クリスタル・パレス「幽霊」事件調査/第一章

Last-modified: 2022-11-12 (土) 09:21:57

クリスタル・パレス「幽霊」事件調査ーー同じドームの下で

クリスタル・パレス.jpg

イベントストーリー

※ガチャの方はこちら

第一章

これが最初の調査報告だ。一区切りの調査過程と断片的な推測が記されている。
この報告書を書く前は、物事がこうなるとは思っていなかった。

心の鍵:調査員さん、どの幽霊目撃事件から調査しますか?

◆【1回目の幽霊目撃事件】

  • 1.「幽霊」の飛行の謎(1)/左廊下
    心の鍵:じゃあ、最初の幽霊目撃事件から始めよっか?
    調査員:心の鍵さん、随分と楽しそうだな?
    心の鍵:だって、幽霊なんだよ!私、こういうおもしろい噂話大好きなの!
    調査員:ほとんどの心霊現象は、ただの偶然の巡り合わせか、無知な人間による噂のどちらかであることは、すでに検証済みだ。
    そして私の任務は、この真相を徹底的に調べること。
    調査員:とにかく、まずは証拠を集めなければ。
    調査員:最初の目撃情報についてはーー退役軍人の看守に聞いてみるか。
    調査員:最初に幽霊が現れた夜、幽霊はどこで消えたんだ?
    退役軍人の看守:あそこだ。左廊下4階にあるショップのガラス壁のところ。
    調査員:消えた直後、そこで何か手掛かりになりそうなものはあったか?
    退役軍人の看守:(頭を搔く)いや。
    その時はクリスタル・パレスの外で、「幽霊」の痕跡を探すのに忙しかったもので。
    次の日は公爵のパトロール隊に入れられて、クリスタル・パレス全体の捜索をやってたしな。
    4階を確認しに戻る時間なんてなかったんだ。
    調査員:そうか。なら、今からそこに行ってみよう。
    心の鍵:(息を切らしながら)はぁ……はぁ……4階まで登るのって疲れるんだね。
    調査員:看守が言うには、幽霊がここから「飛び」去り、夜空に消えたらしい。
    調査員:彼はやむを得ず4階から降りて、左廊下の門からクリスタル・パレスの外に出たが、そこで何の痕跡も見つけられなかった。
    調査員:ここは地面から十数メートル離れてる。ガラス壁は割れており、床には破片がまだ残っている。
    どうやら掃除が間に合っていないようだな。
    調査員:それにしても大きなガラスだ……高さ2メートルは余裕でありそうだな。
    使われているガラスもかなり丈夫なもの。ちょっとやそっとの力では割れそうにない。
    心の鍵:クリスタル・パレス全体は、鉄筋にはめ込まれたガラスによって構築されているの。
    万国博覧会の時のクリスタル・パレスなんて、84000平方メートルものガラスが使われてたんだ。
    しかもこのクリスタル・パレスは、あの時のものよりも大きいんだよ。
    心の鍵:それじゃあ調査員さん、どうやって調査を進める予定なの?
    ダウンジング.png
    調査員:これを使おうと思ってる。
    心の鍵:(興味津々)なになに?
    調査員:私が発明したダウンジングさ。
    これでもプロの心霊事件調査員だからな。プロなら専門道具を持っていて当然だろう?
    調査員:それに、私は【幽霊社】の新人社員でもある。
    心の鍵:【幽霊社】?
    調査員:心霊現象の研究を目的としたグループのことだ。
    このグループは、1855年にケンブリッジ大学のトリニティ・カレッジから始まりーー
    心の鍵:(クスクス)でもその恰好、とても呪術や魔術を扱う呪術師には見えないよ?
    調査員:あんなインチキな奴らと同じにしないでくれ。
    私は【科学道具】を使って超自然現象を調べているんだ!
    調査員:例えばダウンジングを使うには、まず磁石で磁化させた後に、異なる金属の粉を塗り付ける。
    そして手で握り、ダウンジングの振り幅が大きい方に向かって進めば、我々の望む特別な手掛かりまで導いてくれるんだ。
    調査員:(作業しながら)ダウンジングを磁化させてから、金属の粉をまぶして……
    心の鍵:(疑いの表情)本当かなぁ?
    ダウンジング中.jpg
    調査員:見つけたぞ!
    調査員:壁の外に金属パーツがいくつか落ちていたーーバネとネジのようだ。
    調査員:(パーツを調べながら)かなり精巧な作りだ。特注品に違いない。
    心の鍵:結局、棒を2本持ってフラフラしてただけじゃん!
    見つけたって言っても、目でも直接見れるものじゃないの。
    調査員:私が尊敬している偉大な探偵はこう言っていた。
    心霊事件の調査には右脳の想像力と直感が必要だと。
    そして私の道具は、この力を強化させるためのものだ。
    調査員:(考え込む)このバネとネジは……割れたガラス壁の外の鉄筋上に落ちていた。
    調査員:これは興味深い。どんな「幽霊」ならこのような物を落とすのだろうか?
    ……あの看守に確認しにいかねば。
    退役軍人の看守:ガラス壁の外で何か見つけたか?
    これはきっと幽霊がガラス壁を割った時に残した物だろうな。早く見せてみろ。
    退役軍人の看守:しかし、飛んだり分身したりする幽霊と、このバネやネジに一体どんな関係が?
    調査員:君が見たのは、恐らく幽霊ではなかったのだろう。
    まず周りの状況から調べてみればわかるさ。
    調査員:クリスタル・パレス内で、このようなパーツを必要とする人物はいるのか?
    退役軍人の看守:クリスタル・パレスの左廊下にあるのは全て工芸品の店だ。
    バネやネジが必要な人はいないと思うな。
    退役軍人の看守:右廊下になら、こういうパーツを扱う店がある。
    そこに行ってみればわかるんじゃないか?
  • 2.「幽霊」の飛行の謎(2)/右廊下
    心の鍵:ここがクリスタル・パレスの右廊下だよ。
    調査員:ここにある店の雰囲気は、左廊下とは全然違うのだな。
    心の鍵:クリスタル・パレスは今でも、万国博覧会開催時のエリア分けを続けているの。
    今は左廊下が工芸エリアで、右廊下が工業エリアなんだよ。
    心の鍵:左廊下はもうすぐ展覧会があるから、けちん坊の白鴉公爵は表面だけでも取り繕うため、
    すごく苦労して左廊下の修繕と清掃をしたんだって。
    右廊下こそが、本来のクリスタル・パレスの姿なんだけどね。
    調査員:本来のクリスタル・パレスはーーここまで落ちぶれているのか……
    心の鍵:左側の2階には玩具屋【ハッピーボックス】があるの。
    調査員:オーナーはいないようだな。代わりにメモがあるーー
    調査員:ーー「用があって1階の花火ショップにいます。移転に関することは後ほど対応します。」
    ここは花火ショップもあるのか?
    心の鍵:左側の1階にある店のことだよ。
    心の鍵:花火ショップ【ファイヤーガイ】。
    全然繁盛してなくて、普段はお客さんさえ寄らないんだ……
    心の鍵:(あれ、やけに騒がしいな)
    花火のガイ:ふぅ、直った直った!(奇妙な義足を引きずりながら歩き回っている)
    斬新な玩具:動かないで、さっき調整が終わったばかりなんだからーー
    斬新な玩具:ここ数日、ずっと義足を引きずっていたでしょう。
    何をしていたの?もう、問題ばっかり起こして……
    花火のガイ:へへ……助けてくれてありがとう。
    斬新な玩具:足が直ったのなら、私は玩具店の引っ越し作業に戻るわ。
    斬新な玩具:(花火ショップから去る)
    花火のガイ:(振り返って)おっ、いらっしゃいませ!お客さんが来るのは久し振りだよ。
    僕は「ファイヤーガイ」のオーナーだ。花火のガイって呼んでね。

    花火のガイの観察
    ◆花火のオモチャをたくさん身に付けている
    ◆不思議な形の義足を片足に付けている

    調査員:初めまして、私は幽霊事件の調査を担当している調査員だ。
    さっきここから出て行った女性が【ハッピーボックス】のオーナーなんだな?
    花火のガイ:あぁ、そうだよ。そして優しく愉快な人でもある。
    調査員:(この花火ショップのオーナーに、あのバネとネジについて聞いてみよう)
    調査員:いきなりで済まないが、このバネやネジに見覚えはあるか?
    花火のガイ:悪いな、この店は花火しか売ってないから、こういう物は使わないんだ。
    花火のガイ:これは玩具職人の玩具製品によく使われている。
    僕の義肢にもこの部品があるだろう。これは彼女が直してくれたんだ。彼女に聞いてみたらどうだ?
    調査員:初めまして、お嬢さん。
    私は幽霊事件の調査を担当している調査員だ。
    斬新な玩具:(ペコリ)ようこそ【ハッピーボックス】へ。
    きっとあなた達がこの店の最後のお客さんね。

    斬新な玩具の観察
    ◆腰にあるポーチはぎゅうぎゅう詰めで、パーツが膨れた蓋の隙間から見え隠れしている。

    斬新な玩具:ちゃんとおもてなしできなくてごめんなさい。
    見ての通り、今は店の引っ越しで忙しいの。
    調査員:どうして引っ越すんだ?
    斬新な玩具:(沈んだ声で)……私のオモチャが不人気だからよ。
    お客さんはみんな、私のオモチャを……危険だと思ってるみたいで。
    斬新な玩具:かつて時代と流行りの最先端を行っていたクリスタル・パレスなら、
    もっと柔軟で幅広い需要があると思って、ここで店を開いたんだけど。
    斬新な玩具:でも……まさかクリスタル・パレスがこんなに寂れた場所になるなんて思わなかったわ。
    たまに来る常連さんもオモチャには興味ないし。
    調査員:それは残念だーー
    心の鍵:クリスタル・パレスで博覧会が開催された後、工業と文化が新たな時代に突入したのは確かだよ。
    でも今の人々は効率や利益、コストパフォーマンスをもっと重視しているから、
    シンプルな楽しさや、新しい創造と改革への寛容さを忘れてしまったの。
    調査員:(小声で)コホン……心の鍵さん、残念がるのは後にして、まず調査に集中しそう。
    調査員:(とりあえず、今は調査だ。あのパーツについて聞いてみよう)
    調査員:このバネやネジに見覚えは?
    斬新な玩具:(パーツを調べながら)このパーツなら、うちの商品に使ったことがあるわ。
    調査員:どんな物か見せてもらっても?
    斬新な玩具:それは……この二日間、ずっと閉店準備をしていたから、商品も全部運び出してしまったの。
    斬新な玩具:あっーーそういえば、まだ試作品が二つ残っていたんだった。
    店の外に置いてあるのがそれよ。
    調査員:この板車と翼のことか?
    弾射装置.png
    斬新な玩具:そう。板車は弾射装置で、人を空中まで飛ばせるの。
    グライダー.png
    斬新な玩具:翼の方は展開式のハンググライダーよ。装着すれば、空中を滑空できるわ。
    斬新な玩具:(グライダーを持ち上げる)あら、グライダーが壊れちゃってるわね。
    もしかしたら、上に物を置いた時に壊しちゃったのかも。うっかりしてたわ。
    調査員:(興奮げにオモチャを持ち上げて調べる)グライダーと弾射板車?なんて興味深い発明なんだ!
    心の鍵:(小声で)コホン。調査員さん、調査に集中して。
    斬新な玩具:発想自体は新しくないけど、実用的な改造を加えて使いやすくしたの。
    斬新な玩具:どっちも大衆向けの商品を想定して作ったんだけど、
    まさかお客さんのオモチャに対するイメージが、まだあんなに保守的だとは思わなかったわ。
    斬新な玩具:グライダーを試したお客さんはみんな、問題なく滑空に成功したのに、
    もう一度っていう気にはならなかったみたい。
    調査員:(グライダー……グライダーか。これについてもう少し詳しく知りたいな)
    調査員:(ブツブツ)グライダー……飛行ではなく滑空か。
    滑空となると、何か使用条件の制限はあるのか?
    斬新な玩具:平均的な体重の成人男性なら、安全に降下するためには最低でも20メートル程の高さから滑空翼を展開する必要があるわ。
    斬新な玩具:もちろん、体重が半分以下なら、十数メートルくらいからでも大丈夫だけど。
    調査員:十数メートル?例えばここクリスタル・パレスの左廊下の4階からグライダーで飛んだら、安全に着地できるのか?
    斬新な玩具:そこまでは分からないわ。グライダーはもう壊れてるし、試すのも難しいから。
    調査員:(頷きながら)答えてくれてありがとう。
  • 3.「幽霊」の飛行の謎(3)/右廊下
    心の鍵:(グライダーをいじくり回している)
    調査員:心の鍵さん、何をしているんだ?
    心の鍵:彼女への応援メッセージを書いてたの。
    調査員:「君の作ったオモチャは素晴らしい!」とか、「必ず人気商品になるはずだ」とか、そういった内容か?
    それならどうして直接言ってあげなかったんだ?
    心の鍵:あの子はもうこの場所に失望しきってるから、何言ったって無駄だよ。
    心の鍵:引っ越し先でこのメッセージを見つけて、それが発明を続ける原動力に繋がるといいんだけど。
    諦めなければ、彼女は絶対に成功できるはずだから。
    調査員:意外だな、君が理想主義者だったなんて。
    でも彼女の商品と理念が大衆に受け入れられないのなら、希望はないと思うけどな。
    調査員:(暗い表情)現実的ではない理想を追いかけたところで、惨めになるだけだ。
    心の鍵:(不機嫌そうに)フン、そんなことないもん!絶対にない!
    このクリスタル・パレスだって、設計者のジョセフ・パクストンが諦めなかったからこそ完成した作品なんだから!

    ◆【クリスタル・パレスの設計者について】
    調査員:ジョセフ・パクストン?
    心の鍵:鉄筋とガラスだけでセント・ポール大聖堂よりも数倍大きな建物を造るなんて、誰も想像つかなかった狂った計画だったんだ。
    でもジョセフ・パクストンは建物の細部まで完璧に考え抜き、ようやく皇室に認めてもらうことができたの。
    心の鍵:だけど、その後は計画通りに進めば上手く行くと思ってた?
    心の鍵:馬が主な労働力だった時代に、パクストンは6ヶ月という短期間で、
    7万千平方メートルの土地に30万枚のガラスと5千本の鉄筋を組み立てる必要があったの。
    心の鍵:しかも、ドームを吊るし上げる機械とか、ガラスをはめる作業車のような道具ですら、自分で設計しなければいけなかったんだよ。
    心の鍵:パクストンの功績は、その時代の職人と発明家に勇気を与えたわ。
    調査員:(確かに、私もその一人だった)
    調査員:心の鍵さんはクリスタル・パレスにとても詳しいんだね。
    心の鍵:(得意気)子供の時、お父さんから何度も聞かされているからね!
    調査員:お父さん?
    心の鍵:お父さんは私にとってのジョセフ・パクストンなんだ。

    ◆【クリスタル・パレスの幽霊が本題だ】
    調査員:我々が今、向き合わなければいけないのは、クリスタル・パレスの奇跡ではなく幽霊だ。
    調査員:玩具職人という手掛かりは手に入ったが、これだって看守が話していた「飛ぶ」のが不可能なことではなかった証明にしかならない。
    調査員:幽霊は一体何なのか?なぜここに現れたのか?
    大体、玩具職人がこの件に関わっているかどうかすらまだ分かってないんだ。
    調査員:蝋人形館にあった手稿は、何を意味しているのか?
    心の鍵:……違う角度から考えてみるのはどうかな?
    心の鍵:幽霊は飛ぶ以外にも「分身」できるって、看守は言ってたよね。
    調査員:もう一度話を聞きに行こう。
  • 4.「幽霊」の分身の謎・一(1)/左廊下
    退役軍人の看守:うーん……むむむ……
    退役軍人の看守:……分身……でもなぜ?ありえないはずだ。
    調査員:何をブツブツ言ってるんだ?
    退役軍人の看守:ああ、また君か。
    今、【幽霊の分身】について考えてたんだ……
    心の鍵:やっぱり妙な話だよね。飛べる幽霊なら、まだ信じられる。
    だけど分身は流石に作り話だと思うなーーこの際吐いちゃいなよ。
    退役軍人の看守:(怒りながら)あの時、私は確かにこの幕の真ん中に立って、顔を上げたんだ。
    するとあの幽霊達が見えたんだよ!
    調査員:幽霊達はその3箇所に同時にいたのか?
    退役軍人の看守:数秒間隔で現れていたこともあったが、同時にいたこともあった!
    退役軍人の看守:実は……分身について、1人だけ心当たりがあるんだ。
    いや、数人?いや、1人……
    心の鍵:もごもごしてないで、早くそれが誰なのか教えてよ。
    退役軍人の看守:あぁもう、私は公爵に言いつけられた仕事があるから、どうしても離れられないんだ。
    自分で確認しに行ってくれ!ーー右廊下の【植物園】にある木の茂みの中にいるから。
    退役軍人の看守:(ハッとして)これは秘密だからな!絶対に誰にも言うなよ!
  • 5.「幽霊」の分身の謎・一(2)/右廊下
    調査員:これが看守の言っていた植物園だろう。
    鉄筋とガラスで作られたクリスタル・パレスに、ここまで本格的な植物園があったとは。
    心の鍵:クリスタル・パレスは元々、植物園にあった花の温室からインスピレーションを受けて造られたんだ。
    心の鍵:クリスタル・パレスの設計初期の段階からすでに、
    設計者のジョセフ・パクストンはハイド・パークの植生を建物内で再現する方法を思いついてたんだよ。
    心の鍵:だから完成したクリスタル・パレスは、自然と室内動物園のような独特な雰囲気になったんだ。
    その特徴は場所を移した今でも変わってないよ。
    調査員:随分と木が生い茂っているな。しかも、3階まで届きそうなくらい高い木が1本ある。
    確かにあの中なら人間も隠れられそうだ。
    調査員:(茂みを眺めながら)……中は低木がびっしり生えている。歩けそうにないな。
    道を作らないと、体中引っかき傷だらけになるだろう。現時点では中に入って探索するのは無理だ。
    心の鍵:じゃあ、どうするの?ここでじっと待つだけ?
    調査員:私達は人を探しに来ただけだ。中全体を捜索する必要はない。
    調査員:看守はこの中で暮らしている人がいると言っていた。
    それならば特別な「道」が存在しているはずだ。
    その「道」をたどって行けば、目的の人物達に会えるだろう。
    心の鍵:道?そんなもの、どこにあるの?どこにも見当たらないけど。
    フィルターグラス.png
    調査員:私が作った特別なフィルターグラスがあれば見えるさ。
    心の鍵:フィルターグラス?
    調査員:このメガネのレンズは、フィルターと拡大鏡の性能が同時に備わっている。
    調査員:フィルターレンズは、視界の明るさを調節することができ、
    色とりどりの風景に隠された小さな痕跡でも見つけ出せるんだ。
    グラス中.jpg
    調査員:木が曲がってたり折られたりした跡がある。
    芝生から木の上まで繋がってるようだ。
    ここからーーあそこまで、中になんとーー樹洞があったのか。
    心の鍵:道って、ただの木に開いた穴じゃん!本当に大げさだよね。
    心の鍵:(樹洞によじ登ろうとしながら)中に入ってみよう。

    樹洞から突然黒い影が現れた。
    看守?看守なのか?

    心の鍵:うわああーーなにこれ!?
    心の鍵:樹洞だ!木の中に樹洞がある!そして中に人がーー!
    樹洞の捨て子:(3人が声を揃えて)君達は誰だ?

    樹洞の捨て子の観察
    ◆旗を縫い合わせて作ったボロボロのマントを着ている
    ◆体中にコケが生えており、少し動いただけでコケと葉っぱが落ちて来る

    調査員:彼らは随分と長い間、植物園に住んでいるようだ。
    体にコケまで生えている。
    調査員:突然邪魔してすまない。私は今回の幽霊事件の調査員ーー
    樹洞の捨て子:(三男)ははは、こいつカエルみたいな目してる。おかしいな。
    樹洞の捨て子:(次男)三男、どうして出て来たんだ……
    僕達は何年もここに隠れて誰とも会ってないのに。あいつは例外だけど……
    樹洞の捨て子:(長男)看守以外、誰とも会わん!
    樹洞の捨て子:(三男)でも僕、お腹空いたんだ。看守はもう2日も食べ物を持って来てくれてないんだよ。
    心の鍵:3人に……分身?看守が言っていた幽霊って、まさか君達のことじゃないよね?
    樹洞の捨て子:幽霊?確かに看守はここ数日、廊下を行ったり来たりしながら「幽霊幽霊」ってブツブツ呟いてたな。
    何があったのか聞くタイミングはなかったけど。
    調査員:(妙だな、本当にこの者達は幽霊なのか?)
    調査員:君達はこの2日の夜、どこで何をしてたんだ?左廊下の4階には行かなかったか?
    樹洞の捨て子:(三男)ヒヒヒッ、そんなの僕達の勝手だろ!なんで言わなきゃいけなんだよ。
    樹洞の捨て子:(次男)僕達の楽園から早く出てけよ。あの人以外とは会いたくないんだ……
    樹洞の捨て子:(長男)あぁ、看守以外の奴とは会わん。
    心の鍵:変なヤツらだったね。
    調査員:彼らの言動は奇妙で、幽霊のようなミステリアスさは感じられなかった。
    調査員:だがあの3人の独特な体型や、絶妙なチームワークなら、「分身」のようなトリックをこなすのも容易だろう。
    調査員:それに、ずっと植物園に住んでいる彼らなら、他にも何か情報を持っている可能性が高い。
    だが、彼らは看守としか喋りたがらないからなーー
  • 6.「幽霊」の分身の謎・一(3)/左廊下
    調査員:(小声で)あの奇妙なさん……人と会ってきた。
    退役軍人の看守:樹洞の捨て子達に会えたのか?彼らはずっとあそこに住んでいる。
    私はひょんなことから彼らと知り合ったんだけどな。
    調査員:でも、あの3人が「幽霊」だとは思えなかった。
    退役軍人の看守:どうして言い切るんだ?
    調査員:「幽霊」が消えたガラス壁の周りには、破片があちこちに散らばっていた。
    つまり、現場はまだ片付けられていなかったということだ。
    調査員:誰も片付けておらず、ガラスの破片しか残っていないのなら、これは樹洞の三兄弟の外見の特徴と矛盾している。
    調査員:樹洞の三兄弟がいた場所には、必ずコケや葉っぱのような物が大量に残されているはずだ。
    調査員:だが幽霊が消えたガラス壁の周辺に、そのような物は一切なかった。
    調査員:樹洞の三兄弟の体格は特徴的だが、彼らは最初に現れた幽霊ではない。
    退役軍人の看守:確かに一理あるーー3人は幽霊じゃなかったのか!よかった!
    退役軍人の看守:……この事はどうか内密にしてくれ。あの3人は私の友人なんだ。
    彼らがずっと植物園で暮らしていることを公爵は知らない。
    退役軍人の看守:もし知られてしまったら、あの3人は追い出されてしまうはずだ。

    タツノオトシゴ.png
    心の鍵はまばたきもせずに、じっと調査員の肩にある金属製のタツノオトシゴを見つめていた。

    調査員:なぜそんな顔で私を見ている?
    心の鍵:(タツノオトシゴに触れようと手を伸ばす)さっき推理していた姿が面白くて。
    肩についてるタツノオトシゴはなんなの?
    調査員:これは【ディケンズ先生】ーー私の代弁者だ。
    心の鍵:は?代弁者?
    調査員:【幽霊社】のとある先輩からのアドバイスでな。
    我々が心霊現象に隠された真実を調査するに当たって、最終的には説明の出来ない現象にぶつかる時もある。
    調査員:だから、心霊現象の調査員は、自身の行う全ての推理の結果に敬意を示さなければいけない。
    まぁーー言い換えれば、これは一種の儀式のようなものだ。
    心の鍵:だから推理をする時に代弁者が必要ってこと?
    心の鍵:アハハ、儀式ってーーただ自分に自信が持てなくて、やましさを感じてるだけでしょ。
    調査員:……
    心の鍵:(タツノオトシゴに笑いかけながら)こんにちは、「ディケンズ先生」!

    白鴉公爵がやって来て、心の鍵の悪ふざけを止めた。

    白鴉公爵:ここで何をのんびりしているんだ!?
    白鴉公爵:もう半日経ったがーーまさか、まだ収穫がないわけではあるまいな、調査員さん?
    調査員:(樹洞の捨て子について話すべきか……)
    心の鍵:(小声で)ウソをついてもバレるかもしれない。だったらーー
    白鴉公爵:何を黙ってるんだ!早く言え!

    ◆【少しだけ情報を漏らしてやり過ごす】
    調査員:公爵様、えーと、実は右廊下の植物園に、えー……住み着いてる人が1人、いや、3人いるんですよ。
    彼らはもうそこに10年以上も住んでいるらしく、しかも身長も普通の人の半分しかいない!
    そして分身もでき……
    白鴉公爵:植物園に人が住んでるだと?しかも10年以上?
    この私ーークリスタル・パレスの管理者に一切気付かれることなく?
    白鴉公爵:ハハハハーーそんな戯言で私を騙せると思ったのか。
    普通の人の半分の身長だって?次はもう少し愉快な寝物語でも用意しておくんだな。
    白鴉公爵:(怒りながらその場を去る)
    心の鍵:本当の話がウソだと思われちゃったーーこんなやり方もあるんだね!
    退役軍人の看守:危なかった。公爵自身の疑り深さが仇となったようだ。
    退役軍人の看守:これで公爵は、直接三兄弟を自身の目で確かめもしない限り、この話を信じることはないだろうな。

    ◆【口をつぐむ】
    調査員:……
    白鴉公爵:黙ったままか?つまり収穫はなしと
    白鴉公爵:(怒りながら)なんという怠慢!貴様も看守と同じように無能なのだな。
    さっさと家に帰ってほらを吹き続けるがよい。
    退役軍人の看守:樹洞の三兄弟のことをすっきり言わないでくれたんだな。ありがとう!

    退役軍人の看守:公爵がずっと用を言いつけてくるせいで、まだ三兄弟に会いにいけてないんだーー
    私の代わりに、これを届けてくれないか?
    調査員:これはーー棒に刺さったリンゴ?
    退役軍人の看守:へへっ、私はよく三兄弟に食べ物を届けているのさ。
    その中でも、リンゴは彼らの大好物なんだ。
  • 7.「幽霊」の分身の謎・一(4)/右廊下
    樹洞の捨て子:(三男)えへへ、匂うぞ匂うぞ、リンゴの匂いだ。
    看守はいつも僕達にリンゴを持って来てくれるんだよ!
    樹洞の捨て子:(三男)看守の友達なら、何でも聞きなよ。
    調査員:この2日間の夜に一体何をしていたんだ?
    樹洞の捨て子:(三男)樹洞で寝てたよ。ここ2日は、看守も他の人もずっと忙しそうに駆け回っててさ。
    僕達も外の空気を吸いに行ける機会がなかったんだ。
    調査員:それだけ?本当に何か特別な事は起きなかったのか?
    樹洞の捨て子:(三男)そうだなーーねぇ、次男、君は何か見なかった?
    樹洞の捨て子:(次男)ねぇ、長男、君は何か見なかった?
    樹洞の捨て子:(長男)おい、三男、お前は何か見なかったか?
    樹洞の捨て子:(三男)あぁ、見たよ。
    調査員:……早く教えてくれ!
    樹洞の捨て子:(三男)ヒヒッ、2日前に誰かが噴水で遊んでたんだ。水しぶきの音を聞いたよ。
    樹洞の捨て子:(三男)あれは僕達の縄張りなんだよ。いつも僕達しか遊ばないんだ。
    本当は追っ払いに行こうと思ったけど、他の人と会っちゃダメだって、看守から言いつけられてるから……
    調査員:(イライラを抑えながら)……それで?
    樹洞の捨て子:(三男)そいつは最後、噴水の中に何かを投げ込んでた。
    でも、それが何のか、まだ確かめに行けてないんだ……
    樹洞の捨て子:(三男)植物園の前にある噴水だよ。僕達はよくそこで水を飲んだり、体を洗ったりするんだ!
    心の鍵:今、なんて言ったの?噴水で……体を洗ってる?(慌てて離れる)
    調査員:噴水の周辺には水の跡がいくつも残っている。
    噴水自体はもう動いていないようだ。しかし中の水はまだ澄んでいる。
    調査員:水の中に何かあるのか?特に変わったところはなさそうだが……
    調査員:待て、いま一瞬何かが光ったぞ。
    調査員:(水に手を入れてすくう)
    鏡と三角プリズム.png
    調査員:これは……【鏡】と【三角プリズム】?
    心の鍵:(顔面蒼白)
    調査員:心の鍵さん?大丈夫か?
    心の鍵:……へ、平気だよ。
    心の鍵:(警戒)まさか、本当にあの噴水の中から何かすくい上げてきたの?
    調査員:あぁ、鏡と三角プリズムをな。
    心の鍵:……
    調査員:表面はまだ綺麗で、サビもない。樹洞の三兄弟の言う通りだ。
    どちらも最近噴水に入れられたものだろう。
    心の鍵:…………
    調査員:鏡の反射が水面の光と重なって、パッと見じゃ気付けなかった。
    三角プリズムはよく光の分散実験に使われている。特に珍しい物ではない。
    心の鍵:…………
    調査員:さっきからずっと黙ってるな。らしくないじゃないか。
    ほら、君も鏡を観察してみるか?
    心の鍵:(慌てて)いい!いらない!
    その鏡、あいつらが体を洗った後の水に浸かってたんでしょ……こっちに近付けないで!
    心の鍵:あの噴水はお気に入りだったのに。あそこで体を洗ってただなんて!
    心の鍵:(青い顔で距離を取る)それを知ってたら……あそこの水を触ったりしなかったのに。
    調査員:……潔癖症なのか?
    調査員:鏡と三角プリズムは幽霊と何か関係しているのだろうか?
    それともただ捨てられていただけ?
    樹洞の捨て子:(3人同時に)へへ、何か見つけた?
    調査員:(鏡を取り出す)普通の鏡と三角プリズムが落ちてただけさ。
    樹洞の捨て子:(三男)ピカピカ!ピカピカな鏡だ!
    これって最近、ずっと左廊下に運ばれてたでっかい物だよね?
    調査員:左廊下にも鏡があるのか?待て、鏡……そうか……
  • 8.「幽霊」の分身の謎・二(1)/左廊下
    調査員:(心の鍵さんが看守と話している)
    心の鍵:うん、あなたが言ってた幽霊の分身って……
    退役軍人の看守:あぁーーそうだ……
    調査員:心の鍵さん……何を話しているんだ?
    心の鍵:あぁ、幽霊が分身していた時のことについて、ちょっと疑問に思うところがあって。
    調査員:もう一度、幽霊が現れた時のことを詳しく話してくれないか?
    退役軍人の看守:あの時、私は左廊下でパトロールをしていた。
    幽霊を見つけた時、ヤツは1階展示ブースの幕の近くにいて、ちょうど幕の後ろの階段に向かおうとしているように見えたんだ。
    退役軍人の看守:私がそこに追いついた時……顔を上げるとまず、右側1階と2階に同時に幽霊の黒い影を見た。
    退役軍人の看守:驚きのあまりにあたりを見渡すと、左側2階のあそこにも幽霊の影があった。
    退役軍人の看守:ハッと我に返った頃には、幽霊の姿はもう消えていたんだ。
    退役軍人の看守:少しの間、あたりを調べていた、分身を見つけることはできなかった。
    そして最後に幽霊の姿を4階のガラス壁の前で見たと思うとーーヤツはそのまま落ちていった……
    調査員:右側1階と2階、それと左側2階……
    心の鍵:自作のダウンジングとやらで調べてみたら?
    調査員:(ダウンジングで1周してきた)3ヵ所とも調べたが、特に何もなかったよ……
    心の鍵:(不機嫌そうに)最初から期待してなかったよ。
    調査員:当時看守は、この場所に立ってあそこを見ていたが……何も見えないな。
    3つの場所に何か共通点はないか……
    左廊下の鏡.png
    調査員:3つの場所とも、鏡があるように見えるな……鏡?
    調査員:鏡ーー鏡か、分かったぞ。
    調査員:随分と大きな鏡だな。反射角も広そうだ。
    中央にある展示ブースの幕の方を向いている。
    調査員:2階も1階の鏡も同じく、中央の展示ブースの幕を向いている。
    調査員:この鏡もそうだ。展示ブースの中央を向いている。

    これが幽霊の分身の秘密だ!

    調査員:退役軍人の看守の証言によれば、分身は中央展示ブースの幕に現れて以降、姿を見せていない。
    調査員:3つの場所には共通している部分が1つある。
    調査員:分身が現れた3ヵ所全てに鏡が設置されている。
    そして鏡は中央展示ブースの幕の方向に向いている。
    調査員:幽霊が分身できたのは、この3つの鏡が幽霊の姿を反射させていたからだ!
    調査員:幽霊が展示ブースの幕を通り抜けた後、その姿がちょうど3つの鏡に映し出された。
    調査員:幽霊を追いかけていた看守は鏡に映った鏡像を偶然目撃し、幽霊が分身しているのだと勘違いした。
    調査員:追いかけて来た看守は鏡にうつった幽霊を見て、分身と勘違いしたんだ。
    調査員:この時、本当の幽霊は幕の反対側に移動し、展示ブースの裏の階段から既に逃げていたということか。
    心の鍵:なるほど!やっぱり分身なんてバカげた事、あるわけなかったのね。
    心の鍵:(金属のタツノオトシゴを軽く叩きながら)さすがディケンズ先生の分析だわ!
    心の鍵:それと看守、アハハ、偶然分身を見ちゃうなんて。
    「トラブル発見者」の名は伊達ではないようね。
    調査員:……どうしてこんなに大きな鏡が、この場所に置かれているのだろうか?
    調査員:この鏡は誰が置いていったんだ?
    退役軍人の看守:こんなのが置いてあったなんて、全然気付かなかったな。
    恐らくジュエリーショップ【プリンセス・セレクト】のオーナーーーバロネス・ダイヤが設置したんだろう。
    退役軍人の看守:今日の午後に左廊下で開かれる展覧会の主催だ。
    退役軍人の看守:ジュエリーショップは左廊下の4階にある。
    調査員:ここがジュエリーショップ【プリンセス・セレクト】か?
    心の鍵:そうだよ、半年前にクリスタル・パレスでオープンした店なの。
    ここのオーナーであるバロネス・ダイヤは、海外から戻って来た宝石商なんだ。
    調査員:前に幽霊が飛び降りた窓を調べた時も、ここを通りかかったが誰もいなかった。
    心の鍵:バロネス様は午前中、出かけてたの。
    でもさっき、バロネス様の馬車がクリスタル・パレスの外に止まってるのを見たよ。
    退役軍人の看守:(大声で)大変だ、大変だ!
    退役軍人の看守:白鴉公爵がバロネスを右廊下にある執務室に呼んで、とんでもない事を話していたんだ!
    調査員:何があったんだ?
    退役軍人の看守:【コ・イ・ヌール】ーーイギリス皇室の貴重なダイヤが!盗まれたんだ!
    調査員:コ・イ・ヌール?それがバロネスと何か関係が?
    退役軍人の看守:聞いた話によれば、今回のジュエリー展覧会のテーマが【名ダイヤ・コ・イ・ヌール】だったらしい!
    調査員:公爵の執務室は……
    心の鍵:あそこ、右側3階だよ。
    心の鍵:すっごく狭い普通の部屋。あの冷酷公爵は貴族だけど、自分に対してもすごくケチなんだ。
    調査員:冷酷?ケチ?
    心の鍵:そうでしょう?あの人はクリスタル・パレスの維持費用を削減して、テナント料金を引き上げた。
    それに、高価なチケットのせいで、平民の観光客は門前払いも同然。
    心の鍵:そうして、クリスタル・パレスは徐々に活気を失い、貴族も来なくなったの。
    調査員:道理でクリスタル・パレスが年々寂れていったわけだ。
    調査員:(憤慨して)どうして公爵はこんなことをしたんだ?
    クリスタル・パレスの管理者としての責任感はないのか?
    心の鍵:(力なく手を振る)
    バロネス・ダイヤ:(丁度公爵の執務室から出てきた)
    白鴉公爵:残念ながら、【コ・イ・ヌール】の盗難はーーあなたにとって、とても重要であることは分かっている。
    バロネス・ダイヤ:コ・イ・ヌール……
    白鴉公爵:確認したいのだが、今日のジュエリー展は正常に開催されるのか?
    バロネス・ダイヤ:当然行うわ!半年も準備した展覧会なのよ!
    バロネス・ダイヤ:しかし、近頃ここで流れていた幽霊の噂はもう解決したのかしら?
    白鴉公爵:スコットランドヤードがすでにプロの調査員を手配して調査を進めている。
    バロネス・ダイヤ:クリスタル・パレスの安全は必ず保障してちょうだい。
    この展覧会のために、私はクリスタル・パレスに巨額の投資をしているのだからーー
    あなたも、その益を得ていることを忘れないで。
    バロネス・ダイヤ:(不満げに立ち去った)
    白鴉公爵:(陰りのある眼差し彼女を見送った)
    調査員:こんにちは、公爵様。
    白鴉公爵:調査員、幽霊の調査状況はどうだ?
    下手な冗談を言うつもりなら、今は付き合えない。
    調査員:バロネス・ダイヤに聞きたいことがあって来たんです。
    それよりも、さっき言っていた【コ・イ・ヌール】盗難とは……?
    白鴉公爵:コ・イ・ヌールーーウィンザー城に保管されていた皇家の宝石が、数日前に盗難に遭った。
    白鴉公爵:皇室は数日間探したが結果はなく、今になってようやく情報を公開した。
    調査員:しかしそれとバロネス様にどんな関係が?
    白鴉公爵:(イラつく)自分で彼女に聞けばいいだろう。
    早く幽霊の噂を調査してくれーー私の気はあまり長くない。
  • 9.「幽霊」の分身の謎・二(2)/ジュエリーショップ
    ジュエリーショップ.jpg
    バロネス・ダイヤ:どちら様かしら?
    調査員:こんにちは、親愛なるバロネス閣下。
    バロネス・ダイヤ:あなたが調査員?
    調査員:心霊現象調査員です。以後お見知りおきを。
    バロネス・ダイヤ:(観察)ふん、大したことないわね!
    調査員:……
    バロネス・ダイヤ:何?私は人を見た目で判断するわ。
    そして、人を見る目は確かよ。せいぜい、予想を覆す努力でもしてみてちょうだい。

    バロネス・ダイヤの観察
    ◆高貴な身なり、帽子には大きなダイヤモンドがある
    ◆威圧的で、異議は認めない強気な態度だ
    調査員:全く、華やかなものだ。ドレスの皴から金でも絞り出せそうだな。

    ◆【幽霊に関する情報】
    バロネス・ダイヤ:幽霊の情報なんかないわ。
    バロネス・ダイヤ:私は午後の展覧会だけが気がかりよ。
    そういうのはあなたの仕事でしょう?進展はないの?
    調査員:幽霊の「分身」が現れた現象についてはすでに分析できましたが、
    それに関する手掛かりについて、少しあなたに聞きたいことがありまして。
    バロネス・ダイヤ:へえ?私にどう関係するのかしら?
    調査員:鍵となるのはーーあなたの鏡です。
    バロネス・ダイヤ:鏡?
    調査員:左廊下のあちこちに置かれている大きな鏡が丁度幽霊の鏡像を映し出し、
    それを見た看守は「分身」だと認識しました。
    調査員:左廊下に置かれたいくつかの大きな鏡は、あなたが手配したものだと聞いております。
    バロネス・ダイヤ:ええ。ここはもともと、鏡を売っていたお店だったの。
    ここを買い取って、ジュエリーショップにした後、中の鏡は全て持ち去ったわ。
    調査員:なら、これらの鏡の用途はーー
    バロネス・ダイヤ:そんなの、映すために決まってるでしょう。
    ジュエリーショップで、お客様たちはジュエリーを身につけた時の効果を鏡で確認するのよ。
    調査員:……(それだけか?)

    ◆【コ・イ・ヌール盗難事件について】
    公爵があなたに話していた【コ・イ・ヌール】盗難事件について聞きたいのですが。
    バロネス・ダイヤ:今はそんな気が重くなる話はしたくないわ。
    バロネス・ダイヤ:ここに内部調査報告の初稿があるの。自分で見なさい。

    【コ・イ・ヌール盗難案報告】
    近頃、外国の特使がイギリスを訪問する。
    そこで最も重要な予定が、かの有名なダイヤ、コ・イ・ヌールを鑑賞することである。
    そのため、特使訪問の余興として、皇室は近日ウィンザー城の貴族ダンスパーティーでコ・イ・ヌールをお披露目することにした。
    盗難が起こった夜は、コ・イ・ヌールがダンスパーティーで展示された翌日だった。
    ダンスパーティーが終了した後、ショーケースの中のコ・イ・ヌールが偽物とすり替えられていたことが発覚した。
    城全体を封鎖した後、ウィンザー城の塔の頂で容疑者の影が目撃された。
    しかし、容疑者は十数メートルの高さがある塔の上から跳び下り、闇夜の中へ姿を消したという。
    その後、守衛が城周辺の地面を調べても、墜落の痕跡は見つからなかったーーまるで幽霊のように、容疑者は消失した。

    調査員:「まるで幽霊のように」…
    調査員:クリスタル・パレスの幽霊……
    調査員:(ウィンザー城の容疑者も数十メートルの高さから跳び下りた後、行方不明になったーーこれは偶然か?)
    バロネス・ダイヤ:何をブツブツ言っているの?
    調査員:いえ、少し思いついたことがあっただけで。
    調査員:改めて聞きたいのですが、バロネス閣下が今回の展覧会を開催する目的は?
    バロネス・ダイヤ:当然、我がジュエリーショップの最新のジュエリーシリーズを宣伝するためよ。
    調査員:あなたのジュエリーショップを見学してもよろしいでしょうか?
    バロネス・ダイヤ:どうぞご自由に。
    私はこれから展示ブースを見に行かなければならないから、これで失礼するわ。(立ち去った)
    調査員:壁には素晴らしい肖像画がたくさんかかっている。
    調査員:その中の1枚には、煌びやかなジュエリーがあった。
    調査員:ショーケースにはどれも鍵がかかっている。
    少量の豪華なジュエリーが入っているものも、空っぽのものもある。
    調査員:(ジュエリーの多くが展覧会のために持ち出されたのだろう)
    調査員:ジュエリーショップの店名は【プリンセス・セレクト】。
    調査員:高貴で傲慢なバロネス・ダイヤらしい名前で、何らかの暗示も含まれているようだ。
    調査員:この鏡は左廊下に置かれた鏡と同じ様式だ。
    恐らく鏡屋がジュエリーショップに改造された後、唯一残されたものだろう。
    調査員:かなり豪華な内装だな。クリスタル・パレスの他の店舗とは全く違う。
    心の鍵:うん、ここは正統なイギリス皇室風の内装だからね!
    調査員:あれ、心の鍵さん。どこに行っていたんだ?
    心の鍵:外をブラブラしてた。
    心の鍵:私はセキュリティーチェックのためにバロネス・ダイヤに雇われたんだよ。
    バロネスにあなたと一緒に行動しているところを見られたくなかったの。
    調査員:(クスリと笑った)私にいい様に使われる姿をバロネス様に見られたら、恥ずかしいのか?
    心の鍵:(舌を出して)……ふん!
    心の鍵:ここで何か価値ある手掛かりは見つかったの?
    調査員:いや、まだだ……バロネス様はお忙しいようだから。
    心の鍵:彼女はもうすぐ始まる展示の準備をしているからね。
    今は蝋人形師と蝋人形の手配について話しているところだよ。
    調査員:蝋人形師?蝋人形博物館の主人か?
    調査員:幽霊が蝋人形館に逃げ込んで姿を消した時のことについて訊ねてみよう。
  • 10.【プリンセス・セレクト】の謎(1)/左廊下
    バロネス・ダイヤはひょろ長い人物と会話していた。

    バロネス・ダイヤ:蝋人形師、注文していた蝋人形の手筈はどうなっているかしら。
    蝋人形館長:全て準備できています、バロネス閣下。
    蝋人形館長:もう何年も蝋人形を作っていませんでしたが、私が最も気に入っている蝋人形を修繕して、
    あなたの展覧会に更なる彩りを与えましょう。
    バロネス・ダイヤ:よろしい。あなたの作品は完璧な舞台を得ることでしょう。(満足げに立ち去った)
    蝋人形館長:どうも……?私は蝋人形師。
    クリスタル・パレス【蝋人形博物館】の館長をしている。

    蝋人形館長の観察
    ◆蝋の彫刻用工具
    ◆怪しげな女性の蝋人形

    調査員:
    調査員:ーーすまない。
    調査員:君の肩の蝋人形があまりにも生き生きとしていたから、つい見とれてしまった。
    蝋人形館長:構わないさ。人からそういう目を向けられることはとうに慣れている。
    それに、作品に注目してくれるのはありがたいことだ。
    調査員:(手稿は蝋人形館で見つかった。まずはこの件を知っているか彼に聞いてみよう)
    調査員:この手稿を見たことは?
    蝋人形館長:(手稿を受け取って目を通した)悪いが、ないな。
    調査員:君の蝋人形設計図の間に挟まっていたものだ。
    蝋人形館長:館内には蝋人形と、蝋人形を作るための工具や衣類しかないーー日頃から、私はこれらしか気に留めていない。
    もうずいぶん長い間新しい蝋人形は作っていないし、その設計図も動かしていないよ。
    調査員:なら、ここ数日蝋人形館で怪しい人物や出来事はなかったか?
    蝋人形館長:ここ数日は人の出入りも多かったね。この紙切れ1枚なら誰でも残せただろう。
    蝋人形館長:(考える)もちろん、もっと前に挿し込まれた可能性もある……
    私に奇妙なものを残していく者は多いんだ。
    調査員:他にも聞きたいことがある。

    ◆【蝋人形館の錠とパスワード】
    調査員:蝋人形館の錠は特別なもののようだな。
    蝋人形館長:これは特殊な錠で、開錠には鍵のほかに、正しいパスワードも必要だ。
    蝋人形館長:この錠はクリスタル・パレスの昔の職人が発明したもので、私の友人だったんだが、数年前に亡くなってしまったよ。
    調査員:それは、お悔やみ申し上げる。
    蝋人形館長:この発明以外にも、その職人はまだたくさん形にできなかった発想があった。
    本当に残念だ。
    蝋人形館長:彼はクリスタル・パレス万国博覧会の盛況に憧れていた。
    彼への弔いとして、私は蝋人形館長のパスワードを博覧会が開催された年に設定した。

    ◆【幽霊が蝋人形館に入った件について】
    調査員:幽霊は人々の視線の中で蝋人形館に逃げ込み、謎の消失を遂げた。
    この件について何か心当たりはないか?
    蝋人形館長:すまないが何も知らない。
    調査員:幽霊が蝋人形館に入った時、君はどこへ?
    蝋人形館長:外へ蝋人形を装飾するための衣類を買いに行った。
    蝋人形館の鍵は出る前に看守に渡したよ。
    帰って来た後、やっと幽霊が蝋人形館に入ったことを知ったんだ。
    調査員:鍵は看守に渡した……その時、蝋人形館の扉は閉まっていたのか?
    蝋人形館長:その時、館内に他の人物はいなかったと思う。
    私は出かける前に、蝋人形館の戸締りもしていたから。
    調査員:正門以外に、蝋人形館に他の出入口はあるか?
    蝋人形館長:ない。正門しか出入りできない。
    調査員:しかし幽霊はその時、ロックされている扉を通り抜けて蝋人形館に入ったーー
    つまり、蝋人形師が外出している時に蝋人形館の錠を開けた人物がいる。
    調査員:私たちが見逃していたポイントだ。
    調査員:錠は幽霊が開けたのかもしれないし、当然他の誰かだったのかもしれない。
    例えば……
    調査員:心の鍵さん、少し話をしようか。
    心の鍵:……どうかした?調査員さん。
    調査員:蝋人形館の扉は、君が開けたのか?
    心の鍵:どうして今、そんなことを聞くの?証拠は?
    調査員:蝋人形師が外出して扉をロックしてから、看守が幽霊を追って蝋人形に入るまで、
    蝋人形館に現れたのは君だけだ。
    調査員:だから、君が蝋人形師が出かけた後に錠を開けたか。
    もしくはーー君こそが幽霊なのか。
    心の鍵:(慌てる)それは……
    心の鍵:ふん、私が開けたらどうだって言うの?
    調査員:弁明しないのか?どうやって錠を開けた?なぜ蝋人形館に行ったんだ?
    心の鍵:弁明することもないでしょ。私が優秀な鍵職人だからだよ!
    調査員:鍵職人?
    心の鍵:鍵に関するものなら、なんでも得意なの。

    ◆【蝋人形館のドアのパスワード】
    調査員:1851、この蝋人形館のパスワードをどうやって知った?
    心の鍵:今知った。
    調査員:どういう意味だ?
    心の鍵:あなたから聞いて、初めて知ったって意味よ。
    心の鍵:私が鍵を開けるのに、パスワードなんていらないってこと。
    万能キーを削って、鍵穴に適した鍵を作ればいいだけ。
    心の鍵:ただ……内側からダイヤル錠を開けるのがあんなに面倒だとは思わなかった。
    心の鍵:そうじゃなければ、あなたに入口を塞がれることもなく錠を開けていたわ。

    ◆【蝋人形館の手稿について】
    調査員:蝋人形館の手稿は君が残したものか?
    心の鍵:手稿は私のものじゃないよ。
    調査員:手稿は君のものではない……それに関しては信じよう。
    心の鍵:あれ、今回は信じるんだ?
    調査員:(……それは元々私のものだから、という理由は話せないな)
    調査員:手稿は君のではないが、君があそこに置いた可能性はある。
    心の鍵:いや、私は置いてないよ。信じるかどうかはあなた次第だけど。
    それに、それが「犯罪予告」とやらに関係してるなんて思えないんだよね。
    調査員:それは私も信じていない。(そして私がそれを証明してみせる)

    ◆【蝋人形館の中で何をしていたか】
    心の鍵:蝋人形のチェックだよ。
    心の鍵:バロネスはジュエリー展の装飾用に、蝋人形をいくつか注文していたから。
    蝋人形の安全くらいチェックするでしょう?
    調査員:(蝋人形に安全の不都合なんてあるか。勝手に燃えるとか?爆発するとか?動き出すとか?)
    心の鍵:私が着いた時、蝋人形館は鍵がかかっていて、誰もいなかった。だから勝手に入ったの。
    調査員:(鍵をこっそりこじ開けてか?)
    心の鍵:ずっと変な表情をしているけど、何が言いたいのーーん?
    調査員:いや、何でもない。
    調査員:それで、何か発見はあったか?
    心の鍵:何も。中の蝋人形を見る前に、看守たちに鍵をかけ直されたから。
    心の鍵:ーーでもほら、今蝋人形師が入口に2つの新しい蝋人形を置いてるでしょ。
    あれなら初めてみるものだよ。
    調査員:蝋人形師さん、新しい蝋人形はしばらく作っていないと言っていたが、これらは……?
    蝋人形館長:ああ、これは昔の蝋人形だ。
    全面的に修復して、新しい衣装を組み合わせただけさ。
    蝋人形館長:クリスタル・パレスが落ちぶれた後、観客はどんどん少なくなり、私も蝋人形を作らなくなった。
    調査員:バロネス・ダイヤの展示用の蝋人形も、全部君が最近修復したものか?
    蝋人形館長:ああ、展示ブースはその幕の裏にある。
    今しがたそこの蝋人形を全て設置し終えたところだ。
    蝋人形館長:あれがバロネスが丹精込めて設置したジュエリー展示ブースさ。
    蝋人形館長:中の蝋人形は展覧会まで秘密だから、勝手に覗くんじゃないよ。
    蝋人形館長:……クリスタル・パレスを諦めず、ここで展覧会を開いてくれる人がいるのはありがたいことだ。
    調査員:今回のジュエリー展のテーマは、あの盗まれたダイヤ、コ・イ・ヌールだと聞いているーー
    調査員:伝説のコ・イ・ヌールがどんなものか見てみたいものだ。
    蝋人形館長:それなら簡単だ。ジュエリーショップにコ・イ・ヌールの絵がある。
    調査員:ジュエリーショップの絵?
    蝋人形館長:あの【ヴィクトリア女王】の肖像画さ。
    調査員:(ジュエリーショップを見学した時は気付かなかったな。戻って見てみよう)
  • 11.【プリンセス・セレクト】の謎(2)/ジュエリーショップ
    女王の肖像画.png
    調査員:蝋人形師が言っていたのはこの絵か?
    心の鍵:コ・イ・ヌールをつけたヴィクトリア女王だね。
    調査員:真ん中のダイヤが、コ・イ・ヌール?
    心の鍵:うん、そう。
    ブローチに嵌められているコ・イ・ヌールは、女王のアクセサリーの中でも一番輝いて見えるでしょ。
    心の鍵:知ってる?コ・イ・ヌールはね、第1回クリスタル・パレス万国博覧会で展示されてたんだよ!
    調査員:言われてみれば思い出した……たしか雑誌で見たことがある。
    だがあの時、コ・イ・ヌールの展示は順調にいかなかったはずだ。
    心の鍵:そうなんだよね。
    コ・イ・ヌールがイギリスへ来て1年、すでにその名声は各地に広がっていたから、
    クリスタル・パレスの展示初日には大量の観光客が押し寄せてきたの。
    心の鍵:でもコ・イ・ヌールは百年の戦乱を経て、本当の輝きを失ってしまった。
    展示前なんて、表面を荒く加工しただけだったんだよ。
    心の鍵:その名声に惹かれてきた人たちは、暗くくすんだダイヤを目にして、もれなくがっかりしていたわ。
    調査員:それは残念だ。
    バロネス・ダイヤ:(部屋に入る)コホンーー
    バロネス・ダイヤ:ーー何の話をしているの?
    誰の許可を得て私の店の装飾品に勝手なことを言っているのかしら?
    調査員:バロネス閣下。かのダイヤ、コ・イ・ヌールについてお聞きしたいことが。
    バロネス・ダイヤ:あら。あの調査報告では足りなかったの?

    ◆【女王の肖像画】
    調査員:この女王の肖像画は素晴らしい出来栄えのようですが、もう詳しく教えていただいても?
    バロネス・ダイヤ:コ・イ・ヌールをつけたヴィクトリア女王の絵よ。
    バロネス・ダイヤ:この絵の原作はドイツの宮廷画家ーー
    フランツ・クサーヴァー・ヴィンターハルター、彼は1856年にこの絵を完成させたわ。
    バロネス・ダイヤ:でも私がジュエリーショップに置いたこの絵は、良くできた模造品よ。

    ◆【コ・イ・ヌールとバロネス・ダイヤの関係】
    バロネス・ダイヤ:私がジュエリーショップを開くことにしたのは、コ・イ・ヌールの物語に惹かれたからーー
    これほどまでに美しく、不幸な話に。
    バロネス・ダイヤ:コ・イ・ヌールはかつてその名を馳せていたけれど、
    更に大きな舞台で世の人間に自分の美しさを知ってもらおうという時に、その輝きは覆われてしまった。
    バロネス・ダイヤ:そして「彼女」はそのまま棚上げされ、疑いと議論の中で徐々に忘れ去られていったわ。
    バロネス・ダイヤ:(少し感傷に浸る)失敗したスターの運命と同じように、皮肉に満ちた話よ。
    バロネス・ダイヤ:これは私がコ・イ・ヌールのために用意した展覧会なの。
    コ・イ・ヌールをテーマにしたジュエリーシリーズをデザインしたわ。
    きっとこのクリスタル・パレスでその輝きを放つことでしょう。

    ◆【絵の中のコ・イ・ヌール】
    調査員:バロネス閣下、コ・イ・ヌールは本当にこの肖像画のように輝いていたのですか?
    絶句してしまいそうな美しさですが……。
    バロネス・ダイヤ:それは「今の」コ・イ・ヌール、
    昔は……真の意味で言葉を失わせるほどの美しさだった。
    バロネス・ダイヤ:1851年、コ・イ・ヌールがクリスタル・パレスの万国博覧会で展示された時、
    ダイヤの重さは186カラットもあったらしいわ。
    バロネス・ダイヤ:そして1852年、皇室はコ・イ・ヌールの光沢を再現するべく、
    それを楕円状に削り、105.6カラットに減らした。
    バロネス・ダイヤ:186カラットから105.6カラットよ!この世紀の秘宝は、なんと半分近くの重さを削られてしまったの!
    バロネス・ダイヤ:あれはコ・イ・ヌールでしょ!0.01カラットでも失いたくないのが普通だわ!
    バロネス・ダイヤ:私のジュエリーショップはコ・イ・ヌールをテーマとしたジュエリーをたくさんデザインしたの。
    そしてどの作品も、0.6カラットの端数を残すようにしている。
    バロネス・ダイヤ:この数字はコ・イ・ヌールの屈辱であり、真の悲劇の美しさでもあるから。

    調査員:ありがとうございました。
    それと、もう1つお聞きしたいことがあるのですが……
    調査員:バロネス閣下、一昨日と昨日の夜、幽霊がクリスタル・パレスに現れた時、あなたはどちらへ?
    バロネス・ダイヤ:私を疑う気?
    調査員:……申し訳ございません、仕事上必要なことですので。
    バロネス・ダイヤ:ふん、度胸はあるようね。
    バロネス・ダイヤ:ここ2日は休んでいたわ。クリスタル・パレスには来なかった。
    調査員:具合が悪かったとか……?
    バロネス・ダイヤ:数日前、ウィンザー城のダンスパーティーに参加してきたの。
    長旅で疲れてしまって、戻ったらすぐに休んだのよ。
    調査員:ウィンザー城のダンスパーティー?
    確かコ・イ・ヌールはウィンザー城のダンスパーティーで盗難に遭ったのでは……
    バロネス・ダイヤ:ええ、そのダンスパーティーで間違いないわ。
    体調を崩してすぐに退場したから、その後のコ・イ・ヌール盗難の騒ぎは知らなかったの。
    バロネス・ダイヤ:クリスタル・パレスに戻って初めて、ようやく公爵からこの件を聞いたのよ。
    バロネス・ダイヤ:さて、展覧会が始まるわ。
    まだ予定が立て込んでいるから、失礼させてもらうわね。
    (ジュエリーショップを立ち去った)
    調査員:(本当にそんな偶然があるのか?幽霊、コ・イ・ヌール、ダンスパーティー……)

    ジュエリーショップの外から騒ぎが聞こえた
  • 12.【プリンセス・セレクト】の謎(3)/左廊下
    調査員:心の鍵さん、どうかしたのか?
    心の鍵:バロネス・ダイヤと楽しそうに喋ってたみたいじゃない。
    展覧会の観客が入場したことにも気付かなかったの?
    調査員:なっ……こんなにも?(続々と入ってくる観客たちを眺める)
    心の鍵:大したことないでしょ?
    当時のクリスタル・パレス万国博覧会では、たった6か月で、600万人もの客が来たんだから!
    600万だよ!
    白鴉公爵:(大股でジュエリーショップの前まで歩いてきた)
    大げさな。いつになったらどいてくれるんだ?
    調査員:公爵様、これは……
    白鴉公爵:ジュエリーショップを捜索させてもらう!
    クリスタル・パレス中を探したが、幽霊に関する手掛かりは一切見つからなかった。
    残るはこの店だけだ。
    心の鍵:何よ、バロネス・ダイヤが展覧会で忙しくしている時しか入ってこれないくせにーー
    白鴉公爵:私がーー彼女を恐れているとでも?
    白鴉公爵:私とバロネス・ダイヤの関係は極めて単純だ。
    互いに利用しているだけに過ぎない。
    白鴉公爵:今までは展覧会のために、私が見える範囲で勝手なふるまいをするのも我慢できた。
    白鴉公爵:だが今、ようやく展覧会が始まったーー
    この落ちぶれたクリスタル・パレスで盛大な展覧会を開くことがどれほど難しい事か。
    白鴉公爵:バロネスはもう後には引き下がれない。
    だから私も彼女に構う必要はなくなった。私こそが、ここの全てを支配する人間だ。
    白鴉公爵:彼女の店にどれほどの秘密があるか、全て暴かせてもらう。
    調査員:(コ・イ・ヌールが盗まれた後、公爵がここまで大きく出るとは)

    ◆【バロネス・ダイヤがダンスパーティーに出席していた】
    調査員:公爵様、先ほどコ・イ・ヌールが盗まれたあのダンスパーティーにバロネス・ダイヤが出席していたことを聞いたのですが。
    白鴉公爵:ああ、知っている。かなりの偶然だが、おかしな話ではない。
    コ・イ・ヌール:がダンスパーティーで展示されるという情報は、貴族の間では秘密でもなかった。
    バロネス・ダイヤほどコ・イ・ヌールに執着している人間なら、その機会を逃すわけないだろう?
    白鴉公爵:彼女がダンスパーティーで急に体調を崩し、人々の前で早々に退場したことも聞いている。
    ちょっとした騒ぎになったから、コ・イ・ヌールも早めにダンスパーティーから引き上げられたのだ。
    調査員:コ・イ・ヌールはダンスパーティーから引き上げられた時に、盗まれたことが発覚したのですか?
    白鴉公爵:いや。ダンスパーティーから引き上げた後、ダイヤが置かれたショーケースは一時的に別室に保管された。
    それから約1時間後、ダンスパーティーが終わるまでなーー
    白鴉公爵:ーーつまりダイヤが他の展示品と共にウィンザー城の倉庫に戻された時、
    点検した管理員が偽物とすり替えられていることに気付いたのだ。

    ◆【コ・イ・ヌールの偽物】
    調査員:公爵様、コ・イ・ヌール盗難事件で、そのコ・イ・ヌールの偽物とやらはどのような見た目をしていたのですか?
    白鴉公爵:見た目?とんだ愚問だな。ただの模造品だ、すでに証拠として皇室に保管されている。
    白鴉公爵:だが聞いた話では、確かに本物と間違えるほどの見た目をしていたらしいーー
    重さまで本物のコ・イ・ヌールと同じだったそうだ。

    ◆【ジュエリーショップの秘密】
    調査員:公爵様、先ほど言っていたジュエリーショップの秘密とは……?
    この店の構造は一目瞭然で、特におかしな所はないように思えますが。
    白鴉公爵:ふん、何も分かっていないな。
    白鴉公爵:【プリンセス・セレクト】ジュエリーショップは、コ・イ・ヌールを保管してあったウィンザー城の部屋を模している。
    家具も、照明も、忠実に再現されているのだ。
    白鴉公爵:これはもはやバロネス・ダイヤの強迫観念というべきか、彼女のあのダイヤに対する信仰を表しているのかもしれない。
    白鴉公爵:だが、彼女の部屋には【密室】がある。
    調査員:密室?どうやってそれを?
    白鴉公爵:クリスタル・パレスの管理者として、ここの店舗の構造は全て把握している。
    彼女の小細工などどうでもよかったし、調べる機会もなかった故、私は見て見ぬふりをしてきた。
    しかし今は……
    白鴉公爵:真のコ・イ・ヌールが盗まれたにも関わらず、クリスタル・パレスのコ・イ・ヌール展覧会は予定通り行われ、
    ましてや幽霊までが続々と姿を現している……
    調査員:(そして、バロネス・ダイヤはあのウィンザー城のダンスパーティーに参加している)
    白鴉公爵:これら全てを考慮して、私が目の前の秘密を容認するとでも?
    心の鍵:バロネス・ダイヤにセキュリティーチェックを任された身として、公爵の勝手な真似は許せないわ。
    心の鍵:調査員さん、何か方法はない?

    ◆【公爵の代わりに調査することを提案する】
    調査員:公爵様、私が代わりにバロネス・ダイヤの部屋を調べるのはどうでしょう。
    調査員:そうすれば、貴方とバロネスの間で直接的ないざこざが生じるのを避けることができるかと。
    調査員:展覧会が成功すれば、それはクリスタル・パレス再興のきっかけとなるーー
    あなた方は協力関係を続け、もっと影響力を広めるべきですよ。
    白鴉公爵:(やや落ち込んだ様子で呟く)そのような機会はもうない。
    調査員:(公爵の落ち込んだ様子に気付き)それはどういう……?
    白鴉公爵:……君の話にも一理ある。よかろう。
    だがもし収穫がなければ、私にも考えがあるからな!

    ◆【沈黙】
    白鴉公爵:待て、気が変わった。(心の鍵を見やる)
    白鴉公爵:先ほど貴様はバロネス・ダイヤの秘密を守ろうとしていたな?
    フフ、ならば話は早い。私の代わりに貴様が行け!
    心の鍵:え?私?
    白鴉公爵:貴様は自称バロネス・ダイヤの「セキュリティーチェック」なんだろう。
    彼女の秘密も、君がその安全性を「チェック」すべきだ。違うか?
    調査員:もし私たちが密室を見つけられなかったら……
    白鴉公爵:この「セキュリティーチェック」は偽物ということになるな。
    彼女には尋問を受けてもらう。まあ、私がもう一度ここに足を運ばなければならないのは面倒だがな。
    心の鍵:……卑怯な。

    白鴉公爵:(道を譲る)では、お手並み拝見といこうではないか。
  • 13.【プリンセス・セレクト】の謎(4)/ジュエリーショップ
    心の鍵:どうするつもり?
    調査員:とりあえずここを徹底的に調べよう。
    本当に何か秘密があるのなら、公爵に見つかる前に私たちが見つけた方が良いに決まってる。
    心の鍵:ふん、言っておくけど、私は手伝わないからね。(ジュエリーショップを立ち去った)

    グラス中2.jpg
    ーー鏡の表面から微かな光が見えることに気付いた。

    調査員:あの鏡、微かな光を反射している。しかし一体どこからーー
    調査員:鏡が反射している光はーー
    調査員:壁の向かい側からだ!ヴィクトリア女王の肖像画から出ているのか。
    調査員:女王の首元にあるコ・イ・ヌールのブローチから、細い光がうっすらと透けている。
    調査員:なるほど。今までは画家が非常な巧妙な技術を使って、
    絵のブローチを視覚的に光らせていたのだと思っていた。
    調査員:まさか……本当の光だったとは。
    バロネスは絵の中のコ・イ・ヌールすらも光らせるよう要求したのか?
    調査員:光は絵の後ろからーーいや、壁の後ろの穴からだ。
    調査員:仕掛けのようだ。細い針か何かで届きそうだが……
    調査員:(手中のダウンジングの先端を小さな穴の中に挿し込んだ)
    調査員:額縁の裏の左側から、何かが飛び出した。
    調査員:これは……クリスタル・パレス特製のダイヤル錠?
    調査員:ダイヤル錠は額縁と壁の隙間に嵌め込まれている。
    調査員:額縁の裏の壁には隠し扉があり、錠を開けると、隠し扉を開けることができるようだ。
    調査員:しかしこのダイヤル錠を開けるには対応する鍵と、数字のパスワードが必要だ。
    調査員:鍵とパスワードはいずれもバロネス・ダイヤが持っているはず。
    調査員:……今はこの錠を開けられないようだ……
    調査員:もうじきジュエリー展が始まる。先に展覧会の様子を見ておくか。
    調査員:予感がする……クリスタル・パレスの幽霊とコ・イ・ヌールの展示には、きっと何らかの繋がりがある。
  • 14.ジュエリー展の波乱(1)
    展示を見に来た観客はすでに会場に入ってきており、バロネス・ダイヤは来客に対応している。

    調査員:(声を潜めて)心の鍵さん、密室は本当にあったようだーー
    心の鍵:そう、でも私には教えないで。
    私はそれを知るべきじゃないの、分かるでしょ?
    心の鍵:ほら、もうとっくに始まってるよ。
    バロネスのオープニングトークも終わっちゃったし。
    バロネス・ダイヤ:(会場の観客に高らかに宣言する)
    これより、【名ダイヤ・コ・イ・ヌール】のジュエリー展を開始いたします!

    幕がゆっくりと上がる。ジュエリー展示ブース人々の目の前に現れーー
    美しいロングドレスをまとった様々な姿勢の蝋人形が、煌びやかなジュエリーを身に中央のショーケースを囲んでいた。

    蝋人形館長:(陶酔気味な独り言)美しい。
    蝋人形館長:私の作品が、これほど多くの人々に鑑賞される機会があるとは。
    調査員:レトロな服装を着た優雅な蝋人形が、身につけたジュエリーの独特な質感を見事に引き立てているな。
    蝋人形館長:あれはバロネスの拘りで、蝋人形の服やアクセサリーはクリスタル・パレス博覧会開幕時の流行を再現して欲しいと言われたのさ。
    蝋人形館長:だが私にとってそれより重要だったのは、
    当時のクリスタル・パレス博覧会の客は誰もが好奇心、驚嘆、憧憬の表情を浮かべていたことだ。
    蝋人形館長:ほらーーそんな表情が、ショーケースを見ている今日の観客の顔にも浮かべられている。
    調査員:ショーケースの中に展示されているのは?

    コ・イ・ヌール.png
    調査員:ーーあのショーケースの中は……コ・イ・ヌール!?肖像画とそっくりだ!
    退役軍人の看守:あれはコ・イ・ヌールの模造品だよ。展示前に秘匿されていたことだ。
    セッティングに携わった一部のスタッフしか知らない。
    退役軍人の看守:(得意げに)展示前に秘匿されていたことだ。
    セッティングに関わった一部のスタッフしか知らないーーヘヘッ、私もその内の1人だったかな。
    退役軍人の看守:バロネスはオリジナルのコ・イ・ヌールよりも数倍大きなジルコンを買い取り、
    最高レベルの技術を駆使してそれを磨き上げ、本物と見間違えるようなコ・イ・ヌールの模造品を作ったんだ。
    退役軍人の看守:展示のリハーサル前、私はこの作品を目にした。
    コ・イ・ヌールの見た目を完全に模し、周りの象嵌工芸も本物の金で再現されている。
    退役軍人の看守:そして……今日、この作品は更に輝きを増した。
    白鴉公爵:調子のいい奴め。幽霊の手掛かりは見つかったか?
    まだここでサボっているつもりか?
    退役軍人の看守:申し訳ございません。公爵、公爵様……
    白鴉公爵:あんな紛い物が今回の展覧会の見せ場なわけなかろう。

    ◆【公爵が思う展覧会の見せ場】
    調査員:公爵様、それはどういう……?
    調査員:あなたが思う見せ場を教えていただいても?
    白鴉公爵:もちろんあの無知な、あるいは知ったかぶりの観客たちだ。
    白鴉公爵:世間は見た目でしか人を判断できない凡庸な者ばかりだ。
    奴らの独り言を聞いてみろ。
    「あれは何というダイヤだ?」「コ・イ・ヌールだ!」「そんな馬鹿な。コ・イ・ヌールは皇家が保管しているはずだろう?」
    「あれは偽物だ」「あの光沢を見ろ!なんて輝かしく純粋なんだ」「きっと皇室から借りた本物だ」
    白鴉公爵:本物はすでに行方不明だと言うのに、この凡庸な連中はそんなことも知らず、この自分勝手な憶測を飛ばしている。
    白鴉公爵:もしかするとわざとらしく、偽物とわかっていながら褒め讃える連中もいるかもしれない。

    ◆【本物のコ・イ・ヌールの展示だったら…】
    調査員:もし本物のコ・イ・ヌールがここで展示できたら……バロネスは本物を借りて展示しようとは思わなかったのですか?
    白鴉公爵:馬鹿げたことを言うな。
    コ・イ・ヌールの地位は決して金や名声で推し量れるものではないーーあれは一国の宝なのだぞ!
    白鴉公爵:大使たちがコ・イ・ヌールを仰ぐためだけに遠渡はるばる来訪していた。
    実際、大英帝国を揺るがすほどの外交的地位を持っているコ・イ・ヌールを巡った国家同士の争いは数えきれないほどだったからな。
    調査員:つまり、今回のコ・イ・ヌール盗難は外交事件になる可能性もあり得ると?
    白鴉公爵:外国の大使がイギリスに到着するまでにコ・イ・ヌールが見つからなければ、国際上皇家の威名と名声に酷く傷がつくだろう。
    白鴉公爵:ハハハッ、自分の国の宝すら守れないなんて、とんだ笑い話だ。
    白鴉公爵:君らも!幽霊の手掛かりが見つからなければ、私の名声は巷で噂されるお化けと同レベルのどん底に落ちる。
    白鴉公爵:わかったならここでサボってないで、もっと目を光らせたらどうだ。
    あそこ……幕の後ろにあるのはなんだ?
    調査員:あれは……心の鍵さん?
    心の鍵:(天上から垂れ下がっている太い縄を思いっ切り引っ張っている)
    調査員:心の鍵さん、ここで何をしているんだ?この幕の裏に何か「セキュリティートラブル」が?
    心の鍵:バロネス・ダイヤに展示ブースの上の幕を制御するよう頼まれたんだよ。
    でも、これが想像以上に重くてさ……。
    調査員:幕の制御?……この縄でか?
    心の鍵:そう。
    心の鍵:キョロキョロ。うんうん……照明もちょうどいいね。
    心の鍵:(縄に掴まりながら飛び上がり、自らの体重をかける)

    すると縄はようやく動き、展示ブースの上にある幕が更に上へと上げられた。

    心の鍵:(縄を結んで縛り付ける)ふぅ、これでよしっと。さて、本番はここからだよ!

    光るコ・イ・ヌール.jpg
    舞台の方を振り向くと、黄昏の日差しがクリスタル・パレスのドームの屋根を通して射し込まれ、左廊下全体を照らしている。
    ドームの屋根から射し込まれた黄昏の日差しは、鏡の反射を経て展示ブースのコ・イ・ヌールに当たった。
    宝石が虹色の光を放った。
  • 15.ジュエリー展の波乱(2)
    輝くコ・イ・ヌール.png
    人々は驚嘆の声を上げた。
    「コ・イ・ヌール、虹だ!」「なんと、神の奇跡だ!」「コ・イ・ヌールが、コ・イ・ヌールが本当に光ったぞ!」

    調査員:虹……本当に虹が。
    調査員:あの手稿の言葉が……実現されたのか。
    バロネス・ダイヤ:皆様、どうか覚えていてください。
    今日、コ・イ・ヌールはクリスタル・パレスで最も煌びやかな光を放ったと!
    調査員:……なんて残念なんだ。どんなに美しくても、あのコ・イ・ヌールは模造品に過ぎない。
    白鴉公爵:(顔がゆがむ)!!愚か者!
    白鴉公爵:……虹が……あのような光沢が……
    白鴉公爵:あんな光を放つ宝石が……偽物なわけないだろう?
    白鴉公爵:(人々を押しのけ、前に飛び出してジュエリーボックスを開け、ダイヤを取り出して確認し始めた)
    白鴉公爵:この光沢……
    バロネス・ダイヤ:公爵様!私の展示に手を出すとはどういうことなの?御客様たちの邪魔になるわ。
    白鴉公爵:ーーこの、このコ・イ・ヌールを買い取らせてもらう!
    バロネス・ダイヤ:申し訳ないけれど、これは非売品よ。早くそこに置きなさい。
    白鴉公爵:非売品?なぜ売らない?な、ならばーーこれは安全な規格要求にそぐわない!
    そうだ、細菌が付いている。或いは爆発する可能性が……
    白鴉公爵:くそ、くそ、このコ・イ・ヌールを寄越せ!
    さもないとジュエリーショップの営業許可証を没収する!どけーーこれは私が回収するぞ!
    バロネス・ダイヤ:ふん、ついに正体を現したわね!
    バロネス・ダイヤ:公爵様、大衆の面前で私の展示品を強奪するつもり?自重しなさい!
    白鴉公爵:話は後だ。今、この展示品は私のものだ……看守!看守、こっちに来い。
    白鴉公爵:ーーくそ、看守!何をしている?(展示ブースの傍にいる看守を見やる)
    退役軍人の看守:(突然展示ブースの反対側を指さして)動いた!動きましたぞ……公爵様!動き出してます!
    白鴉公爵:一体何をーー何だこれは!?

    展示ブースの蝋人形が1体、突然動き出したーー
    それまで傘で顔を隠していた蝋人形で、数ある蝋人形の中では最も目立たないものだった。

    人形:展示ブースの端に立っていた1体の蝋人形の表面から蝋が剝げ落ち、痩せた奇妙なブリキ人形が現れた。
    人形:人形は手際よく自身が着ていた蝋人形の衣服を落とす。
    そしてギシギシと四肢を伸ばし、人々の驚愕の眼差しの中、関節の蝋を綺麗に振り落とした。
    蝋人形館長:…………
    退役軍人の看守:なななな……蝋人形が生きてる!
    お、お化けだ、幽霊だ!クリスタル・パレスには本当に幽霊がいたんだ!
    バロネス・ダイヤ:!こ……これが……
    白鴉公爵:いっ……一体何が起きている?
    人形:ビビボボーー
    人形:ビーービ
    (人形が突然跳びあがり、一同の驚きの中、公爵が持っていたコ・イ・ヌール模造品を奪い去り、素早い動きで右廊下へと走り去った)
    退役軍人の看守:あ、あいつがバロネス・ダイヤのコ・イ・ヌールを奪ったぞ!!
    白鴉公爵:コ・イ・ヌール!あの人形を止めろ、止めるんだ!

    公爵は何人かを引き連れてそれを追い、左廊下から右廊下へと走っていった。
    調査員:(走り去った人形と公爵を見つめながら少し考え込む)なるほど、なるほど!
    バロネス・ダイヤ:あなたは追わないの?
    調査員:先ほどの人形……走ったり跳んだりすることしかできないようだった。
    あれでは公爵の追撃から逃れることはできない。
    調査員:バロネス閣下、それよりもあなたに聞きたいことがあります。
    あなたの展覧会にとっても、あなたのコ・イ・ヌールにとっても、とても重要なことになるかと。
    バロネス・ダイヤ:(少し考えて)……話しなさい。
    調査員:あなたはなぜ模造品をそこまで守ろうとしたのですか?
    それも、公爵と正面から対峙してまで。ジュエリー展とは、商品を宣伝するためのものでしょう?
    調査員:模造品1つのためにクリスタル・パレスの管理者を怒らせてしまえば、
    あなたのジュエリーショップは今後商売などできるはずがありません。
    ならば、このジュエリー展を開いた意味も無くなってしまうのでは?
    バロネス・ダイヤ:あれはコ・イ・ヌール、私の展示品なのよ!
    私が自分の展示品を守ることの何がおかしいの?
    調査員:そうかもしれませんが、そうでもないんですーーそう、あれはコ・イ・ヌール。
    しかしあれはあなたの展示品ではありません。
    調査員:すべての始まりは、「幽霊」が初めてクリスタル・パレスで目撃された事件ーー
    調査員:ガラス壁の外で見付けたパーツは、玩具職人のグライダーから来ている。
    幽霊はグライダーを使って飛び降りたのだろう。
    調査員:ここまで来ると、もう一つの事件を思い出さずにはいられないーーウィンザー城盗難事件だ。
    調査員:ウィンザー城盗難事件の犯人の逃走形式は、クリスタル・パレスの幽霊と非常に似ている。
    調査員:それに、2つの事件には明らかな共通点が1つあるーー
    調査員:ウィンザー城とクリスタル・パレスで行われた展覧会の主役はどちらも名ダイヤ・コ・イ・ヌールだ。
    調査員:そして、ドラマ性に富む2つの展覧会に両方参加していた人物が1人いる。
    調査員:バロネス・ダイヤはウィンザー城のダンスパーティーに参加していた時に騒ぎを起こした。
    そして彼女はクリスタル・パレスの展覧会の主催でもある。
    調査員:クリスタル・パレスの展示中にあった、コ・イ・ヌールの演劇のようなパフォーマンスは、
    バロネス・ダイヤがあえて前から準備していたものなのだろうか?
    調査員:展示中、ダイヤに差し込んだ太陽の光で虹が現れたのは、廊下に設置された複数の鏡の精巧な反射によるものだ。
    調査員:この鏡は、ジュエリーショップの前身だった鏡屋の物だ。
    バロネス・ダイヤが鏡屋を受け継いだとなれば、自然と鏡を用意出来ただろう。
    調査員:だが、彼女が展覧会で、このようなパフォーマンスを入念に用意した本当の理由は?
    調査員:クリスタル・パレス展覧会で使用されたコ・イ・ヌールは、ウィンザー城で盗まれた本当のコ・イ・ヌールだ!
    調査員:そしてクリスタル・パレスで出現した「幽霊」は、
    ウィンザー城盗難事件でコ・イ・ヌールを盗んだ容疑者である可能性が高い。
    模造品と本物のコ・イ・ヌールをすり替えた後、本物を持ってクリスタル・パレスに入り、このジュエリー展を開催した。
    調査員:そして責任者であるバロネス・ダイヤがここまで大規模な展覧会と精巧なデザインの鏡を用意したのは、
    コ・イ・ヌールをクリスタル・パレスでのお披露目に迎えるため。
    調査員:幽霊とバロネスの関係性はまだ不明瞭だが、断言できる。
    展示ブースにあるコ・イ・ヌールは、正真正銘の名ダイヤ・コ・イ・ヌールだったと!
    調査員:(バロネス・ダイヤに向かって呟く)
    そしてあなたが今回の展示のために用意したはずの模造品は、ウィンザー城盗難事件の道具として使われました。
    今は皇室の手中にあるんですよね?
    バロネス・ダイヤ:……
    バロネス・ダイヤ:…………
    バロネス・ダイヤ:………………
    バロネス・ダイヤ:……本当に鋭いようね、調査員さん。
    調査員:これらの謎が解けたのは、あなたのセキュリティーチェックのおかげでもありました。
    彼女をあまり責めないでやってください。
    バロネス・ダイヤ:セキュリティーチェック?誰の事?
    調査員:それはもちろん、心の鍵ーー
    調査員:(あれ、心の鍵さんは?彼女も一緒に人形を追いかけに行ったのか?)
    バロネス・ダイヤ:それより、調査員さん。これからどうするつもりなの?
    私がウィンザー城のコ・イ・ヌール盗難事件に関与していたと告発する?

    ◆【バロネス・ダイヤを告発】 
    ※この選択肢を選択するとジュエリーショップの密室の手掛かりを入手できなくなる
    バロネス・ダイヤ:残念だけど、あなたには私とウィンザー城のコ・イ・ヌール盗難事件が関係している直接的な証拠がないわ。
    バロネス・ダイヤ:それに今、本物のコ・イ・ヌールは私の手にないもの。
    調査員:さっきの人形は……
    バロネス・ダイヤ:申し訳ないけれど、あれが何かは知らないの。
    でも、コ・イ・ヌールの行方は心配していない。
    バロネス・ダイヤ:皇室に、高嶺に束縛され、黙々と誤解の中で忘れ去られる運命より、
    コ・イ・ヌールはクリスタル・パレスで改めて自分を咲かせることができたのだから!
    バロネス・ダイヤ:私の悲願はもう果たせたわ。完璧なショーは、そろそろ幕を降ろすべきね。
    バロネス・ダイヤ:あなたが皇室に報告するまでもないわ。
    私は自らコ・イ・ヌールがクリスタル・パレスにあることを彼らに説明して、担うべき罪を担う。

    ◆【バロネス・ダイヤを告発しない】
    バロネス・ダイヤ:そう。秘密にしてくれてありがとう。
    バロネス・ダイヤ:コ・イ・ヌールは先ほどの人形に盗まれてしまったけれど、保証するわ。
    コ・イ・ヌールの行方は心配しなくていい。
    人形.png
    調査員:それと、さっきの人形に関してなのですが……
    バロネス・ダイヤ:申し訳ないけれど、あれは私にもわからないの。
    今度、機会があれば全てを話しましょう。
    バロネス・ダイヤ:今のところは退場させてもらうわ。
    バロネス・ダイヤ:あなたは秘密を隠してくれるようだけれど、
    コ・イ・ヌールがクリスタル・パレスに出現したという情報を皇室に報告して、このショーを閉幕させないと。
    バロネス・ダイヤ:私の心配は必要ないわ。
    担うべき責任は全て担うつもりよ。後悔はしていない。
    調査員:(肖像画の裏の密室について)バロネス・ダイヤ、もう1つお聞きしたいことがあります。
    調査員:申し訳ありませんが、白鴉公爵の圧力を受けたもので、
    勝手ながらあなたのジュエリーショップの密室を調べさせていただきました。
    バロネス・ダイヤ:(ため息)……いいのよ、いつまでも隠し通せられる秘密なんてないもの。
    調査員:いや、まだ開けてはいませんよーー
    バロネス・ダイヤ:(微笑んで)そうなの?
    でも中のものはあなたが持っていてくれた方が、公爵の手に落ちるよりいいかもしれないわ。
    バロネス・ダイヤ:ダイヤル錠の鍵はこれよ、持って行きなさい。
    でも、4桁のパスワードは自分で考えて。
    バロネス・ダイヤ:1つヒントをあげましょう:パスワードはーー私が最も大事にしているものから取っているわ。
    調査員:ジュエリーショップのダイヤル錠の鍵は、バロネス・ダイヤが最も大事にしているもの。
    調査員:バロネス・ダイヤが最も重視しているものーー当然それは名ダイヤ・コ・イ・ヌールだ
    調査員:このコ・イ・ヌールに関する肝心な数字は、この肖像画の中にある。
    調査員:バロネス・ダイヤにとって最も大事な数字はーーコ・イ・ヌールが切断された後の重さ、105.6カラット!
    調査員:ジュエリーショップのダイヤル錠は1056だ。これでパスワードと鍵が揃った……
    調査員:(右廊下を見る)白鴉公爵はあの奇妙な人形を追いかけている。
    だが先程のジュエリー展での劇的な展開を思えば、彼はじきにバロネス・ダイヤのジュエリーショップを調査するだろう。
    調査員:今のうちにジュエリーショップにある密室のダイヤル錠を解除して、バロネス・ダイヤの秘密を守ろう。
  • 16.ジュエリー展の波乱(3)/ジュエリーショップ
    調査員:開いた!
    調査員:絵の後ろの壁が開いた。裏にあるのは……小さな部屋だ。
    ショーケース.png
    調査員:密室の中には微弱な灯に照らされているショーケースが置いてある。
    調査員:ショーケースのガラスには複雑な形の鍵がかかっており、ガラスの中には開かれた箱があった。
    しかし、中身は空っぽだ。
    調査員:なぜ空っぽの箱が入ったショーケースをここに?
    調査員:ショーケースの足元にはラベルがあり、それにはこのショーケースが【1か月前に完成】し、
    【クリスタル・パレス白鴉公爵宛て】であることが記されている。
    しかしそれを代理で受け取り、支払を済ませてサインを書いたのはバロネスだった。
    調査員:公爵が1か月前にオーダーしたショーケース?
    なぜバロネス・ダイヤにここに仕舞われているんだ?
    新聞の切り抜き.png
    調査員:密室の隅にはまだ何かあったーー1枚の切り抜きだ。
    とある劇団スターの事件に関する内容らしい。
    調査員:(拾って読む)【ゴールデンローズ劇団首席スター死亡案件が解決、その死因は過度のベラドンナ服用……】
    調査員:報道に載せられているこのスターの顔写真は……バロネス・ダイヤに酷似していた。
    調査員:まさか2人は血縁関係なのか?
    調査員:ジュエリーショップの密室は開いたが、謎は深まるばかりだ……
    調査員:奇妙な人形とバロネス・ダイヤの関係は?
    バロネスは本当にコ・イ・ヌールへの崇拝のためにリスクを負ってこの全てを計画したのか?
    調査員:……「幽霊」の謎は、このクリスタル・パレスの未来をどう導いていくのだろうか?


その日、「幽霊」を追いかけていったはずの白鴉公爵は何故か行方をくらました。
聞くところによると、彼は最後まであの奇妙な「幽霊人形」からコ・イ・ヌールを取り返せられなかったらしい。
そして……あの夜以降、私は心の鍵さんに会えていない。
幽霊の噂は、未だ霧のようにクリスタル・パレスを覆っている。


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地図

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キャラ情報

キャラ情報.jpg
※2章での追加分→青字、3章での追加分→赤字

  • 「幽霊」
    幽霊.jpg
    ーー看守によれば、空を飛んだり、分身するらしい。
    ーー身体が固く、弾丸を受け止めるほど。
    ーー正体はブリキの人形だ。
    側面に弾痕があり、身体には燃えた痕のような黒い痕跡がある。
    ーー幽霊はずっと蝋人形館におり、蝋人形に偽装することで捜査を逃れていた。
    ーー花火ショップのロッカーを開け、中の花火を全て取り出す。
  • 調査員
    霊犀調査員.png
    ーー近頃「クリスタル・パレスに永久機関が出現する」という情報を耳にした。
    ーー肩にいるタツノオトシゴ【ディケンズ先生】は、調査員の推理の助手だ。
    ーータツノオトシゴ【ディケンズ先生】は音波を記録できるだけでなく、電波も記録できる。
    ーー孤児院で育った後、工場で児童労働している間クリスタル・パレスの影響を受け、科学技術を学ぶ道へと足を踏み入れた。
    ーー皇家科学院への申請が失敗した後、幽霊社に加入した。
    ーーMr.ミステリーとは幼馴染で、一緒に孤児院で育った。

※Mr.ミステリーはMr.リーズニングの旧衣装名(おそらくミス)

  • 心の鍵
    心の鍵.png
    ーー幽霊が蝋人形館に入った時、彼女は蝋人形館を見学していた。
    ーー優秀な鍵職人である。
    (楽々クリスタル・パレスの特製錠を開けることができる)
    ーー【本音をごまかす】というアイディアを気に入っている。
    ーー彼女の父親に憧れており、クリスタル・パレスの設計者に見立てている。
    ーー父が亡くなる前、1つの遺作を遺していた。
    ーー心の鍵の父はダイヤル錠の発明者だ。
    彼は蝋人形師と「人形芸術」について話し合ったことがある。
  • 蝋人形館長
    蝋人形館長.png
    ーー【蝋人形博物館】の館長。
    ーー長い間新しい蝋人形を作っていない。
    ーーダイヤル錠を発明した職人。蝋人形師の友人。
    ーー人形の蝋人形は蝋人形師の友人の遺作であり、蝋人形には【展覧会に参加したい】というメモがあった。
  • 樹洞の捨て子
    樹洞の捨て子.png
    ーー樹洞の中に住んでいる三兄弟。旗を繋いで作ったボロボロのマントを着ている。
    ーー体中にコケが生えており、少し動いただけでコケと葉っぱが落ちて来る。
    ーー奇形の身体によって、幼い頃にクリスタル・パレスの樹洞の中に捨てられた。
  • 退役軍人の看守
    退役軍人の看守.png
    ーークリスタル・パレスの看守。「クリスタル・パレスの幽霊」の主な目撃者。
    ーー看守と樹洞の三兄弟の合言葉は、1つのリンゴだ。
    ーーかつては海軍だったが、騎兵のカーヴィン銃を扱う練習をしていた。
    ーー看守はナイトになりたがり、且つイノシシの友人がいる。
  • 斬新な玩具
    斬新な玩具.png
    ーー【ハッピーボックス】の玩具職人
    ーー玩具職人はチャレンジ精神のある危ない玩具を試すのが好きだが、それ故に中々のクライアントから認可されない。
    ーー玩具職人は、心の鍵が彼女に玩具開発用のプレゼントをくれるメッセージを残したと言っている。
    ーー玩具職人はグライダーと弾射板車のテストデータ報告を受け取った。
  • 花火のガイ
    花火のガイ.png
    ーー【ファイヤーガイ】花火商人。
    ーー義足はとある事故によるもの。
    (義足は右廊下の花火実験爆発事故の時に負った傷)
    ーー義足の破損は数日にわたる強度な作業によって起きた金属疲労によるもの。
    ーー花火のガイが抱くクリスタル花火ショーの夢は、とある「彼女」に関係しているらしい。
    (花火のガイが抱くクリスタル花火ショーの夢は、とある劇団のスターのため)
  • 白鴉公爵
    白鴉公爵.png
    ーークリスタル・パレスの管理者、皇室貴族。
    髪は長く白く、身体全体が服に包まれており、決して本来の姿を見せない。
    ーー自分の外見をとやかく言われることが嫌い。
    ーークリスタル・パレスの再興をあまり良く思っていない。
    ーー花火商人の花火から火薬を抜いた後、それを全て倉庫の中に保管し、開けてはいけないと指示した
    ーー皮肉を言ったり、人を嘲笑うことが好き。花火商人に対しては特に冷酷。
    ーー花火を見た後、突然逃げ出した。
    (花火を見た後、突然逃げ出した。それは公爵が自ら導火線を設置したからだ)
    (公爵はクリスタル・パレスを燃やし、その罪をガイに着せて巨額の保険金を騙し取るつもりだった)
    ーー公爵はアルビノを患っていたためクリスタル・パレスに押しやられ、彼はずっとそれを不満に思っていた。
    ーー公爵は皇室の復讐として、コ・イ・ヌールを盗む計画を立てた。
    (公爵はコ・イ・ヌールを盗んでD・Mに売ることで、皇室に復讐しようと計画した)
  • バロネス・ダイヤ
    バロネス・ダイヤ.png
    ーー【プリンセス・セレクト】の店主、コ・イ・ヌールが何よりも好き。
    ーーコ・イ・ヌールが盗まれたダンスパーティーに出席した。
  • 黒鴉公爵
    黒鴉公爵.png
    ーー皇室代表を自称する謎の男性。
    その目的は一体?

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