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Last-modified: 2024-03-31 (日) 01:25:30

任務終了後は閲覧できない書籍、テキスト、看板のテキストです。

魔神任務

千手百目の浮世

殿中監指示

本文

稲妻内戦の情勢は良いものとは言えない。だが戦争が長引けば長引くほど、我々の有利になる…
抵抗軍に「邪眼」を広めるため、戦争を煽り、両指揮官に戦争継続の意志を促す…
皆の衆には、ネイサン閣下を補佐し、珊瑚宮軍の勝利の希望を打ち砕いてもらいたい…
想定外のことがあった場合、ネイサン閣下の脱出を手助けすること。「ファデュイ」の件は決して露見してはならない!
これは「邪眼」の件に関わる大事、しかと心に刻むように!

伽藍に落ちて

『稲妻のたたら砂エリアに存在しうる重大な歴史事件についての簡単な分析』

変更前

説明:本論文は因論派の支援プロジェクト『ベールをはずして』に属する作品であり、番号は追加待ちである。

作者:アカバ

要旨:稲妻たたら砂エリアは稲妻の製錬鍛造業の重要な場所の一つと考えられてきた。このエリアでは事故が二回発生している。そのうちの一回目に関する記録はどれも曖昧なものである。たたら砂エリアでの最初の事故の裏には人知れぬ歴史的な要因があるのではないか、と筆者は考えている。本論文は既知の資料をもとに、この事件を分析してみるものである。

キーワード:たたら砂エリア、雷電五箇伝、御輿長正、傾奇者

はじめに:本論文は筆者の恩師であるルミ先生のレポート『たたら砂エリアに秘匿された疑いのある人文的故事』を受け継ぎ、展開し、この研究を引き続き進めたいとするものである。資料によると、稲妻の鍛造技法はもともと雷神——雷電将軍から受け継がれたものだそうだ。職人たちは神の技術を受け継ぎ、それを製錬鍛造業に応用した。だが、鍛造製錬業の核であるたたら砂エリアには、雄渾たる鍛造業にふさわしくない不思議な噂がある。御輿家、丹羽家、そして奇妙な人形——この三者が切り口となり、我々はそこからたたら砂の裏に隠された真実を垣間見ることができるようになった。

本文

たたら砂エリアにあった奇妙な紙切れに、こんなことが書かれている——

1
「……僭越ながら私は、長正様が刀鍛冶をするのは彼の心境に良い影響を与えると考える……」
「……『御輿』の汚名をそそぐことに執着するのは、実に気力を消耗する……」
「……それと、桂木様が名椎の浜を見回りしていた時、名無しの傾奇者を見つけた……」

2
「……目付様は玉鋼錠をいくつか買った……」
「……造兵司佑様、そして桂木様と夜通し鍛冶の心得を話していた。」

3
「……やっと長巻の一振りを造り出せた。その名は『大たたら長正』……」
「……目付様も非常に喜んでいる、造兵司佑様と……」
「……望は『大たたら長正』の美しさに感動し、それのために絵を描いた……」
「……浮浪の傾奇者と剣舞を舞った……」

4
「……傾奇者も行方不明になった……」
「……目付様は怒り、桂木を斬った。その切れ筋は、まさに大業物…そして、自ら作った長巻をたたら炉に捨てた……」
「……望はそれに不満を抱き、燃え溶けた刀を取りに行き……大やけどをした……」

5
「……望はその夜死んだ……桂木様は職責を汚したとはいえ、すべて善意からのものだったと思う……」

6
「……金次郎は長巻と望の描いた絵を武器庫に隠した……」
「……長正は厳しいが、白黒をはっきりさせる性分だ。しかしそれは同時に、非情でもあるということ。彼は自らの家名の潔白にこだわっており…私もたたら砂の人たちも、彼の母である千代のことで目を曇らせることなく、長正のことを信じている……」
「……彼と共に『大たたら長正』を作った喜びを忘れたくない。あの夜に、名無しの傾奇者、桂木と剣舞を舞った喜びも……」

7
「……撤退する時、武器庫の鍵を三つに分け、一つは目付様に、一つは造兵司正様に、一つはたたら砂に残し、賊の侵入を防ごうとした。」
「しかしあまりにも慌ただしかったため、目付様と造兵司正様を見つけられず、三つの鍵をすべてたたら砂にある三つの宝箱に隠すしかなかった……」

上記の7枚のメッセージはたたら砂エリアに散らばっている。そのうち、6枚は耐久性に優れた紙に記録されており、いずれも非常に古いものと思われるが、最後の1枚だけがやや新しいようだ。筆者は、6枚の紙と最後の1枚は異なる時代のものであると思っており、その年代の差を検証する必要がある。また、6枚の内容は互いに関連しているため、同じ出来事を指しているはずである。
ルミ先生は『たたら砂エリアに秘匿された疑いのある人文的故事』(以下、『人文的故事』と略称)の中で、スメールの学者が稲妻にたたら砂一帯の人文史を研究しに行っていたということに触れている。ルミ先生が『人文的故事』を書いた当時、たたら砂は一連の事件ですでに衰退した状態だったが、筆者が本文を書いた時分よりはましであった。たたら砂の最も中心的なエリアは、今は全く居住に適しておらず、住む人も確かにいない。住民たちは海辺に移り、水辺に住むようになっていた。スメールの学者たちは、彼らからこのようなことを聞いた——かつてたたら砂はとても繁栄しているところだったと。数百年前、まだ黄金時代と呼べる頃、たたら砂は造兵司正の丹羽、造兵司佑の宮崎、そして目付の御輿長正に管理されていた。同時に、年配の人たちや、より歴史ある家系の人たちは、たたら砂には奇妙な噂があったと繰り返し強調していた。
噂はほとんど「妖怪」にまつわるものであり、稲妻の特色に溢れていた。しかし、そのうちごく一部の中で、「人形」という単語の言及があったのだ。注意すべきは、人形それ自体は伝統的なものであり、ありふれた稲妻の妖怪ではないことだった。学者たちは疑問を感じ、それについて追及した。そして、次のような情報が得られた。

  • かつてたたら砂に、とある人形が現れた。その見た目は秀麗で、きちんとした身なりをしており、体にある特殊な関節の痕跡を隠すことを知っていた。たまに誰かが口にしなければ、それが人形であることは分かりにくい。それに、人形特有の関節の痕跡は時間が経つにつれて薄くなっていっていたようだ。最後には見えなくなり、完全に人間の姿になるかもしれない。
  • その人形の名前を知る人はほとんどいない。人々はそのような人形がたたら砂に出没していたということを知っているだけだ。中心地でそれを見た人もいれば、浜辺で見た人もいる。伝説では、人形は海辺に佇み、海の向こうの稲妻城を見つめていたようだ。そこに何があるのか、また人形が何を見つめていたのか、誰も知らない。

前述したように、6枚の紙切れのには「名無しの傾奇者」のことが書いてある。傾奇者とは、稲妻において変わった身なりをしたり、常識を逸脱した行動に走る人を指すことが多い。そのため、このような人物が印象に残るのは当然といえば当然といえる。もしたたら砂に本当に人形が存在し、そのうえで恐慌を起こしたりなどしていないなら、妖怪と人間が共生する稲妻の社会形態を考えると、当時人形はたたら砂の地元住民の一人になっていた可能性が高い、と筆者は考える。そして関連記録が少なく、あまり知られていない「傾奇者」とは、人形のもう一つの呼び名かもしれない。服装があまりにも華麗で独特であるなら、人々はその人の他の特徴にあまり目を向けなくなる。この推測にはまだ強力な証拠が必要だが、一つの考え方として残しておくことはできる。

筆者は稲妻の関連資料に基づき、たたら砂と関連があるかもしれない一部の人物を整理した。管理者から順に、記録は以下の通りである——

造兵司正——丹羽
フルネームは丹羽久秀、一心伝丹羽家の後継者。その一族は赤目、楓原と共に一心三作と呼ばれている。記載によると、丹羽は謙虚で聡明、土地と民生を管理する優れた人材であった。のちに彼は行方不明となっており、家族を連れて事故後のたたら砂を離れたと思われる。

造兵司佑——宮崎
フルネームは宮崎兼雄、丹羽の補佐。出身は不明。主に鍛造及び人員管理において、丹羽をサポートするなどしていた。穏やかで優しい人物であり地元に友人が多く、御輿長正とも親交があった。

目付——御輿長正
御輿家の後継者、鬼族の武者御輿千代の養子であり、「胤の岩蔵」御輿道啓の養弟である。母の千代が行方不明になった後、養兄の道啓に捨てられた。彼は一人で一族すべての責任を背負い、家族の汚名をそそぐために日々奮闘していた。様々な資料によると、御輿長正はやや頑固な一面はあるが、剛直で品行の正しい人であったとされる。紙切れの記録によると、彼は修身のために刀の鍛造を習い、わざわざ宮崎の教えを受けていた。名刀大たたら長正を鍛え上げた後、彼はあることから部下の桂木を斬った。

部下——桂木
フルネーム、出身ともに不明。筆者は多くの資料を調べたが、桂木本人に関するさらなる情報を得ることはできなかった。彼は御輿長正の手下であり、忠実な武人だった。御輿長正に救われたため、長正のために水火も辞さないとを誓ったとされる——随従することから、命を捧げるまで。

傾奇者
フルネーム、出身ともに不明。筆者は多くの資料とルミ先生の見解を合わせ、この人物こそ噂の奇妙な人形であると推測している。伝説によると、傾奇者は見た目が非常に美しく、穏やかで優しい性格の持ち主だという。『人文的故事』によると、彼は桂木によってたたら砂に連れてこられ、地元住民の一人となったそうである。傾奇者がたたら砂に来たばかりのころ、服を洗うことも料理を作ることもできず、細かい仕事は一切できなかった。地元の人たちが丁寧に教えたため、洗濯、舞踊、そして小物を鍛造する方法などを身につけるようになった。紙切れの記録によると、『大たたら長正』が鍛え上げられた時、傾奇者もその場にいた。だが、御輿長正が桂木を斬る直前で傾奇者に関する手がかりは途切れている。筆者は、傾奇者——すなわち人形は、桂木の死と関係している可能性が高いと考える。

(残りの部分はどうやらまだ書き終わっていないようだ…でも、これがかなり工夫された論文であることは確かだ。)

変更後

説明:本論文は因論派の支援プロジェクト『ベールをはずして』に属する作品であり、番号は追加待ちである。

作者:アカバ

要旨:稲妻たたら砂エリアは稲妻の製錬鍛造業の重要な場所の一つと考えられてきた。このエリアでは事故が二回発生している。そのうちの一回目に関する記録はどれも曖昧なものである。たたら砂エリアでの最初の事故の裏には人知れぬ歴史的な要因があるのではないか、と筆者は考えている。本論文は既知の資料をもとに、この事件を分析してみるものである。

キーワード:たたら砂エリア、雷電五箇伝、御輿長正

はじめに:本論文は筆者の恩師であるルミ先生のレポート『たたら砂エリアに秘匿された疑いのある人文的故事』を受け継ぎ、展開し、この研究を引き続き進めたいとするものである。資料によると、稲妻の鍛造技法はもともと雷神——雷電将軍から受け継がれたものだそうだ。職人たちは神の技術を受け継ぎ、それを製錬鍛造業に応用した。だが、鍛造製錬業の核であるたたら砂エリアには、雄渾たる鍛造業にふさわしくない不思議な噂がある。御輿家、丹羽家、そして外国から訪れた奇妙な機械職人——この三者が切り口となり、我々はそこからたたら砂の裏に隠された真実を垣間見ることができるようになった。

本文

たたら砂エリアにあった奇妙な紙切れに、こんなことが書かれている——

1
「……僭越ながら私は、長正様が刀鍛冶をするのは彼の心境に良い影響を与えると考える……」
「……『御輿』の汚名をそそぐことに執着するのは、実に気力を消耗する……」

2
「……目付様は玉鋼錠をいくつか買った……」
「……造兵司佑様、そして桂木様と夜通し鍛冶の心得を話していた。」

3
「……やっと長巻の一振りを造り出せた。その名は『大たたら長正』……」
「……目付様も非常に喜んでいる、造兵司佑様と……」
「……望は『大たたら長正』の美しさに感動し、それのために絵を描いた……」

4
「……目付様は怒り、桂木を斬った。その切れ筋は、まさに大業物…そして、自ら作った長巻をたたら炉に捨てた……」
「……望はそれに不満を抱き、燃え溶けた刀を取りに行き……大やけどをした……」

5
「……望はその夜死んだ……桂木様は職責を汚したとはいえ、すべて善意からのものだったと思う……」

6
「……金次郎は長巻と望の描いた絵を武器庫に隠した……」
「……長正は厳しいが、白黒をはっきりさせる性分だ。しかしそれは同時に、非情でもあるということ。彼は自らの家名の潔白にこだわっており…私もたたら砂の人たちも、彼の母である千代のことで目を曇らせることなく、長正のことを信じている……」
「……彼と共に『大たたら長正』を作った喜びを忘れたくない……」

7
「……撤退する時、武器庫の鍵を三つに分け、一つは目付様に、一つは造兵司正様に、一つはたたら砂に残し、賊の侵入を防ごうとした。」
「しかしあまりにも慌ただしかったため、目付様と造兵司正様を見つけられず、三つの鍵をすべてたたら砂にある三つの宝箱に隠すしかなかった……」

上記の7枚のメッセージはたたら砂エリアに散らばっている。そのうち、6枚は耐久性に優れた紙に記録されており、いずれも非常に古いものと思われるが、最後の1枚だけがやや新しいようだ。筆者は、6枚の紙と最後の1枚は異なる時代のものであると思っており、その年代の差を検証する必要がある。また、6枚の内容は互いに関連しているため、同じ出来事を指しているはずである。
ルミ先生は『たたら砂エリアに秘匿された疑いのある人文的故事』(以下、『人文的故事』と略称)の中で、スメールの学者が稲妻にたたら砂一帯の人文史を研究しに行っていたということに触れている。ルミ先生が『人文的故事』を書いた当時、たたら砂は一連の事件ですでに衰退した状態だったが、筆者が本文を書いた時分よりはましであった。たたら砂の最も中心的なエリアは、今は全く居住に適しておらず、住む人も確かにいない。住民たちは海辺に移り、水辺に住むようになっていた。スメールの学者たちは、彼らからこのようなことを聞いた——かつてたたら砂はとても繁栄しているところだったと。数百年前、まだ黄金時代と呼べる頃、たたら砂は造兵司正の丹羽、造兵司佑の宮崎、そして目付の御輿長正に管理されていた。同時に、年配の人たちや、より歴史ある家系の人たちは、たたら砂には奇妙な噂があったと繰り返し強調していた。
噂はほとんど「妖怪」にまつわるものであり、稲妻の特色に溢れていた。しかし、そのうちごく一部の中で、「外来者」という単語の言及があったのだ。注意すべきは、民間の伝説の中に実在と思しき人物が登場するとは、実に怪しむべきことである。その話題をさらに掘り下げると、次のような情報が得られた。
-かつて、ある外国の機械職人がたたら砂を訪れた。彼は技術交流のためにきたそうで、地元の人たちとも友人になった。だが、その人物には疑わしいところがあったようで、常に中央部や公開されていない場所の近くをうろついていた。誰かが彼を止めようとすると、彼は理解できないようなことを呟いたとされる。
-機械職人はいつも大きな炉を眺めながら、何か考えごとをしていたようだ。おそらく、炉の状態を観察していたのだろう。そして同様に、人を不快にさせるような視線で地元の住人たちを観察していたようだ。

年代からみれば、たたら砂でこうした技術交換があったことは理に適っている。たたら砂は海沿いのため、船で行くことができる。外国から来た人間が地元で歓迎されるのも、おかしなことではない。だが、技術交流が行われてから間もなく、このエリアが衰退していったのも事実。この二つのことは大いに関係していると思われる。しかし、それは当時の人の妄想にすぎないと考える住人もいる。

筆者は稲妻の関連資料に基づき、たたら砂と関連があるかもしれない一部の人物を整理した。管理者から順に、記録は以下の通りである——

造兵司正——丹羽
フルネームは丹羽久秀、一心伝丹羽家の後継者。その一族は赤目、楓原と共に一心三作と呼ばれている。記載によると、丹羽は謙虚で聡明、土地と民生を管理する優れた人材であった。のちに彼は行方不明となっており、家族を連れて事故後のたたら砂を離れたと思われる。

造兵司佑——宮崎
フルネームは宮崎兼雄、丹羽の補佐。出身は不明。主に鍛造及び人員管理において、丹羽をサポートするなどしていた。穏やかで優しい人物であり地元に友人が多く、御輿長正とも親交があった。

目付——御輿長正
御輿家の後継者、鬼族の武者御輿千代の養子であり、「胤の岩蔵」御輿道啓の養弟である。母の千代が行方不明になった後、養兄の道啓に捨てられた。彼は一人で一族すべての責任を背負い、家族の汚名をそそぐために日々奮闘していた。様々な資料によると、御輿長正はやや頑固な一面はあるが、剛直で品行の正しい人であったとされる。紙切れの記録によると、彼は修身のために刀の鍛造を習い、わざわざ宮崎の教えを受けていた。名刀大たたら長正を鍛え上げた後、彼はあることから部下の桂木を斬った。

部下——桂木
フルネーム、出身ともに不明。筆者は多くの資料を調べたが、桂木本人に関するさらなる情報を得ることはできなかった。彼は御輿長正の手下であり、忠実な武人だった。御輿長正に救われたため、長正のために水火も辞さないとを誓ったとされる——随従することから、命を捧げるまで。

機械職人
筆者は多くの方面から考察したが、この人物の出所を推し量ることはできなかった。だが、たたら砂で事件が起きて以降、彼に関する噂は少なくなっていったようだ。筆者は、この人物は地元住民たちの想像上の見知らぬ人ではなく、実際に存在していた来訪者であり、たたら砂で起きた事件に関係があったかもしれないと推測している。

(残りの部分はどうやらまだ書き終わっていないようだ…でも、これがかなり工夫された論文であることは確かだ。)

『黯雲の島』

変更前

著者:澤田

抜粋·其の一

……
……
刻は午後の三時ごろ、とある人がたたら砂を訪れた。遠くには労働にいそしむ人々が、山道に沿って工場へと向かう姿が見える。その草鞋が高くそびえる山石を擦るたび、僅かながらも人心を揺るがす音を立てた。その音にはまるで、ここさえ越えて山中の大きな炉に辿り着ければ、燃え盛る炎から価値ある金剛石を取り出せると言わんばかりの勢いがあった。この感覚は、その場にいた人間でなければ理解できないであろう。
その人は嬉々として挨拶をすると、走って前進する行列に加わった。隣にいた尋常の人より背丈のある筋肉質な男は、彼を見るなり背中を力いっぱい叩いてきたが、その言葉の端々には敬意が見えた。「どちらかと思えば、宮崎殿ではないか!稲妻城からここまでの往路、さぞ難儀だったであろうな。」
宮崎は口をゆがめ、駆け出しの若者のように笑った。その表情には安堵が浮かんでいた。「桂木さんは何を言っているのやら、稲妻城は将軍様の御膝元だぞ。私はそこから戻るにあたり、最も速い船に乗り、最も速い水路を選んだ。何の危険があるというのだ?」
「して、朗報はあるのか?」
「ない…わけがないであろう。」二人は話終えると同時に笑い出し、辺りを囲む職人たちとお互いをぐいぐいと押し合いながら、道の終わりまで歩いていった。

麻布の素朴な服を着て、頭巾を巻いた若い男が炉の前で火加減を見張っていた。
鋼を精錬するために使う火は他と異なり、その火力の良し悪しが、鋼材や刀の品質にかかわる。その加減を見張っているものも只者ではなく、その指先には一匹のトカゲが止まっており、その顔には笑みがあった。
空間は広く、大きな炉はもっと深いところにある。普通なら複数の人がここで働いていてもおかしくはないが、彼はたった一人でここに立っていた。桂木や宮崎がどたどたと急いで入ってくるまで、彼は火から目を離さなかった。
この者こそ、まさしく造兵司正の丹羽久秀、たたら砂の管理者であった。一心伝の丹羽家出身の彼は、兄弟姉妹と競い合うことなく、正真正銘の継承者となった。各勢力の貴人や権力者に認められてこの官職に就いたことは、ある種の証明である。
宮崎は丁寧に絹織物に包んだ書類を丹羽に手渡し、色を正した。「旦那様の言う通り、城内の親戚は私たちの計画をよく思っていないようでした。しかし、赤目の案は確かに試す価値があります。ですから私は卸売り先を探して、目録に沿って必要なものを仕入れました。」
丹羽は書類を読み終えると、軽くうなずいた。「楓原の支持があり次第、すぐ我々は新しい鍛造法を試みるべきだ。」
桂木の方はというと、眉をひそめて嘆いた。「刀を鍛えるとは、もとより技巧を問われる難儀なもの。旦那たちはもうだいぶ勘所をつかんでいるのに、まだまだ精進をやめないとは…まったく恐るべし!長正様が聞かれたら、また難しい顔をなさるであろう。」
丹羽は微笑むと、「桂木殿、長正様の宝刀の鍛え具合はいかほどか?」と聞いた。
主人の面子をつぶしたくはない一方、目の前にいる友人たちを騙したくもない桂木は、どう考えてもうまい言い方をひねり出せず、ばつが悪そうに言った。「丹羽様は器用であられる、器用がすぎるゆえ、俺たちのような粗忽者の冗談が通じない。」
宮崎はすぐに口をふさいでくくくと笑った。丹羽は手にあったトカゲを桂木の手中に置き、何かを言おうとした。その時、遠くから人がやってきた。今回の足音は軽く、聞く限り少年のようだ。入ってきたそのまん丸の頭は火に照らされ、まるで磨かれてつやのある何らかの宝珠のようだった。
少年は弁当を隣に置くと、軽く会釈してから出て行こうとした。桂木はとっさに彼を呼び止める。「自分の分はどうした?食べないのか?」
そう聞いた彼はどうすればわからない様子で、少し経ってから「…分かった、試してみるよ。」とだけ答えた。
「みんな食べているんだ、そう遠慮するな。」丹羽がそう言うと、彼はまた頷き、何か考えている様子で離れていった。

抜粋·其の二

……
……
傾奇者は海の岸辺にいた。
日が落ちる頃、空の一切は暗く沈み、一方で雷雲が蠢いていた。まるで暴雨の訪れを見せつけるように。
海もまた空と共に暗さを増し、薄暮が雲を大地に跪かせるように下へ下へと押しやっている。まさにいま傾奇者自身が海へ向かって跪き、あたかも拝むような姿であるように。
誰一人ここを通りがかるものはいない。いま、彼が静かに何を待っているのかを知る者もいない。
どれくらい時間が経っただろうか、空から突然烏羽色の雲が飛び出し、傾奇者を囲むように旋回しながら、悪夢の如く纏わりついた。当初彼は全く気付いていなかったが、目を開いてしばらくのち、やっと状況を理解した。この雲の狙いは、最初から彼であると。
遠くから漁船が近づいてきた。船首の灯が降り注ぐ雨の中で徐々に揺らいでいく。薄い霧が瞬く間に広がり、船にいた漁師は視界を失ったことで、驚いた様子で叫んだ。「まだ黄昏時だぞ、どうしてこんなに見通しが悪いんだ?誰か航路のわかるやつはいないか!」
黒雲は再び船底に突っ込むと、船にまとわりついて方向を狂わせ、猛る獣のように海岸へと衝突させた。数歩離れた場所で傾奇者はただ立ちすくみ、首を傾げながら、目の前の巨大な船の残骸へ視線を向けた。
先ほど叫んでいた者はもう腕の半分しか残っておらず、それは「ぽとり」と傾奇者の足元に落ちてきた。彼はしゃがみ込んでそれを一度、また一度と見る。あたかも口に入れて咀嚼するかのように。
しかし、彼は最終的にそれを中断した。黒雲は旋回しながら沈んでいき、あの船に残っていたものを全て吞み込んでいく。傾奇者は呆けたようにそれを見ていたが、だいぶ経ってからはっと気がついた。黒雲は散り散りになり、その姿はもう見えない。目の前にある船は…嵐にでも遭ったのだろうか?誰にそれがわかるだろう。傾奇者はそれをはっきりさせようとはしなかった。

抜粋·其の三

……
……
桂木は慌てた様子で門をくぐると、大きな声で叫んだ。「旦那!大きな炉で問題があったようで…!丹羽様を探し回ったのですが見当たらず、宮崎殿も外に助けを求めに出てずいぶん経ちますが、未だ音沙汰がないとか。これは…」
御輿長正はゆっくりと振り向いた。葬式にでも参列しているような厳かな顔つきで、彼が口にする言葉にはいずれも重みがあった。「このようなことを言いたくはないが…桂木。宮崎殿はもしや…もう戻らぬかもしれん。」
桂木はその視線を長正の厚く強張った双肩から、窓の外へとやった——海の上では黒雲が逆巻き、人々を脅かしている。暗黒の夜は妖怪に化けこそせず、自らたたら砂を腹の中へ呑み込めないことを悔しがってはいたものの、それでもこの土地を覆う唯一無二の空模様であった。
もう十数人が死んだ。そうか、だから…
桂木は頬を張られたような衝撃と共に、思い出した。そうか、だから彼らは外に助けを求めたのだ!
最初に船出したのは宮崎だ。彼が発ったときには、あの雲はまだ形を成したばかりだった。たたら砂から稲妻城へ助けを求める、いつもならそう難しい事ではないのに、彼はなかなか帰ってこない。
やがて二人、三人、四人…そして傾奇者まで。彼はこの天候のなか船に乗ってたたら砂を離れた、それが吉と出るか凶と出るかは分からない。桂木は彼を拾った身であり、彼のことは自分の子供のように思っている。もちろん名残惜しいが、現在のたたら砂の状況は切羽詰まっている。例え幾人もの犠牲を出しても、彼らは城からの庇護を求めなければならなかった。

丹羽は姿を消し、誰も彼の行方はわからない。少しの後、長正は危険を冒しながら一隊の人員を連れて炉心周辺を探したが、なんの収穫も得られなかった。当初皆は丹羽が何か想定外のことに巻き込まれたかと思っていたが、よくよく考えてみれば、彼はここで起きた異質な事故の責任を担えず、罪を恐れて出奔したのかもしれなかった。
皆は心の中で彼を疑い、長正は不満と怒りを抑えてこそいたが、その顔色は遠くの黒雲と遜色ないものになっていた。
にわかに人影が通り過ぎた。長正は何の疑いも持たず素早く刀を抜き払ったが、その切っ先は紗の一片を裂いたにすぎなかった。人影は揺らめき、操り人形のように長正の背後を取ると、ひひっと笑った。「だんなは誰をお探しで?丹羽か?」
長正は怒り叫んだ、「丹羽様をそのように呼ぶなど、許せぬ!」縦に一刀すると、人影は薄い霧のように散ったかと思うと、瞬く間に遠方へ集まって、妖しい鬼の影へと化けた。
「お前があの方を殺めたのか?」長正は怒鳴って飛び掛かかろうとしたが、桂木に力ずくで引き留められた。足下をしかと見れば、あと一歩で炉に落ちるところであった。

(残りの部分はどうやらまだ書き終わっていないようだ…しかしこれはさっきの論文にある情報をもとに想像を巡らせて書かれた、空想に満ちた小説であることが見て取れる。)

変更後

著者:澤田

抜粋·其の一

……
……
刻は午後の三時ごろ、とある人がたたら砂を訪れた。遠くには労働にいそしむ人々が、山道に沿って工場へと向かう姿が見える。その草鞋が高くそびえる山石を擦るたび、僅かながらも人心を揺るがす音を立てた。その音にはまるで、ここさえ越えて山中の大きな炉に辿り着ければ、燃え盛る炎から価値ある金剛石を取り出せると言わんばかりの勢いがあった。この感覚は、その場にいた人間でなければ理解できないであろう。
その人は嬉々として挨拶をすると、走って前進する行列に加わった。隣にいた尋常の人より背丈のある筋肉質な男は、彼を見るなり背中を力いっぱい叩いてきたが、その言葉の端々には敬意が見えた。「どちらかと思えば、宮崎殿ではないか!稲妻城からここまでの往路、さぞ難儀だったであろうな。」
宮崎は口をゆがめ、駆け出しの若者のように笑った。その表情には安堵が浮かんでいた。「桂木さんは何を言っているのやら、稲妻城は将軍様の御膝元だぞ。私はそこから戻るにあたり、最も速い船に乗り、最も速い水路を選んだ。何の危険があるというのだ?」
「して、朗報はあるのか?」
「ない…わけがないであろう。」二人は話終えると同時に笑い出し、辺りを囲む職人たちとお互いをぐいぐいと押し合いながら、道の終わりまで歩いていった。

麻布の素朴な服を着て、頭巾を巻いた若い男が炉の前で火加減を見張っていた。
鋼を精錬するために使う火は他と異なり、その火力の良し悪しが、鋼材や刀の品質にかかわる。その加減を見張っているものも只者ではなく、その指先には一匹のトカゲが止まっており、その顔には笑みがあった。
空間は広く、大きな炉はもっと深いところにある。普通なら複数の人がここで働いていてもおかしくはないが、彼はたった一人でここに立っていた。桂木や宮崎がどたどたと急いで入ってくるまで、彼は火から目を離さなかった。
この者こそ、まさしく造兵司正の丹羽久秀、たたら砂の管理者であった。一心伝の丹羽家出身の彼は、兄弟姉妹と競い合うことなく、正真正銘の継承者となった。各勢力の貴人や権力者に認められてこの官職に就いたことは、ある種の証明である。
宮崎は丁寧に絹織物に包んだ書類を丹羽に手渡し、色を正した。「旦那様の言う通り、城内の親戚は私たちの計画をよく思っていないようでした。しかし、赤目の案は確かに試す価値があります。ですから私は卸売り先を探して、目録に沿って必要なものを仕入れました。」
丹羽は書類を読み終えると、軽くうなずいた。「楓原の支持があり次第、すぐ我々は新しい鍛造法を試みるべきだ。」
桂木の方はというと、眉をひそめて嘆いた。「刀を鍛えるとは、もとより技巧を問われる難儀なもの。旦那たちはもうだいぶ勘所をつかんでいるのに、まだまだ精進をやめないとは…まったく恐るべし!長正様が聞かれたら、また難しい顔をなさるであろう。」
丹羽は微笑むと、「桂木殿、長正様の宝刀の鍛え具合はいかほどか?」と聞いた。
主人の面子をつぶしたくはない一方、目の前にいる友人たちを騙したくもない桂木は、どう考えてもうまい言い方をひねり出せず、ばつが悪そうに言った。「丹羽様は器用であられる、器用がすぎるゆえ、俺たちのような粗忽者の冗談が通じない。」
宮崎はすぐに口をふさいでくくくと笑った。丹羽は手にあったトカゲを桂木の手中に置き、何かを言おうとした。その時、遠くから人がやってきた。今回の足音は少し重みがあり、来客の足取りには自信と落ち着きが感じられた。束の間ののち、まったく異なる異国の顔が門に顔を出した。来客は手にある弁当を置くと、軽く頷いて離れようとした。桂木はとっさに彼を呼び止めた。「旦那、自分の分はどうした?食べないのか?」
彼はそれを聞くと、笑ってこう言った。「もう済ませました。皆さまも、早くお召し上がりになられた方がよいかと。」
「我らの客人であるというのに、このような雑務まで手伝ってくれるとは、まことかたじけない。」丹羽は心を込めてそう言った。
異国の人物は優しそうに笑った。些細なことでも、人のために何かをすることを気にしていないようだ。そしてまた頷くと、離れていった。

抜粋·其の二

……
……
見知らぬ客——異国から来た機械職人は海の岸辺にいた。
日が落ちる頃、空の一切は暗く沈み、一方で雷雲が蠢いていた。まるで暴雨の訪れを見せつけるように。
海もまた空と共に暗さを増し、薄暮が雲を大地に跪かせるように下へ下へと押しやっている。だが、この人物はその様子に怯えることなく、却って血に飢えたような目で遠方を見据えた。
誰一人ここを通りがかるものはいない。いま、彼が静かに何を考えているのかを知る者もいない。
どれくらい時間が経っただろうか、空から突然烏羽色の雲が飛び出し、機械職人を囲むように旋回しながら、悪夢の如く纏わりついた。しかし、彼はまるでそれが自分の一部であるかのように、漆黒の煙を撫ぜた。
遠くから漁船が近づいてきた。船首の灯が降り注ぐ雨の中で徐々に揺らいでいく。薄い霧が瞬く間に広がり、船にいた漁師は視界を失ったことで、驚いた様子で叫んだ。「まだ黄昏時だぞ、どうしてこんなに見通しが悪いんだ?誰か航路のわかるやつはいないか!」
黒雲は再び船底に突っ込むと、船にまとわりついて方向を狂わせ、猛る獣のように海岸へと衝突させた。数歩離れた場所で機械職人は微笑むと、ゆっくりと目の前にある巨大な船の残骸へ進んだ。
先ほど叫んでいた者はもう腕の半分しか残っておらず、それは「ぽとり」と機械職人の足元へ落ちた。彼はしゃがみ込んでそれを一度、また一度と見る。あたかも口に入れて咀嚼するかのように。
しかし、彼は最終的にそれを中断した。黒雲は旋回しながら沈んでいき、あの船に残っていたものを全て吞み込んでいった。

抜粋·其の三

……
……
桂木は慌てた様子で門をくぐると、大きな声で叫んだ。「旦那!大きな炉で問題があったようで…!丹羽様を探し回ったのですが見当たらず、宮崎殿も外に助けを求めに出てずいぶん経ちますが、未だ音沙汰がないとか。これは…」
御輿長正はゆっくりと振り向いた。葬式にでも参列しているような厳かな顔つきで、彼が口にする言葉にはいずれも重みがあった。「このようなことを言いたくはないが…桂木。宮崎殿はもしや…もう戻らぬかもしれん。」
桂木はその視線を長正の厚く強張った双肩から、窓の外へとやった——海の上では黒雲が逆巻き、人々を脅かしている。暗黒の夜は妖怪に化けこそせず、自らたたら砂を腹の中へ呑み込めないことを悔しがってはいたものの、それでもこの土地を覆う唯一無二の空模様であった。
もう十数人が死んだ。そうか、だから…
桂木は頬を張られたような衝撃と共に、思い出した。そうか、だから彼らは外に助けを求めたのだ!
最初に船出したのは宮崎だ。彼が発ったときには、あの雲はまだ形を成したばかりだった。たたら砂から稲妻城へ助けを求める、いつもならそう難しい事ではないのに、彼はなかなか帰ってこない。
やがて二人、三人、四人と…助けを求めて皆この天候のなか船に乗ってたたら砂を離れた、それが吉と出るか凶と出るかは分からない。本当のところ、もう誰も危険な目に合わせてはいけないはずだが、現在のたたら砂の状況は切羽詰まっている。例え幾人もの犠牲を出しても、彼らは城からの庇護を求めなければならなかった。

丹羽は姿を消し、誰も彼の行方はわからない。少しの後、長正は危険を冒しながら一隊の人員を連れて大きな炉周辺を探したが、なんの収穫も得られなかった。当初皆は丹羽が何か想定外のことに巻き込まれたかと思っていたが、よくよく考えてみれば、彼はここで起きた異質な事故の責任を担えず、罪を恐れて出奔したのかもしれなかった。
皆は心の中で彼を疑い、長正は不満と怒りを抑えてこそいたが、その顔色は遠くの黒雲と遜色ないものになっていた。
にわかに人影が通り過ぎた。長正は何の疑いも持たず素早く刀を抜き払ったが、人影は揺らめき、悪鬼のように長正の背後を取ると、ひひっと笑った。「だんなは誰をお探しで?丹羽か?」
長正は怒り叫んだ、「丹羽様をそのように呼ぶなど、許せぬ!」縦に一刀すると、人影は薄い霧のように散ったかと思うと、瞬く間に遠方へ集まって、妖しい鬼の影へと化けた。
「お前があの方を殺めたのか?」長正は怒鳴って飛び掛かかろうとしたが、桂木に力ずくで引き留められた。足下をしかと見れば、あと一歩で炉に落ちるところであった。

(残りの部分はどうやらまだ書き終わっていないようだ…しかしこれはさっきの論文にある情報をもとに想像を巡らせて書かれた、空想に満ちた小説であることが見て取れる。)

伝説任務

阡陌で故人を知る者無し

「一心伝」名刀

説明1

不吉な紫の気配を纏う不気味な妖刀。使用者の力を操る強い力を持っている。

説明2

不吉な紫の気配を纏う不気味な妖刀。中に秘められた邪悪な力は弱まり、凶暴さも減った。

説明3

ボロボロになった妖刀は真実の姿を露わにする。生まれ持っての才能も長旅の間に擦り減り、尽きてしまった。

忘れられた盗賊

願いごとリスト

本文

「ちっちゃいハトが欲しい。」
「ちょーカッコいいロボットがほしい!」
コメント:ペットを飼うにはご両親の同意を得る必要があるし、きちんと世話もしないといけないんだよ。
今回はセサルおじさんが、ぬいぐるみのハトを用意してあげたから、ペットを飼う準備がちゃんと整ったら、今度は本物のハトをマジックで出してあげよう。セサルより。


「いくら食べても食べきれないフライドチキンが欲しい。」
「新しいリュックが欲しい。」
コメント:この世には食べきれないフライドチキンなんか存在しないよ。大人になれない子供が存在しないのと一緒だ。
それに、揚げ物を食べすぎると体に良くないからね。健康的なサラダと合わせて一緒に食べること。いいね?セサルより。


「パパとママに仲直りして欲しい。」
「今回のテストでいい点数を取りたい。」
「いつか妹が、危険から遠ざかって、穏やかな生活を送れるようになってほしい。」
コメント:坊やたち、そしてお嬢さんたち。どんな悩みもセサルおじさんは聞いてあげるよ。でも、手に触れることのできないものに関する願い事は、君たち自身の努力で叶えないといけないんだ。
みんなの夢が全部叶いますように。セサルより。


「セサルおじさんの結婚式はいつ?行きたい!」
「大人になっても、セサルおじさんのマジックを見続けたい!」
「セサルおじさん、他のところへツアーの旅になんか行かないで!ずっとここにいてくれる?」
コメント:えっと…今回の願い事はさすがに私の予想を超えていたな。結婚式については、もうすぐ開催できるはずだ。その時が来れば、君たちも誘うから安心してくれ。
ツアーについては、もう決まったことだからね。でも、必ず戻ってくるよ。君たちが好きなら、いつでも私のマジックを見に来ておくれ。セサルより。

セサルの日記・「願いごとリスト」について…

本文

数日前、マジックショーの最中、ハットの中からどうやってキャンディを出したのかと、とある子供に聞かれた。
冗談のつもりで、ハットの中には「願いごと実現マシン」があるんだと答えた。そしたら今日、沢山の子供に囲まれて、これをマジックで出してほしい、あれをマジックで出してほしいとねだられてしまうとは夢にも思わなかった…
やむを得ず、願いごと実現マシンを起動するには時間がかかるんだと嘘をついて、願いを書いてもらうことにした。結果、子供たちが書いた願いはすごい量になって、あちこち走り回ってようやく全部揃ったんだ。
今月は、またモラが貯まらなかった。でもそんなことは重要じゃない。今は新しい問題が出てきた──これだけ沢山のものを、どうやってハットの中に隠せばいいんだ?

セサルの日記・「マジックを勉強したい子供」について…

本文

今日のショーの後に、二人の子供に話しかけられた。こんなに小さい子供たちが大人の付き添いもなく外に出ているなんて、悪いやつに狙われたらどうするんだ?危なすぎる。
彼らはなんと、マジックを教えて欲しいとねだって来た!マジックに興味を持つ子供は少なくないが、あれほど熱心に学びたがる子供は初めて見たな。
マジックを学ぶのはとても大変だと教えたけれど、そんなの、とっくに知っているという顔で返事をしてきた。あの子たちの純粋な瞳にじっと見つめられては、私も承諾するほかなかった。

セサルの日記・「ロレンツォの悩み」について…

本文

ロレンツォは最近、悩みがあるようだ。しかし聞いても、何も教えてくれない。
まさか、私があの子たちにマジックを教えているのが、不服なのだろうか?今度、ちゃんと話し合ってみないと。
あの二人は、本当に才能があるんだ。しかもマジックを学んでみたことさえあるらしい。
斬新なアイデアは既にたくさん持っているから、私のやることと言えば、プロの立場からあの子たちのために訓練プランを立ててやる、というのがメインだ。
私のことを「師匠」と呼びたがったが、私は厳しく断った。この程度の訓練なら、どのマジシャンもできるはずだ。私なんかがこんな天才の先生になるなんて、とんでもない。
時が経てば、あの子たちはきっと私よりもずっと偉大な「魔術師」になれるはずだ。でも唯一心配なのは、あの子たちは同じ年頃の子供よりもずっと大人びていることだ。きっと色々と苦難を乗り越えてきたんだろうな。
ジェマもそう思ってるようだが、あの子たちの目つきが鋭すぎるからと、あまり接触したくないようだ。私は特に、そうは感じないけれども…きっと、私が鈍いからなんだろう。

セサルの日記・「別れ」について…

本文

もうすぐツアーへ発つ日だ。一緒に行かないかとあの子たちに聞いてみたけれど、首を横に振って断られてしまった。
「お父様」の話をしていたのを偶然耳にしたことがある。それに、「任務」とかなんとか…両親は彼らに対して、他の考えがあるのだろう。どうやら別れの時はすぐに訪れてしまいそうだ。
僅か十数日しか一緒に過ごせなかったが、多少なりともあの子たちの性格は分かった。
粘り強く、警戒心も強い。互い以外の他人を信じたがらない。これはいい習慣とは言えないな。
私に対してさえ、色々と秘密を抱えているようだ。例えば、あの子たちの住所や、マジックを学ぶ理由を聞いてみたが…どれも嘘で返してきた。
所詮は子供だからな。いくら誤魔化そうとしたところで、多少は嘘の痕跡を残してしまうものだ。
辛い生活を送っているのが感じ取れる。それどころか、色んな危険を伴う日々なのかもしれない。一般的な子供とは違うんだ。無念だが、私はあまり力になれそうにない。
色々考えた末に──結局、私自身のとある考えをあの子たちに伝えた。この世界は元から嘘と偽りに満ちている。だから私たちはその中から自分なりの真実を見つけることを学ばねばならないのだと。
追記:話がくどいと思われなかっただろうか?今時の子供はみんな自分なりの考えを持っているから、知り合ってたったの十数日しか経たない人間にあれこれ言われて仕舞えば、反抗的な感情を燃やしてしまいやしないだろうか?
追記への追記:いや、きっと考えすぎだろう。この年の子供が、そんな味気ない理屈を真剣に考えたりするはずがない。むしろ、右から左ですぐに忘れてしまった可能性のほうが大きいよな。
セサル、次からはこんな余計なことをするなよ。

怨嗟の地にて新生を

支離滅裂な会話

本文

お腹がペコペコ…お願い、何か食べるものを…
メモを寄越すな、うちらを殺す気か?
お願い、お腹が…本当にペコペコなんです…
今度は通報するからな。もうすぐ見回りの時間だ、できるだけおとなしくしてた方がいい。
食べ物…
……
食べ物…
……
食べ物…
……
食べ物…
……

(以降は何度も繰り返してる、筆跡はどんどん力を失っていく。意義のある交流はできなかったようだ。)
(メモの下半分は酷く破けており、靴跡で汚れている。このメモの主はすでに連れ去られたようだ。)

残された手紙

本文

親愛なるローレン、最愛の娘よ。こんな形でさよならを言わなければならないとは。離れ離れになってから、一秒でも早くメロピデ要塞を離れ、お前のそばに帰り、もう一度お前に慕われる父親になりたいと願っている。

罪人にも許しがあると無邪気に考えているのは自分だけかもしれない。判決が下ったその瞬間に人は死に、罪を贖うための肉体だけが残る。その肉体に同情する人はいない。汚らわしく何の価値もないから。

間違った選択をしてはいけないよ、ローレン。間違いを犯さず綺麗に生きていきなさい。もっと優秀になれるよう、水の上の輝かしいものを掴めるように頑張りなさい。パパみたいに後悔しないように。

私を庇おうとしてはいけない。ここでは誰も信じられない。誰もが人の皮を被った魔物だ。みっともなくて、いつでも腹を空かせているから、遠ざけておかないと。

お前にどんな父親だと思われようと、お前には伝えておきたい。本当に会いたい。本当に愛している。

乱筆なメモ

本文

私は二度と逃げません。
私は許しがあった時以外喋りません。
私は「訓戒」の間、意識を鮮明に保ちます。
私はドゥジェー様からの命令をすべてやり通します。
私は組織の団結に反する行為を積極的に告発します。
私がもし誓いの言葉に背くことがあれば、進んで四級以上の刑罰を受けます。

(全文が手書きであり、紙はしわくちゃで、筆跡が乱れていることから、極度の苦痛の中で書かれたものと判断できる。)
(紙の最後にはサイン代わりの拇印が押されているが、その痕跡から、間違いなく朱肉のような生易しい顔料ではないと判断できる。)

イベント

旧友と新遊

スメール内からの手紙

本文

ハニヤーへ
あなたも、左右加さんも、この間は本当にお疲れ様!
前回、左右加さんに連れられてキノコの仲間たちと会ったとき、「テンテンヨーヨー獣」は一見変わりないように見えたけど、触ってみてやっぱり感じたの。あの子の肌、前よりツヤとハリがあって、力も明らかに強くなってた。もうちょっとしたら、私を乗せて飛べるんじゃないかな…ちょっと楽しみだよ!
「マーベラスゼリー」の効果もなかなかよさそうだったね。キノコの仲間たちをより健康的に成長させられる。時間も労力も省けて、雨林の土壌の地力を損なわない。
もし教令官たちに「マーベラスゼリー」の効果を十分に説明できたら、キノコの仲間たちとシティの植物が養分を取り合うっていう懸念を払拭できるかも。そうなったら、キノコの仲間たちの滞留許可を申請する時、手続きがもっと簡単になるかもしれないよ。
ナジャさんは学者になってからのこまごました用事で忙しいし、私は私で論文の進捗が少し厳しくて…すぐには時間を作れないけど、心配しないで。折を見て、教令官にこのことを報告するね。
ナジャさんはとても真面目な人だよ。「カウトリヤがキノコンの研究分野にもたらした汚名を返上しなきゃ」って、私に念を押してくるくらい。あの勢いがあれば、きっと管理者を全員説得できるよ。ナジャさんの「叡智宝珠」改良が終わったら、おとなしいキノコの仲間たちは人間の中でも猫や犬、駄獣と同じくらいの地位を得られると思うの。
他にも面白かったことはあったけど、また今度会った時、ゆっくり話すことにするね。
第二回大会の計画が決まったら、ぜひ私にも教えて。私も、早く力になりたいから!

遥か稲妻からの手紙

本文

「決意上等、筆を剣にする新参勇者、左右加」へ
新たな称号は気に入ってくれたか、左右加?これは荒谷が募集した新人たちが、汝につけたあだ名なんじゃ。
新人たちは、みなこう聞かされておる——ある先達は海を越え、はるばる異国の雨林に深く分け入り、親交を結んだ魔物を友として暮らしている、とな。
汝のことを、伝統を重んじる作家だと思う者がいる。彼らの目には、汝の「考証」に設ける基準が異様に厳しく、また完璧な作品のためには、危険な場所に住むことも厭わないと映っておるのじゃ。
また一方で、汝がこのような啖呵を切ると考える者もいる。「筆一つだけでは、人々を驚かせる素晴らしい物語は書けない。」、故に汝は剣を取って魔物を成敗し、その中で友に値する者を見つけ、友情を築いた…そして、かの原稿が生まれたのじゃとな。
もちろん、「勇者」という称号を見て、喜ばぬものなどおらぬじゃろう。何せ、半月に一度も家を出ぬ娯楽小説作家たちにとって、取材のためだけに外国へ旅したばかりか、そこに住み着くなど…間違いなく賞賛に値する壮挙じゃからのう。
こうしたひらめきそのものは、「テイム」という題材と関連性が高いとはいえぬ。じゃが少し調整すれば、いつか役に立ついい予備の素材となるじゃろう。
本題に戻るのじゃが、この前送ってきた原稿は実によかったぞ。細部の描写も、雰囲気の作り方も、ずいぶん進歩したのう。
いっそこの調子で、これまで三分の一まで書いてきた原稿もすべて書き直さぬか?
汝も言ったじゃろう。これまでの仲間にはあまり特徴がないゆえ、「百雷遮羅」に着想を得たいと。妾はよい考えだと思うんじゃがな。
雷元素の主人公はそもそもが珍しいんじゃ。「転生系」のような昔からの人気作品以外に、このような設定を採用した娯楽小説はなかなかないぞ。
目に入る効果を考えると、娯楽小説はよく金、白、或いは赤を主人公の色とする、故に紫は逆に新鮮に映るじゃろう。新しい挿絵も書きやすくなる。
それに稲妻の読者にとって、紫が特別親近感を覚える色であるのは、言うまでもない。それについては、思い返してみれば分かることじゃろう?
というわけじゃから、しばらくは特に「百雷遮羅」の世話を頼むぞ。あやつの習性を気にかけてやってくれ。
そうじゃ、「マーベラスゼリー」改良のため、味付けになるものを探しておると言ったな。稲妻の特産品をいくつか手紙に同封したぞ。妾のよく知る「百雷遮羅」なら、これらで味付けした「マーベラスゼリー」を気に入ってくれるはずじゃ。
汝がつまみ食いしてはならんぞ?
次の原稿を楽しみにしておるからのう。

風花の吐息

来賓の旅行プラン

本文

宿泊:ゲーテさんのもう一つの不動産(優先案)/冒険者協会が用意した宿(予備案、要確認)。
飲食:初日はグループ会食。その後、城内のレストランや酒場を自由に利用。また、宿泊エリアに自炊用の設備を用意する。
外出:来賓の観光需要を考慮して、ボクとスクロース、ティマイオス、一部の西風騎士は外出に付き添う。状況に応じてグループ分けが必要。
記念品:入手方法が多い。栄光の風で購入、野外で採取、錬金術で作る、手作りをするなどの方法が選択できる。
学科考察:植物学をメインとする。
公式的面会:今のところ、このような需要はない。

流れゆく水に詩を紡いで

落ち葉に書かれた詩

本文1

あの夜の星空は花畑の香り、
星粒が蜂の如き、
美酒と夢を啄んでいた。
あの夜の二人は初々しい露、
月光は蜜の如き、
泉の傍で唇を濡らした。
けれども私はあなたを離れ、
心の底に詩句を隠して。
それからは、
星々はもう瞬かず、月光は氷のように鋭い。
例え水の下に隠れても、
あなたが泉にこぼす涙からは逃れられない。

本文2

変わらぬ心も時に洗われ。
泉に佇む少年も、髪は白くなり、腰は曲がっていた。
渓流と夢想が同じ海へと流れ込んでようやく、
我々は尽きることのない詩篇の中で手を取り合える。

葉に書かれた返事の詩

本文

蛍光は闇夜に消えず、
堅石は水に流れず、
言葉まだあり、心変わらねば、
小さき決意は天地世界にも抗える。
蜜の如く月光に再び抱かれんことを。

世界任務

問題メリュジーヌと解決ロボ

勇猛奮闘日記

本文

フルーツ団をクビになってからは、とても悲しかった。幸い、今は新しいチームに入って、少しだけマシだ。
新しいチームの仕事は前と少し違う。とにかく頑張るぞ、勇猛ヴァルベリー!

  • 狡猾バブルオレンジ、兄弟よ。いつもおまえを思い出す。
    あんな薬の調合のために、上はドドリアンを刺客に寄越したなんて。おまえはきっと、相当苦しかったんだろうな。
    だが安心しろ、俺様が代わりにフルーツ団でひと暴れしてやった。それでクビにはなったが、後悔はしていない。おまえの魂が天国で安らかに眠れるよう祈っている。
    今、俺様の新居にはたくさんのバブルオレンジが置いてあるんだ。おまえを追悼していることは、誰も知らない。
    ああ…世間を賑わせた「秩序のフルーツ団五大幹部」も、これからは四人だけだ。 ついに最初の任務だ。ロシェとかいうやつの金を取り立てに行く。
    犬野郎め。本当にいい面の皮してやがる!借りた金を返さないなんて。俺様が拳を二つほど食らわせたら、あいつガラクタの山を差し出しやがった。
    よく見るとちょっとは金になりそうなペンダントで、女物のようだ。まさか嫁さんのか?どこまでも情けないやつ。
    こんなやつに嫁さんがいんのか? 今日は大変なことが起きた。責任者のNo.2からNo.41が全員捕まっちまった。スチームバード新聞が俺様たちの商売について暴露したらしく、マレショーセ・ファントムが動いたようだ。
    幸いなことに、俺様は新入りだから今のところ安全…だが分からない、俺様たちの商売はまともな食器販売じゃなかったのか?
    まあいい…ボスに恩返しだ。俺様がまずあの小うるさい新聞社にガツンと言ってやる。 新聞社全体を叩き潰してやろうと思ったが、首領がしばらく大事は起こすなというんで、まずは玄関の愚かな鳥をやってやろう。
    愚かな鳥をブスッと突き刺してやれば、彼らへの警告になるだろう?
    ちょうど他の責任者たちが捕まってしまったので、仕事が終わったらボスのところへ手柄を伝えよう。ボスは喜んで俺の地位を上げてくれるかもしれない。
    奮闘せよ!勇猛ヴァルベリー!

謎の脅迫状

本文

スチームバード新聞社様、ご高覧くださいますようお願い申し上げます。
三十年前のモッソの死。私の心は未だに晴れることはないまま。貴新聞社の、黒を白と言いくるめる巧みな文章を思い出すたびに怒りが収まらず、私はサー・アーサーを誘拐しました。
貴新聞社には心からの懺悔をしていただき、公の場で謝罪を行い、モッソの遺産を引き渡していただきたく存じます。
これ以上嘘をつき真相を隠蔽するようなら、私はあのスチームバードを殺すしかありません。
鴉、それとも黒鵣?かしこ。

もう一通の謎の脅迫状

本文

貴新聞社は悔い改めるつもりがまるでないようですね。実に腹立たしい。
私は仕方なく、宣言通りサー・アーサーを三つ裂きにして、野に葬りました。共に埋葬したのは、三十年前の貴新聞社の悪行です。
さらに、ある情報を流しました。宝の地図には「モッソ博士の基地の手がかり」が隠されている可能性があるとね。トレジャーハンターがぞろぞろと押し寄せてくるかもしれません。
そのとき、貴新聞社の悪行はスチームバードの残骸と共に明るみに出るでしょう。
鴉、それとも黒鵣?かしこ。

モッソの日誌

本文1

「この前、お菓子を食べすぎてはいけないと思い──メロに『こんなに食べると太るぞ』と言ったら、あの子はなんと、泣きながら走り去ってしまった。」
「幸いメロの母親が、『太っても可愛い』という言葉を教えてくれた。すると案の定翌日、メロは上機嫌で私の首っ玉にかじりつき、『お祖父ちゃま!運動しましょ!お馬さんごっこ!』と言ってきた。」
「本当に興味深い…これは『人と人が作る二つの点の間では、曲線こそが最も短い』ということの証明ではないか?」
「うむ、決めた。この嘘発見器を『カーブ』と名付けよう。」

本文2

「本基地緊急システムに関する説明」
「一、非常口は基地の裏側に設けられており、緊急時にしか使えない。」
「二、自爆装置及び配管は内壁に設けられているため、壁を絶対に破壊しないこと。」
「三、上述した緊急システムの使用方法──」
(あとの内容は何者かによって破り去られている。)

本文3

「『カーブ』に関する重要な備忘録」
「一、設計図。」
「二、使用寿命及びコアメンテナンス。」
(あとの内容は何者かによって破り去られている。)

編集長への手紙(草稿)

本文

編集長どの、あなたの判断は正しかった。もはや手遅れだ。数日前、デモ隊が叫ぶのが聞こえた。「カーブを破壊せよ!」と。昨夜、また過激な思想を持つ学生が研究室に押し入り、カーブの爆破を試みたが、幸いすぐに捕まった。
だが、カーブの立場はますます危険になっている。私がどうにかしなければ、以下がその計画だ。
一、審判を行う前に、私は何度もカーブのコアにある「モッソ協定」に関するデータ(実用的な意味はない)の改変を行い、人々を欺くのに充分な痕跡を残した。嘘発見器には嘘発見能力はなく、すべての検査結果はモッソが裏で操作している。
よって「世間の目を欺くデタラメの決定的証拠」は私が渡そう、日を選んで「明るみに出して」欲しい。
二、自分の罪に判決が出たら、私はすぐに決闘を申し込む。私が決闘場で死ねば、事態はきっと落ち着くだろう。
三、御社には世間の注意を逸らすためにご協力いただきたく。カーブがあまり注目されないようにしてほしい。あれは「偽造された役立たずの機械」に過ぎず、証拠としてマレショーセ・ファントムに押収・保管されるべき者だから。
説得は不要だ、私はしっかりと考えた。諸悪の根源である私が死ななければ、波乱は終わらないかもしれない。カーブには私の一生分の心血を注いだのだ。これ以上過ちを犯すわけにはいかない。どうか彼を私の命と引き換えにしてほしい。(今まで私たちがやってきたことはすべて成果を収めている。カーブの嘘学習ユニットには、理解できない余計なデータが現れた。私は、彼に命が芽生えたのだと思う。)
敬具
モッソ・ランボロッソ

歪んだ筆跡の手紙

本文

フン、カーブ、よく悪事を覚えたな。
どこかで嘘のつき方を覚えて、私たちに何も言わないどころかすぐに騙してきた。それでも友達かよ?
今日はお前に復讐してやる。この厳しい試練を喰らうがいい!
恩知らずめ。おまえが嘘つきになれたのは我々のおかげで([旅人]とパイモンが言ってた)でもある、感謝しろ。
ただ逆に、私も感謝しなければ。おまえたちと過ごした数日間で、嘘をつく人たちがそれほど嫌ではなくなったようだ。ああいった嘘には、おまえに言ったように、様々な理由がある。
体面のため、子供のため、家庭のため、利益のため、他人を慰めるため、他人を守るため…
こういう屈折した嘘が大きな網となる。これこそが人間の生活する場所じゃないか?
とはいえ、私はモッソ博士のあの言葉をそれほど正しいとは思えない。何だったか、「人人が作る二つの点の間で、曲線こそが最も短い」。
時にはきっと、拳を真っ直ぐ突き出す必要があるだろうから。
例えば今、私がおまえを懐かしんでいるように。