脳の大型化

Last-modified: 2015-09-09 (水) 22:08:28
 

研究領域

  • 山極寿一『家族進化論』第2章 進化の背景 16 脳の増大と食の改変 P114

    脳が大きくなり始めるのは約二〇〇万年前に登場したホモ・ハビリスからで、直立二足歩行を始めてから五〇〇万年もたっている。

最古のヒト属化石を発見、猿人からの進化に新証拠 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20150305/438060/

最古のヒト属化石を発見、猿人からの進化に新証拠

2015.03.05

ヒト属の起源を知る重大な手掛かりとなる2つの化石が、3月4日付『Science』誌と同日付『Nature』誌にそれぞれ発表された。

どちらも下顎骨の化石で、一方はエチオピアで2013年1月に発掘されたばかりの化石、もう一方は半世紀前に発見された重要な標本をCGで復元したものである。

(中略)

エチオピアで発掘された化石は、東アフリカでのヒト属の出現を、これまでよりも50万年近くさかのぼらせ、280万年前とするものである。

これは、アウストラロピテクス・アファレンシス(アファール猿人)が最後に存在していたとされる300万年前にほど近い。

アファール猿人は、ルーシーと呼ばれる頭蓋骨に代表される、直立歩行をしていた小さな脳を持つ種で、ヒト属の直接の祖先と考えられている。

今回見つかった「LD 350-1」と呼ばれるこの下顎骨は、1974年にルーシーが発見された場所からわずか数十kmの地点で、2013年1月に発見された。

(中略)

脳の大容量化は、もっと古くから始まっていた

スプアーらは、オリジナルのホモ・ハビリスの標本から、頭蓋もデジタルで再現している。

それまで頭蓋の容量は、典型的なアウストラロピテクス属よりも多く、後の人類よりも少ない700ccと考えられていたが、新しく再現された頭蓋容量は、800ccとなった。

これによりホモ・ハビリスは、200万年前の東アフリカのサバンナを歩いていたヒト属の2つの種(ホモ・ルドルフエンシスとホモ・エレクトス)と同じ知識階級に属することになる。

スプアーは昨年8月、ケニアのトゥルカナ盆地研究所で開かれた会議で初めてこの再現計画を議論した際、「ここにあるのは、非常に原始的な鼻先と、大きな脳を持つ獣である」と述べている。

同時期に存在した3つの種(ホモ・ハビリス、ホモ・ルドルフエンシス、ホモ・エレクトス)が個別に脳の大きさを進化させたとは考えにくいため、それらに共通の祖先が、これまで考えていたよりもずっと昔から、すでに大きな脳を持つ針路を取っていたと考えられる。

この項目では、280万年前と推測されるホモ属以降の人類の脳の大型化について扱う。

前提となる学問・研究領域

腐肉食・屍肉食

  • 山極寿一『家族進化論』第2章 進化の背景 16 脳の増大と食の改変 P114-115

    じつは、脳容量が増加し始める少し前の二五〇万年前の地層から大量の石器がみつかっている。

    人骨は出ていないが、ホモ・ハビリスの発見された場所に近いことから、この人類が使ったと推測されている。

    しかも、この石器といっしょにカットマークがついた獣骨がみつかっている。

    明らかに石器は動物の骨から肉をはがすために使われたのである。

    石器で骨を割って骨髄を食べた可能性も指摘されている。

    脳が大きくなる前に、人類は肉食を始めていたのである。

    石器は狩猟には使われてはいないので、おそらく肉食動物が食べ残した獲物から肉をとったのだろう。

    しかし、肉をメニューにとりいれたことが脳の発達にとって重要だった。

    (中略)

    動物質の食物は葉の一〇~二〇倍、果実の二~五倍のカロリーを含んでいる。

    つまり少しの量で必要なカロリーが賄え、余分を脳に回すことができるのだ。

  • 河合信和『ヒトの進化 七〇〇万年史』第二章 アファール猿人(390万~290万年前) 三歳と言う年齢と性別の推定 P60

    なおその後、セラム発見地から二〇〇メートルしか離れていない所で、石でつけられたカットマーク(切り傷)と打撃痕のある大型偶蹄目の骨二点が見つかったという報告が『ネイチャー』一〇年八月十二日号に載った。

    (中略)

    カットマーク例は、長さ一センチ弱の、肉を切り取ろうとしたと思われる二条の平行な溝である。

    年代はアルゴン-アルゴン法で三三九万年前という。

    報告者は、ホミニン最古の石器使用例としているが、ありあわせの石を道具に使った可能性も排除できないので、たった二つの獣骨だけという証拠からも、現時点では評価を保留しておきたい。

先行する腐肉食・屍肉食が脳の大型化の要因であると推測される。

道具製作

  • 河合信和『ヒトの進化 七〇〇万年史』第二章 アファール猿人(390万~290万年前) 三歳と言う年齢と性別の推定 P60

    なおその後、セラム発見地から二〇〇メートルしか離れていない所で、石でつけられたカットマーク(切り傷)と打撃痕のある大型偶蹄目の骨二点が見つかったという報告が『ネイチャー』一〇年八月十二日号に載った。

    (中略)

    カットマーク例は、長さ一センチ弱の、肉を切り取ろうとしたと思われる二条の平行な溝である。

    年代はアルゴン-アルゴン法で三三九万年前という。

    報告者は、ホミニン最古の石器使用例としているが、ありあわせの石を道具に使った可能性も排除できないので、たった二つの獣骨だけという証拠からも、現時点では評価を保留しておきたい。

  • 河合信和『ヒトの進化 七〇〇万年史』第五章 ホモ属の登場と出アフリカ(260万~20万年前) 乾燥化と新しい食料獲得戦略がホモを生んだ? P152-153

    脳の拡大は、新たな食料獲得戦略、すなわち肉食の採用の結果であって、前提ではなかった。

    その新食料獲得戦略には、石器製作という大きなブレイクスルーが伴った。

  • 世界最古の石器発見、330万年前に猿人が作る? | ナショナルジオグラフィック日本版サイト
    http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/052200111/

    世界最古の石器発見、330万年前に猿人が作る?

    ヒト(ホモ)属登場以前では初。ケニアのトゥルカナ湖西岸

    2015.05.22

    (中略)

    2013年末には、埋蔵物の年代測定が完了。堆積物と石器は、330万年前のものであると特定された。

    つまり、ゴナのオルドワン石器よりも、およそ75万年近くも古い。

    ロメクウィ3の石器は粗雑な作りのため、我々の祖先の石器使用における大きな変化――チンパンジーのように木の実を叩きつける使用法から、意図的に石の形を変えて鋭利にする「道具作り」への変化――を表している可能性がある。

    (中略)

    しかし、ロメクウィ3での発見により、道具を最初に作り始めたのが既知のヒト属という可能性はほぼ否定された。

    なぜなら、最古のヒト属として知られている化石は、280万年前のものにすぎないのだ。>(中略)

    しかし、ロメクウィ3の石器の大きさに困惑している科学者もいる。

    13kgを超えるものもあり、典型的なオルドワン石器よりも桁違いに大きいのだ。

    ジョージ・ワシントン大学の考古学者、デビッド・ブラウン氏によると、オルドワン石器は骨から肉を切り落とすのに使われていたと考えられているが、ロメクウィ 3の石器が同じ目的で使われていたとは考えにくい。

    それが、私たちよりも器用でない生き物によって使われていたとすればなおさらだ。

    「こんな大きな石器を使って何をしていたかを知るのは至難の業ですし、私にとってもまだ不可解です」

CNN.co.jp:世界最古か、330万年前の石器を発掘 ケニア - (2/2)
http://www.cnn.co.jp/fringe/35064835-2.html

発掘されたなかには、刃物として使った剥片石器があったほか、石器の材料となった石や、石器を作る際に石を固定した台も見つかった。

330万年前に、道具製作により、骨から肉を切り取るための、すなわち腐肉食・屍肉食のための刃物が作られた可能性がある。
モデルとしては、道具製作が腐肉食・屍肉食を可能にし、腐肉食・屍肉食が脳の大型化を可能にしたというものが考えうる。

過去に位置する学問・研究領域

人類学・人類・人間性

脳の大型化は人類固有の現象である。

原因となる学問・研究領域

解決すべき問題となる学問・研究領域

目的となる学問・研究領域

属する全体である学問・研究領域

本質的な部分である学問・研究領域

非本質的な部分である学問・研究領域

前提となる学問・研究領域(疑いあり)