イベントストーリー
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プロローグ
静寂に包まれた夜、夢の世界へと誘われていたあなたは突然の眩暈に襲われる。
やがて意識を取り戻した時、あなたは見知らぬ天井の部屋にいた。
夜空の下、1人の少女が窓の前に腰かけ、外の星空をじっと眺めているようだが……
私:……ここは?
アストレア:え……?だ、誰!?
私:すまない、私は……
アストレア:……まさか、願いが叶ったの?
私:え?
アストレア:実はさっき、星空に願い事をしていたの。私の話を聞いてくれるお友達が欲しいって。
アストレア:私のことはアストレアと呼んで。所謂、ペンネームってところかしら。実は今、脚本を書いていて。
アストレア:でも、私は目が見えないから、いつも困ったことが多くて……
私:目が見えない?
アストレア:ええ。病気で、幼いころに視力を失ってしまったの。
アストレア:最近いくつかの物語を完成させたんだけど、いい話が書けたのか判断することもできなければ、うまく思い描けないシーンもあってね。
私:なるほど、だったら喜んで手伝うよ。どうすればいい?
アストレア:私はいつも日常生活からインスピレーションを得て、それらを記録しているの。
アストレア:良かったら、私の物語を聞いて、アドバイスしてくれないかな。そうすれば考えもまとまると思うから。
アストレア:例えば……
第一夜「魔法の地図」
私:これは?
アストレア:私のインスピレーションのほとんどは、身の回りにある物や今までの経験から得ているわ。そしてそれらが、私の物語における最も重要なシーンになる。
✷文字や画像を表示できる。
✷「コツ、コツ、コツ」
✷これさえあれば行きたい方向にスタスタ歩けるよ!
アストレア:それじゃあ、始めるね。これは魔法の地図よ。
私:おもしろいスタートだ。しかし、魔女はどうやって暗闇の中で地図を読んでいるんだい?
アストレア:魔女が地図に触れれば、道と情報が浮かび上がるの。紙の上から、まるでレリーフみたいに。
アストレア:それと……点字タイプライターって知ってるかしら?
私:君が使っている道具のことだろう?
アストレア:そう、展示を紙に打つ装置。地図のインスピレーションは、ここから得たんだ。
アストレア:たとえ見えなくても、これを使って打った文字からなら、便利に情報を得ることができるから。
私:じゃあ、君のインスピレーションノートもその方法で書いたのかい?
アストレア:ええ、目が不自由な私にもできる仕事よ。
アストレア:点字タイプライターは、視覚障害者にとってとても大事な補助具なの。失明した作家や教師、翻訳家たちは、これがなければ仕事が成り立たないんだから。
アストレア:自立した生活を送るためだけじゃない。誰だって夢を追い、様々な業界で輝く権利を持っているはずよ。
第二夜「犬の戦士」
アストレア:第二夜、魔女が冒険の旅を始めた……
アストレア:彼女はどんな仲間を連れて行くかしら?
✷「ワン!」これはワンちゃんの鳴き声?
✷わあ、柔らかい毛並み。暖かい。
✷大きな、モコモコの尻尾。
魔女は荷物をまとめ、旅に出ました。 山の中腹で、彼女はたくさんの仲間を集めました。 その中には特別な子もいたようです。 その子にはモコモコの尻尾に鋭い鼻と耳がありました。 鎧を着たその子は、かっこいい犬の戦士だったのです。 |
私:かわいい大型犬とか?
アストレア:ええ。犬はとても賢い動物で、人間の良きパートナーでもあるでしょう。
アストレア:私にも犬の友達がいるの。盲導犬よ。
私:盲導犬?
アストレア:そう。盲導犬は職業犬の一種で、訓練を経て様々な指示を理解してくれるの。
アストレア:どこか決まった場所に行ったり、正面にある障害物を避けたり、簡単な物を取ってきたり……だからこの子たちは「視覚障害者の第二の目」とも呼ばれているわ。
アストレア:私の盲導犬は、私がまだ子供の頃にうちに来てくれた子で、幼馴染のようなものよ。
私:すごいね。盲導犬になれる犬はさぞかし優秀だろう。
アストレア:生まれたての頃から人間と暮らしを共にし、訓練を積むからね。
アストレア:犬の寿命は10年から15年ほどだけど、盲導犬は2歳までの時間をほとんど訓練に費やす。そして訓練が終わった後、8歳から12歳ほどまで盲導犬として働くの。
アストレア:この子たちは度重なる困難を乗り越えて私たちの元に来てくれたのよ。主よりも、私は家族や友達のような存在になりたいわ。
アストレア:私が暗闇を恐れ、どうしようもなく落ち込んだ時も、いつも何も言わずに傍にいてくれたから……
第三夜「魔法の杖」
アストレア:物語の中の大陸は霧に包まれている。道中、魔女は思いがけぬトラブルに遭遇するかもしれない……
✷これで前にある障害物を避けることができる。
✷ああ、あなたね。私を導いてくれるお友達。
✷長くて尖っている。
アストレア:そう、そんな時は星の力を放つ魔法の杖が霧を晴らしてくれるわ。
森を抜けた時、魔女と仲間たちは霧がさらに濃い小道へと進みました。 辺りは危険だらけです。毒キノコ、沼、食人花…… 漆黒の霧を前に、魔女は魔法の杖を取り出しました。 すると、瞬く間にその杖は進むべき方向を光で照らしてくれました。 |
私:道の先には困難が待ち受けているものだ。
アストレア:ええ。特に暗闇の中では……
私:アストレア?
アストレア:ごめんなさい、平気よ。少し昔のことを思い出していただけ。
アストレア:小さい頃……視力を失ったばかりの頃、どれだけ目を見開いても、この瞳に光が差し込むことはなかった。
アストレア:その時、私は初めて知ったの。失明した後、目の前に広がるのは純粋な闇じゃない。そこにあるのは、虚しさ……もう何も見えない、どこにも行けないんだって、気持ちまで落ち込んでいったわ。
アストレア:そんな時に、親から白杖を貰ったの。
私:白杖?
アストレア:視覚障害者の大事な補助具の1つよ。光を反射する白いテープが貼られていることが多いから、「白」杖。
アストレア:盲導犬は頼もしいけれど、ただそれだけに頼るわけにもいかない。ほとんどの状況において、白杖は最も重要な補助具として扱われていてね。
アストレア:方向の判断や、障害物の識別をサポートしてくれるし、まるで長い腕みたいに、私たちの前にある障害物を前もって知らせてくれるんだ。
アストレア:最近は白杖にも色んな機能が備わるようになったみたいで、持ち運びやすいように折りたためたり、伸縮できるタイプや、センサーが搭載されてより多方面から視覚障害者をサポートしてくれるタイプもある。
私:君はもう白杖の扱いには慣れたのかい?
アストレア:もちろんよ。でも、慣れるまでは家族や友達、そして先生まで……皆、私の練習に付き合ってくれてたわ。
アストレア:それでも、バリアフリーが行き届いていない場所はまだたくさんある。入り組んだ複雑な道を通らなければならない時もあるしね。
アストレア:杖の使い方よりも、闇へと足を進める勇気の方が大切なのかもしれない。
第四夜「鈴の小船」
アストレア:第四夜、魔女が暗い小道を歩いていると、前方から水の音が聞こえてきた……
✷わあ、綺麗な音が出るのね。
✷両端は尖っているみたい。
✷底は平らね。
アストレア:綺麗なガラスの小船よ。主人公にはこれで川を渡ってもらおうと思って。
彼女たちは川に辿り着きました。 激しい水の流れに、道は阻まれてしまいます。 魔女が足を踏み入れると、冷たい水の流れが踵に触れました。 すほど遠くない岸辺にはガラスの小船が一艘泊っており、船端では風に揺らぐ風鈴が音を奏でていました。 魔女はカーブ状の船端に触れながらそれに上り、楽しい歌のような水の音と共に川を下って行きました…… |
私:このインスピレーションは、船の形の風鈴から得たんだね。
アストレア:そう。これは8歳の時の誕生日プレゼントで、私の一番のお気に入りでもあるんだ。目が見えなくなったのは本当に小さい頃で、川や船に関する記憶もなかったから……家族がこの風鈴をプレゼントしてくれたの。
アストレア:川も、空も、草原も、あの頃の私には想像することすらできなかった……
私:じゃあ、どうやってそういった物を認識したんだい?
アストレア:目が見えない以上、私たちは触覚や聴覚、嗅覚などを通して世界を認識することを覚えたからね。例えば、川の中に手を入れた時、冷たい感覚で水の流れが分かる。風鈴の形に触れ、その軽やかな音を聞けば、それが「風鈴」だと理解できる。
アストレア:視力を失ってから、代わりに他の感覚が鋭くなる人もいるわ。鋭い聴覚や触覚が、欠けた視覚能力を補っているの。
アストレア:私たちの最も身近にある例を挙げるなら、点字がその1つよ。
私:点字?
アストレア:ええ。点字って、紙の凹凸が文字を構成していて、指でその形をなぞると内容が読めるようになっているでしょう?
アストレア:点字を使ったり、触れることで物を識別することに慣れているから、視覚障害者の触覚は常人よりも遥かに鋭いの。
アストレア:触覚や聴覚などを通して、私は物の形や声を知り、頭の中で想像を膨らませているのよ。
アストレア:それか、こうとも言えるわねーー「視力は失ったけれど、自由に想像する力は失っていない」。
私:へえ、すごいね!
アストレア:でも……できないこともある。
アストレア:触れることも、聞くことも、匂いもない物を知ることはできない。たとえ想像しようとしても、検討すらつかないわ。
アストレア:「虹」ってどんな物?「空」ってどれくらい広いの?「星」はどんな風に夜空で輝いているの?
アストレア:……いつか視力を取り戻せる日が来たら、この目で星空を見てみたいな。
第五夜「魔法書」
アストレア:第五夜、物語のクライマックスを迎える頃ね。
✷浮き彫りになっている文字。私にしか読めない暗号。
✷硬めの紙でできている。
✷触るとザラザラした音がする。
私:これは?
アストレア:不思議な魔法書よ。
魔女は魔法学校に通りかかりました。 そこには彼女と同じ、勇敢な小さい魔法使いたちがたくさんいました。 学校の教師ーー大魔法使いは、暗闇を晴らすために子どもたちに魔法書の読み方、呪文の書き方を教えていました。 この本や呪文は、彼らに魔王に立ち向かうための勇気を与えてくれました。 |
アストレア:今回のインスピレーションはーー1冊の点字図書から得たものなの。懐かしいわ……
私:何か思い出したのかい?
アストレア:ええ、友達のことを。
アストレア:昔、特別支援学校に通っていたのだけど、そこの学校は私と同じように幼いころに視力を失った子たちばかりでね。
アストレア:学校の先生は、知識があれば未知の世界に対する恐怖心を克服することができると教えてくれたわ。
私:そこではどんな授業を?
アストレア:普通の学校と同じよ。文学とか、数学とか、各学科の知識を少しずつ。でも、それらを除けば、確かに特殊な授業もあったな。
アストレア:例えば、前に紹介した「白杖」の使い方とか。方向の判断や移動訓練、言葉以外の「言語」に対する理解と解読。
アストレア:視覚障害者の学校は、子どもたちを自立した生活が送れるように育てることを特に重視していたわ。だから、授業も実用性を重んじていた。
アストレア:点字も学校で覚えたのよ?この点字図書も学校から持ち帰った、私のお気に入りの物語なの。
私:君たちはどうやって点字を書いているんだい?
アストレア:点字用の点筆に、点字板があるわ。書く時は板の上から点筆で穴を開けていくの。
アストレア:手間はかかるけれど、その分助かっているから。
アストレア:知識を得る自由さえあれば、たとえ目の前が真っ暗でも、心は世界と繋がっていると感じられるんだ。
第六夜「星」
アストレア:これまでありがとう。今日で第六夜よ。
アストレア:そろそろ物語も終わりを迎える頃ね……
✷尖った角がある。
✷これは美しい形だそうよ。
✷これは空にある物らしい。でも、「空」ってどういう物?
アストレア:主人公は明るく灯された、綺麗な星を見た。
私:でも?
アストレア:物語の結末をどうすべきか、ずっと迷っていて。
アストレア:両親は、星は淡い光を放つものだと教えてくれた。2人にとっての私はお星さまみたいな光だよって……そう言って、このロウソクをくれたの。
アストレア:でも……空や光って、いったいどんな物だろう?
アストレア:星に願い事をすることはあっても、その姿を見たことはない。星のロウソクの尖った角には触れられるけど、きっとこれは星の本当の形じゃない……
アストレア:こんな時に限って、「春が来たのに、私には何も見えない」という言葉を思い出してしまうわ。
私:アストレア、君は太陽を浴びたことはあるかい?
アストレア:もちろん。家族と一緒に公園を散歩したことがあるもの。しばらく座っていると体がポカポカしだして、家族に聞いたらそれはお日様だと答えてくれた。
私:日差しが頬に降り注いだ時の温度、電球の表面の熱、それらは人に暖かさをもたらし、種から苗を芽吹かせる。
私:そうだな……私の手を握ってみてほしい。
アストレア:え?
私:「光」を言葉で説明するとしたら、それは暖かさと希望だと思う。今君が触れているこの手のひらの温度のように。
私:君の傍にいる友達も、きっと種に力を与えてくれる日光と同じなんじゃないかな。
アストレア:……そうね。
アストレア:……ありがとう。
アストレア:魔女は星の国で一番大きな星を灯し、友人たちと仲良く手を繋いで闇の終わりを待ち、美しい黎明を迎えた。
アストレア:一筋の光が夜空を裂いたその瞬間、彼らは自分の身体も星の光に染まっていることに気づいた。
アストレア:彼女には今でも暗闇しか見えないが、もう未知の世界に足を踏み入れることを恐れはしない。今の彼女には魔法の地図や、魔法の杖、犬の戦士……そして友人たちがいる。
アストレア:道は長いかもしれないが、彼女は勇気をふり絞って新たな旅へと繰り出した。
アイテム記録
- 1日目:点字タイプライター
視覚障害者の重要な補助具の1つ。
点字を紙に「印刷」できる。
視覚障害者が使いやすいよう、音声ガイドシステムが備わっているものが多い。
模様や線などを描けるものもあり、様々な領域で広く使用されている。
- 2日目:盲導犬
盲導犬は職業犬の一種であり、主な仕事は視覚障害者の道を案内すること。
そのため、「視覚障害者の第二の目」と呼ばれることもある。
まっすぐ歩く、道を曲がるなどは視覚障害者本人の命令を通して実行する。
盲導犬の主な任務は、主人が転倒しないよう障害物を避けること。
盲導犬の育成に適した犬種はラブラドールレトリバーやゴールデンレトリバーなど。
盲導犬は最低1年間訓練され、6~10年仕事に当たる。
視覚障害者の生活をサポートすると同時に、その存在は心のケアにも繋がる。
- 3日目:白杖
白杖には光を反射する白いテープが貼られていることが多いため、「白」杖と呼ばれている。
視覚障害者が使う移動補助具の1つ。
探測、保護、道路状況の識別に使用できる。
折りたたみ可能、伸縮可能な白杖もある。
杖の棒や先端などの部品は必要に応じて異なる材質やデザインを施せる。
- 4日目:世界への認識
視力を損なっているため、視覚障害者は聴覚、触覚、嗅覚などを通して周囲の情報を手に入れ、記憶と想像を行う。
健常者よりも聴覚や触覚が鋭くなることもあり、これは特殊教育において「代償」と呼ばれていた。
先天性失明の子どもは視覚記憶を持たないため、脳内で具体的なイメージを形成することが難しい。
- 5日目:特別支援学校
通常の学習が困難だったり、障害を持つ学生を対象とした学校。
専門的に設計された授業や教師が備わっている。
特別支援学校の授業や施設は、生徒の身体状況に応じて適応教育を提供する必要がある。
通常の教科だけでなく、生活面、メンタル面などの方面でも、万全な指導とサポートを行っている。
- 6日目:公益支援
目は最も重要な器官の1つです。
そして視力は、私たちとこの世の様々な色彩を繋ぎ合わせてくれています。
現在、世界中には22億人の視覚障害者が存在し、その内半分近くは予防が可能、あるいは治療の可能性を秘めています。
視覚障害者の生活をサポートするために、私たちは手を差し伸べることができるはずです。