No245 ザラ/元ネタ解説

• ザラは1920年代末にイタリアが建造した重巡洋艦。
  従来の航速追求型の重巡洋艦設計から一転し、装甲を重視した新設計の条約型重巡洋艦の1番艦である。
  第二次大戦中は地中海に展開するイギリス海軍と交戦するも、1941年3月末のマタパン岬沖海戦にて撃沈された。
  • 同型艦は「フィウメ」「ゴリツィア」(+艦橋大型化の改設計をされた「ポーラ」)。
    いずれも一次大戦後新たにイタリア領となった、旧オーストリアハンガリー領の都市からの命名である。
  • 前級=トレント級では36ktの快速がその特徴であったものの、あまりに装甲が犠牲になり過ぎており、仮想敵とされたフランスの重巡洋艦との砲戦で不利になるとして、その設計には疑問が呈されていた。
    そこで必要十分の火力と航速(203mm砲8門+32kt)を有し、装甲を条約での排水量制限に目を瞑りつつ増やすこととされ、生まれたのが本級であった。
    流石に制限超過の度が過ぎるのも問題であったため、魚雷非搭載や推進機構の簡略化などでより軽量に済ませようとしたものの、基準排水量は1,300tオーバー*2。
  • それでも装甲に重点を置いた重巡洋艦なだけあって、戦後にアメリカ重巡洋艦デモイン級が就役するまでは、最も防御力の高い重巡洋艦となった。

• ザラは1929年7月起工、30年4月進水、31年10月就役。
  海上公試では35.23ktの最高航速をたたき出したものの、設計航速からの超過1ktごとに造船所へのボーナスが支払われる規定が存在したため、過負荷状態での最高記録程度にとどまる*3。
• 就役後しばらくは演習や観艦式に参加する傍ら、イタリア国王やそのほか国内外の重鎮の乗艦としても活動した。
  1939年には内戦中のスペインから脱出をはかった共和派艦隊を姉妹艦と共に捕捉、シチリアにて抑留を目論んだものの失敗に終わっている。
  その後イタリアのアルバニア侵攻に合わせて同地への砲撃支援に参加した。

• 1940年6月10日にイタリアが第二次世界大戦に参戦すると、ザラは第1戦隊旗艦となる。
  ゴリツィア、フィウメ、そのほか駆逐艦4隻をとりまとめ、地中海へやってくる連合国輸送船団の迎撃にあたった。
• 同年11月にはイギリスの航空展開も進みつつあり、タラント空襲を受けることになる。
  ザラは無事だったものの、この空襲を受けてイタリア海軍は艦隊を分散配置させることとし、一時地中海北部へ送られる。
  再び南下する際に空襲の報を受けサルデーニャ島へ退避するなど思うように動けないこともあったが、最終的に年末にはタラントへ移った。
  同地で姉妹艦らと砲術訓練に明け暮れ、数か月が過ぎていった。

• 3月下旬、幾度目かの英輸送船団迎撃任務にあたることとなる。
  後に言うところの「マタパン岬沖海戦」がここで生起した(1941/3/27-29)。
• 第1波攻撃では伊戦艦ヴィットリオ・ヴェネトが英空母フォーミダブルの目に留まり航空雷撃を受け、同艦は撤退を余儀なくされた。
  第2波攻撃では手負いのヴェネトを見つけられなかったことから僚艦ポーラにその矛先が向けられ、右舷中央部に魚雷を撃ち込まれてしまう。
  この攻撃の混乱から、僚艦かつ準姉妹艦のフィウメと衝突しそうになり、ポーラは停船。
  浸水が拡大し主機関の動力喪失を招いたことから、頼みの主砲さえ使えなくなった。
• この窮状が司令部に伝わると、ザラ、フィウメと駆逐艦4隻がポーラ救援に振り分けられた。
  しかしイギリス側にはポーラの所在がレーダーで割れてしまっており、近海に展開していた戦艦ウォースパイトらが急行していた。
  結果として、救援に来たイタリア側とトドメを刺しに来たイギリス側が鉢合うことになった。
  この戦いはイタリア側がイギリス側を友軍艦艇と誤認していたことから先制攻撃を許してしまい、一方的に撃破されてしまうこととなった。
  探照灯で照らし出されたザラは英戦艦や駆逐艦の格好の餌食となり、砲雷撃を集中的に浴びた。
  しかし持ち前の装甲が働いたのかすぐさまの沈没とはならず、最終的には英駆逐艦による雷撃で弾薬庫が誘爆、転覆沈没した。