武器/物語/モンド

Last-modified: 2022-06-09 (木) 02:00:46

モンド☆4武器

西風シリーズ

西風剣

西風騎士団でよく使われる長剣。軽くて鋭い上、元素の力が集まりやすい。

物語本文

これは西風騎士の栄光だけでなく、モンドを護る人々の勤労と技術の結晶である。
この剣は簡単に元素の力を引き出せる。だが肝に銘じてほしい。剣の鋭さは護るための力であり、傷つけるための力ではない。

現在の西風剣術は光の獅子エレンドリンの影である幼き狼のルースタンから引き継いだもの。
伝説によると、彼は雨粒さえも斬ることができ、剣を振り回すとその衝撃波は薔薇を両断し、炎をも吹き消すという。
多かれ少なかれ西洋剣術の特徴を表している。軽く、速く、正確。それでモンドの平和を守るのだ。

27歳の時、ルースタンは「幼き狼」の名を授かった。
西風騎士団の伝統によると、獅子か狼の名を授かった騎士は、
いつの日か、騎士団を率い、全身全霊でモンドを護る大団長になる。
しかし、ずっとモンドを守り続け、モンドのために全てを捧げた彼にその日は来なかった。

ルースタンが編み出した剣術を、彼ほど上手く操れる実力者は二度と現れなかった。
だが、彼の忠誠と思いは現在まで引き継がれている。

西風大剣

西風騎士団でよく使われる重剣。元素の力を簡単に引き出すことができ、優れた破壊力を持つ。

物語本文

西風騎士団の大型の儀礼用剣。団長と教会両方の許可を得ないと所持することは許されない。
モンドの古き聖遺物を研究し、モンドの工学者が元素の活用方法で成果を挙げた。
この重い剣は西風騎士の栄光だけでなく、モンドを護る人々の勤労と技術の結晶でもある。
この剣であれば容易に元素の力を引き出すことが可能だ。だが肝に銘じてほしい。剣の鋭さは護るための力であり、傷つけるための力ではないことを。

今なお引き継がれる、幼い狼ルースタンが編み出した長剣の剣術だが、
一部の派生技は継承されなかった。それは、光の獅子エレンドリンが使用した長剣と大剣の二刀流戦法である。
求められる技量が高すぎるため、天賦の才を持つ者しか会得できずに伝承が途絶えたのだ。

正当な騎士の一族出身のエレンドリンと農民出身のルースタンは、子供の頃から一緒に成長してきた仲間である。
英雄になるという共通の夢により二人は仲良くなった。そして同僚に、さらに団長とその右腕となった。

団長となっても、エレンドリンは神の目を授かることはなかった。力の源は天賦の才と努力によるものである。
彼は自分の力を誇りに思った。騎士団、さらにモンドの人々にも、このような優秀な団長がいてくれることを誇りに思った。
しかし、ルースタンが亡くなって以来、エレンドリンが自らの力を示すことはなくなった。凶暴な魔獣に挑むことが誇りであるとも思わなくなっていた。

西風長槍

西風騎士団でよく使われる長槍。身が真っ直ぐで、槍先からそよ風が溢れている。

物語本文

西風騎士団の儀仗用長槍は閲兵儀式で使われる礼器であり、魔物と対抗する武器でもある。
風中を立つ喬木を探すことで、モンドの工学者が元素の活用方法で成果を挙げた。
この硬い槍は西風騎士の栄光だけでなく、モンドを護る人々の勤労と技術の結晶でもある。
肝に銘じてほしい。槍のように自律し、風の自由を守護することを。

古来より槍を武器にするものは距離の優勢で武芸の不足を補った。
木の棒を尖らした平民でも、剣を持った兵士に対抗できるかもしれない。
貴族の統治を覆した祝いとして、郊外には木の杖と旗ざお、ヘーホークがたくさん刺された。

剣術は貴族の風格と知恵を鍛錬することができるため、昔は必修科目の一つだった。
昔の時代では、槍は異教徒の武器だった。
しかしたった一人槍を使った貴族がいた。
伝えによると、エバハートは夜の軽風を借りて露をつついた。

私生児であったエバハートは幼い頃から貴族の栄光を復興することを目指した。
しかし、腐った根を揺るがすには強い力が必要だった。それならーー
嫡子である兄を唆し盗賊の夢を追いかけさせても、
自分が跡継ぎになっても、
裏で槍使いの魔女の弟子になり、その技を身につけた後、
魔女を殺しても…

「後世に唾棄されても、目的を果たすためにどんな手を使っても構わない」

西風秘典

西風騎士団の錬金学者の間に伝わる秘典。物質の原則や力、それと別のものが記されている。

物語本文

西風騎士団の魔法学者の間に伝わっていた秘伝の書。彼ら全員の知恵を記録している。
本には元素が凝縮された結晶玉が嵌められている。西風秘伝の書が少ない理由はこれである。
結晶が珍しいわけではない。西風秘伝の書は学者たち自らの手で制作しなければならいからである。
元素の真髄を習得した人に限り、この結晶宝玉を作ることができる。

騎士団設立後、暁の騎士ラグウィンドは旧貴族の室内浴場を図書館に改装させた。
無数の詩人、学者、旅人のおかげで、今のモンドは北大陸において最大の蔵書量を誇る。
歌声や美酒は所謂一瞬の娯楽であり、物語と知識こそ永遠に続く美しい光。

実は今の図書館は最盛期の広さの六分の一である。
「春分の大火」という大火災で、図書館の一部が消失した。

図書館の地下室に、ポプラの木で作られた頑丈な扉がある。
図書館と騎士団設立の前からあったその扉は、
大火災においても無事だったらしい。
騎士団公式の知らせによると、そこは禁書エリアである。
しかし噂によると、もっと深い秘密を抱えているようだ。

西風猟弓

西風騎士団でよく使われる弓。優れた弓使いだけがその優れた性能を発揮できる。

物語本文

西風騎士団の特製リカーブボウ。在籍年数の長い優れた弓使いにのみ授けられる。
橡木で作られた弓。特殊な手法により、木の強度を保ち、尚且つ金属を軽量化している。
弓弦に錬金術と魔法の力が秘められており、弓を100回引いても虎口への負担はない。
この弓はモンドの守護者へのご褒美であり、モンドを護る武器でもある。

過去、西風騎士団には極めて優秀な弓使いの斥候部隊があり、偵察騎士と呼ばれていた。
創立者は璃月出身の傭兵リーダー。彼は自分の見聞と知識の全てを偵察騎士たちに教えた。

荒野における追跡スキルや、危険を察知する直感など、どれも騎士団が持てなかったものだ。
故に、偵察騎士の力は騎士団にとって非常に貴重なのである。

ある日突然、最初の偵察騎士が騎士団をやめた。原因は誰にも分からない。
それ以来、この部隊は名前だけの存在になった。当時の編成もそのまま残っている。
しかし、今なお偵察騎士の名に泥を塗らないように、日々頑張っている人々がいる。


虎口【こ-こう】:弓道において、親指と人差指の間の親指の付け根あたりを指す。

ダークアレイシリーズ

ダークアレイの閃光

夜の色をした真っ直ぐな長剣。かつては町に潜む盗賊が所持していた。

物語本文

真っ直ぐで高貴な長剣。夜の閃光に似ている。
その刀身は一度も血に触れたことがない。
噂によると、後世の人々はこの剣を元に高貴な騎士の剣を作ったという。

剣は黒く、夜に溶け込む。
なぜなら、その時代は夜になっても平民は灯火をつけなかったからだ。
一部の詩歌によれば、その暗闇は貴族の統治によるものらしい。

古い時代に書かれた先祖の徳政を記録した叙事詩は、貴族の少年の心に反逆の種を植えた。
機は熟した。名門出身の彼は一族を置き去りにし、長剣を盗み路地の奥へと姿を消した。
彼は平民と同じように酒場に行き、貴族から教わった剣術で富者から財物を奪って貧者に施した。
貴族の宝庫から取り出したこの剣は、暗闇の中、貴族の後裔と共に屋上や路地を走った。
長剣の刃は一度もその輝きを失わず、ずっと光っていた。陳腐な貴族の後裔という身分を捨てた義賊の心のように。

歌と酒と若い歳月はいずれ終わる。やがて色々なことが起こった。
最後は月光の下、長年共にしてきた長剣を埋葬し、船に乗って亡命した。
彼はあの日の出来事を思い出した。家を出る前、宝庫からこの長剣を盗み出し、
家族に、過去と未来に、この土地に、腹違いの弟エバハートに誓った言葉
「ほんの少しでも、僕は僕自身の力でこの漆黒の世界を変えて見せる」

ダークアレイの酒と詩

貴族時代に流行った楽譜、作曲家は不明。とある義賊のことを描いた物語である。

物語本文

優雅に装幀した書籍。昔の貴族の間で流行った楽譜が記載されている。
今なお雛菊と成熟した酒の香りが残っている。
詩の内容はでたらめであるが、かつての路地裏と酒場で広く歌われていた。

「あれが酒好きの義賊だとみんな知っている。しかし彼がどこからきたか誰も知らない。彼はいつも突然路地裏に現れる」
「彼は歌い、飲み、通りや屋根を飛び回る。でも彼はとてもいいやつだってみんな知っている」
「腰につけている鳥頭の柄の剣は貴族から盗んだ家宝。さらに背中の漆黒の弓は百発百中」
「彼の優れた剣術は夜を切り裂く彗星のようであり、歩調は木の葉をそよがす西風の如く軽い」
「シードル湖の水を含んだ『午後の死』を全部飲んでも、夜に1人で貴族の寝室に忍び込める」
「義賊は富者から財物を奪って貧者に施した。風のように瘴気を吹き散らし、光のように暗闇を切り裂いた」

「義賊は無数の少女の白馬の王子様。少女たちは自分の部屋まで盗みに来て欲しいと夢に見る。しかし彼が好きなのは仲間と酒を飲むこと」
「ある日、彼はいつものように豪邸に忍び込んだ。盗れるだけ盗った後、帰り際に貴族の銀盃も盗んだ」
「その時、彼は月光の下で、窓に佇んでいる美女を見かけた」
「彼女の瞳は青い宝石のように、貴族の銀盃についている済んだ水晶と同じようであった」
「義賊は迷わず水晶を外して渡した。美女は乙女のような照れた笑顔を見せた」
「最後は、彼らが貴族の統治を終わらせた。二人は冒険に旅立ち、互いの心に留まる暖かな光になった」

物語はここまで。徳政が行われている今では、義賊のことを歌う人は誰もいない、義賊も必要とされなくなった。
酒と剣、美人と英雄、爽快な始まりと完璧な終わり、これらの要素が詰まっているのだ。平民に愛されてもおかしくはない。
事実がどうであろうと、二人の結末がどうであろうと、酒と希望に満ちた歌は、
不幸な人々に、明日と、そして権力者と立ち向かう勇気を与える……。

ダークアレイの狩人

豪華な装飾が施された長弓。一度も捕らえられたことのない義賊が所持していた。

物語本文

暗い色に塗られた上等な弓。幽邃な夜色に溶け込むことができる。
凛とした貴族が狩猟する時に使っていた弓であったが、
一度も捕らえられたことのない義賊の手に落ちた。

この弓の持ち主は、闇に紛れて貴族の王冠を射ち落とすこともあれば、
きつく締められた首縄を切り、追っ手の武器を射ち落としたこともあった。
彼は暗い時代に光をもたらすと、
迫害を受けた者に公平を、富と笑顔をもたらすと誓った。

彼は誓いを果たした。そして、貴族に恐怖と怒りをもたらした。
夜の路地。雨のような足音と、酒場や広場に居る詩人の歌声が響く。
鋭い長槍を持ち、賊を狩る碧眼の魔女に、貴族から奪った紺碧の水晶を渡した。

しかし、想いを寄せた冷たいサファイアのような魔女の笑顔を、
最後まで目にすることはなかった。
そして、死を追う魔女の花のような顔には罪人の入れ墨が彫られ、やがて行方不明となった…
最後、義賊の男は弟に諭され、誓いを捨てて海に向かった――
「彼女はまだ俺の歌を覚えているだろうか。路地に漂う酒の匂いと彼女に贈った歌をまだ覚えているだろうか」

祭礼シリーズ

祭礼の剣

長い年月の中で石化した道具剣、上にあった装飾はまだ綺麗に残っている。時間の風による祝福の力がある。

物語本文

東に海を一望できる崖で、古の住民は時と風の神を一緒に祭った。
「風が物語の種をもたらし、時間がそれを芽生えさせる」という思想が、度々両者を混同させた。
この剣は護りの力と勇気を語るもの。
もともと刃がついていない道具用の剣だったが、風の中で真剣のように鋭くなっていった。

かつては穏やかなグンヒルド一族が所持していた。
祭祀では、彼らは守護者を演じる。

時の風への祭祀は三つの幕に分けられている。
終幕の内容は、守護者が命と自由を護る物語である。

祭祀の慣習と歴史は失われたが、
グンヒルド一族は守護者を続けている。

祭礼の大剣

長い年月の中で石化した道具剣、上にあった装飾がまだ綺麗に残っている。時間の風による祝福の力がある。

物語本文

東にある海を一望できる崖で、古の住民は時と風の神を一緒に祭った。
「風が物語の種をもたらし、時間がそれを芽生えさせる」という思想が、度々両者を混同させた。
この剣は戦争を語るもの。
元々は刃がついていない道具用の剣だったが、時の風により真剣のように鋭くなっていった。

かつてはエーモンロカー族が所持していた剣。
祭祀では、黒い血に染められた戦争中の戦士を演じる。

エーモンロカー族にとって、戦いは守るものではなく、栄光や開拓のためのものであり、
天上の神々を喜ばせる暇つぶしにすぎないと考えていた。
魔物や盗賊が来たとしても、無事に恋人の元に戻れるかなど心配せず、
血を浴びながらただ全力で戦い、叫ぶことができればいいと思っていた。

こんな一族は、長い歴史の中からすぐ消えるだろう。
彼らの戦いには終わりがない上、その勝利には望みがないからだ。
しかしモンドの誕生によって、彼らは自分の護るべきものをついに見つけた。

祭礼の断片

長い年月を経た台本。書かれた台詞はもう読めなくなっている。時間の風による破壊の呪いの力を持つ。

物語本文

モンドの先民は、激しい風の吹く崖に劇場を建設し、神を敬う習慣がある。
祭祀には演劇の形で行われる。神様は物語と唄を好むと彼らはそう信じている。
この台本の歴史は数千年以上。すべてを読むことは難しい。

遠い昔、烈風の君王と北風の王狼の戦いは、モンドの大地に砂のような風雪を巻き起こした。
極寒に耐えられない人々は、モンドの東部にある高い崖で神殿を設立し、神様のご加護と恩恵を祈る。

風の息吹は今を吹くが、時の灼熱は永遠であり、誰にも止められず、抗うことはできない。
風神は台本のページをめくる。だが、台本の字を掠れさせるのは冷酷非情な時の神である。

風の神と時の神、両者は似たような悲しみをもたらす。
こうして、神殿の祭祀対象は風神だけだと勘違いされていった。

祭礼の弓

長い年月の中で石化した狩弓。上の装飾がまだ綺麗に残っている。時間の風の祝福を受けている。

物語本文

東にある海を一望できる崖で、古の住民は時と風の神を一緒に祭った。
「風が物語の種をもたらし、時間がそれを芽生えさせる」という理想が、度々両者を混同させた。
この弓は開拓を語るもの。その難しさを示す。
もともと引けない弓だったが、時の風で強靭さと柔軟さを両立させた。

この弓はかつて誇り高いロレンス一族が所有していた。
遠い昔、彼らは雪の中に道を拓く勇者を演じた。

祭祀演劇の第1章は開拓者が力と知恵で大地を征服することを描いた。
長い歴史の中、例え祭祀自体がなくなっても、彼らはそう演じ続けた。

しかし、その信念は歪んでいった。結局彼らは自分を征服者、王者だと考えた。
歪んだ道を歩んだ末、彼らはモンドの風の寵愛を失った。

旧貴族シリーズ

旧貴族長剣

かつてモンドを支配した旧貴族の長剣。細かく作られ、装飾や花の彫刻が剣の主人の身分を現している。

物語本文

かつてモンドを支配していた旧貴族に使われていた長剣、その材料と細工は極めて凝っている。
よって、長い年月が経った今でも、切れ味は当初のままである。
剣術は貴族の必修科目の一つだった。
身を投じて戦う人の勇猛と違って、彼らの身振りは知性と気品に溢れていた。
しかし記録によると、最終的に彼らの剣術からはその知性や気品は失われてしまった。

二千六百年前、モンドの地で最古の血統は、
新風神が降り立って天地を作ったあとに、厳粛な誓いを立てた。

「永遠にモンドを護り、モンドの青き平原、山と森に永遠の命があらんことを」
「永遠にモンドを護り、暴君の如き風雪と風雪の如き暴君に困ることなく、永遠の自由があらんことを」

時間が経っても、暴君と魔獣に蹂躙されても、たとえこの誓いの石碑が壊されても、
誓いの魂は千風になって、恋人のようにモンドを撫で、父のようにモンドを守る。

旧貴族大剣

かつてモンドを支配した旧貴族の大剣。高級素材を使ったため、長い年月が経っても新しいまま。貴族が戦闘時に使う武器でもある。

物語本文

かつてモンドを支配していた旧貴族に使われていた長剣、その材料と細工は極めて凝っている。
よって、長い年月が経った今でも、切れ味はそのまま。
戦いは貴族の責任の一つだった。
領土と民を守るために、平和を壊す魔物と戦う。
しかし記録によると、彼らは最終的に自分の使命を忘れ、人を喰う怪物となっていた。

ある研究によれば、今は西風騎士団に禁じれらた闘技の始まりは、
貴族の間で行われた祈祷であった。

やがてそれは、ロレンスによって権力者の娯楽となった。
最終的に騎士団によって禁じられるも、祈祷文の一部は今も残っている。

「モンドの千風よ、我は友と、同胞と、仇敵と、剣と刃が交差する音を鳴らそう、血と汗を汝に捧げよう」
「進むべき道を導く風よ、我が困窮した時には、前へ進む力を与えたまえ。我が迷った時には、善悪を見分ける知恵を授けたまえ」

旧貴族猟槍

かつてモンドを支配していた旧貴族が愛用していた長槍。長く封印されていたが、槍先は未だ鋭い。

物語本文

かつてモンドを支配していた古い貴族が収蔵していた槍は、素材から製造まで非常に拘りがあった。
そのため、幾世代がたった今でも、新品のように見える。
しかし、貴族の時代では、それは日の光に当たる事なく、月光を浴びていた。

高貴な身分の者は長剣で戦うべきであると、貴族は考えていた。
刀身がぶつかり合う音は、崇高な魂の叫びである。
槍や弓は、身分の低い兵士や平民の武器だ。

熊手と木の槍を握った平民は、剣を持った貴族にも負けない。
古いモンドの統治者には受け入れ難いが、これは事実なのだ。

言い伝えによると、かつて貴族の血筋を持つ青年は、
探し当てた職人に、一族の美しい家紋が彫られた鋭い武器を作らせた。
それは、青年と同じように血を流させなければ、
決して家族から認められる事のない武器であった。

何かを変えたいのなら、力を持たなければならない。
それは、貴族に相応しくない武器にとっても、
月明かりの下でしか槍を振るえない影にとっても同じだ。

旧貴族秘法録

かつてモンドを支配した貴族の配下であった魔導師が、記録した史話。

物語本文

精美な巻物。封鎖されているため、時間が経っても、腐らず蝕まれずに残った。
宮廷魔法使いの魔法研究が載っている巻物。中身は今見ても先鋭的な内容である。
宮廷魔法使いの仕事は各地の管理や魔物の退治である。それ以外に、貴族の教師も担当する。
巻物には歴史、問題解決、地方管理、文化知識がたくさん書かれている。そのため、旧貴族の統治を終わらせた後に、宮廷魔法使いもモンドの外に追い出された。
旧貴族を善に導く彼が責任を果たせなかったからだ。

モンド成立当初、ロレンス一族の主母ヴァニーラーレは人々を率い、
神の奇跡を称えるため、広場に巨大な神の石像を作らせた。

神像の下に刻まれている銘文は、昔各集落のリーダーがモンドを永遠に護ると誓った誓約の言葉である。
しかし、時の流れにつれ、ロレンス一族は先代の願いに背き、神像も倒された。
賢明な宮廷の魔法使いたちも、その歴史と誓約をなかったことにした。

西風騎士団の時代になり、神像は再建された。
だが、誓約の言葉は永遠に忘れられた。

旧貴族長弓

かつてモンドを支配していた旧貴族の長弓。弦はまだ鈍っておらず、素早く弓を射ることができる。

物語本文

かつてモンドを支配していた旧貴族に使われていた長弓。その材料と細工は極めて凝っている。
そのため、長い年月が経った今でも当時から劣化していない。
狩りは貴族の暇つぶしの一つだった。
大自然に自分の力を示し、とれた獲物を民に配り、恩恵を施した。
しかし記録によると、彼らは最終的に徳望を忘れ、支配する力も失ったとされている。

反乱が起こり、長い間モンドを統治していたロレンス政権が倒れた。
新しく設立された騎士団は徳政の名の下に、ロレンス一族を深く追及しなかった。
その代わりに、一族の残党を追放した。

「追放の最中、父は人の裏切り、時代の変化、歴史の終結を嘆いた」
「かつて故郷を追われた臣民が、緑豊かな地で、歌い、踊っているのを見かけた」
「何年も経った今、やっとわかった。裏切られ変わったのはロレンス一族の私たちだ。モンドは本来そういう都だ」
ヴァネッサは腐った政権に止めを刺した。彼女は怒りを露わにし、その力を示した。
人々に密かに称賛される義賊や、生死の隙間を見る少女、あるいは暗殺を企てた剣楽団のように、
モンドの人々には反抗の血が流れているのだ。

楽団シリーズ

笛の剣

剣の錆跡から本来の華やかな装飾が透けて見える。風のように軽い。

物語本文

軽い剣。剣身に紋様が刻まれ、穴が空いている。
優れた腕前の持ち主はこの剣を振る時に笛音を奏でる。音調は振る方向と力
に左右される。
楽団が解散したと後、この剣も葬られた。月日が流れるにつれ、今は音を出すこ
とができなくなった。
それにしても、致命的な武器である。

流浪楽団に凛とした剣舞者がいた。
楽団による旧貴族の討伐計画が失敗し、彼女は奴隷戦士になってしまった。

たとえ希望を失い、全ての仲間を無くしても、戦う時は、
彼女の剣は光の唄を歌う。彼女は「夜明けの光剣士」と呼ばれた。

曙の騎士ラグヴィンドは彼女の元のお付きの騎士である。
共に行動し、彼女の剣に感動した。
そのため、彼は自分の騎士名とやるべきことを決めた……

鐘の剣

時計が飾られた大剣、その中の時計はすでに壊れている。

物語本文

奇抜な大剣。剣身には華麗かつ精巧な鐘が付いている。
シャンと響く鐘の音は使い手の戦闘を演奏する。
楽団が解散した後、大剣は酸性の水に浸かってしまったため、装飾の歯車は錆び、回ることができなくなった。
それにしても、致命的な武器である。

流浪楽団と共に行動する反逆者の名はクロイツリード。かつてはロレンス一族の一人だった。
この時代、学者と詩人は歴史を語らず、旧貴族は自らの堕落に気づかなかった。
そのため、クロイツリードが剣を振るった時、旧貴族は恐れ慄いた。

反乱は失敗に終わったが、彼の処分内容は不明である。ある意味、彼の血統が証明されたのかもしれない。
爵位を剥奪された後、彼は亡き同士の志を受け継ぎ、貴族政権の転覆を目的とする秘密結社を作り上げた。
そして、遙か西方から訪れた異民族の戦士が起こした反乱に協力することになる。

クロイツリードの組織はずっと機能していたという噂がある。
モンドを護るため、西風騎士の代わりに騎士道の精神に背く汚い仕事を請け負っていたそうだ。
また言い伝えによると、「幼い狼」ルースタンも大団長の名義でこの無名の組織を運営していたという。

流浪楽章

楽譜が記されているノート。風化と虫の侵食はあるが、それでも筆跡から力を感じられる。

物語本文

楽譜と楽団メンバーの旅行記が載っているメンバー共有のメモ帳。
流浪楽団は根源を遡れないほど悠久な歴史を持ち、モンドの再建前にすでに解散している。
メモ帳は楽団メンバーと共に、異なる世界を見てきた。
演奏記録から、観客の喜びやその力強さを感じ取れる。

流浪楽団は旧貴族時代に結成され、
希望、或いは恐怖の心を持つ人々は彼らを剣楽団と呼んだ。
当時のモンドは、唄さえ許されていなかった。

彼らは剣を笛の代わりに、弓を琴の代わりに、反乱の響を奏でた。
最後は城内に攻め込み、暴虐な貴族に天誅を下そうと試みた。

剣楽団は既になくなり、彼らの反逆も人々に忘れられた。
だが、反逆の意思は、血の繋がりと共に、永遠に伝わっていく。

絶弦

かつて楽器として有名だった弓。今はもう踊りに使うことはない。

物語本文

精巧な彫りが美しい弓。弓弦はいろいろな種類の糸が撚り込まれている。
弓弦を弾いて鳴らすと、癒しの流水音を奏でる。
しかし同時に、心臓を射抜く矢を放つ。音色とともに死をもたらす。

楽団の解散後、全ての弓弦が切られた。切る際には非常に耳障りな音が鳴った。
弓は美しい音色を失い、弦だけが残った。それでもなお強力な武器であることに変わりはない。

流浪楽団は鳥を地上に落とせる。鳥たちは弦音に惹かれたか、あるいは弦音を伴う矢に射抜かれたか。
音楽と共に散りゆく微風と星拾いの崖の花のように、琴師は軽薄ながらも揺るぎない信念を持っている。
反乱失敗後、楽団のメンバーは四方八方に逃げ始めた。
琴師は仲間を援護するため、音を失い、矢を使い果たしても、最後の最後まで戦っていた。

琴師の出身地は華やかで美しいフォンテーヌ。各国を旅して本当の自分と運命を探していた。
彼が故郷の宮廷に別れも告げずに去っていったことに、周囲の少女たちは、声が出なくなるほど泣き続けた。

彼はモンドの平民に恋したが、その子はバドルドー祭の悲惨姫に選ばれてしまった。
無名のまま他国で亡くなった運命を、彼は悔やんだりしなかったらしい。
唯一の遺恨は、やっと愛を見つけたのに、それを唄うことができなかったこと。

剣闘士シリーズ

死闘の槍

血のように赤くて鋭い長槍。かつてはある剣闘士が重宝したものである。槍先は無数の野獣と人の血で染められていた。

物語本文

百戦錬磨の深紅の長槍。ある剣闘士の勇気の証である。
冷たい槍はいつも相手の血に染まり、雷鳴のような喝采を浴びていた。
剣闘士は血に染まる宿命。届きそうで届かない自由のために戦う。
深紅の鋼鉄が体を貫き、戦いに終わりを告げた。

奴隷の剣闘士は最後の一戦を終え、大地を揺らすほどの拍手を浴びた。その時、彼の主はこう言った。
「これで約束の勝利数に達した。よくやった。名誉に相応しい立派な剣闘士だ」
「この長槍は私からの送別の品だ。しかし、本当に戦いを止めるのか?」
「自由の身となっても、自分の、そして私の栄誉のために戦い続けないか?」
数年が経ち、無数の戦士や獣がその槍に貫かれた。
常勝の名は決闘の槍と共にあり、戦士の心は彼の主と共にある。

剣闘士の最期の一戦が終わった。大地を揺らすほどの拍手の中、
長槍は地に落ちた。赤い髪の少女が灼熱の剣で老戦士の心臓を貫いた。
戦士は崩れ落ち、敬愛する主、自分を愛してくれた高貴な主に顔を向けた・・・・・・。
「エバハート、エバハート様・・・・・・最後の闘い、ご満足いただけたでしょうか」
既に主の席には誰もおらず、去り際にこぼした盃と銀皿だけが残っていた。

「最初は自分のために戦った。自由のために闘志と血を沸かした」
「でもいつからか、あの方の名誉のために戦うようになった」
「他人のためになら、愚かな獣のように無心で戦える」
「自分のためではなく、一族のために戦っているお前なら、当然理解できるだろう」

血染めの騎士シリーズ

黒剣

紛争と殺戮を渇望する漆黒の剣。手にする人は殺戮の悦びに溺れてしまうらしい。

物語本文

永遠に鮮血を渇望する剣。血の匂いによって目覚める。
持ち主はこの剣から戦い続けられる力を得る。
無垢な人も、やがて返り血によって漆黒に染まる。

純白で高貴な騎士は、正義の道を求めていた。
光沢のある銀の鎧を身に着け、鏡面のように明るい長剣を携えていた。
不公平を訴える人々のところへ、人食いの魔獣が現れたところへ、遠方の炎が燃えているところへ、
騎士はすぐその場に赴く。一、斬る。二、振り下ろす。三、突き刺す。
彼に騎士道や正義、剣術を教えてくれた「幼い狼」の訓戒に従って、
斬って、振り下ろして、突き刺した。そしてまた斬って・・・・・・。
魔獣が動けなくなるまで正義は執行された。

「いつからだろう、斬る、突き刺す、振り下ろす、その感覚に病みつきになった」
「剣と肉の絡み合う感覚は、まるで脊椎に電流が走ったようだ」
「ああ。たぶんこれが正義が執行された感覚だろう」
「このまま切って*、突き刺して、振り下ろし続けていれば、この歪んだ世界の罪も」
「いつか、いつの日にか、粛清されるだろう」

「騎士よ、正義と称しても殺戮は所詮殺戮だ」
「いや、お前は間違っている。正義のための殺戮は即ち正義だ」

一、斬る。二、振り下ろす。三、突き刺す。そのまま正義を貫き続ける!
例え少女からもらった白い花が汚れた血に黒く染まっても、剣の輝きが失われても、
秀麗な顔が歪み、鉄仮面で隠さなければならないようになっても、
守られた人々に理解されないとしても、決して止まらない!

黒く染まった騎士が正義を果たす旅の中で、魔物の跡を追い、
滅ぼされた古国を見つけた。そこで、最大の問題を発見した・・・・・・。

緑の狩人シリーズ

蒼翠の狩猟弓

青緑色をした高潔な狩猟弓。かつて森を行き交う狩人が所持していた。

物語本文

ある狩人の弓。緑色の弓は簡単に野原に溶け込める。
朝日が差した緑の草木や林間を行き交う獣のように純粋で、
一切の悪意を持たない弓。無益な殺生は行わない。

無名の狩人は都市から離れた地で育てられた。
「我々は大自然の中で生まれた。草木さえあれば、我々の前に阻むものはない」
「我々は鳥獣と変わらない。天地の理に従えば、生死に怯えることはない」
「大自然の理に従う万物は、最後に果てのない野原にたどり着く」

狩人は跡を残さず、大自然を敵に回さない。この信念に従い、
矢に心臓を貫かれた獣を慰めていた。その命が大自然に還るまで。
もし災害が起こらなければ。血の跡を追って、
いつもの休憩場所の木の下で、死にかけの盲目の少年と出会わなければ、
彼女は復讐に駆られず、鮮血と火花に突き動かされることは無かった・・・・・・。

「忘れないで、善良なヴィリデセルン」
「忘れないでよ、あなたは緑の森の子だから」
「争い、憎しみ、あるいは名誉のために矢を放ってはいけない」
「血に染まった者は永遠に、あの果てない緑の野原に辿り着けない」

「せめて、この弓は憎しみや血に汚れないように」
「師や先祖に会える彼方にたどり着けないというのなら」
「この弓だけは無垢なままにしたい。代わりに私の思いとお詫びの気持ちを伝えてもらいたい」

ドラゴンスパインシリーズ

腐植の剣

命に飢える不気味な直剣。龍さえも侵食する腐植の毒を持っている。

物語本文

それは遥か昔のこと…

誕生することを許されない生命、満たすことができない願い、
暗い宇宙を彷徨う、悲しき夢、
私の体を借り、「現世」に降臨しなさい。

そして、私のかわいい子供たち、
雨水が小川に流れ、植物が太陽に伸びるのと同じように、
美しい場所に行き、自分の美しさを満遍なく放ちなさい。

これは、ドゥリンと呼ばれる子供の、「母親」に関する記憶…

「お母さん、ありがとう」
「空を飛ぶ翼と、丈夫な体、全部お母さんがくれたもの」
「僕は、美しい歌声がある場所に行きたい」
「皆のことや、お母さんのこと」
「僕の生まれたところが、どんなに美しいか。全部、彼らに伝えたい」

雪葬の星銀

壁画の間に保存されていた太古の大剣。星銀で鍛錬された刀身は、氷雪をも切り裂く力がある。

物語本文

緑豊かな都が霧によって覆われたとき、
終わりのない吹雪が月明かりを遮り、
起きた出来事や生きた証も、
空から降る寒天の釘に貫かれてしまった…

祭祀の娘は星銀の大剣を異邦の勇士に手渡した、
彼女の言ったことは、吹雪の音にかき消され、相手にを伝えることができなかった。

「ここの4番目の壁画はあなたのために用意されています。あなたの肖像はこの壁に永遠に残ります。」
「この壁画のために、みんなのために、私はいつまでもここであなたの帰りを祈っています…」

雪葬の都の娘が実りのない銀の枝と共に枯れたとき、
氷雪を切り裂くために、この剣を振るう運命にあった異邦人は、遠くで答えを求めている。
月明かりのように輝いていた彼女の最後の思いも、遠くの旅人に伝えることができなかった。

「もう長い間澄んだ空と緑の草原を見ていません。父が望んでいた氷雪が溶ける光景を描くために、どのような青と緑の色を使うべきか、もう分からないままです。」
「もう一度、あなたに会えれば、どんなによかったか…」

これが彼が見つけた答え――

異邦の勇士はついに彼の旅を終えた、
大剣の刃からは黒い血が滴り落ち、
すでになじみのない雪道を重い足で踏んだ。
疲れ果てた異邦人がついに山国の宮殿に戻ったとき、
彼を待っていたのは、死という響きだけだった。

「ここですら、俺の守るものは残っていないのか…」
「天上にいるお前らは、ただ生者の苦しみが見たいだけだろ。」
「だったら、この鋼と血の歌を、お前らに捧げよう。」
異邦人は少女からもらった、風と雪を切り裂くはずだった星銀を壁画の間に残した。
それから山を下り、彼は血を見るために戦いの場に行った。

ドラゴンスピア

龍の牙で作られた長槍。妙に温かさを感じる。

物語本文

彼はとてつもなく長い夢を見た…

夢の中で彼は仲間とはぐれ、遠い道を行き、
歌声が響く、緑の草原にたどり着いた。
心優しい人々と共に歌を歌い、
宝石のように美しい巨龍が空を舞っていた。

目を開けると、吹雪が吹き荒れる山脈にいた。
緑の大地は火と血によって赤く染められ、
詩人の琴の音もその中にかき消された。
そして宝石のように美しかった巨龍は、
恋人のようにその牙を彼の首にあてた。

「さらばだ、これで俺の旅は終わった」
「白銀の雪の中に眠るのも悪くない」
「さらばだ、美しい詩人、美しい龍」
「もし違う場所、違う時間で」
「出会い、歌い、踊っていたら、どれだけよかったか」
死に向かう彼はそう思った。

「俺の血に宿いし祝福よ」
「この美しく漆黒の宇宙は」
「お前たちが引き継いでくれ」

冬忍びの実

冷徹な意志がこもった奇妙な果実。微かな苦渋を醸し出している。

物語本文

フィンドニールの祭司の娘がこの白の樹の下で誕生したとき、
祝福と共に、緑豊かな山脈の国は喜びに満ちた。

シャール・フィンドニールの幸福は永遠に、
大地をまたぐ枯れることのない白銀の樹のようにーー
だれもがそう、思っていた。
かつて無数の人や事柄を見てきた記録者ですら、
姫の美貌と才徳は月の光のように照らし続けると・・・

しかし世界を凍らす鋭釘が突如降り、
この樹さえも粉々に砕かれたとき、
あの少女は一本の枝を持っていった、
この国を覆い隠す樹の命をつなぎとめるために。
しかし結局、それも叶わぬ夢となった。
刃のように冷たい吹雪は、月の明かりを遮ってしまった・・・

それから長い月日が経った遥か昔ーー
漆黒の龍と風の龍が命をかけて戦い、
腐植の血が灰のような山を赤に染めたとき、
樹は自身がまだ死んでいないと気づき、
貧欲なまでに、自らの根で大地の温かみに触れた。

ある人がくれる緋紅のエキスにより、
当の昔に死んでいた白の樹は、過去を思い出し、
すべての力で、果実を実らせた・・・

我が守った者、我に祈りをささげた祭司、
我のそばで絵を描いていた美しい少女、
手にできなかった幸せが、緋紅の果実となる。

悪の世界に正義をもたらすことができる者に、
「苦しみ」を乗り越えられる、正義を捧げよう。

その他未分類

シナバースピンドル

この世のものとは思えない物質で作られた剣。これに宿る力は、龍さえも侵食する腐食の毒にも対抗できるだろう。

物語本文

愉悦を浮かべ烈火より塵を分離し、粗悪なるものから精巧を生み出す。
宇宙が一つのものから派生したように、一つの思索は万物へとなり得る。
あなたの兄である一本角の白馬が成し遂げられなかったことを追求し、
哲学の果てに辿り着いて、あなたの兄と私のために、新たな運命を紡ぎ出さんことを…

ドドコの物語

豪華な表紙の児童書、子供向けの短いストーリーで構成されている。読むと心がリラックスできるものばかり。
その無邪気な冒険物語を読めばたとえ大人でも夢中になるだろう。

物語本文

伝説によるとね、すごい遠い場所に、霧がかかった海があるんだって。その海の真ん中には群島があって、「金リンゴ群島」と呼ばれてるんだ。
それでね、穏やかで可愛いドド一族が、この群島にある島々でほのぼのとした生活を送ってるらしいよ。
ドド一族は優しい性格をしてて、やんちゃなところもあって、イタズラとか遊びが大好きな生き物なんだ。だから、みんな退屈したり、悲しんだりすることはないの。
「ドドコ!」ーーお互いにそうやって呼ぶらしいよ。意味は「最高の友達!」なんだって。

空を飛ぶ蒲公英のように、「ドドコ」もいつか風と海流に乗って、もっと広い世界を冒険するんだ。とある四つ葉のクローバーを探すためにね!
どうしてそうするかって?
「金リンゴ群島」で長いこと生活してると、ドドコはお互いが誰なのか分からなくなるんだってーーだって、みんな見た目が同じ「ドドコ」だから!区別なんてつかないでしょ?
炎みたいに赤い四つ葉のクローバーにだけ、「ドドコ」が何なのか彼らに分からせることができるんだ。そうすれば、お互いに見分けがついて、自由気ままに仲間たちと遊べるね!
ーー少なくとも、なんでもできるママはそう言ってたよ。
こうして、何が「ドドコ」なのかを理解するために、彼らはそばにいる友達から離れて、遠くに行くことを選ぶんだ。そこで友達を作って、彼らの「ドドコ」、つまり「最高の友達!」になるの!
一緒にたくさんの景色を眺めて、面白いことをたくさんやって、たくさんの仲間を見つける…そして、自分自身を振り返ったその時こそーー火花と共に輝く四つ葉のクローバーの登場!

だからね、もしモフモフの「ドドコ」が「金リンゴ群島」から海に転がり落ちたり、風に乗って遠くに飛びだったりすると、これから最高の友達に出会えるってことなの。
この貴重な本はね、世界で一番自由なママから世界で一番運のいい娘へのプレゼントなんだ。ここには、ドドコが彼女と出会う前に経験した無数の冒険が描かれてる。それと、彼女と出会った後に経験した火花と宝物と仲間たちに満ちた大いなる冒険も!

風花の頌歌

名も無き花で飾られた弓、名も無き者の強き希望を宿している。

物語本文

モンドのおとぎ話に、このような軽やかな花がある、
烈風と極寒で育ち、乱舞する氷晶の中で咲く。

強風で根こそぎにされる普通の草花とは違い、
「風の花」と呼ばれる花は、風が強いほど根も強くなる。
今では、暴君に反抗した長き戦いは祭日の逸話として語られている。
花の姿も日につれてぼやけ始め、遠き風のような琴の音の中に溶け込んだ。

「無名の花を捧げよう。君の経験していない春は決して無意味ではない。」
「希望と笑顔を返報とし、我と共に烈風が止まる日を迎えよ。」

高塔の暴君が人々を見下す時代、自由の心を持つ人々はこうして呼び合った。
勇気と夢を求め立ち上がる人々はこれらを暗号とし、未知を歩んだ。
かつて孤独で脆かった花々は風に吹かれ、嵐に荒らされた山々に咲き満ちた。
そして、波の流れに従っていた群衆は、 誇り高き英雄となった。
眉をひそめ高塔を守る君王は身を縮こめ、二度と荒れ狂う怒涛を吹き散らすことができなかった。

「無名の花を捧げよう。彼女から英雄の名を授かり、春と青空を守り続けよう。」
「朝の輝きが精霊になり、私たちと同行し、心地よいそよ風の中を漫遊しよう。」

古き尖塔の廃雄、生まれ変わった人々の歓声、歌声、 涙の中、
とある赤髪の戦士が新生の神に背を向け、浪に落ちる雨粒のように群衆の中に埋もれた。
彼は風の花で隠語を伝えた先駆者であり、夜明け前の長い暗闇の中で暁を迎える。
彼の名はとっくに時に埋もれてしまった。しかし彼の行いは詩で広く永く歌われている。
千年後、もう一名の赤髪の騎士は彼と同じように、旧貴族の暗き歴史を照らした。
重圧に圧され、奮起という選択しか残されていないときに花を咲かせるー一そう、「風の花」の運命のように。
この一族の運命も、決して変わらないだろう。最も暗い間に身を投じ、夜明けの光をもたらす…

千年に渡って流れる風の中で、「風の花」のイメージは徐々に消えていった。
平和な時代の中、その名には愛と喜びの意味が付与された。
これこそ、暗間の中を揺るがなく歩んだ人々が望んだことなのだろう…

「満開の花は、反抗の狼煙や旗を揚げる者の暗号ではなく、」
「愛と、春の到来を象徴するものであるべきだ…」

幽夜のワルツ

罪と幻想の夜を想起させる色をした弓。

物語本文

……
「お嬢様、巡礼の中で流した涙は決して無駄にはなりません」
静寂の国の巡礼が終わった時、オズヴァルド・ラフナヴィネスは皇女にそう言った。

長い時空を超えた旅の中で、「断罪の皇女」「昼夜を断ち切る黒鴉オズ」は無数の物語の終わりを見届けてきた。雨の一滴一滴が、旅の終わりに海へと流れ込み、少年たちの怒りは鎮まる。情熱が時間に摩耗されなければ、逆巻く古樹のパラノイアとなる。時の木に立つ壮大で偉大なレマ共和国の枝はやがて切り落とされ、狼の双子のもう一人に国を明け渡すだろう。
世の全ては破滅とともに、皇女の未来の国へと来たる。静寂と暗闇に包まれているガーデンの中で、眠りにつける片隅を探す。
それでも、ドゥロクトゥルフトが少年の夢と未だ落ちぬ雨雫のために「世界の獣」に寝返り、その爪で切り裂かれた時、皇女は涙を流した。

「覚えておきなさい。オズヴァルド・ラフナヴィネス、幽夜浄土の皇女は涙なんて流さないわ。」
彼女はそう答えた。「この世は、誰もが罪を背負っているの。判決の鐘が鳴り響く時、幽夜が再び世界を覆う。人も獣もその中でもがく姿は、ただの幽夜のワルツ過ぎないわ。」

「お嬢様のおっしゃる通りでございます。」
「ふん、分かればいいわ。」
「ではお嬢様、この物語は、まだ覚えていらっしゃるでしょうかーー」

原初の宇宙に香り漂う海を輝かせ、アランニャの獣をかき鳴らしていた三つの月のうち二つは、世界の果てを引き裂く剣によって砕かれ、皇女の魔眼にすら映らないほど細かい砂となった。
あるいはこうだーーかつて宇宙を照らし、安らかに眠る三つの世界の人々に夢と歌をもたらし、夜明けと夕暮れの間を彷徨う獣に欲望を生み出させた月は、ついに砂となったーーそれでも、皇女のそのすべてを凝視する鐘に宿り、より多くの儚い光をもたらすことを願う。

そう、皇女は涙を流さない。
あれは、無礼な砂が彼女の目に入り、体が起こした拒絶反応に過ぎないのだ。

~完~

モンド☆5武器

天空シリーズ

天空の刃

風龍の栄誉を象徴する騎士の剣。剣身には風の神の祝福があり、蒼空と風の力が含まれている。

物語本文

天空を貫いた牙。深邃古国の黒金鱗を突き通した。
古国罪人の後継者の喉を切り裂いた。

昔、モンドの繁栄を終わらせるべく魔龍ドゥリンが襲来した。その翼は日の光を覆い隠した。
魔龍の嫉妬が邪悪を産み、その邪悪が大地の生命を侵触した。
その時のモンド周辺は魔物により荒れ果てていた。
風の神は人々の悲痛な叫びを聞き、天から降り立ち、風龍を呼び起こした。
そしてトワリンは風と共に、命ある者のため戦うべく空へと飛び出していった。

トワリンは風神の祝福と共に廃龍と戦った。巨龍による戦いは雲を突き抜けた。
千の風が毒をまとい、日輪は暗色に変わり、燃える空は世界の終焉を彷彿とさせた。
天空を燃やした激戦の末、トワリンは魔神から授かった剣歯で魔龍の喉を噛み切った。
だが、トワリンは魔龍の毒血を飲み込んでしまった。魔龍ドゥリンは悲鳴を上げることなく空から落ちていった。

風龍は猛毒により、苦痛を伴う昏睡状態へと陥った。
最も練達な詩人もトワリンの行き先を知らなかった。
数百年を経た今、モンドの人々は風龍の奮戦を忘れていた。
トワリンが骨の随まで響く毒の痛みに堪え、その地に帰還しても、友の琴声は聞こえてこない。
かつて風龍に守られた人間は彼を遠ざけ、「魔龍」と名付けた。

いつの日か栄光は取り戻され、毒は浄化される。
詩人の旋律が人々の記憶を呼び起こす。
風龍の名誉を挽回するという願いが、この剣には宿っている。

天空の傲

風龍の傲りを象徴する両手剣。振り回す時に風龍の勢いを感じられ、蒼空と長風の力が秘められている。

物語本文

天空を揺り動かす武勇。
罪人の魔龍の子は深淵なる古国に生まれた。
最期は黒金の翼が、風の誇りによって断ち切られた。

昔、モンドの繁栄を妬んだ魔龍ドゥリンが襲来し、万民は塗炭の苦しみに陥った。
人は荒無に慟哭し、泣き声は風の神を起こした。
風の神は人々の声により現れ、眷属を召喚した。
命と自由を護る魔神、その風龍と共に参る。

雲を切り裂く激戦の中、風龍は神の恩恵を受けた六つの翼を展開し、
大剣を振り回すように、天空を切り開き、ドゥリンの鋼鱗を切り裂いた。
驚天動地の戦いの中、風龍は風刃の爪を湾刀のように、
黒く腐っているドゥリンの体の奥まで差し込んだ。

天空を揺り動かす戦いに恐れ知らずの太陽さえ震えていた。
最後に悪龍は喉をトワリンに噛み切られ、空から落ちていった。
風龍は神の祝福により、勝利へと導いた。モンドの人を護ることができた。
しかし、風龍は毒血に侵食され、骨の髄まで腐り始めた。

トワリンは英雄にも関わらず、孤独を共にせざるを得なかった。
深淵の誘惑に風龍は堕落しかけた、その執着は邪悪になったこともある。
復讐心を煽る憤怒や猛毒を伴った激痛を、最後は仕えていた優しい主人が癒してくれた。
親友や新しい仲間と共に、勇気を持って魔物をなぎ払い、風龍の名を取り戻した。

数百年に渡る眠りについていたため、モンドの人々のはトワリンの猛威を忘れていた。
しかし、最近の事件で六翼風龍はまた人々の前に現れた。
バルバドスの歌声と風神の祝福の元で、
不羈の千風を巻き起こした風龍は、再び空を駆ける。

天空の脊

風龍の堅い決心を象徴する長槍。真っ直ぐな身が天空を指し、蒼空と長風の力が秘められている。

物語本文

高天を支える脊。
風神の真摯な着属、風の国を守る決意が動揺することはない。
揺るがない意志は風龍が悪と戦い続ける理由であった。

昔、モンドの平和を終わらせるべく魔龍ドゥリンが襲来し、野原を蹂躙した。
ドゥリンの翼は日の光を覆い隠し、黒い毒雲が散った。
気高い千風は雲に隠していた毒に耐えられず、
黒い雨が降り始め、人の号泣を覆い隠した。
その声に呼び起こされた風の神は、深い絶望で心が千切れた。
そしてトワリンは風と共に、満天の毒雲へと飛び出していった。

巨龍は高空から飛び降り、鋭い風が漆黒の魔龍の翼を切り裂いた。
風龍の翼を追いかけ、各地の疾風が集まり一気に黒雲を撃散した。
トワリンは爪と牙で毒龍を掴み、雲さえ届かないほど高く飛んだ。
漆黒の嵐は黒雲とともに消え、燃える空は巨龍が戦う戦場になった。

最後に風龍の牙は魔龍の喉を切り裂き、爪は胸を貫通した。
罪人の造物は遺恨を残して空から落ちてきた。
驚天動地の戦いは風神の民をアビスの危機から守り抜いた。
しかし、巨龍は毒の血を呑み込んでしまいその体は汚染された。

遺跡に身を隠した風の巨龍は毒により苦しむ。
傷口を紙めながら、トワリンは再び蘇ることを信じた。
再び空を飛び、翳りを取り払い、親友の、風神の琴声で歌うことを。

天空の巻

風龍とその主である風の神を象徴した図表集。北の風と雲が詳しく記載されていて、蒼風と長風の力が秘められている。

物語本文

千風万雲通覧。
北の大陸全土の風と雲を、詩と絵の形で記した典籍の謄本。
十万筋の雲があり、一筋一筋に雲と風が絡み合う。
雲の絵は風に形を与えた。詩は風に独特な性格を与えた。
本来は風を持たない千風だが、バルバトスにとっては親友や家族のような存在。

伝説によれば、上古時代に、風の神は典籍の原本で四風を呼び寄せた。
氷雪を吹き飛ばし、凶暴な怪獣を撃退した。さらに雨を降らし、モンドを創った。
寛容な風神はこの典籍の内容を人々に共有し、「千風万雲」と名付けた。
時が経った今では、典籍に記載されていない内容も多く存在する。
無数の風と雲を記載したてん席は、歌謡や伝説となり人々へ伝わった。

風神が存在し続ける限り、千風の歴史は決して終わらない。
魔龍ドゥリンの翼が日の光を覆い隠した時、バルバトスは現れた。
激戦の中、風神は千風を詠い、風龍を召喚した。
この典籍を心得た者は、千風万雲の真名とその偉大なる力を手に入れる。

今、モンドの空は穏やかに晴れている。
風神と風龍は新たな帰る場所を見つけた。
この典籍も信頼できる者へと託した。

天空の翼

風龍が風の神の眷属であることを象徴する大弓。矢を放つ時の音は風の神の贔屓であり、蒼空と長風の力が秘められている。

物語本文

天空を貫く琴。
その透き通った琴の音は未だに風と人の心に響いている。
伝説によれば、深邃古国の魔龍もその音に惹かれて風の国に来たらしい。

昔、風の神バルバトスは竪琴を撫でるように奏で、無垢な千風と唄を唄った。
不羈な風と歌に酔い、巨龍トワリンは大地に降り立ち、彼に忠誠を誓った。
バルバトスは新しい仲間ができたことに喜び、モンドを護る使命をトワリンに託した。
流れ者であった風神と風龍の絆により、黎明期のモンドを護った。

伝説に残る一戦。最後は琴声によって魔龍の攻撃が一瞬止まった。
風の龍はその一瞬の隙を狙い、魔龍を仕留めた。

激闘の末、長い眠りについていた風龍が、ついに目を覚ました。
風龍の前にバルバトスは現れず、龍の全身は毒に蝕まれていった。
それは見えない苦しみと聞こえない痛みだった。
毒が全ての悲しみを壊し、風龍を苦しめた。

風龍は自分が護った人々に苦痛を告げた。
かつて忠誠を誓った風の神に恨みを告げた。
自分の苦しみを無視する冷酷さを、
神でありながら、自らの眷属を容赦なく裏切ったことを。

悲憤の眷属は知らなかった。風の神は未だ彼を救うために奔走していることを。
憎しみの情に圧倒されたが、神の象徴である堅琴は思慕の念を抱いている。
百年の誤解は解ける。
風龍は再び神の唄を聴ける日がやってくる。

旧モンドシリーズ

風鷹剣

西風騎士団の魂。この剣を振り回していた女傑と同じ、千年が経ってもまだ正義の風を巻き起こし、邪悪を排除しようとする。

物語本文

誰もが知っているように、鷹の見守りは西風の恩恵である。
西風の恩恵が遠方の異民族のものであることは、ごくわずかな人しか知らない。

当時のモンドは旧貴族の支配下にあり、自由を求めようとしていた。
故郷を離れた異民族の戦士は奴隷として、風の国に入った。
欺きと不公平を前にしても、彼女は努力により正義の風を巻き起こした。
横暴な貴族の統治を終わらせ、慈愛に満ちた騎士団と教会を設立し、
神の恩恵を受け、最期は神に召された。

これは彼女が使用していた武器。これは、彼女の苦難と雄姿を見届けた。
彼女が自由と正義の風をモンドの地に届けた証である。
振り回す時、故人の戦いへの思いが感じられる。

圧迫されたら、正義を。
禁錮されたら、自由を。
騙されたら、知恵を。
風の導くままに。それが自由と正義の風である。

狼の末路

狼の騎士が使っていた大剣。本来は鉄工房の職人に贈られた鉄の塊だが、狼との絆によって神話のような力を得た。

物語本文

北風の騎士と呼ばれた者、風神の都で旅の終点にたどり着いた。
流浪の旅人は身を寄せ合う。思うままの旅は所詮彷徨い。

騎士が街に入った時、遠い丘にいた仲間は何も言葉にせずとも、別れを告げた。
城壁と灯火の匂いを好まない狼は広い野原を選んだ。

自由の心を持つ北風の騎士は自らを町に閉ざした。
ともに来た狼は城外を自由のままに走るが、騎士のことをずっと忘れられなかった。

魔物を討伐しに、騎士は再度城外に出た。狼も共に戦っていた。
孤独の狼と騎士は心が通じ合うように連携し、まるで一つになったようだった。

寄り添った二人は歳月の流れに勝てなかった。狼は先に去っていった。
北風の騎士は自分の剣を墓標とし、街から離れた郊外に親友を葬った。
あれから、彼は街を離れ、狼の自由を心に刻んで、また風と共に旅を始めた。

狼の不滅の魂は永遠に、この地に居を定めた。
騎士が護っていたこの青い大地をずっと、ずっと永遠に見守る。

四風原典

風を信仰する先民たちが書いた教典。数千年を経て信仰は風の好意を得て、祝福の力に満ちている。

物語本文

極めて古い風の教典。風神を祭る者の間に代々伝わっている。
シミだらけのページは無数の手形を残し、一部は風と共に消えていった。

高塔の暴風君王による暴政が蔓延る時代、教典は人々の絶望による訴えを記録した。
一面の氷雪が消えた時代になると、教典は命の新生による歓喜を記録した。

旧貴族による傀儡政権の時代、
奴隷の間に伝わっていた教典は千風への渇望を記した。

モンドの人々は、耐え忍び、抗争し、喜び、そして自由を楽しむ。
それらの貴重な時代に、風の教典は厚く重くなっていった。

しかし、新しいモンドが誕生し、教会が旧貴族の束縛から解放された時、
四風の教典は、高い棚に置き去られることを望まず、教会の宝庫から消えていった。
恐らく、この本はモンドの風や人と同じく、なにものからも縛られたくないのだろう。

標題紙に綺麗な字でこう書いてある。

風の神の子よ、永遠に覚えておきなさい。
命は風と共に誕生し、また風と共に去っていく。
だから、どうか悲しまないで。
土に還ったのは骨と肉だけ。
本当の私は千の風となった。

花の香りや草木のざわめきを感じるのは、
私が自由と風を唄っているから。

アモスの弓

極めて古い弓。元の主がいなくても、その力は変わらない。それは万物の中にある力であり、欲するものから遠くなるほど、その力は強くなる。

物語本文

不毛の上古時代。青々とした大地がまだ骨のように白い時代だった。
裸足で雪の上を歩き、少女は偏屈な塔の君王を追いかけた。

彼は彼女の至愛だった。だが烈風の王は凡人の弱さを理解できなかった。
彼は彼女の敵だった。だが彼女の目的はただの復讐ではなかった。

「海の波と砂浜を夢に見たの。緑豊かな森と大地を夢に見たの」
「果実の森で戯れているイノシシを夢に見たの。高い尖塔を夢に見たの」
少女は彼に甘えてみたが、君王は耳を傾けてくれなかった。

やがて盲目な恋から目覚めた彼女は気が付いた。彼が本当の心を持っていないことに。
口では愛を語り続けても、彼の周りには刀のような鋭い風しか吹いていない。
君王の目には、果てしなく続く強風に立ち上がれない民が、
自分を畏れて慕っているように映っていた。

あれは北風の僭主と高塔の君王が戦った時である。
女性の弓使いは君王に愛されていると勘違いしていた。
戦いの最後、反逆の風が吹いた。
無名の少年、無名の精霊、無名の騎士と共に、
塔の最上部に入り、風中の孤高なる君王に挑戦した。

「こうすれば、彼は見てくれるよね」

だが、彼女が弓を引いたその瞬間に、
烈風の王が彼女を引き裂いたその瞬間に、
彼女はやっと気づいた。自分と彼との間に雲泥の差があることに。

千年の大楽章シリーズ

蒼古なる自由への誓い

悠久なる歌声のように青く、真っすぐな直剣。風の国を代表する自由の誓いのように、その切っ先は鋭い。

物語本文

過去に流行っていた祝福の歌は、こう歌うーー
「誰かに舌を抜かれても、目で歌える」
「誰かに目を刺されても、耳で聞ける」
「夢を壊そうとする人が居た、乾杯しようと誘う」
「たとえ明日が来なくても、この瞬間の歌声は永遠になる」

育った風土によって性格は異なる。しかし、土地も人も神によって誕生した。
自由気ままの神が、抗争の中で自由への愛を人々に広めたか。
それとも人々が自由のために、氷雪と烈風の中で、自由を愛する風の神を生み出したか。
この問題を解き明かすことは出来ない。

あの曲はいつも暗い時代に歌われた。
烈風の王者が尖塔に君臨した時も、
腐りきった貴族が神像を倒した時も、
幽閉された地下室で、暗い路地裏で、ぼろぼろの酒場で、
烈風と鉄の拳に浸透し、抗争の英雄を紡ぐ。

遥か昔のある日、環状の静まり返った王城で、
誰かの琴声を伴って、叫び声はついに烈風の監獄を突き破った。
ある少年、精霊、弓使い、騎士と赤い髪の流浪騎士は、
空を突き抜ける槍のような、
巨大な影を落とす尖塔の前で自由を誓った。
そして塔の上の孤独な王を倒すと決意した。

尖塔に登れない体の弱い者たちは、普段小さい声でしか歌えなかった。
しかし、あの乾杯と送別の歌を、城壁が揺れ動くほどの勢いで歌い、旗を揚げた勇者たちを応援した。
「誰かに舌を抜かれても、目で歌える」
「誰かに目を刺されても、耳で聞ける」
「でも、誰かに歌う自由と眺める自由を奪われたら」
「ーーそれは、絶対に、絶対に容赦しない」

松韻の響く頃

草木を撫でる風のように軽い大剣だが、その破壊力は木々を吹き飛ばす竜巻を想起させるほど強大なものである。

物語本文

昔、平民の間にある歌が流行っていた。
「凹んだ硬貨を遠方から来た歌手と詩人にあげよう」
「花束を少女に渡そう」
「涙が出るほど苦いお酒で」
「取り戻せない昨日に乾杯しよう、歌声を未来に捧げよう」

詩歌と音楽が風と共に流れる国では、人々は楽観的で敏感な魂を持っていた。
話のよると、孤独な王と貴族が一部の和音と調の使用を禁止する時期があった。
敏感な人々が詩人や歌手の音楽から反逆の意志を感じ取ることができ、
実際に歌と詩は抗争者の連絡方法として使われていたからだ。

貴族が統治していた時代、風神を敬う教会が二つに分かれた。
一つは貴族と呑み交わし、神像を倒し、頌詞と聖歌を書いた教会。
もう一つは聖職者という名を持たない信徒。
彼らは地下街と高い壁の外で行動し、安酒を飲む。そして平民の間に伝わる聖書原典と風と共に流れてきた言葉で、
平民と奴隷たちのために祈り、禁じられた詩と歌を書いた。

異国の奴隷剣闘士が風の神と共に蘇り、反旗を掲げた。
無名の牧者と呼ばれる年寄りの聖徒が、西風教会の真の教徒を集め、
彼らと共に自らの血でこの青い土地を潤した。
その反逆の合図は、まさに今まで歌うのを許されなかった歌の残り部分だった。

「鋭い鉄片は命懸けの戦いまで取っておこう」
「絞首台は小賊のために残そう」
「錆びた矢先は研いでおこう」
「松韻の響く頃、低劣なものを撃ち落とそう」

終焉を嘆く詩

詩人の楽器のような美しい弓。放った矢は嘆き声のように心に響く。

物語本文

「西方の風が酒の香りを連れて行く」
「山間の風が凱旋を告げる」
「遠方の風に心が惹かれる」
「サラサラと君への想いを歌う」

かつて、いつも悲しげな騎士がいた。
この歌だけが、彼の心の癒やしであった。
広場でこの歌を歌う少女だけが、
彼の仕事の疲れを癒やしてくれた。

古国に降臨した災いの戦火はこの地にまで及んだ。
風が運ぶ喜びの詩は、毒龍の咆哮や、
大地を揺らす魔物の足音、そして啼き声と烈火に飲み込まれた。
王位継承を望まぬ風神は働突に気づいた。
旧き友の夢を守るため、風に恵まれた緑の野原を守るため、
風神は長い眠りから目覚め、天空の紺碧の龍と共に戦った…
そして、騎士と騎士団も自分たちの国と故郷のために戦った。

猛毒の龍が氷結の山に落ち、紺碧の龍が尖塔の古城で眠りについた時、
騎士は谷戸で命を落とした。最期の瞬間、少女の姿が脳裏に浮かんだ。
「遠方に留学した彼女は無事だろうか。もっと彼女の歌を聞きたかった」
「まだエレンドリンとローランドが生きている。彼女が戻ってくる時、この災害は収まっているはずだ一」

神を称賛し、2体の龍の戦いを描写した詩はたくさんあったが、やがて失われていった。
少女が歌っていた大好きな歌も、彼女が帰郷してから歌詞が変わった。
「蒲公英は朝の風と旅に出る」
「秋の風は収穫をもたらす」
「しかしどんな風も」
「あなたの眼差しをもたらしてはくれない」

涙も歌声も枯れた時、少女は命を燃やし、世界を浄化しようと決めた…

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