのか分からないけれど……
エミール:エダ……俺にできることは?
◆選択肢1:一緒に道具を用意しましょう。
エダ:エミール、道具を用意してくれないかしら。
縄や、鉤爪とか……私たちがここを離れる時に使えそうなものなら、なんでも。
◆選択肢2:私の命令に従って。
エダ:あなたは言うことを聞けばいいわ。私が計画してあげるから。
エミール:え……
エダ:誰にも気付かれてはいけない。
いい子にしていてちょうだい……
- 3日目
エダ:十分長い針金なら2つに曲げられる。
そうでしょう?
エミール:……
エダ:だからーーエミール、ささやかなプレゼントを用意したのーー
出来がいいとは言えないけれど、生まれ変わったあなたを祝うことはできるわ。
エミール:何?
エダ:さあ……手を伸ばして。
エミール:……
エダ:これは新たな始まりと新しい関係であり……
私たちが持つ、相手に関わる初めての品でもある。
エミール:エダ……
エダ:しっ……夜が明けるわ。
段階3:逃走
推理はそろそろ終わりだ。
……それで、彼らはあの精神病院を去ったのか?その後は?
この荘園に来たのか?だったら、彼らは今どこに?
くそ、考えを整理すべきか……
※出会い(第1段階)での会話に出てきた選択肢の上を選択すると理性、下を選択すると感性に天秤が傾く。
天秤の偏りが理性なら理性エンド、感性なら感性エンドのメールが送られてくる。
患者視点
- エミールの理性に関する推論
あれらの手掛かりを整理しても、私は未だに彼らの関係について総括できていない。
後になって、あるものを発見するまでは。
それをどう形容すれば良いか分からない……それは革製のチョーカーで、黒い革は柔軟かつ頑丈なものだ。
内側にはエダ・メスマーの名前のイニシャルが刻まれている。
そのチョーカーは明らかにエミールに与えられたものだが、エダ・メスマーの箱に入れられていた。
ますますこの2人の関係性が理解できない。
医者と患者であるなら、エダ・メスマーの支配欲は強すぎるのではないか?
愛し合う恋人なら……まあ、彼らの趣味ということになるのか?
人々は愛を人類の繋殖欲求が引き起こす衝動だと称するが、美しい言い方をすれば、魂同士が互いに引き寄せ合うのだ。
しかし、あれらの記録や品々を見る限り、これが愛なのか、歪な関係なのかは説明しがたい。
救済者と救われた者、医師と病人。
エダ・メスマーはエミールを生まれ変わらせ、新しい人生を与えた……
これが2人にとって1番の結果だったのかもしれない。
彼らが純粋な医者と患者なのか、恋人なのかは分からない。
このような歪な関係の彼らは、本当に運命の相手なのだろう。
残念ながら私は2人の在り処を知り得ることはできない。
彼らは未だに自分たちの旅の途中なのかもしれない……またはとうにゴールしているのかもしれない。
- エミールの感性に関する推論
あれらの手掛かりを整理しても、私は未だに彼らの関係について総括できていない。
後になって、あるものを発見するまでは。
あれは1冊の日記。日記の作者はエミールだ。
日記の筆跡は全て歪んでいて、文字の間違いも多く、幼い子供の作品のようだ。
内容はとてもシンプルで、毎日それぞれ短い数行だけだった。
しかし、この日記はエダ・メスマーのスーツケースの内側に挟まっており、大切な宝のように丁寧に保管されていた。
他の品よりも保存状態が断然良い。
5月15日
今日はずつうがしない。
エダははおれに薬をのまぜなかった。のむとバカになるを言って。
かのじょはじょうだんを言っただけだが、かのじょが笑うと……とてもかわいい。
かのじょはおれにたくさん字をおしえてくれた。
あだしいものはふるいものよりもかんたん。
6月4日
おれたちはまた新しい家にひっこじた。
もっと遠い、誰もいない家。近所もない。
車で何時間もかかる。
家のうらには林がある。川もある。
おれはここが気に入った。エダも気に入った。
10月10日
誕生日。また新しい始まり。
今日はちりょうがなかった。
エダはおれを連れて町に行き、おれたちは本、薬、ケーキなどの食べ物を買った。
おれたちは林で花をつんで、テーブルの瓶にさした。
本屋の子供の背が伸びて、おれのことをお兄さんと呼んだ。
エダはおれにもっと人と話すべきだと言った。
とても楽しい1日だった。
……日記のほとんどは脈絡のないバラバラな記録で、エミールが拙い言い回しで記録した日常の羅列だった。
この平凡な日常の内容を見ていると、この2人がかつては精神病院の医師と病人だったとは想像しがたい。
人々は愛を人類の繋殖欲求が引き起こす衝動だと称するが、美しい言い方をすれば、魂同士が互いに引き寄せ合うのだ。
しかし、あれらの記録から見れば、この2人は通常の道理に当てはめることはできない。
救済者の主導、救われた者の依存。この2人は確実に変人であり、とても真撃な恋人でもある。
残念ながら私は2人の在り処を知り得ることはできない。
彼らは未だに自分たちの旅の途中なのかもしれない……またはとうにゴールに到達しているのかもしれない。
「心理学者」視点
- エダ・メスマーの理性に関する推論
あれらの手掛かりを整理しても、私は未だに彼らの関係について総括できていない。
後になって、エダ・メスマーのスーツケースからあるものを発見するまでは。
それは気味が悪いほど詳細な研究記録だった。
研究対象はエミール、彼女が精神病院から連れ出した男だ。
記録の表紙には「21」という番号が書かれており、記録の日付と長さから見ると、1冊目から21冊目まで、少なくとも3年は経過していることが分かる。
3年間、エダ・メスマーは事細かにエミールの病状の変化、痛みに対する反応、記憶回復程度を記録していた……
彼女は特殊な方式で研究を行っていたようだ。
「痛覚反応」の欄にはかなり衝撃的な行いも記されている。
例えば極端な方式で男に痛覚を与え、催眠効果と2人の感情の繋がりを検証するなど。
意識を有する相手にこのような手段を取るエダ・メスマーは普通の医師や学者と比べると明らかに狂っている。
彼女は執着する狂人の方に似ているのではないだろうか。
しかしエダ・メスマーの感情を定義することはできない。
この記録の後半にはエミールの病状の悪化について書かれている。
記録者の言葉の端々から落胆や、悲しみが汲み取れる。
「エミールの頭痛がまた増え始めた。自我意識も減退している……
私は彼がまたあの自我を失った可哀想な姿に戻るのを見てはいられない。
私も、彼を失うわけにはいかない。私の唯一の最愛……」
人々は愛を人類の繋殖欲求が引き起こす衝動だと称するが、美しい言い方をすれば、魂同士が互いに引き寄せ合うのだ。
しかし、あれらの記録から見れば、この2人は通常の道理に当てはめることはできない。
彼らが夫婦か恋人か、断言することはできない………
ただ、このような歪な関係の彼らは、本当に運命の相手なのだろう。
残念ながら私は2人の在り処を知り得ることはできない。
彼らは未だに自分たちの旅の途中なのかもしれない……またはとうにゴールに到達しているのかもしれない。
- エダ・メスマーの感性に関する推論
あれらの手掛かりを整理しても、私は未だに彼らの関係について総括できていない。
後になって、エダ・メスマーのスーツケースからあるものを発見するまでは。
それは1冊の小さなチケットホルダー。中には様々なチケットやレシートが入っている。
列車チケット、船チケット、手書きの買い物リスト、薬屋の購入記録……
長い時間が経っているため、ほとんどの文字はぼやけて読み取れなくなっているが、数枚の買い物リストから少しだけ筆跡が読み取れた:
お茶 ベーコン(町の肉屋にいく)
バター 砂糖 蝋燭(エミールを連れていく。家で眠らせてばかりじゃダメだわ)
痛み止め 紙とインク アルコール布(サイズを計って、新しいシーツを仕立てる)
この平凡な記録の数々は、まるで普通の恋人や夫婦の日常だった。
この2人がかつては精神病院の医師と病人だったとは想像できないほど。
人々は愛を人類の繋殖欲求が引き起こす衝動だと称するが、美しい言い方をすれば、魂同士が互いに引き寄せ合うのだ。
しかし、あれらの記録から見れば、この2人は通常の道理に当てはめることはできない。
こんな精神病院から脱走するなんて狂気の物語は、理性を失った小説家の作品でしか見れない。
運命が造りし2人の狂人、そして真撃な恋人同士。
残念ながら私は2人の在り処を知り得ることはできない。
彼らは未だに自分たちの旅の途中なのかもしれない……またはとうにゴールに到達しているのかもしれない。