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研究領域
- アントニオ・R・ダマシオ「無意識の脳 自己意識の脳」第一章 「脳の中の映画」とは何か P35
第四の事実は、少なくとも人間において意識は一枚岩的ではないということ。
意識は単純なものと複雑なものに分けることが可能であり、神経学的証拠からその分離は明白だ。
私が「中核意識」[core consciousness]と呼ぶもっとも単純な種類の意識は、有機体に一つの瞬間「いま」と一つの場所「ここ」についての自己感を授けている。
中核意識の作用範囲は「いま・ここ」である。
中核意識が未来を照らすことはない。
また、この意識によってわれわれがおぼろげに感知する唯一の過去は、一瞬前に起きた過去である。「ここ」以外に場所はなく、「いま」の前も後もない。
他方、私は「延長意識」[extended consciousness]と呼んでいる多くのレベルと段階からなる複雑な種類の意識は、有機体に精巧な自己感――まさに、「あなた」、「私」というアイデンティティと人格――を授け、また、生きてきた過去と予期される未来を十分に自覚し、また外界を強く認識しながら、その人格を個人史的な時間の一転に据えている。
- アントニオ・R・ダマシオ「無意識の脳 自己意識の脳」第七章 延長意識とアイデンティティ P243
延長意識も同じ中核的「あなた」に依存しているが、その「あなた」は、いまや、生きてきた過去と予期される未来という、あなたの自伝的記録の一部と結びついている。
(中略)
いまや延長意識によってアクセスできるようになった知識の範囲は、大パノラマを包含している。
その大きなランドスケープを眺める自己は文字通り頑強で、それが自伝的自己である。
延長意識とは、自伝的記憶と結びついた、過去と予期される未来を自覚した意識である。
前提となる学問・研究領域
中核意識・経験・メタ認知
- アントニオ・R・ダマシオ「無意識の脳 自己意識の脳」第一章 「脳の中の映画」とは何か P37
神経疾患という精巧な解剖メスにより、延長意識が傷ついても中核意識が無傷でありうることがわかっている。
反対に、中核意識のレベルではじまる障害は意識の砦全体を崩壊させるので、延長意識は崩壊する。
延長意識は中核意識に依存している。
自伝的記憶
- アントニオ・R・ダマシオ「無意識の脳 自己意識の脳」第七章 延長意識とアイデンティティ P243
いまや延長意識によってアクセスできるようになった知識の範囲は、大パノラマを包含している。
その大きなランドスケープを眺める自己は文字通り頑強で、それが自伝的自己である。
自伝的自己は、選択された一連の自伝的記憶の安定した再活性化と表示に依存している。
中核意識においては、自己の感覚はパルスごとに新たに構築される、かすかな、そして束の間の感情の中に生じる。
しかし延長意識においては、自己の感覚はわれわれ自身の個人的記憶の一部、すなわち「個人的な過去の対象」――刻々とわれわれのアイデンティティや個性を容易に具現化しうるもの――が、安定的に繰り返し表示される中に生じる。
延長意識の秘密はこの仕組みに現れている。すなわち、自伝的記憶が「対象」であり、脳はそれをそのように扱い、したがって、その一つひとつが、中核意識に対して述べた仕方で、有機体に語りかけることができ、その結果、その一つひとつが中核意識のパルスを、つまり自己認識の感覚を、生み出せるようになっている。
延長意識は自伝的記憶に依存している。