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研究領域
- アントニオ・R・ダマシオ「感じる脳」第二章 欲求と情動について P82
さて、さまざまな種類の情動を考慮に入れながら、狭義の情動に対する作業仮説を定義という形で提示してみよう。
1 喜び、哀しみ、当惑、共感、のような狭義の情動は、ある特定の身体的パターンを形成する化学的ならびに神経的な反応の複雑な集まりである。
2 それらの反応は、正常な脳が<情動を誘発しうる刺激>(ECS(*10))――本物であれ、心の中で想起されたものであれ、その存在が情動を誘発するような対象または事象――を感知すると、その脳により生み出される。
反応は自動的である。3 いくつかの特定のECSに対しては一連のきまった作用で脳が反応するよう、進化により手はずが整えられている。
ただし、ECSのリストは進化が定めたものにだけ限定されているわけではない。
そのリストには、われわれが生活の中で学習した他の多くのものも含まれている。
4 これらの反応の即刻の帰結は、「狭義の身体(*11)」の一時的な状態変化、そして、身体をマップ化したり思考を支えたりしている脳構造の一時的な状態変化である。
5 これらの反応の最終的帰結は、直接的あるいは間接的に、有機体を生存と幸福に通ずる環境におくことである。(20)
このwikiでは情動(emotion)を神経科学者ダマシオの用語と同様に使う。
すなわち、情動とは、生存・幸福を目的とした、身体や脳の一時的な状態変化をもたらす反応である。
前提となる学問・研究領域
動機・動因・欲望・欲求
- アントニオ・R・ダマシオ「感じる脳」第二章 欲求と情動について P55
ホメオスタシス機構とは、自動的な生命調節を備えた、多数の枝分かれをもつ、大きな現象の木、と考えることができる。
そして多細胞生物の場合、下から上に登っていくと、その立ち木には順に以下のようなものが見えてくるだろう。
(中略)
つぎに高いレベルにあるのは、
*多数の動因と動機(*2 drives and motivations)
(中略)
最上部に近いが、最上部ではないレベルにあるのは、
*狭義の情動(エモーション・プロパー *4)
ダマシオ説では、情動は動因・動機の上位にある。