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拠点で一休み
1日目

「センチネル」:ここは臨時拠点にピッタリだーー緩やかな地形で、高さもあるから水たまりの心配もない。
「センチネル」:焚火の準備ができたぞ。だが、近付きすぎないよう気をつけろ。しばらく休んで体力を回復しよう。
「センチネル」:それと、あおチビもしっかり見張ってろよ。お前らはと同じように木でできてるんだから、燃えたら大変だ。
運搬者:(クルクルとその場で回転し、木製の身体の隙間から犬の唸りや蛇の舌の音に似た音を発している。)
「ガイド」は焚火から少し離れた場所に座り、「巨体」は自ら拠点の風上に移動した。
小さかった炎に吹き付けていた風が阻まれ、焚火はパチパチと音を立てた。
「採集者」:わあ、助かったよ!ありがとう!
「巨体」:(体内のオレンジ色の明かりが更に明るくなったのが見える。巨体は大きな体を少し持ち上げた後、再びゆっくりと体を伏せた。)
「義肢装具士」:「採集者」、今日の探索中に何があったんだ?その体の損傷はどうした?
「義肢装具士」:後で替えのパーツを調整するが、素材の消耗が激しいーー壊れたのが木製の部分だけで良かった。自分の身軽さに感謝するんだな。
「義肢装具士」:重要な情報は新入りが記録してくれる。今後のリスク回避に繋がるかもしれない。
「採集者」:そうだね!……えーっと……

「採集者」:たしか……私は「巨体」から一番遠いエリアを探索してたかな。「ガイド」が向こうに水源があるかもしれないって言ってたから。
「採集者」:補給できれば、しばらくは水に困ることもなくなると思って……でも人手が足りないから、「ガイド」にも一緒に来てもらったんだ。
「ガイド」:……ずっと一緒にいた。
「アーキビスト」:ああ、綺麗な水を持ち帰っていたな。探索中に水源を見つけたのか。
「採集者」:うん!でも、ただの水源じゃなくてーーたくさんの重い石が積み重なってできた彫像みたいなものと、その下に大きな円形の台もあったの。
「採集者」:ほら、荒野にはそういうものがいっぱいあるでしょ?まあとにかく……その上から流れる水は綺麗だった。
「採集者」:だから「ガイド」が水を汲みに行ったんだけど……その時に異常が起きて。
「採集者」:「ガイド」が円形の台を踏んだ瞬間、地面が熱を持ち始めたの。彫像が震えるほどの蒸気が湧いてーー積み重なっていた石が、真っ逆さまに落ちてきたんだよ。
「ガイド」:危ない……
「採集者」:ガイドは足が遅いけれど、私は自分の身のこなしに自信があったから、なるべく体を伏せて彼女を押し出した……その結果がこれ。
「採集者」:まあ、パーツがいくつか壊れても普通に動けたから、いいかなってなって。しかも、外した翼が水を運ぶのに使えるって閃いたのも私!エッヘン!
「アーキビスト」:危機感というものが足りていないな……大型構造物に近付く前は必ず警戒を保ち、検査作業も怠らないべきだ。
「ガイド」:水、持ち帰った……
「アーキビスト」:ああ。貴重な、綺麗な水を手に入れたことは喜ぼう。
「センチネル」:よくやった!
「センチネル」:だがもちろんーーこういった「損傷」には代償が伴う。できる限り回避するよう、細心の注意を払うべきだ。
「義肢装具士」:パーツなら何とかなる。侵食された上腕と肉体の接合部分を避けたようだから、いつもみたいに痛くはないと思う。
「アーキビスト」:ここでは、人の肉体は蝕まれ、完全な木質構造に変わっていく。そしてそれは、ただの始まりでしかない。
「採集者」:ねえ、あのさーーちょっと聞いて!
「採集者」:私は……これはこれで楽しいよ?前よりもっと速く飛べるし、物もたくさん運べるようになったし……身体の痛覚だってほとんどない。ほら、この通り!
「採集者」:遠慮して、縮こまって生きるのは嫌だ。忠告ならもう聞いたし、どうなるかもちゃんと理解してるよ。
「義肢装具士」:ああ。木が血肉を埋められるなら、命だって繋いでくれる。本来なら、「採集者」はこうしてここに立つこともできなかったはずだ。
「義肢装具士」:彼女は理想的な協力者だ。私が喜んで彼女が望む姿に改造して見せよう。
「義肢装具士」:これは命を軽んじた濫用ではない。少なくとも、決して軽薄な享楽が目的ではないんだ。
「ガイド」:……
「センチネル」:分かっている。
「アーキビスト」:「センチネル」は警戒心が人一倍強く、私たちに怪我をさせたくないだけだ。それは別に悪いことではない。
「アーキビスト」:体の変異に対する意見は、当然様々だろう。各々の目的のためにも、互いの情報を共有し合うのがチームとしての礎だ。
「ガイド」:……いい仲間だと思う。
「採集者」:うんうん、私も「センチネル」といい連携が取れてると思う!「警戒しろ」ってメッセージも私と同じくらいのスピードで飛んでくるもん!
「センチネル」:……いい加減にしろって!
「義肢装具士」:替えの義肢が準備できてるから、後ですぐに取り替えてやれる。
「義肢装具士」:翼の部分だが、もう少し前のものと比べてーー最良の状態まで復元する必要がある。


「義肢装具士」:これでよし。
「採集者」:おおー、すごい!さすがだね。
「採集者」:今からもう一飛びできる気がする。野原に花があったのを覚えてる?少し摘んできて……「巨体」に飾ってあげようかな。
「巨体」:(顏部分のパーツの回転が速まり、水と金属のパーツがギギギと音を立てた。)
「採集者」:やっぱり!あなたも花が好きなのね?
「アーキビスト」:いや、待ってくれ。明日まではこの拠点にいることになるだろう。それまでに少し試したいことがある。協力してくれないか?
「アーキビスト」:君も集めてきたこの「秘宝」について興味があるはずだ。
「ガイド」:……渡す。
「採集者」:えー?まあいいか、それも悪くない提案だし。どれどれ……
「センチネル」:上手くやったな、新入り。
2日目
一行は焚火を囲んだ。地面にはたくさんのものが置かれており、そのほとんどが壊れ、もはや原型も留めていない木製のからくりだった。
一行はこれらの「収穫」に目を通し、役に立つ物や資源がないか1つずつ確認した。
「義肢装具士」:利用価値があるものは大してないな……
「義肢装具士」:ガラクタを集めたところで意味はない。後でまとめて処分しておこう。
「センチネル」:いや……待て!

「センチネル」:これだけは取っておきたい……
「義肢装具士」:もちろん、君にとって価値があるなら構わないーーてっきり、あの場所の遺留品はもうとっくに見飽きたと思っていたよ。
「アーキビスト」:(彼らはこれが何なのか分かっているようだ。私には、特に価値のない木製の破片にしか見えない。)
「アーキビスト」:(うっすらと特殊な模様を浮かばせている。時間をかければ、組み合わせることができるかもしれない。)
「アーキビスト」:その破片を修復してみよう。君がよく知るものなら、手伝ってくれ。
「センチネル」:ああ、問題ない。この前採取した生物の粘液を使えば、繋ぎ合わせられるかもしれない。


「アーキビスト」:シンプルな人体のドローイングのようだ。手足が四角形と縁の輪郭に沿って伸びている。
「アーキビスト」:(「ウィトルウィウス的人体図」か。このマークは見たことがある。)
「アーキビスト」:(これは「完璧な人間」を象徴しているのかもしれないーー時々、私は我々が生まれた背後にある、計り知れなく奥深い意義について考えてしまう。)
「アーキビスト」:(他にも、更に神秘的な解釈について聞いたことがあるが、それらは私が好む答えではない。)
「ガイド」:これも……何?
「アーキビスト」:自然と調和を象徴するシンボル……だろうか。
「義肢装具士」:これを扱う人間が心からそう思っていたらの話だがな。聞こえのいい理念を利用して別の目的を叶えようとしていたなら、そんな立派なものじゃない。
「センチネル」:そうだな……いや、違う。これは俺が探していたものじゃない……

「アーキビスト」:別の破片を試してみよう。


「センチネル」:……
「センチネル」:ふぅ……俺、は……
「アーキビスト」:(とても緊張しているように見える。なぜだ?)
「アーキビスト」:今度こそ君が探していたものか?
「センチネル」:ああ……
「アーキビスト」:(これも見覚えがある。この模様はまるで……)
「ガイド」:……木馬。
「アーキビスト」:そう、トロイの木馬だーーもし原型があったとしたら。
「アーキビスト」:……「ガイド」、この話に詳しいのか?
「ガイド」:話……お話の本。
「アーキビスト」:(寝る前に聞いた絵本か?確か、昔の彼女は……)
「採集者」:今度こそ正解ね。「センチネル」はあまりこれが好きじゃないみたいだけど。
「採集者」:好きなものを見たら、普通はもっと喜ぶはずでしょ?私は大好きな蛍を見たら、飛び上がって喜ぶよ!どうしてなの?
「義肢装具士」:多分、あの場所にいい思い出がないからじゃないか?
「センチネル」:ああ……俺は亡命者だ……でも、俺は……
「採集者」:ええ、そうなの!?あなたって図体は大きいけど、性格は全然そんな風に見えないのに。
「採集者」:でも、ちょっぴりかっこいいかも!響きが!
「ガイド」:……かっこいい。
「義肢装具士」:君は自分のためにここまで来るようなやつには見えない。もしかして誰かのために、何かを探しに来たのか?
「義肢装具士」:私たちのことも大げさなくらい心配している。少なくとも、君が仲間思いだってことは分かるよ。
「センチネル」:ああ。俺は友人のためにここへ来た……
「アーキビスト」:だったらこれをしっかりしまっておくといい。互いの信念こそ異なるがーー私たちはすでに友達だ。
「採集者」:各々の探し物を見つけるために助け合おう!さっそくここから……あっ、私は探したいものとかないんだけどね!
「採集者」:私は自由でいられればいい。
3日目
「センチネル」は憂鬱な表情で遠くを眺めている。チームがこの拠点に滞在してから、早くも3日経った。
「採集者」:前のエリアにいた頃よりも、濃い霧をよく見かけるようになったね……
「採集者」:拠点の下の辺りから、ほとんど何も見えない……参ったなぁ。
「採集者」:でも、夜になると霧の奥から声が聞こえる。この先には絶対、何かあるよ。
「ガイド」:霧の奥……何か……
「センチネル」:あまりいい知らせには聞こえないな。もうしばらくここで身動きが取れないかもしれない。
「アーキビスト」:当分は探索を控えよう。
「採集者」:はーい、言う通りにしまーす!でもさ、何ならできるの?何かしたいんだけど!
「採集者」:ねぇねぇ、「巨体」、一緒に……
「巨体」:(一部のパーツが動きを止めており、明かりも消えている。)
「採集者」:……あれ?寝てる?
「義肢装具士」:1人で休む時間も大事だと気付いたのかもしれないな。
「アーキビスト」:今ある持ち物を確認しよう。実を言うと、荒野で君たちに助けられてから、このノートに記録していない品がまだたくさんあるんだ。
「アーキビスト」:私の任務遂行に役立つだろう。何かないか?
「ガイド」:人形……
「義肢装具士」:これは「ガイド」が肌身離さず持っている人形だ。荒野にあった「秘宝」ではないが、独特な材質と形をしている。
「義肢装具士」:少なくとも他の場所で見たことはないし……「ガイド」も上手く説明できない。
「義肢装具士」:今の彼女は、私たちの言葉を繰り返すばかりだ。恐らく、侵食による影響の一つだろう。
「アーキビスト」:(私は記憶の断片でこれを見たことがある……実を言うと、ずっと気になっていたものだ。)
「センチネル」:じゃあ見てみてくれ。この鉄くずみたいな人形に何の意味があるのか……だが、「ガイド」はずっとこれを大切にしている。俺達に弄られるのは嫌かもしれない。
「センチネル」:調べたいなら……本人の了承を得て、壊さないように気を付けた方がいい。
「アーキビスト」:「ガイド」。それを見せて欲しいのだが、いいだろうか?
「ガイド」は人形をアーキビストの手元の位置まで掲げた。
「ガイド」:……
「義肢装具士」:「どうぞ」って言いたいみたいだ。
「アーキビスト」:いい子だな、ありがとう。
「ガイド」:ありがとう……

1.人形のマスク
不気味な金属製マスク。取り外す事はできず、口と鼻の部分には特殊な装置がある。
2.人形の髪
茶色の短髪。柔らかくて確かな感触。
3.人形の服装
金属製の身体。関節は可動式で、塗装された制服は皮膚を全て覆い、肩には折れ線符号がある。
「センチネル」:どれどれ……髪は意外と柔らかいな。
「義肢装具士」:それにかなり重い。想像をはるかに超える質量だ。「ガイド」は普段どうやってこれを持ち運んでいるんだ?
「採集者」:この人形ってさーーあなたにちょっと似てない?だからこの子も、あなたに会った時に喜んでいたのかも。
「センチネル」:そうか?うちの「新入り」は落ち着いているし、こんな変わった服を着ないと思うが……
「義肢装具士」:この服にどんな機能があるか分かれば、その答えも見えてくるはずだ。
「センチネル」:そうだな……例えば安全を確保するために、俺は自分の石鍋でこの「鎧」を作った。
「センチネル」:他の生物に偽装することも考え、胸元には偽の矢も用意した。知性を持つ敵に遭遇したら、地面に横たわっていれば死んだと誤魔化せるかもしれない。
「採集者」:装備は軽ければ軽いほどいいと思うよ!
「採集者」:でも、やっぱり似てるなぁ……勘みたいなものだけど、皆はどう?
「アーキビスト」:……無理に否定するつもりはない。
「巨体」:(窓の内部がチカチカと光った。「巨体」がまるで頷くように硬い構造を動かしている。)
「採集者」:ほら、皆賛成だって!もしかしたらーー似ているだけじゃなくて、同一人物の可能性もあるね。
「採集者」:あなたが覚えていないだけで、「ガイド」があなたと一緒にいたがるのはそれが理由かもしれないよ?
「アーキビスト」:……
「センチネル」:だが、人形に特殊な機能はなさそうだ。
「センチネル」:大事なものを傍に置いておける。それで十分だろう。
4日目
霧が散った後、一行は道中で新しい拠点を見つけた。「センチネル」は周囲の安全を何度も確認した。
運搬者:!
「アーキビスト」:なんだ?どうかしたのか?
運搬者:!!
「アーキビスト」:ちょっと待ってくれ、まだ作業が終わってないんだ……
「アーキビスト」:……意味がよく分からないな……他の人に聞いてみようか。
「採集者」:あ!来たんだね!何か見つけたの?
運搬者:!
「アーキビスト」:(木の殻に覆われた生物はその場でクルクルと回った。パーツがぶつかり合ってずれてしまい、身体の隙間から点滅する光が見える……)
「アーキビスト」:(その光こそが、この生物の目だった。それは常に荒野の生物の残骸の中に身を隠しているが……その偽装が完璧であることはほとんどない。)
「センチネル」:何度見ても面白いな。
「センチネル」:こいつは自分の身体が気に入っているようだが、蛇のふりがしたいのか犬のふりがしたいのか分からない時があるーー群れて暮らしていたわけでもないようだしな。
「義肢装具士」:犬にも蛇にも馴染めず……私たちの元に流れ着いたってところか。
「義肢装具士」:まあ、それも悪くない。こいつのことは嫌いじゃないよ。
「ガイド」:悪くない……
「採集者」:もちろん!荒野で自分の「殻」を探して生きていただけあって、この子は私たちの中で一番感覚が鋭いもん。興味だって……えっと、多様性に富んでいるから、いろんな場面で役立ってくれてるでしょ。
「採集者」:ただ、チクチクするから触れないのが残念ね……
「採集者」:それで、今回は何を見つけたの?
運搬者:!
「アーキビスト」:(運搬者は素早く草むらに潜り込み、姿が見えなくなった。カサカサと葉が擦れる音が遠ざかっていくのが聞こえる。)
「採集者」:ついて来てって言いたいのかも!行ってみよう!


「採集者」:はい、これーーこの子が見つけてくれたものだよ。私たちが探してる「秘宝」に見えない?
「採集者」:それにしても、本物にそっくりな木製の小鳥だよね。ついにこの子も狩りを覚えたのかと思ったよ。
運搬者:!
「採集者」:よーしよし、よくやったね!狩りの作業は私と「センチネル」に任せなさい!
「採集者」:あの後、私はすぐにこれが生き物じゃないって気付いたの。抵抗する様子もないし、特殊な構造もあるみたいだから……あなたに見せようと思って。
「アーキビスト」:ああ。見たところ損傷はないな……太く短い笛のようだが、鳥類の形をしている。
「センチネル」:綺麗な笛じゃないかーー吹いてみたらどうだ?音が出るか確認できるかもしれない。
塵を払って吹いてみると、笛は無事に音を鳴らし、高さの異なる鳥の鳴き声を発した。
すると、遠くの林から、そっくりな音色の鳥類の鳴き声がうっすらと帰ってきた。
「センチネル」:おお……すごいな。こんな複雑な音の変化を表現できるのか。
「センチネル」:あの鳥たちは、お前の声に応えているのかもしれない。
「アーキビスト」:いや……わざと音に変化をつけたわけじゃない。恐らく、この笛そのものに備わった能力だろう。
「アーキビスト」:それに、これは互いの方角を確認し合う構図だ……理由は分からないが、頭にそう浮かんだんだ。
「アーキビスト」:だが、さっきの音の組み合わせはもうよく覚えていない……私は音楽や、「鳥類の言葉」には明るくない。
「義肢装具士」:「ガイド」はどうだ?
「ガイド」:高い長音、高い長音、短音3回、長い低音……
「義肢装具士」:彼女は記憶力がいいんだ。どんなことでも細かく覚えている。
「アーキビスト」:簡単な記号でこの組み合わせを記録しよう。まだ細かい部分を調整しなければならない……
「アーキビスト」:これでよしーーこの他にも、別の組み合わせがあるかもしれないな。
「センチネル」:面白そうだな。しかし、それを使って何ができるんだ?
「センチネル」:変異した鳥類と語り合ってみるか?それとも、空を飛べる新しい仲間を探すか……
「アーキビスト」:いや、そんな簡単にはいかないだろう……本当の鳥類ではない以上、姿を見せれば警戒されるはずだ。
「義肢装具士」:使い道ならある。例えばーー周囲に安全な水源があるかを確かめることとか。
「義肢装具士」:荒野の生物も私たちと同じく、身体の一部が侵食されて木になっても、必要な水分と栄養を摂取しなければならない。そして私の知る限り、こういった鳥類は水辺の木の上に巣を作るのを好んでいる。
「義肢装具士」:食料はともかくーー近くに鳥類の巣が確認できれば、水源も見つかるかもしれない。
「アーキビスト」:的確な意見だ。ここから先は一定の距離ごとに試してみよう。
5日目
一行が荒野の奥深くへ進むにつれ、食料になる生物も減っていった。侵食によって、動物や植物のほとんどは言葉通り歯が立たないのだ。
食料が見つからないまま10日ほど経ち、一行は深い谷の中でようやく補給を得た。
「採集者」:わあーーすごい!嬉しい!導きに従ってこの谷を探索してよかった。
「採集者」:どこから手を付けていいかわからないほどだよ!「センチネル」ーーいいや、料理長!食べ物の分配はあなたの担当でしょ?早く、早く!
「ガイド」:すごい!嬉しい!
「アーキビスト」:(「採集者」はいつもチームの雰囲気を盛り上げてくれる。理念の異なるこのチームがここまで来れたのは、彼女の働きが大きいと言えるだろう。)
「アーキビスト」:(実際、私の中では「嬉しさ」よりも、先ほどまでの状況の恐ろしさが勝っていた。)
「アーキビスト」:(体力的にも精神的にも追い込まれ、希望も何も見えない。極端な状況に陥れば、何が起こるか分からない……)
「センチネル」:あ、ああ……そうだな。その通りだ。早く食料を準備しよう。
「センチネル」:未だに信じられない……俺たちはきっと運命に守られているーー追い詰められても、いつも何かに救われて生き延びてきた。
「センチネル」:失ったのは体力だけだ……温かいスープを飲めば、きっとすぐに回復できるだろう。
「巨体」:(仲間たちの雰囲気を受けたのか、動きが活発になっているようだ。)
「義肢装具士」:最悪な状況に陥ったからこそ気付けた。毎日残りの食料や水を確認できるだけでも、私たちは幸運だったのだと。
「義肢装具士」:もしここに大いなる「意識」が存在するとしたら……きっと私たちを歓迎してくれているはずだ。
「アーキビスト」:(いや……この全てが偶然ではなく、何らかの「存在」が目的を持って私たちに影響を及ぼしているのだとすれば……私たちに制御できるものはかなり限られている。)
「センチネル」:まずは水を沸かそう。手伝ってくれ。
「センチネル」:調味料として、鍋の中に海苔を入れておいた。こういった植物も体力の回復に役立つ……火加減には注意しなければならないが。
「センチネル」:せっかくのごちそうだ。ただ熱を通すだけで済ませるつもりはない。それに、熱するだけでは衛生的にもよくないしな。


「センチネル」:よし……これでいい。
「センチネル」:次は、さっき処理しておいた食材を入れる。この特殊な巨大トカゲの粘液には毒素が含まれていて、表皮も食べづらいんだが、どれも綺麗に取り除いておいた。
「センチネル」:「義肢装具士」、毒液と外皮は残しておくか?
「義肢装具士」:もちろん。いつも通り取っておいてくれ……義肢の培養テストに使えるかもしれない。
「義肢装具士」:あるいは、パーツを補強する材料にもなり得る。
「センチネル」:そうか……分かった。用途は分かったから、それ以上の詳細は言わなくていい。
「センチネル」:それから、侵食の影響を受けたいくつかの卵と、月桂葉と無毒の野菜があるーー卵の卵白は色が変わっているかもしれないが。
「センチネル」:こんな場所でこれほどの食材が集まるなんて……本当に奇跡としか言いようがない。
「センチネル」:あとは順番に鍋に入れていくだけだ。
「ガイド」:鍋に……入れる。


「採集者」:ああ……すっごくいい香り!感動して涙が出そう。
「センチネル」:目が覚めたのか?疲れて眠っていたようだが……倒れたのが拠点でよかったな。
「アーキビスト」:しっかり休めたようで何よりだ。
「採集者」:ああ……そう。最近、なぜか疲れやすい気がするんだよね。
「採集者」:お腹が減ってるからかな……
「義肢装具士」:侵食の影響が深刻化しているのかもしれない。侵食が進めば、人の意識にまで影響を及ぼす。
「義肢装具士」:このチームの中で、私は必要最低限の、あるいは君らが望んだ調整しかしない……できる限り客観的に、誠実でありたいと思っている。
「採集者」:そうだね。長く生きることよりも、どうやって生きるかの方が大切。少なくとも私はそう思ってるよ。
「採集者」:そんなことより、今はごちそうを楽しもう!
スープはすぐに空になり、一行は久しぶりに穏やかな雰囲気に浸った。
「義肢装具士」:もう新入りとは呼べないな。荒野の食材にもすっかり慣れたようだ。
「アーキビスト」:そうだな。実際の作用や味に目を向け……変異に対する認識も少し変わった。元々の立場を変える気はないが。
「アーキビスト」:何はともあれ、君たちと一緒にここまで来れてよかった。
「義肢装具士」:ここにいる全員が、もはや執着と呼べるほどの目的や信念を持っていたから、私たちはここまで来ることができたんだ。君の目的も果たされることを願おう。
6日目
一行は先へ進み続けた。侵食の速度が明らかに速まっていたが、誰も足を止めようとはしなかった。
焚火を囲むと、全員の顔に疲れが滲み出た。しかし、空気は今までのどんな時よりも穏やかだった。

「アーキビスト」:……

「アーキビスト」:……

「アーキビスト」:……

「アーキビスト」:……
「アーキビスト」:(眠っていたのか?今は何日目だ……?)
「アーキビスト」:もうどれくらい進んだのか覚えていない……ここの風景はどこも同じに見える。)
「アーキビスト」:(まさか、私は夢を見ているのだろうか?いや、そんなことを考えるべきではない……)
「アーキビスト」:「ガイド」、私たちは正しい道のりにいるのか?
「ガイド」:もちろん……いる。
「アーキビスト」:戻ることはできるのか?「この旅」からではなく……君が「家」のような存在と認識している場所に。
「ガイド」:……
「アーキビスト」:それじゃあ、物語でも聞かないか?シーシュポスやトロイの木馬、あるいは時間の魔法についてでもいい。
「ガイド」:……
「ガイド」は何も答えず、いつもの人形にバンザイをさせた。
「アーキビスト」:そうか……ハハッ、忘れてくれ。
「アーキビスト」:君よりも、まずは自分に聞くべきだったな。ありがとう、「ガイド」。
「アーキビスト」:(私たちは正しい道を進んでいるはずだ……些細な変化が今も起こり続けている。)
「アーキビスト」:(ペンダントの中身が、より一層激しく揺れ始めているのだ。)

1.外部の工芸
金属で作られたペンダントの容器。特殊な技術が用いられているようで、表面は滑らかだ。どうしても開かない。
2.中身
中身は生きた菌糸に見える。何らかの影響を受け、その動きは一層不安定になっている。
3.赤い胞子
赤色の胞子が周囲に浮かび、本能的に異常さを感じられる。
「アーキビスト」:(私の勘は、中の物が危険だと告げていた。)
「アーキビスト」:(だが、少なくともこの容器に封じ込められている間は安全そうだ。)
「アーキビスト」:(これが何かの影響を受けて変化を見せるのは初めてだった。揺れが激しくなっているのは抑制されているからか、それとも暴走しかけているからは分からない。)
「ガイド」:好きじゃ……ない。
「アーキビスト」:そうだな、当然だ……これは危険なものだ。もしかしたら、いずれ大きな災いを引き起こすかもしれない。
「巨体」:(震えるペンダントが近付いた時、それは短い休眠に陥ったように見えた。)
「アーキビスト」:そこまで影響は大きくないようだが、本能的に危険が感じられる……
「採集者」:ああ、ペンダントの話?綺麗だと思うけど。
「義肢装具士」:最初からそれをつけていたが、それが何かは思い出せたのか?
「義肢装具士」:荒野の産物はほとんどが木製なのに……これは金属製だ。荒野のものには見えない。
「義肢装具士」:でも、「採集者」の意見には賛成だ。私もこれは綺麗だと思う……少なくとも、神秘的な美しさがある。
7日目
「センチネル」:視界がますます悪くなっている。「採集者」の合図を確認できる範囲もかなり狭まっているようだ。
「センチネル」:だが、信号弾は見えた!色は緑だ!
「センチネル」:いい発見があったようだな。戻ってこれてよかった。
「採集者」:温泉を見つけたよーー!
「採集者」:ずっと灰色の霧が続いてたけど、体を洗える場所なんて滅多にありつけなかったでしょ?
「ガイド」:信号弾の位置に……
「採集者」:今回はちゃんと事前に安全確認したからね。
「採集者」:後で向かおうよ。でもーー道は狭くて、かなり険しかった。
「採集者」:「巨体」は通れないかもしれないから、水を少し持ち帰ってきたの。
「義肢装具士」:よくやった。隙間に挟まった土や汚れが、「巨体」の動きを鈍らせるんじゃないか心配だったんだ。
「巨体」:(身体の光源が灯されたが、分厚い土埃に覆われて、薄暗い明かりしか見えなかった。)
「センチネル」:先に「巨体」を綺麗にしてやってから、温泉の位置に向かおうーー大きなスポンジがまだあるはずだ。

「義肢装具士」:これで大分よくなった。
「義肢装具士」:少し疲れたな……私もしっかり休みたい。
「センチネル」:どうだ?満足できたか?
「巨体」:(身体の光源が再び灯される。光は透明な窓を通り抜け、体中の金属を明るく照らした。)
「センチネル」:悪くないな。
「アーキビスト」:(すべて順調に進んでいるように思えたが……私はなぜか違和感を覚えていた。)
「アーキビスト」:(「巨体」を洗った時……私の気のせいだろうか?)
「アーキビスト」:(背中の二重になっている板の下に、丸くなった壊れた翼が見えたーー私の記憶が正しければ、以前はなかったものだ。)
「アーキビスト」:(その翼は不快感を煽る見た目で、破損したコウモリの羽のような表面を、縄に似た管が血管のように這っていた。)
「アーキビスト」:「ガイド」、「巨体」に翼はあったか覚えているか?
「ガイド」:……翼。
「アーキビスト」:(全てが私の想像通りなら……少し調べる必要がある。思い違いだと思うが、万が一に備えるべきだ。)
「採集者」:ちょっと!何やってるの?早く行くよ!
「採集者」:大丈夫、ちゃんと目的地に近づいてる。多分だけど!
「義肢装具士」:だから、もう時間もあまり残されていない……君も分かっているだろう。
「義肢装具士」:早く進まなければ……荷物も最低限に抑えて、それ以外はここに置いておくべきだ。
「採集者」:分かった……!
「採集者」:そうだね、うん……信号弾も1つここに置いておこうかな。
「採集者」:帰りにこの位置が見えるかもしれない。
一行は焚火の火を消して拠点を後にし、灰色の霧に覆われた未知の境地へと足を踏み入れた。


