心の理論・メンタライジング・マインドリーディング

Last-modified: 2017-06-18 (日) 16:57:17
 

研究領域

  • 「ミラーニューロンと<心の理論>」序章 自己と他者 P8

    「心の理論」とは、1978年にアメリカの動物心理学者デイヴィッド・プレマック(Premack, D.: 1925-)が「チンパンジーは心の理論を持つか」という論文の中で提案した概念であり、チンパンジーが仲間に食物を分け与えたり、逆に仲間を欺いたり、人間に近い高度な社会的行動を示すことに注目し、他者に心的状態を帰属させること(imputing mental state to others)を「心の理論」と定義した(Premack & Woodruff, 1978)。

  • 「ミラーニューロンと<心の理論>」序章 自己と他者 P10

    「心の理論」概念に代わる第一のオールタナティブ(代案)は、メンタライジング(mentalizing)である(子安, 2008)。

    ロンドン大学名誉教授のクリストファーとウタのフリス夫婦(Frith & Frith, 1999)がその中心的主唱者であり、メンタライジングを「心的状態と関連づけて他者の行動を理解し操作すること(to understand and manipulate other people's behavior in terms of their mental states)」(p.1692)と定義し、脳画像研究の結果から前頭前野内側部(medial prefrontal cortex; MPFC)と上側頭溝(superior temporal sulcus; STS)の2つの機能がメンタライジングにとって重要であることを示している。

  • 「ミラーニューロンと<心の理論>」序章 自己と他者 P11

    第二のオールタナティブは、マインドリーディング(mindreading)である。

    (中略)

    最近では、英バーミンガム大学のイアン・アパリー(Apperly, I. A.)が視点取得と「心の理論」を包括する概念として「マインドリーディング」を使っている(Apperly, 2010)。

    アパリーは、マインドリーディングを次の2つのシステムに区分した。

    低次のマインドリーディング・システムは、乳児や動物にも見られ、自動的、効率的に機能する。

    他方、高次のマインドリーディング・システムは、大人に見られるもので、柔軟に機能するものであるが豊富な実行機能のリソースを要する意識的過程である。

心の理論とは、他者が心的状態によって何らかの結果をもたらす、という因果関係を考えることである。
類似概念として、心的状態と関連づけて他者の行動を理解し操作するメンタライジングがある。
また、他者の感情の中に自分を置き、その視点から他者を理解する視点取得と、心の理論を包括する概念として、マインドリーディングがある。

前提となる学問・研究領域

心理学・心・精神

心の理論とは「他者に心があり、他者はそれに基づいて行動する」とみなすことである。

対人認知

心の理論は対人認知である。

解決すべき問題となる学問・研究領域

目的となる学問・研究領域

時間的に前提となる学問・研究領域

一般的な学問・研究領域

帰属・因果性

心の理論は帰属の一種である。

本質的な要素となる学問・研究領域

視点取得

  • 「ミラーニューロンと<心の理論>」第5章 ミラーとメンタライジング P168

    こうして、言語的・非言語的メンタライジングに関わる脳活動を慎重に絞り込んだ結果、前頭葉の内側部や側頭―頭頂接合部などを含むネットワークが検出された。

    (中略)

    そして、これらの検討の中で幾度となく活動が認められた領域が、上記の3領域である(側頭―頭頂接合部、前頭葉内側部および後頭葉の内側部:図5-1を参照)。

    (中略)

    2-3-1 側頭―頭頂接合部

    側頭葉と頭頂葉の間には、明確な境界線となる脳溝が存在しないが、この境界領域を、側頭―頭頂接合部(TPJ)と呼ぶ。

    (中略)

    他者理解におけるTPJの機能を考えるうえで、「視点取得」(perspective taking)という機能がひとつのキーワードになる。

メンタライジングは視点取得を含む。

内省・反省

  • 「ミラーニューロンと<心の理論>」第5章 ミラーとメンタライジング P170

    2-3-2 後頭葉内側部

    (中略)

    近年になって、この後頭葉内側部は、前頭葉内側部とともに、デフォルトモード・ネットワーク(コラム参照)という脳活動パターンの中心であることが明らかになってきた。

    これは、意識が自分の内部に向かっているとき、すなわち内省時や、特定の課題を行っておらず、自由思考が起こっているときなどに活動する領域のネットワークである。

メンタライジングは内省を含む。

非本質的な要素となる学問・研究領域

前提となる学問・研究領域(疑いあり)