追放

Last-modified: 2017-06-17 (土) 01:00:26
 

研究領域

この項目では罰の一種となりうる行為である追放について扱う。

前提となる学問・研究領域

内集団・縄張り

追放は基本的には内集団の縄張りからの追放である。

暴力・攻撃・危害・威嚇

追放は暴力ないし威嚇によって強制される。

弱者同盟・不当利得・フリーライダー

  • クリストファー・ボーム『モラルの起源』第6章 自然界のエデンの園 集団攻撃にかんする自然史 P182-183

    霊長類学者は、確かに死に至らしめたようにみえる服従者の反逆の事例をいくつか実際に記述している――だが専門的に言えば、科学的に控えめな味方をする動物行動学者は、集団攻撃によって「失踪」に至ったものとしか見なしていない。

    タンザニアにあるマハレの野外調査地点では、攻撃的なアルファ雄だったチンパンジーのントロギが、みずからのコミュニティのメンバーから集団攻撃を受け、そこで野外調査をしていた日本人研究者たちの前に二度と姿を現さなくなった(48)。

    チンパンジーの雄は、敵対的な近隣の群れへ安全に移ることはできないので、ントロギはおそらく死んだのだろう。

    私がゴンベにいたときに、そこのチンパンジーのアルファ雄だったゴブリンは、あまりにも激しい集団攻撃を受けたので逃げて放浪し、何ヶ月も周辺地域で生き長らえていた。

    そこで敵の見回りに捕まっていたら、その場で殺されてしまっていただろう(49)。

    実際にはゴブリンは、自分を拒絶した群れに社会的に受け入れられて長い年月を生き延びたが、ントロギは二度と姿を現さなかった。

    彼は負傷がもとで死んだか、敵に捕らわれた可能性がある。

    あるいは放浪中に自然な原因で死んだのかもしれないが、いずれにせよ、ゴブリンのように、追放によって死に至る危険にさらされたのは間違いない。

    同様にザイールの野性ボノボのケースでは、雌のかなり大きな集団が乱暴者の雄を攻撃して、指に激しく噛みついた。

    その雄は、ひどい傷をたくさん負って逃げ、二度と姿を見せなかった(50)。

  • クリストファー・ボーム『モラルの起源』第11章 「評判による選択」説を検証する 進化の経緯 P384

    服従者の連合から報復される恐怖も引き続き乱暴な行動を抑えていたが、私が考えるに、原始的な良心が発達すると、今度はルールが内面化され、その結果、個体の行動を集団の好みに敏感に合わせられるようになったのではなかろうか。

チンパンジーやボノボにおいて、追放は服従者の弱者同盟によるフリーライダーへの報復の具体的なケースである。

過去に位置する学問・研究領域

原因となる学問・研究領域

解決すべき問題となる学問・研究領域

目的となる学問・研究領域

報復

チンパンジーやボノボにおいて、追放は服従者の弱者同盟によるフリーライダーへの報復の具体的なケースである。

属する全体である学問・研究領域

追放は罰の一種である。

社会統制

追放は社会統制の一種である。

本質的な部分である学問・研究領域

非本質的な部分である学問・研究領域

前提となる学問・研究領域(疑いあり)

人類学・人類・人間性

群れからの追放は人間に限らず動物に広くみられる。