強者同盟

Last-modified: 2017-06-17 (土) 00:43:36
 

研究領域

  • クリストファー・ボーム『モラルの起源』第6章 自然界のエデンの園 「原初のチンパンジー属」の狩猟と分配のパターン P170

    チンパンジーとボノボの狩りは気まぐれで、かなりまれで、飛び道具をもたずに小ぶりの獲物を追う(19)。

    ボノボは、チンパンジー以上に狩りをすることが少なく、また、個々に狩りをしがちだ。

    一方で、チンパンジーの雄は、魅力的な新鮮な肉を探し求めるときには、集団で狩りをすることもあるらしい(20)。

    どちらの種も、食べたり分配したりするときには、脂肪分の多い脳を喜ぶようだ。

    そしてゴンベで私が惹きつけられたのは、最大で十数頭ほどの興奮した類人猿がこうした獲物の肉を分け合う特別な方法だった。

    チンパンジーとボノボは同じようなやり方でこれをおこなう。

    通常は、獲物の肉を確保した地位の高い個体が、その後もしっかり所有して一番多く取り、近づいてきてせびる仲間のうち一部にだけ残りを分け与える――だが、ほかの仲間には決して分け与えないのだ。

  • クリストファー・ボーム『モラルの起源』第6章 自然界のエデンの園 容認される盗みか、社会的な絆をもつ味方作りか? P172

    フラックと私は、肉の所有者は肉をしっかり支配するのに必要な味方(同盟者)を確保するため、最小限の数の仲間とは肉を分け合うが、肉が欲しいとしきりに訴えて物乞いの列に少しでも前に並ぼうとするほかの多くの者とは分け合わないのではないかと提唱した。

  • クリストファー・ボーム『モラルの起源』第6章 自然界のエデンの園 容認される盗みか、社会的な絆をもつ味方作りか? P173-174

    野生のチンパンジーを観察して、私がいつも気づいたのは、分配のプロセスというものが、競い合って肉を求める物乞いのあいだでは大いに緊張と敵意をもたらすようだが、同時にまた、分け合う仲間のあいだでは緊張と親睦を、ときにはまぎれもない友情すらもたらすように見えたということである(あくまで印象だが)。

  • クリストファー・ボーム『モラルの起源』第6章 自然界のエデンの園 狩りとアルファ雄の問題 P185

    そうしたアルファ雄はやはり、支配者として振る舞い、他のメンバーの肉までせしめて血縁や仲間をひいきしがちだったはずだ。

    (中略)

    それはまた、肉を政治的な権力に変える傾向となって表れもするだろう。

    肉の所有者はまさに祖先がしていたように、余分な肉を用いて血縁や政治的な味方や配偶者をひいきしようとするからだ。

チンパンジー・ボノボ・ヒト等において、支配者や持つ者が、対抗する服従者や持たざる者の同盟にさらに対抗すべく、強者の間で同盟を組むことがある。
これらの同盟や、血縁においては、その中で占有物(主に肉)を分配し、外に対しては行わないことがある。
これについて当wikiでは強者同盟という語を用いる。

前提となる学問・研究領域

食物分配

強者同盟は、チンパンジー・ボノボにおいては、食物分配を通じてみられる現象である。

採集・肉食・狩猟

  • 山極寿一『家族進化論』第1章 家族をめぐる謎 4 狩猟仮説の魅力と誤り P29

    一方、アフリカヌスには骨器や石器を使った証拠は発見されなかった。パラントロプスと同時代に生きたこの化石人類は、植物以外に肉食動物の食べ残した獣肉をあさっていたのではないかと考えられている。

  • 山極寿一『家族進化論』第1章 家族をめぐる謎 4 狩猟仮説の魅力と誤り P31

    しかし、ハビリスたちが使ったとされるオルドワン式石器は武器として使われたのではなく、肉食動物が食べ残した動物の骨から肉をはがしたり、骨を割ってなかの骨髄をとりだすために用いられたようだ。

  • 山極寿一『家族進化論』第2章 進化の背景 16 脳の増大と食の改変 P115

    石器は狩猟には使われてはいないので、おそらく肉食動物が食べ残した得物から肉をとったのだろう。

  • 河合信和『ヒトの進化 七〇〇万年史』第三章 東アフリカの展開(420万~150万年前) 大きな脳と肉食への傾斜 P81

    石器を持たず、基本的に樹上性だったルーシーたちは、樹上性の小動物以外の肉は食べられなかったろう。

  • 河合信和『ヒトの進化 七〇〇万年史』第五章 ホモ属の登場と出アフリカ(260万~20万年前) 二六〇万年前に初めての石器――オルドワン文化の誕生 P154

    この頃、東アフリカで全般的気候の乾燥化が進行し、それに伴って疎林や草原が拡大していた。

    それは、樹上生活者であったホミニンには試練だったが、一つのチャンスでもあった。

    サバンナ的環境の拡大で、草食獣が激増し、それを獲物にする肉食獣もまた増えた。

    きっと森林とサバンナの境界のあちこちに、肉食獣の食べ残しの骨や草食獣の死骸が点々と見られたことだろう。

    これこそホミニンにとって、新しい食料になるものだった。

  • wikipedia オロリン
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%AD%E3%83%AA%E3%83%B3

    オロリン (Orrorin) は、ケニアに生息していた化石人類の属である。

    (中略)

    ヒト亜科に属し、ヒトの系統がチンパンジーと分岐して以降の祖先の可能性がある属・種としては、サヘラントロプスに次ぎ2番目に古い。

    (中略)

    年代

    放射年代測定によって、化石が発見された地層の火山性凝灰岩は610万から580万年前の中新世のものであることが分かった。

    これは、二足歩行をしていた証拠の残る最も古い化石のひとつである。

    (中略)

    臼歯が大きく犬歯が小さかったということは、この種が果物や野菜を好んで食べ、肉類も時々食べていたことを示している。

    (中略)

    系統仮説

    マーティン・ピックフォード (Martin Pickford) のチームが2000年に再びオロリン・トゥゲネンシスの化石を発見した。

    ピックフォードはオロリン属はヒト亜科であると主張し、これに基づいてヒト科と他のアフリカの類人猿が分化したのは少なくとも700万年前であるとした。

  • wikipedia アルディピテクス属
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%94%E3%83%86%E3%82%AF%E3%82%B9%E5%B1%9E

    アルディピテクス属(学名:genus Ardipithecus)は、約580万- 約440万年前(新生代中新世末期[メッシニアン中期] - 鮮新世初期[ザンクリアン初期])のエチオピアに生息していた原始的な人類(猿人)の一種。

    (中略)

    歯の構造から見て、硬いサバンナ系の植物などを口にするようには適応しておらず犬歯は小さく退化している。

  • wikipedia アルディ (アルディピテクス)
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%87%E3%82%A3_%28%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%94%E3%83%86%E3%82%AF%E3%82%B9%29

    アルディ (Ardi) は、約440万年前のアルディピテクス・ラミドゥス(ラミダス猿人)の女性と見られる化石人骨(標本番号 ARA-VP-6/500)に与えられた愛称である。

    (中略)

    ほかの歯については、ゴリラやチンパンジーがそれぞれの食性の選好に合わせて歯を特殊化していったのに対し、そういう特殊化の要素は見られない。

    この事実は、アルディピテクス・ラミドゥスの食生活がゴリラやチンパンジーとは違い、特定の食物への選考を強めたりしない雑食型であったことを示している[40]。

440年前の女性『アルディ』とその仲間たち - 国立科学博物館
http://www.kahaku.go.jp/userguide/hotnews/theme.php?id=0001255574730972&p=2

さて,アルディピテクスの歯を見てみると,犬歯と臼歯が共に小さく,咬頭も小さく丸くなっています。臼歯のエナメル質もアウストラロピテクスほど発達していません。

噛み切ることにも,噛み潰すことにもあまり特化しているとは言い辛い形であり,アルディピテクスは特に偏った食性を持たない,雑食生活をしていた可能性があります。

足と手,歯から考察してみると,アルディピテクスは主に森林の中で生活し,地上では両手で地中の食べ物を探したり,小動物を捕まえたり,手にした食糧を運んだりしていたと考えることができます。

木の上にいる時はチンパンジーなどほど敏捷ではなく,木の上に住む小動物を追い掛けて捕まえていた可能性はあまりないようです。

  • 山極寿一『家族進化論』第2章 進化の背景 15 人類の食の特徴と進化 P111-112

    直立二足歩行がなぜ生まれたかについてはいまだに多くの議論が続いているが、①エネルギー効率をよくするため、②外敵への威嚇に用いるため、③食物を運ぶため、という三つの仮説が有力とされる。

    (中略)

    初期の人類が分散した食物を採食するために遊動距離を延ばす必要があったとすれば、この歩行様式は有利に働いたにちがいない。

    (中略)

    そこで登場したのが、栄養価の高い小さな食物を手で運び、それを仲間に分けたという考えである。

初期の人類は、森林からサバンナへの環境の変化に適応してから、主に死肉漁りを行なっていた。
ただしこれはそれ以前から小動物の肉を狩猟して食べていた可能性を排除しない。
ヒトが他の類人猿と分化したのは700万年前であるが、610~580万年前、また440万年前の化石人類は、小動物を捕まえて肉類を時々食べていたと考えられる。
このことから、ヒト・チンパンジー・ボノボは肉食・(小動物の)狩猟を行なっており、この三種の共通祖先は肉食・狩猟を行ない、仲間と分け合っていたと考えるのが自然であろうと思われる。

同情・寛大さ

  • クリストファー・ボーム『モラルの起源』第6章 自然界のエデンの園 容認される盗みか、社会的な絆をもつ味方作りか? P173

    一方、味方作りという解釈によれば、気に入った味方と分け合うにはなんらかの社会的な絆が必要なはずなので、政治的な便宜と結びつく「同情的な寛大さ」に相当するものが類人猿にあるのではないかと考えられる(26)。

味方作りという観点からは、同情的な寛大さに相当するものが前提として要請される。

過去に位置する学問・研究領域

原因となる学問・研究領域

解決すべき問題となる学問・研究領域

弱者同盟

強者同盟は、支配者や持つ者が、対抗する服従者や持たざる者の弱者同盟にさらに対抗すべく、強者の間で同盟を組んだ場合に起こるものである。

物乞い

強者同盟は、物乞いを拒絶しきるためになされている。

目的となる学問・研究領域

属する全体である学問・研究領域

本質的な部分である学問・研究領域

血縁・友情・友愛・配偶システム

強者同盟は血縁や政治的な味方や配偶者を優遇しようとするものである。

非本質的な部分である学問・研究領域

前提となる学問・研究領域(疑いあり)