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研究領域
- マイケル・S・ガザニガ「人間らしさとはなにか?」4章 P211
この文脈では、抑制は基本的に自制心を意味する。
言い換えれば、情動系が望むことを抑制する能力だ。
- マイケル・S・ガザニガ「人間らしさとはなにか?」4章 P212
意志の力のこうした側面、すなわち、「自分の責務をないがしろにしかねない衝動的な反応を抑制する能力」、別名「自制心」の機能を説明するため、ウォルター・ミッシェルと研究仲間のジャネット・メトカフは、二つのタイプのプロセスがあるという説を打ち出した。
「ホットなプロセス」と「クールなプロセス」だ。
(中略)
ホットな情動系は、すばやい情報処理を担う。誘因に反応し、扁桃体を基盤とする記憶を利用する。
(中略)
クールな知覚系は速度が遅く、複雑な空間・時間的な表象や思考と、挿話的な表象や思考を担う。
(中略)
両神経系間の相互作用は、年齢やストレス(ストレスが増えると、ホットな神経系が主導権を握る)、気質に依存する。
さまざまな研究から、犯罪は年齢とともに減ることがわかっている(*57)。
これは自制を強化するクールな神経系が年齢とともに活性化するという見解を裏づける。
自制心とは、情動系が望むこと、衝動的な反応を抑制する能力である。
前提となる学問・研究領域
空間認知・時間感覚・イメージ・思考・エピソード記憶
自制心を担うクールな知覚系は、複雑な空間・時間的な表象や思考と、挿話的な表象や思考を担う。
気質
ホットな情動系とクールな知覚系の間の相互作用は、気質に依存する。
報復・服従
- クリストファー・ボーム『モラルの起源』第11章 「評判による選択」説を検証する 進化の経緯 P383
この祖先は、自己認識の能力は相当もっていたが、進化的良心をもたなかった。
そのため彼らの自制は、報復への恐怖と服従の能力のみにもとづいていた。
自制心は進化的には報復への恐怖と服従の能力にもとづいていた。
過去に位置する学問・研究領域
原因となる学問・研究領域
解決すべき問題となる学問・研究領域
情動・動機・動因・情念・衝動
自制心とは、情動系が望むこと、衝動的な反応を抑制する能力である。
記憶
自制心によって抑制されるホットな情動系は、扁桃体を基盤とする記憶を利用するものである。
ストレス
自制心によって抑制されるホットな情動系は、ストレスが増えると主導権を握る。
社会統制
- クリストファー・ボーム『モラルの起源』第11章 「評判による選択」説を検証する 進化の経緯 P383
行動を再現してみると、この祖先には、(道義性とは無縁の)集団による社会統制の能力が、初歩的であるが顕著に存在していたこともわかる。
この能力はもっぱら、すぐに性向がばれて怒りを買うタイプのフリーライダー(利己的で競争心が強く、他者を利用する乱暴者)に対して発揮されていた。
- クリストファー・ボーム『モラルの起源』第11章 「評判による選択」説を検証する 進化の経緯 P383-384
道徳の進化の次なる段階が、いかに唐突に始まったのかは定かではない。
だが、同じように反序列的な社会統制がエスカレートし、強い個体がご都合主義的なただ乗りによる支配をしようとすると、得するよりもむしろ大きな犠牲を払う場合の方が多くなるほどになっていた可能性はある。
これが、自制の能力が高いと有利になるような遺伝子選択に結びついたのかもしれない。
強者が社会統制に適応することで、強者の中の自制の遺伝子が生き残りやすくなり、自制の形質に乏しい強者は淘汰されやすくなった。大雑把には、自制心は強者が社会統制に適応するために生じた、とも言える。