No494 G6/元ネタ解説

• G6は、日本海軍がロンドン海軍軍縮条約体制下において設計した航空巡洋艦の一種。
  設計時(1930年代)は航空母艦の概念がまだ成熟段階になく、巡洋艦との砲戦を視野に入れた重巡クラスの砲を搭載しているのが特徴的。
  時代が下るにつれて航空母艦としての側面を強めた計画になっていき、軽巡クラスの砲と全通甲板を有するG8案を経て、船体バランスなどの面から砲を撤去するなどの改正をしたG9案=蒼龍が設計された。

• G6が設計された背景には、1920年代から30年初頭にかけて開催された2つの海軍軍縮条約(ワシントン・ロンドン)が関わってくる。
  ここで取り決められた内容の一つが航空母艦の保有枠である。
  日本に与えられたのは合計81,000トンで、すでに保有していた4空母「鳳翔」「赤城」「加賀」「龍驤」の合計排水量68,370tを除けば12,630tが残っていた。
  海軍は老朽艦を廃棄してその分も新規艦艇建造に回そうと考え、鳳翔を解体したと仮定して合計21,000tの残存枠を確保した。
  この残った枠を2等分して航空母艦を2隻建造することが計画され、1931年にG6の基本計画が登場した。

• G6は、前部に20cm連装砲を3基背負式に配置(アトランタ級の前部主砲配置のごとく)し、その直後から二層式格納庫および飛行甲板が続く。
  似たような設計思想だと(こちらも計画のみで実現していないが)大淀改が近いか。
  ただしG6は右舷に大きめの艦橋と海面に向けて湾曲させた煙突が設置されている点で、より航空母艦らしさが出ている。

• こうした設計であったG6は、実際に建造されるに至るまでにさらに改良案が提出され、1934年時点では「G8」(15.5cm砲5門、砲塔の上方にも甲板を伸ばして全通甲板化)へと進化する。
  しかし条約の制限ぎりぎりまで砲戦用の主砲を積むといったことや、大型の艦橋を設置することはトップヘビー化を招き、34年3月に過武装によるトップヘビーが原因で転覆事故に至った「友鶴事件」を契機としてG8もこの事態に対応した。
  主砲撤去や艦橋小型化の改良を経て純粋な航空母艦となった設計案「G9」が、1934年から始まる②計画で2隻建造されることになり、その1隻目が蒼龍、日本のロンドン軍縮条約の脱退で制限が解除されたことを受けてさらに改良を施した準同型艦たる2隻目が飛龍であった。

• 条約の制限内でやりくりをしようとした結果生まれた航空母艦+巡洋艦→「航空巡洋艦」であったが、その条約から解放されてしまえばわざわざ中途半端な性能の艦を作らずに済むため、設計段階から艦上機運用能力のある巡洋艦は消えていった。
  • しかし開戦後の日本海軍は、1942年6月の大敗を期に再び航空機運用能力も持つ艦を既存艦改装によって準備しようと躍起になっていくのだが、それはまた別のお話…