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研究領域
- ジャコモ・リゾラッティ&コラド・シニガリア「ミラーニューロン」6 模倣と言語 P160
単純化しすぎる危険を承知の上で、本書の目的に沿い、考えられる定義を二つに絞ることにする。
一つ目はおもに実験心理学者が使うもので、個体が自分の運動レパートリーにすでに属する行為を他者が実行するのを見て、それを再現する能力、というものだ[注1]。
二つ目はおもに動物行動学者に受け入れられている考え方で、個体が観察によって新しい行為のパターンを学習し、以後それを細部に至るまで再現できるようになるプロセスとして、模倣を捉えている[注2]。
- ジャコモ・リゾラッティ&コラド・シニガリア「ミラーニューロン」6 模倣と言語 P168
模倣にはミラーニューロンを制御するシステムが必要で、このシステムには促進機能と抑制機能の二つの機能が欠かせない。
(中略)
前頭葉に広範囲の損傷がある患者は、目にした他者の行為、とくに治療してもらっている医師の行為を繰り返してしまう、それがなかなかやめられないことが知られている(いわゆる「模倣行動」)。
(中略)
(異論はあるものの)ある興味深い観察結果によれば、赤ん坊は誕生後ほんの数時間のうちに、親が見せる、たとえば下を突き出すなどの口の動きを、自分自身の顔をまだ見たこともないのに再現できるという[注15]。
アンドリュー・メルツォフの言ったように「ゆりかごの中に鏡はない!」にもかかわらず、赤ん坊はこのタイプの模倣ができるらしい。
赤ん坊は、未発達ながらもすでにミラーニューロン系を持っており、髄鞘傾性の度合いが低く前頭葉が十分に機能していないことからも想像できるように、制御メカニズムがまだ弱いからという解釈が成り立つ。
- マルコ・イアコボーニ「ミラーニューロンの発見」第1章 サルの「猿真似」 P57
より厳しい基準にしたがえば、模倣学習には自分の運動レパートリーになかった新しい動きを実行している他者を観察し、その観察によって新しい動きを学習することが必要になる。
- 「ミラーニューロンと<心の理論>」序章 自己と他者 P6
間主観性は、他者の外的行動との同期的調整である模倣(imitation)、他者の内的心理との同期的調整である共感(sympathy/empathy)ともつながっていることは、容易に理解できよう。
模倣とは、他者が行っている、自分の知っているor(主に)知らない行為を観察して同期的に再現する能力である。
前提となる学問・研究領域
ミラーニューロン・間主観性
- ジャコモ・リゾラッティ&コラド・シニガリア「ミラーニューロン」6 模倣と言語 P164
この証拠から考えると、ミラーニューロン系は、観察した行為を運動の言語でコードし、その行為を再現可能にするという、模倣における根本的な役割を果たしているように見える。
模倣はミラーニューロンに支えられている。
目的論・目的・時間感覚・理解・悟性
- 山極寿一『家族進化論』第5章 家族の進化 2 動物の同調と共感能力 P214
そこで、ヴィサルペルギはサルがほかのサルの行動を一部コピーしているだけで、後は試行錯誤によって自分で学習しているのだと考えた。
他人の行動を完全に模倣するには、その行動の目的と、それぞれの行動要素間の連鎖関係を理解しなければならない。
サルにはこの両方を即座に理解する能力がないので、目的だけ、あるいはある行動要素だけをコピーし、後は個体学習をして覚えるというのである。
模倣には目的と、行動要素間の連鎖関係、すなわち時間感覚を理解している必要がある。
身体イメージ・原自己
- 山極寿一『家族進化論』第5章 家族の進化 2 動物の同調と共感能力 P215
他者の行動を模倣するには、他者の体を自分と一体化しなければならない。
私たちは頭のなかだけで他者の行動をコピーしているわけでない。
自分と他者の体を連結させ、体の感覚をとおして他者の行動を再現させているのだ。
それにはまず、行動のモデルとなる他者が自分と同じ体をもっていることが必要になる。
模倣には身体イメージが必要になる。
意図・感情
- 山極寿一『家族進化論』第5章 家族の進化 2 動物の同調と共感能力 P216
このメスは私の行為ばかりではなく、私の意図や気分も見抜いてまねていたにちがいない。
(中略)
チンパンジー、ゴリラ、オランウータンは自分とはちがう種の相手でも、その体に同化し、相手の意図までそっくり模倣する能力をもっているのである。
チンパンジー等は、相手の意図や感情を見抜いてまねる能力がある。
学習学・学習
- ヒース『ルールに従う』第6章 自然主義的パースペクティブ 6.5 規範同調性 P329
この性向が獲得されるのは、主に学習能力の向上という形態で、それが個人に与える非常に大きな利点のためである。
模倣は学習能力を向上させる。
同調性
- 山極寿一『家族進化論』第5章 家族の進化 2 動物の同調と共感能力 P215
他者の行動を模倣するには、他者の体と自分を一体化しなければならない。
私たちは頭のなかだけで他者の行動をコピーしているわけではない。
自分と他者の体を連結させ、体の感覚をとおして他者の行動を再現させているのだ。
それにはまず、行動のモデルとなる他者が自分と同じ体をもっていることが必要になる。
同じ種の仲間に、子供は子供に、メスはメスに同調しやすいのは当然だろう。
しかし、それは社会関係のもち方によってもちがってくる。
イヌが飼い主の行動に同調できるのは、つねに飼い主と良好な関係をもとうとしているからだし、飼い主もそういったイヌをかわいがる。
動物園でも、動物たちは餌を与えてくれる飼育係の行動によく反応し、同調する。
自分にとって最大の関心事である食物を左右する人間に注目し、自分の好みを実現させるために同調は不可欠の行為だと思われる。
もちろん
- ヒース『ルールに従う』第7章 超越論的必然性 7.4 論証 P370
しかし、人間は顕著な適応的価値を持つ特別のヒューリスティック――同調バイアスを伴う模倣――を偶然見つけることになった。
模倣は同調性を含むものである。
過去に位置する学問・研究領域
原因となる学問・研究領域
解決すべき問題となる学問・研究領域
目的となる学問・研究領域
属する全体である学問・研究領域
本質的な部分である学問・研究領域
非本質的な部分である学問・研究領域
知能・知性
- 山極寿一『家族進化論』第5章 家族の進化 2 道徳の同調と共感能力 P215
もちろん動物の社会のつくり方や知能も関係している。
単独で暮らしている動物より群れで暮らしている動物のほうが同調は起こりやすいし、サルより類人猿のほうが巧妙な模倣をする。
模倣は知能が高ければ高いほど巧妙になる。
前提となる学問・研究領域(疑いあり)
人類学・人類・人間性
- 山極寿一『家族進化論』第5章 家族の進化 2 道徳の同調と共感能力 P215-216
かつて私は(財)日本モンキーセンターでチンパンジーの飼育を手伝っていたとき、チンパンジーにからかわれたことがある。
(中略)
このメスは私の行為ばかりではなく、私の意図や気分も見抜いてまねていたにちがいない。
動物園で類人猿を飼育したことがある人は、だれでもこのようにからかわれた経験をもっている。
チンパンジー、ゴリラ、オランウータンは自分とはちがう種の相手でも、その体に同化し、相手の意図までそっくり模倣する能力をもっているのである。
もちろん人間はこの能力にもっとも秀でている。
山極の説によると、動物特に類人猿にも模倣・同調性がある。