No490 クラウゼヴィッツ/元ネタ解説

• O級巡洋戦艦はドイツ海軍Z計画において建造が予定されていた巡洋戦艦。
  仮称艦名"O"・"P"・"Q"の3隻が建造予定であったが、いずれも起工されることはなかった。
  • O級自体はいずれも未進水のため命名されていないが、ソノミラでの名称「クラウゼヴィッツ」をそのまま用いている。
    クラウゼヴィッツはプロイセン王国の軍制改革に携わったシャルンホルストやグナイゼナウに師事し、のちに軍事戦略の名著『戦争論』を残すに至った軍人である。
• そもそも艦級名の「O」とはドイツ海軍の装甲艦・巡洋戦艦・戦艦の仮称艦名の連番から来るもので、以下のような命名であった。
  • ドイッチュラント級(A, B, C)
  • シャルンホルスト級(D, E)
  • ビスマルク級(F, G)
  • H級(H, J, K, L, M, N)*1
  • O級(O, P, Q)

• O級にはその設計源流としてP級装甲艦*2なるものが存在した。
  ドイッチュラント級を二回りほど大きくしたようなもので、Z計画においてはこれらを12隻配備・分散して通商破壊を行わせることで、護衛に回るイギリス艦隊を分断、H級含む戦艦でこれらを各個撃破するというプランであった。
  ここで重視されたのは巡洋艦以下には十分な火力と自身よりも強大な艦から逃げる足の速さであった。
  P級の初期案ではビスマルク級と同じ38cm連装砲を2基載せる案が存在し、この火力重視案が発展してO級の詳細な研究に繋がっていく。
  • 余談として、P級としてまとまっていくのはシャルンホルスト級と同じ主砲である54.5口径28cm三連装砲を2基搭載する案であったが、「28cm砲という他国と比較して小さい口径の砲では非効率である」「ほかの艦も建造しなければならない状況で12隻も建造するのは非現実的である」などの理由から、Z計画修正の際にO級に一本化されている。

• P級の火力重視案から発展し38cm連装砲3基を搭載するO級として研究が続けられたが、ここでもP級の担った通商破壊的な役割が中心であった。
  • H級戦艦3隻と空母1隻、それらを護衛する複数の巡洋艦や駆逐艦からなる機動部隊を用意し、それらが輸送船団の護衛部隊を撃破している間にUボートとO級数隻で輸送船団に直接攻撃を仕掛けるという作戦である。
    ここでO級に派手に動いてもらうことでイギリス側もO級対処の為戦艦を出さざるを得ない状況に追い込み、機動部隊本隊が直接負担する戦力を軽減させるという副次的効果も見込んでいたようである。

• 計画自体はまだ確定してはいなかったものの、1939年8月には計画上は3番艦である"Q"が先行して発注される。
  その後も設計の改良が続き1940年までには3隻全ての設計が完了し、上層部でこれが認可された。
  しかし若干の資材調達がなされたものの、"Q"の起工はおろか"O"・"P"の発注すら行われないまま進捗が停止してしまった。
  Z計画遂行の半ばにして第二次大戦が勃発してしまい、戦時下になったことによる高品質鋼板などの資材不足やUボートの大増産優先による造船所の人員不足に陥ったのがその理由とされる。