中核意識・経験・メタ認知

Last-modified: 2015-05-10 (日) 16:11:25
 

研究領域

  • アントニオ・R・ダマシオ「無意識の脳 自己意識の脳」第一章 「脳の中の映画」とは何か P35

    第四の事実は、少なくとも人間において意識は一枚岩的ではないということ。

    意識は単純なものと複雑なものに分けることが可能であり、神経学的証拠からその分離は明白だ。

    私が「中核意識」[core consciousness]と呼ぶもっとも単純な種類の意識は、有機体に一つの瞬間「いま」と一つの場所「ここ」についての自己感を授けている。

    中核意識の作用範囲は「いま・ここ」である。

    中核意識が未来を照らすことはない。
    また、この意識によってわれわれがおぼろげに感知する唯一の過去は、一瞬前に起きた過去である。

    「ここ」以外に場所はなく、「いま」の前も後もない。

    他方、私は「延長意識」[extended consciousness]と呼んでいる多くのレベルと段階からなる複雑な種類の意識は、有機体に精巧な自己感――まさに、「あなた」、「私」というアイデンティティと人格――を授け、また、生きてきた過去と予期される未来を十分に自覚し、また外界を強く認識しながら、その人格を個人史的な時間の一転に据えている。

  • アントニオ・R・ダマシオ「無意識の脳 自己意識の脳」第六章 中核意識の発見――無意識と意識の間 P212

    われわれはどのようにして意識的になりはじめるのか。

    具体的には、われわれは「認識中の自己感」をどのようにしてもつのか。

    (中略)

    ついで、われわれの有機体が特別の種類の無言の知識――ある対象によってわれわれの有機体が変化したという知識――を内的に構築し内的に提示すると、そしてそうした知識が対象の顕著な内的提示とともに生じると、われわれは意識的になる。

    こうした知識が現れるもっとも単純な形は「認識の感情」であり、われわれの前にある謎尾は以下の問いに要約される。

    いったいどういう早業でそのような知識が構築されるのか?

    なぜその知識はまず感情という形で生じるのか?

    私が引き出した具体的な答えは、以下の仮説の中にある。

    <対象を処理する有機体のプロセスによって有機体自身の状態がどう影響されるかについて、脳の表象装置がイメージ的、非言語的説明を生成し、かつ、このプロセスによって原因的対象(有機体の状態に影響を及ぼす対象)のイメージが強調され、時間的、空間的に顕著になると、中核意識が生じる>

  • リタ・カーター「脳と意識の地形図」はじめに 用語に関する(おそらく)退屈な、だけど重要な注 P14

    「意識」という言葉については、前後の文脈を読めば具体的な意味が分かると思う。

    基本的には、私たちが周囲の様子に気づいていて、気づいていることを自覚している状態、いわば「明かりが点灯した」状態を指している。

    「経験」という言葉も同じような意味だ。

ダマシオ説でいうところの中核意識とは、時間感覚・空間認知を持たない、認識の中における自己感のことである。これはダマシオの二つの意識(下位の中核意識、上位の延長意識=自伝的自己)の一つである。
ダマシオ説の中核意識論を(全文引用は煩雑なので)要約すると、

  • 対象が身体に与えた影響は、神経部位の活性化としての「情動」として外から観測できる。
  • 身体のイメージである身体イメージ・原自己と、対象のイメージと、対象が身体に与えた影響(情動)等を描写したイメージがあって、それらは「一次のマップ」と呼びうるニューラル・パターンの中に表象される。この「情動」を描写したイメージが「感情」である。
  • 「身体を代表する身体イメージ・原自己に基づく、私という中核意識が、ある対象と関わって変化している」という総体的なイメージは、「二次のマップ」と呼びうるニューラル・パターンの中に表象される。
  • この「身体イメージ・原自己に基づき、ある対象と関わって変化している」もののイメージが「中核意識」である。
  • 中核意識は、「今何が起きている、物事のイメージとこの身体の関係はどんなものか?」ということを考え、「集中的な注意が対象に払われねばならない」という指令を発し、反応を最適化させる。
  • 身体イメージ・原自己と中核意識は、ニューラル・パターンの場が異なり、よって別のものである。
    ということである。

この中核意識や、カーター説の意識=経験、またメタ認知を、認知や感情や気づきに対して「自覚的である」機能という意味において、ひとまとめに扱う。

前提となる学問・研究領域

認知・認識・感情

ダマシオ説でいうところの中核意識は、認識の感情として現れる。

身体イメージ・原自己・イメージ・時間感覚・空間認知

中核意識は、

  • 有機体が対象を処理するプロセスがあり、
  • その結果有機体自身の状態がどう影響されるかについて有機体のイメージをが生成され、
  • さらにそのプロセスによって対象(有機体の状態に影響を及ぼすなら何でも構わない)のイメージが強調され、時間的、空間的に顕著になった時
    に生じる。

気づき

意識=経験は、気づきを自覚していることである。

過去に位置する学問・研究領域

原因となる学問・研究領域

解決すべき問題となる学問・研究領域

目的となる学問・研究領域

属する全体である学問・研究領域

本質的な部分である学問・研究領域

非本質的な部分である学問・研究領域

前提となる学問・研究領域(疑いあり)