武器/物語(長柄武器)

Last-modified: 2024-05-04 (土) 20:46:19

☆5

和璞鳶

璃月創立当初、海は巨大な妖怪と魔神の楽園だった。
昔の人は海を恐れながら日々を送った。微力ながらも海と戦っていた。

長い間、巨大すぎる海獣はこの広い海域の王であった。
岩の創造神が作った石クジラと戦っても力は衰えなかった。

あれは璃月の人に「八虬」と呼ばれた魔獣。深海では負け知らず。
海から浮上すると、伴う波は津波のように人の船と家を壊した。

そして岩神は玉石と礒岩を使い、一匹の石鳶を作った。

石鳶は生まれた途端に、大地の束縛から飛び立ち、空を駆け回った。
投げ出した長槍は烈日のように、魔獣と岩クジラの海底の戦場まで貫通した。
そして、二度と浮上することなく、巨獣もろとも深海の底まで沈んだ。
それ以来、璃月の人は海の巨獣の咆哮から解放された。

天空の脊

高天を支える脊。
風神の真摯な着属、風の国を守る決意が動揺することはない。
揺るがない意志は風龍が悪と戦い続ける理由であった。

昔、モンドの平和を終わらせるべく魔龍ドゥリンが襲来し、野原を蹂躙した。
ドゥリンの翼は日の光を覆い隠し、黒い毒雲が散った。
気高い千風は雲に隠していた毒に耐えられず、
黒い雨が降り始め、人の号泣を覆い隠した。
その声に呼び起こされた風の神は、深い絶望で心が千切れた。
そしてトワリンは風と共に、満天の毒雲へと飛び出していった。

巨龍は高空から飛び降り、鋭い風が漆黒の魔龍の翼を切り裂いた。
風龍の翼を追いかけ、各地の疾風が集まり一気に黒雲を撃散した。
トワリンは爪と牙で毒龍を掴み、雲さえ届かないほど高く飛んだ。
漆黒の嵐は黒雲とともに消え、燃える空は巨龍が戦う戦場になった。

最後に風龍の牙は魔龍の喉を切り裂き、爪は胸を貫通した。
罪人の造物は遺恨を残して空から落ちてきた。
驚天動地の戦いは風神の民をアビスの危機から守り抜いた。
しかし、巨龍は毒の血を呑み込んでしまいその体は汚染された。

遺跡に身を隠した風の巨龍は毒により苦しむ。
傷口を紙めながら、トワリンは再び蘇ることを信じた。
再び空を飛び、翳りを取り払い、親友の、風神の琴声で歌うことを。

破天の槍

それは遠い昔、船帆と海獣が波を漂う時代。
当時の璃月港は荒れており、海中では数多の魔獣が暴れていた。

伝説によると、深海には巨大な影がある。
それは渦潮を起こし、堅い船を砕き、獲物を底なしの海へと引きずり込むのだ。
一方、別の伝説によると、海には幻の島が霧の中で出現するらしい......
もし幸運にもそれと出会えたのなら、その者は島に隠されている財宝を見付けるだろう。
さらに別の伝説によれば、その島の正体はうたた寝をしている魔獣だそうだ。

水夫達の間に伝わる話は奇怪なものばかりだ。だが一つだけ、彼らが心の底から信じている話がある。
かつて、岩王帝君の槍が虹を貫き、海を荒らしていた渦潮を深海の中央に刺し止めた。

その日から、頻繁にイルカや鯨がその海域に集まり、泳ぎながら歌っているらしい。
ある人が言うには、イルカと鯨達は自分達が崇拝していた神を憐れんで、悲しみの歌を捧げているとの事だ。
一方で、彼らは虹をも貫ける岩王帝君の宝器に、驚きの声を上げているのだと言う者もいた。

また、こんな言い伝えもある。
いつの日にか、岩王帝君に封印された渦潮が再び目を覚ます。
風は深海の生臭い匂いを陸地へと運ぶ。それは、九つの頭を持つ水龍が引き起こす前兆である。
その時、「海にいるあれ」を鎮めるのは一体誰なのだろう......

護摩の杖

炎ですべての不純を払い、穢れを炎の光と共に、全てを受け入れる中天へと。
この祭儀はかつて世の末時に存在し、各地の薪火を照らし、祝福と退悪の狼煙を起こした。

この灼熱の祭儀は遥か昔、争いの絶えない時代に流行した。
静寂な神骸の妄念と夢は、いずれ疫病や障気と化し、
彼らの物で無くなった民と元から属さない人々を連れ去る。

その際、死を救う医者は夕暮れの如き焔からそれを聞いた、
油が沸き、薪が破裂する音に隠れた囁きを。
「縛り無き焔のみが天地の穢れを浄化する」
「緋色の薪火を上げ、妖魔ども撃退せよ。」

医者は赤い杖を持ち、悪で穢れた物を燃やした。
悪事と災難に巻き込まれた往者と深い悲しみに耐えれぬ死者は、
火の中で塵の蝶に変わり、濁った世界の不幸と傷から解放される。
無数の薪を燃やしてきた医者も、いずれ蝶の如く煙へと変わっていくだろう。

平和と年月とともに祭儀は忘れ去られたが、
暗闇の神の威厳と対面し、心に焔を抱えた者はきっと聞こえるだろう。
煌めく焔の舞が囁き、縛り無き炎のみが天地を浄化すると…

草薙の稲光

薙刀は、穢れを除伐するための武器である。
薙刀を振るう者は、恒常の道を守っている。

雷雲の上に立つ者が大切にしている俗世を俯瞰する時、
目に映るのは浅はかな争い、そして閃滅する泡影・・・
そのような争いは、恒世の敵である無謀な愛執と狂欲に起因するものだ。
不変の恒世を乱す雑草は、雷光により殲滅されるだろう。

「であれば──⬛︎⬛︎の瞳に映るのは、どのような永遠なのでしょう?」
鮮明な記憶の中、櫻の下で彼女と一緒に酒を飲んだ神人は、
このように尋ねた。

実にくだらない質問だ。
酒のせいで、その答えを思い出すのはもう不可能だろう。
しかし、彼女は無数の追憶の中から、その答えを導き出した。
甘美の実には青果、染料には花が必要。
永遠なる静寂の地では、一点の曇りも許されない。

「それでも、 それでも・・・」
「その尊き薙刀で妄念を根絶し、夢想が生滅を許容する可能性を無くす・・・」

「争うこともなく、得失することもない静寂な世界。 それが 記憶を失った謎い道となるでしょう。」
永遠なる心の中、旧友は今でも鮮明で、 緋櫻の香りも新鮮なまま。

年月を経ても記憶は残るように、 あなたのことも決して忘れない。
何故なら・・・

何故なら暗闇の中で大切な人が犠牲になるのを目の当たりにしたから。
理不尽な生と死、そして避けられない運命を、なぜ仇として見ないのか。
誰にも世の無常と緒絶の独楽を覆せないのであれば、
心の中の常世の浄土を、彼女の愛する国に送り届けてあげよう。

息災

俗世のものではない素材により鍛造されたとされる長柄武器。
過去に孤忠で薄幸な人々の手を数多と渡り、
数え切れないほどの殺戮と、面妖な血肉を見てきたという。

伝説によると、邪を祓う者が晶砂の入口を訪れた際、
その深き地から水色の不吉な晶鉱を採取したそうだ。
それを利用して鍛造を依頼すると、出来上がった武器に「息 災」という名を付けた。

「今後、もし災厄が降りかかろうとも、これがあれば鎮めることができるだろう。」
荒涼とした山奥で生きる一族は、口が達者とは言い難い。だが、契約が成立しておらず、 対価も払っていないのであれば、それを受け取ろうとも支障はない。

魔物の軍勢が層岩を侵し、辰砂色の大地を黒に染めた時、
千岩の盾が漆黒の軍勢と衝突して、はぐれた騎兵が死を迎えた。
まるで夕暮れに光る星の如く、息災は渦の中心で瞬いていたという...

黄昏が暗雲を貫いた時、汚泥はついに淵薮の底へと沈んでいった。
息災も、それを振るった夜叉と共に姿を消し、辺りは静寂であった頃に戻った。
それ以降、この長槍を手にした者は皆、似たような運命を辿ったとされる。

しかし、一国の令に縛られることなく敵を討ち、誓いを立てずに民を守る者にとっては、
かような運命を恨みなどしないだろう…

また、この長槍はかつて何者かに借し出され、
冷たい水が侵食する洞窟の中、朋友の反目を見届けたと言われている。

赤砂の杖

まずは陽と月を創った。そして、白昼と闇夜ができた。かつて我が忘れた言葉により、彼女は三つの明月が昇る夜空を語った。ならば、その月の数も三であろう。
世界の影が目覚める時、彼女たちは大地に微かな真珠の光が差し込むことを願った。そうすれば、人々は夜でも砂丘の銀の輪郭を辿り、宿命の終点を見つけられるからだ。

そして、重さを創る。これで砂が沈み、大地となる。重みのないものは空となった。我は決めた——大地に頼りながら、空を夢見ることを。
重さは大きすぎないほうがいい。さもなくば、土地は人の両足を縛るものとなる。人は遠くへ行けず、四方を開拓することもできない。人は飛べず、未来を探求できなくなる。

そして七賢僧を設け、彼らに大地と水、星々が描く軌道を管理してもらおう。たとえ天球がただの幻の造り物だとしても、星月を眺めれば常に神話が誕生する。

元の世界の柵は壊され、闇色の毒が大地に滲みこんだ。あの脆弱で、哀れで、不完全な世界を癒すために、鋭い釘が落ち、大地を貫いた。
だが、我が定めた規律はより優美で緻密、ゆえに必要もない。彼女の付き従ったものが、そのために死んではならない。詩文がこれにより失われてはならないのだ。

毒薬の出処である獣道を隔てるべきだろう。毒を飲むのは空よりも深い罪。しかし、囁きはあまりにも甘美なもの。そこで語られる知恵も、いかに鮮明なものか…
新しい世界で風が密かに吹き始めた。真珠色の月光、琥珀色の残光、草の波と水の根が徐々に沈黙を破り、彼女が残した詩文を吟唱する。

……

七つの輪転を排除しよう——深き秘めごとが絶たれぬように。
恐怖と哀傷を排除しよう——そのためには生死の隔たりを消すことが必要だ。
陽と月と重さを排除しよう——時空に隔たりがあってはならない。
規定、裁決、恩を施すような原始の理を排除しよう——さすれば同族の受ける懲罰に、彼女が怯えることもなくなるだろう。
鳥と獣、魚、竜、人、そして七の僧王を排除しよう——さすれば誰も知恵を盗むことはできない。

……

「隠れた夢の中で王はただ独り、静かに眠り、新たな定理を描く。」
「王の夢で塩水を一滴も飲む必要はない。新世界において、すべては善である。」

……

これで完璧に辿りつく。我は見たのだ、三人が再び楽園で議論する景色を。もう、すぐそこにある。
これでいい、我はようやく理解した。これこそが我の欲するものだと。我が取り戻したいのは、万物の楽園ではない。
すべての理、七の賢僧の詭計、悲しみを取り除いた清浄なる世界、これらはすべてどうでもいい…

ただ、我が誤って飲んだ毒だけは、この世に残してはならない。旧友の仲である彼女を想って——
——我のため、でなくともいい。我らの親友のため、最後に一つだけ…

赤月のシルエット■

☆4

西風長槍

西風騎士団の儀仗用長槍は閲兵儀式で使われる礼器であり、魔物と対抗する武器でもある。
風中を立つ喬木を探すことで、モンドの工学者が元素の活用方法で成果を挙げた。
この硬い槍は西風騎士の栄光だけでなく、モンドを護る人々の勤労と技術の結晶でもある。
肝に銘じてほしい。槍のように自律し、風の自由を守護することを。

古来より槍を武器にするものは距離の優勢で武芸の不足を補った。
木の棒を尖らした平民でも、剣を持った兵士に対抗できるかもしれない。
貴族の統治を覆した祝いとして、郊外には木の杖と旗ざお、ヘーホークがたくさん刺された。

剣術は貴族の風格と知恵を鍛錬することができるため、昔は必修科目の一つだった。
昔の時代では、槍は異教徒の武器だった。
しかしたった一人槍を使った貴族がいた。
伝えによると、エバハートは夜の軽風を借りて露をつついた。

私生児であったエバハートは幼い頃から貴族の栄光を復興することを目指した。
しかし、腐った根を揺るがすには強い力が必要だった。それならーー
嫡子である兄を唆し盗賊の夢を追いかけさせても、
自分が跡継ぎになっても、
裏で槍使いの魔女の弟子になり、その技を身につけた後、
魔女を殺しても…

「後世に唾棄されても、目的を果たすためにどんな手を使っても構わない」

匣中滅龍

璃月に伝わる噂の長槍。
天に昇る龍の彫刻が槍の柄から穂先まで施されている。
噂によれば、槍の先を包むための龍型の鞘があったそうだ。つまり、龍の鞘から
抜かれた槍で龍を倒したことになる。
だが、今はもう鞘はない。槍が矛先を隠す必要ももうない。
どんな強敵であろうと、流星の如き一撃で貫くことができるだろう。

伝説によれば、クオンはこの長槍を作った時、龍の背骨を槍身に、龍の爪を槍先にしたらしい。
故に槍身が強靭で槍先が非常に鋭く、槍の光沢に龍の凶暴さを感じられる。

昔、竜殺しの勇者がいた。この槍を手にし、海の魔物と戦った。
その後、龍殺しの英雄は行方不明になったが、海からは龍の声が響き続けた。

英雄は伝説上の存在となり、龍殺しの長槍も伝説と共に衰えていった。
いつか過去の束縛から解放された時、海に戻る龍の勢いを再び得るだろう。

旧貴族猟槍

かつてモンドを支配していた古い貴族が収蔵していた槍は、素材から製造まで非常に拘りがあった。
そのため、幾世代がたった今でも、新品のように見える。
しかし、貴族の時代では、それは日の光に当たる事なく、月光を浴びていた。

高貴な身分の者は長剣で戦うべきであると、貴族は考えていた。
刀身がぶつかり合う音は、崇高な魂の叫びである。
槍や弓は、身分の低い兵士や平民の武器だ。

熊手と木の槍を握った平民は、剣を持った貴族にも負けない。
古いモンドの統治者には受け入れ難いが、これは事実なのだ。

言い伝えによると、かつて貴族の血筋を持つ青年は、
探し当てた職人に、一族の美しい家紋が彫られた鋭い武器を作らせた。
それは、青年と同じように血を流させなければ、
決して家族から認められる事のない武器であった。

何かを変えたいのなら、力を持たなければならない。
それは、貴族に相応しくない武器にとっても、
月明かりの下でしか槍を振るえない影にとっても同じだ。

黒岩の突槍

希少な黒岩で作られた槍。雲と風を切り裂けそうな槍先は稲妻を彷彿とさせる。
槍先と槍身は黒い結晶で作られ、紅玉が飾ってある。
月明りの下、槍身はまるで血が流れているように見える。

璃月の武器職人である寒武には一人の息子がいる。その子は寒策と名付けられた。
頭が良く、優れた技術をもっているため、後継ぎになってほしいと願っていた。
だが、寒策は鍛造に興味がなかった。侠客の書籍を読んだり、槍の練習をしたりして、槍客になる夢を抱いた。
求めすぎると求めているものが失われる。
鍛造に興味がない寒策を追い詰めた結果、ある日、何も告げず寒策は家を出た。

寒武は晩年の時に坑道の崩落事故に遭い、性格が激変した。寒策はそれを聞いて、急いで帰省する。
元々おしゃべりであった寒武は無口になっていた。後継ぎになってくれなかった息子を責めなくもなった。
その頃から親子の関係は回復し始める。寒策は親への申し訳なさで、どうしたらいいのか分からなくなっていた。
数年後、名匠は天に召された。父の遺言通り、寒策は書斎で伝説の「試作」シリーズの設計図を見つけた。
設計図を保存する箱には、一通の手紙が入っていた。
「我が息子よ、この広い世界を存分に楽しむが良い」

設計図には父の思いがこもっている。寒策は悲しみに包まれ、一晩中一人で座っていた。
朝、寒策がドアを開いた瞬間、鉄隕石が家の前に落ちた。
寒策は泣きながら笑った。これは天の意思だ!と。
鉄隕石に父から継いだ黒岩を使用し、設計図を参考にしながら槍を鍛造した。槍先が非常に鋭く、堅くて冷たい光が輝く。
それを持って世界を旅することはなく、鍛造──父の跡を継ぐことを選んだ。再燃の炎は二度と消えることなく今に至った。

星鎌・試作

璃月の武器工場が作った古い長槍。製造番号や製造時期は不明。
黒い鋼鉄と黄金で作られた槍身に稲妻の絵があり、上品かつ豪華に見える。

魔獣の災いが終息した後、兵士たちは帰還し召集は解除された。平和な時代が訪れたが、世間では武術が流行り始める。
武器の供給は不足し、需要がますます高まった。さらなる高みを目指して、鍛造の名門である雲氏の当主と武器の職人である寒武は閉じこもり研究を始めた。
再び人の前に現れた時、二人とも髪の毛と髭が30センチ以上伸びていたらしい。今までの璃月の武器の概念を覆す「試作」シリーズの設計図も完成した。

最初に設計図に沿って作られた黒金色の長槍。槍先は通常の長槍より7センチほど長く、そして非常に鋭い。
月明かりを浴びた槍先は、夜明けに冷たく光る。

雲輝はこの武器を見て、父の若い頃の英姿を思い出した。父の英姿にあやかるように、名前の一文字をもらい命名した。
璃月の槍や戟などの長柄武器の原点は、この「星鎌」である。

流月の針

世の全てが璃月にあり。これは偉大な璃月港への讃美である。
他の国の珍宝も人と共に璃月港に来る。
槍先はとても細長く、極長の針のよう。石突に弦月型の護身用刃が付いている。
設計者の考えは理解できない。それでもコツを掴めば、普通の槍よりも破壊力がある。

異国の武人は璃月人と違い、奇妙な新戦法で勝利を掴むことが得意。
この槍の使い方は、鎧の隙間を狙って刺すこと。音楽と恋のように。

噂によれば、この長槍を作った少女は、命を絶つ生死の隙間が見えるらしい。
生死の隙間は魔法のように、彼女の細長い槍先を吸い込む。
「万物は死を望むでしょう」と
生死の隙間を持たない少女はそう思っていた。

音楽によって彼女は愛を見つけた。愛によって彼女に生死の隙間が現れた。
最後、針に心臓を貫かれたような痛みがその人生の幕を下ろした時、彼女はようやく分かった。
「生死の隙間が現れるのは死を恐れるから。死を恐れるのは恋しい人や大切なものがあるから」

「ああ、もう一度会いたいな。あの捕まらない、殺せない賊に」
「もう一度彼の唄を聴きたい。もし私が生き残れたら、絶対彼に……」

死闘の槍

百戦錬磨の深紅の長槍。ある剣闘士の勇気の証である。
冷たい槍はいつも相手の血に染まり、雷鳴のような喝采を浴びていた。
剣闘士は血に染まる宿命。届きそうで届かない自由のために戦う。
深紅の鋼鉄が体を貫き、戦いに終わりを告げた。

奴隷の剣闘士は最後の一戦を終え、大地を揺らすほどの拍手を浴びた。その時、彼の主はこう言った。
「これで約束の勝利数に達した。よくやった。名誉に相応しい立派な剣闘士だ」
「この長槍は私からの送別の品だ。しかし、本当に戦いを止めるのか?」
「自由の身となっても、自分の、そして私の栄誉のために戦い続けないか?」
数年が経ち、無数の戦士や獣がその槍に貫かれた。
常勝の名は決闘の槍と共にあり、戦士の心は彼の主と共にある。

剣闘士の最期の一戦が終わった。大地を揺らすほどの拍手の中、
長槍は地に落ちた。赤い髪の少女が灼熱の剣で老戦士の心臓を貫いた。
戦士は崩れ落ち、敬愛する主、自分を愛してくれた高貴な主に顔を向けた・・・・・・。
「エバハート、エバハート様・・・・・・最後の闘い、ご満足いただけたでしょうか」
既に主の席には誰もおらず、去り際にこぼした盃と銀皿だけが残っていた。

「最初は自分のために戦った。自由のために闘志と血を沸かした」
「でもいつからか、あの方の名誉のために戦うようになった」
「他人のためになら、愚かな獣のように無心で戦える」
「自分のためではなく、一族のために戦っているお前なら、当然理解できるだろう」

ドラゴンスピア

彼はとてつもなく長い夢を見た…

夢の中で彼は仲間とはぐれ、遠い道を行き、
歌声が響く、緑の草原にたどり着いた。
心優しい人々と共に歌を歌い、
宝石のように美しい巨龍が空を舞っていた。

目を開けると、吹雪が吹き荒れる山脈にいた。
緑の大地は火と血によって赤く染められ、
詩人の琴の音もその中にかき消された。
そして宝石のように美しかった巨龍は、
恋人のようにその牙を彼の首にあてた。

「さらばだ、これで俺の旅は終わった」
「白銀の雪の中に眠るのも悪くない」
「さらばだ、美しい詩人、美しい龍」
「もし違う場所、違う時間で」
「出会い、歌い、踊っていたら、どれだけよかったか」
死に向かう彼はそう思った。

「俺の血に宿いし祝福よ」
「この美しく漆黒の宇宙は」
「お前たちが引き継いでくれ」

千岩長槍

古代の千岩軍兵士が愛用していた武器。
孤雲閣の岩の欠片でできている。龍の鱗をも貫けるらしい……。
あまりの重さに、現在の千岩軍は使用していない。

古代の千岩軍は岩王帝君を敬い、箴言に従って行動していた。
「千岩牢固、揺るぎない。盾と武器使ひて、妖魔を駆逐す。」
千岩軍の使命は、妖魔を討ち滅ぼし、街道や郊外を守ることであった。
平和な現代において、彼らの使命は秩序を維持することである。

昔、地震が頻発する時期があった。
地面を掘り出し、負傷者を救い出すため、屈強な千岩軍の兵士に、
古代戦争で用いられた極めて重い千岩長槍を配ったという。
「千岩長槍の鋭さは、岩をも簡単に貫ける」
「千人が一つになれば、我々の前に阻むものはなし」

遥か昔、激動の時代、
千岩軍の誰もが、この重い武器を自在に操れた。
だから、彼らは岩王帝君の土地を守り、自分の故郷を守ることができた。
千人が一つとなり、千岩長槍の鋭さで全ての妖魔を駆逐する。我々の前に阻むものはなし。

喜多院十文字槍

喜多院文宗が自身の槍術に合わせて設計した変わった形の槍。
素人が扱えば、特殊な重心が扱いづらく感じてしまう。
だが正しい使い手なら、破格の破壊力を発揮できる。

喜多院は遥か昔、「祟り神」を殺す家系だった。
長い間、「ヤシオリ守」を務めてきた。

昔々、稲妻の地に伝わる童謡にこういうものがあった。
「大手門荒瀧、胤の岩蔵、長蛇喜多院、霧切高嶺」
大地を照らした眩い武人たちを讃える歌だ。
昔はもっと沢山の名前があったが、それらは歴史に埋もれていった。
長年妖魔を殺す者は、穢れた血を飲むこともある。

『漁獲』

昔、稲妻に名を轟かせた大泥棒が愛用していた槍。
本来は狩猟用の銛だが、戦闘時にも活躍する。
剣を持つ魔偶でさえも、貫通されたことがある。

「ははっ、かつて俺はこの『セイライ丸』の主だった。」
「十隻以上の船を指揮し、セイラの不死鬼として名を轟かせた。」
「今の俺は海に浮かぶ一枚の葉っぱのようだ。」
「もし蛇目を島の棄民たちがいなかったら、」
「再び船で故郷に足を踏み入れることすらできない。」
「しかし今、俺のセイライはもう既にこのザマだ。」
「稲妻列島にも、もう俺の居場所はない」
「心配症だった神社の年寄の巫女も、いなくなっている…」

かつて赤穂百目鬼と呼ばれた盗賊がこう嘆いた。そして彼はこういった…
「蛇目!俺は今世界で最も自由な男だ!」
「巫女のばあちゃん!お前は世界を見てみたいって言ってたじゃないか?」
「いつも話してた惟神と昆布丸が行った場所とか、」
「この俺、赤穂百目鬼左衛門が連れてってやる!」
「世界の果てがどんなものか、一緒に見に行こうぜ!」

「全ての路線の終点で、必ず再会する!」
「時が来れば、俺が遠国の話をする番だ。」

斬波のひれ長

海祇の名将である「海御前」の薙刀。その刃には海淵の青白い光が輝いている
かつて、この者が鳴神の水軍を畏怖させたことは、長い島唄の中で語り継がれている。

双子の海祇巫女が口ずさんだ鯨の歌は、波に乗って、島民の夢と共に流れていった。
海祇の勇士たちは皆、双子の巫女に希望と闘志を託した。
先陣が、波の花のように白い長巻を高く掲げ、他の島へと進軍せよと叫んだ。
しかし、大御神とその配下である大将の輝きが、まばゆい迅雷に届くことはない…
やがて、曚雲は漆黒の鴉羽に呑み込まれた。彼女たちと合唱していた巨鯨も、海の底へと沈んでいく。
幼い童のように追い縋った先陣の藩主も、大地の裂け目へと消えていった。

「海御前」は波にさらわれ、各島の共通する伝説となった。
その伝説とは、戦友の骸を取り戻すため、単身で天狗の軍陣へと乗り込み、奮 戦の末に命を落としたというもの。
または身を隠した彼女が、旗艦に乗って世界の端にある闇の海へと出航した、という説もある。
彼女が、かつて世に波風を立てたことを証明するものは、この鋭い薙刀しかない。
荒れ狂う波が海にある限り、その歌の記憶は語り継がれていくだろう。
言い伝えによれば、ホラガイと深海に沈んだ巨鯨の腹からは、今も歌の余韻が聞こえてくるそうだ。

ムーンピアサー

「この物語は、月明かりに魅せられたすべての子供達に関わるもの…」

時折、孤独に輝く月を眺めているとき、子供たちはまるで最後の森林王が息を引き取る間際のように悲しんでいる。
こんな伝説もあるーー森林王の足跡は中に留まった満月を映す水を飲むと、王の近侍になれるそうだ。

月に関する物語はこうだ。これはとても古い夢から来た物語で、その夢はサウマラタ蓮の中に隠されている。
アランムフクンダがザクロから生まれるよりも遠い昔…高貴で美しい偉大な種族があなた方の先祖と共に歩んだ時代に、
三人の姉妹がいた。夜になると彼女たちは真珠色の宮殿を抜け出して、砂漠を歩いた。足元にはサウマラタ蓮が咲いていた。

……
やがて、明るい月のうち二つが塵となって、消えてしまった。最後に残った姉妹の一人は悲しみのあまり、彼女の御殿から出てこなくなった。
長い時を経て、月の塵屑がやっと地面に落ちてきた。その時、草木の神は砂漠の地に森をもたらした。
そして…月の屑が落ちてきたところにはサウマラタ蓮が花開き、この月屑を吸い込んだ子供たちの心にはいつも、真珠のように明るい月が宿るようになった。
そんなわけがあって、月に惑わされる子供というのは絶えないのだ。夜になるとサウマラタ蓮が咲くことも、月明かりがこういった子供たちを愛するのもこのためだ。
お互いを映し合う三姉妹は、いつどんな時も離れたくないと願っているのだ。

この物語を語った後、あのサウマラタ蓮は散ってしまった。そして彼女は、長い間待っていたーー砂漠が森になり、偉大な種族が衰えてしまうまで。
それは私たちが地上に出るとともに、この物語を私たちに語ってくれた、彼女と話ができるあのアランナラが彼女の前に現れるのに、十分な時間だった。
かのアランナラはその後、沢山の記憶を失い続けた。ヴァナラーナが滅ぼされ、私たちが夢の中に入るまで…
けれど、それでも構わない。月の物語は、私たちとあなたがたの心の中で、真珠のように輝く月へと育っていくのだから。

月に魅せられた子供が月を眺めると涙が出てしまうのは、月が細かい砂になって目に入ってくるからだ。
数多くの物語の中で流す涙は、決して無駄にはならない。

風信の矛

故郷を離れた旅人が遠方より帰る時の道しるべ。どこにいても、銀の鷹は風の行く先を見る。
青色の羽は彼女の軽やかな歌声でひらりと落ち、帰郷する人を柔らかな風の吹く彼方へと導く。

「君の出身を気にしない、その犯した罪も気にしない。ただ…」
認められない「坊ちゃま」はそう言って、そっと少女の顔にある血を拭き取った。
「変革の風が大地へと吹き届いた時、君は私のそばにいてほしい。」
「鷹は私が殺した。この件は、君と私だけの秘密にしよう…」

将来、凶器の槍によって血縁者が掲げられ、滴る赤い血が雪の中で黒に変わるのを見るように、
彼女の心も、その心にいる本当の「坊ちゃま」によって、形なき弓矢によって射抜かれた。
その時から、彼女は一つの目を下女として自分が処理すべき事柄に向けて、
もう一つの目を彼が描く未来に必要な「任務」に向けた。
彼のそば——いや、その後ろにいる大勢の一人でも構わないと夢を見て。
もし本当の「坊ちゃま」と一緒に、自分の理解できない風を浴びることができたら…
そのためには、抜かなければならない「釘」と「ほぞ」が数多とある。盤石の存在を傾けなければならない…

「プリシラ、悲しんではいけない。この世の万物には、代償が付きものだ。」
「覚えておいてくれ。たとえ不幸にも事が発覚しようと、望風海角で狼煙を起こすことを。」
「変革の風が大地の果てまで吹いた時、君と私は狂嵐の先駆者となるだろう。」

「はい、エバハート坊ちゃま。」
そう、血筋も職責も忘れ、別れと憧憬を忘れよう。
釘はもう多くない。その時は近づいていて、昔日の栄光の風は間もなく帰ってくる。

しかし…
家族の猟犬が事件の経緯を朧気に察するまで、その帆は岬に姿を現すことはなかった。

最後、彼女は軽く笑った。かつての彼女は自分の運命に満足せず、無数の人の運命に対しても良いと思ったことはなかった。
だがこの時、この瞬間、彼女が首をもたげ、あの蒼白の月光を見た時、あの月光のような剣影を見上げた時——
雑多な貴族の嘲笑の中で、なぜか彼女には戸惑いも怨恨もまったく湧かなかった。

釘はもう多くない。その時は近づいていて、昔日の栄光の風は間もなく帰ってくる。
坊ちゃまもまた風見鷹のように、狂風が吹くほうへと導くだろう。
私のことを嘆かないで。もうすぐ、私は千風の中の一筋となる…

フィヨルドの歌

伝説によると、冬はヒュペルボレイアから来たという。かの地のフィヨルドとオーロラは狼の牙のように曲がりくねっており鋭い。
氷の川と雪の砂が絶えず新しい裂け目を切り開き、また埋めるため、地形は目まぐるしく変わる。
しまいには、この凍土にまるで意思や願望でもあるかのように、自分と大陸のへその緒を切断した。
残されたのは氷海の奥深く、黄金と白石の国を発見した少年アヤックスの伝説だけだ。
ぶ厚い氷から放たれる寒気の中、英雄たる少年の物語は、ほのかな温もりと光をもたらしてくれる。
彼の物語はたくさんある。船に乗って巨鯨の腹の中に飛び込んだり、雪原の龍と七日間に渡って対峙したりもした。
スネグーラチカと恋に落ちたが、生霊を入れ替える悪戯で恋人を失った——悲しい物語だ。

最後に語るに値する物語は、次のようなものだ。
銛で海氷の下から魚を獲って暮らしていた少年は、見たこともない王国に落ちた。
太古の災禍で大地の奥底に沈んだ都は、地底にあるにもかかわらず、昼間のように明るい。
厳かで寡黙な王は白い石で作られた巨大な玉座に鎮座し、手にした杖には虫喰いもなく、
庭園にある銀色の木の根は母親か恋人のように、賢明なる祭司を懐に抱いている。
美しく不思議な生命と、ひねくれて凶暴な魔物が、千年の長き眠りから目を覚ます…

遥か彼方から声が聞こえる…

「……父さん!ねえ、父さん!魚がかかったよ!」

「…おっと、すまん。」

「それで?それからどうなったの?」

「確かに…最後に少年は、王国の奥深くに眠る龍と戦って勝った。」
「龍の財宝は尽きることのない黄金だった。だが少年は善良で聡明だったから、黄金こそが災いを引き起こす本当の原因だと見抜いて、自分にとって必要な、親友の病気を治せるわずかな分だけを持って帰った。」

「あれ?それでおしまい?」

「おしまいだ。」

「そっか…じゃあ、別のお話をして!」

「別の話か…また今度な。今日はここまでにしよう。魚がみんな怯えて逃げてしまう。」

正義の報酬

コソ泥はしょせんコソ泥だ――たとえ、どんなに巧妙な手品を使おうとも…
犯罪は公然と処罰されねばならず、嘘は皆の前で暴かれなければならない。
世界はそう回るべきであり、正義とはかくあるべきだ。
だが「かくあるべき」ことは、なかなか上手くはいかないもの。

若い頃、ある剣客と刃を交えた。狡猾な両目に惑わされ、故意に遅らせた動きに騙されると、
ついに致命的な隙を見せてしまった。そして、腕を剣先で刺され負傷したのだ。自分の槍術の未熟さを痛感せざるを得なかった。
その剣客を探し出し、もう一度全力で戦い、決着をつけようと思ったが…はからずも早々に引退したことを知った…
彼は奉公時に傷を負ったことで、マスクをつけて生活していた。以前は歩くたびに聞こえた挑発するかのような軽薄な声も、もう聞こえない。
数々の問題に向き合うのに嫌気の差したファントムハンターは、強い酒に溺れることになった。

これは間違いなく、これまでの人生に対する裏切りだ。しかし、槍使いは自分でその事情を明らかにしたかった。
そこで彼女は剣客の足跡と傷を追って、ひたすら運命の相手を探した…
大事な人が運命の決闘場で倒れ、心がボロボロであるにもかかわらず、
剣客が残したマスクを追うと、あらゆる変化が報われるかのようだった。

しかし、追跡の終着点は意外にも、伝説の決闘代理人が求めていた正義とは無関係なものであった…

「おお、今回はかの有名なマルフィサか…」
「安心するといい。君の槍術は有用だ。」

「マスター。これはもう二人目です。次はおそらく…」

「分かっている。」

プロスペクタードリル

地面や石材を簡単に掘削できる便利なツールで、
探鉱などの様々な作業に幅広く使われる。
石工や建設に従事する職人もその特性を利用して、
石材を切削し、おおまかな形を作っている。

かつて作業場や船渠で流行したチェーンソーと同じく、
相対的に効率の低い燃料を動力源としている。
制御可能なプネウムシア対消滅が発明されていなかった当時、
クロックワーク·マシナリーは運動学と動力の制約により、
まだ大半が物珍しいオブジェクト、嗜好品程度の扱いだったため、
様々な力作業を人力でこなす必要があった。

長い柄は燃料タンクなので、乱暴に扱うべきではない。
しかしかつて戦闘に使われていたという文書や記録もある。

こうした長柄のドリルの穿孔、切削能力に並ぶものはない。
熱したナイフをバターに刺すかのように深々と岩石に食い込めるため、
岩石ほど硬くない物であればなおさら易々と扱える。
様々な進歩に伴いフォンテーヌの歴史の舞台から去り、
他のツールと同様、許可なく所有することは禁止された。

砂中の賢者達の問答

キングデシェレトに使えた七人の賢者が姿を消した後は、その功績も風にさらわれ、医師に刻まれた名前だけが残された。
しかし、今や医師に刻まれた名前さえも時と共に蝕まれ、黄金のような砂になり果てた。
赤砂の副王、七賢者の長、卿相の中の卿相——羊の王。
太陽のもとへと飛んでいく鳥、王の魂――聖者ベンヌ。
ライオンの身体と人の顔を持つ者、王の意思――聖者シェセブアンク。
そして最後に、王の血肉を授かったが、自らを七賢者に属するとは考えていない龍――アブ・アペプ。

ワニの王とトキの王は常に言い争い、その日も彼らは物質の転換について論争していた。
ワニの王は不思議な術に通ずる者を探してきた。この地に留まる純水精霊の祝福を受けたために、その手に触れたあらゆる液体が、適切な調合によって美酒へと変わっていくのだと言う。
トキの王はもう一人の才ある者を呼びつけた。それは、古の魔神の墓に入り、誤ってその死骸に振れたために呪いを受けた者だった。
その手に触れたあらゆるものは純銀へと化していく——今では、物を黄金やモラに変えるのは、貴金の神にだけ許された神業であるにもかかわらず、である。
二つの不可思議な転換は果たしてどちらが勝つのか…二人は賭けをした。そして、彼らはヘルマヌビス——七賢者の最期の一人——に結果を予測するよう頼んだ。
ヘルマヌビスは砂漠の賢人であり、祭司たちの長でもあった。さらに彼は勇者であり、賢者でもあった。人には錬金術という学問があるが、彼もそれに精通していたため、判断を彼にゆだねるのは合理的だと考えた。

「二つの偉大な力は相反し、まるで鋭い矛と堅い盾のようだ。」ヘルマヌビスは続けた。「二者はそれぞれ一歩譲るであろう。それが均衡の理だ」
結局、杯は純銀となり、砂を含んだ砂は銀の粒こぼれる美酒となった。

しかし、ワニの王とトキの王はヘルマヌビスの忠告に耳を傾けることなく、論争を続けた。その後、彼らは奇妙な召喚魔法を発明した。
ワニの王とトキの王は千年を超えてなお、七星召喚の戦場であの時の勝負を続けている…
それがいわゆる、「召喚王」の物語である。

☆3

黒纓槍

ある日の夜、白紐の槍を持つ士官は詩人と共にお酒を楽しんでいた。
一番盛り上がったところで、詩人がうっかりと硯を倒した。
零れた墨で槍の白紐が墨色に染められた。
「もちろん、これは士官と詩人の物語であり」
「わしが持っているこの黒紐の槍と関係はないのじゃ」
と言いながら、年寄りの職人が弟子の頭を軽く叩く。
弟子は真新しい白紐の槍を墨染めにしてもらった。

鉾槍

武術を学んだ人であれば、誰でも長矛の力を発揮できる。いわゆる「一寸の長さは一寸の強さ」とのこと。
長矛の先に厚くて重い刃をつける。さらに重くなるが、叩き切ることを実現した。様々な場面で使える。
このような長柄武器は腕力に自信のある者に人気があり、千岩軍士官の勇武の象徴でもある。
今の璃月港は平和であるが、街中に斧と矛を持ち歩く人を見かける。

千岩軍の隊長はいつも部隊の先頭に立ち、畏れずに進む。
彼らを守るのは忠実な戦友と自分自身の武術である。
近づいてくる敵にとって、斧と矛を振り回す隊長は一番厄介な者になる。
そして盤石な陣形の真ん中にいる兵士こそが、千岩の陣の要である。

白纓槍

千岩軍の兵士は長柄武器使いとして有名である。
手にする白紐の槍は黒岩場の量産型の物。
この武器は数千年の間に起きた戦いを経験してきた。
白い紐が汚れても、戦場に舞う。

伝説によれば、かつて千岩軍に槍術の達人がいた。
千軍万馬の戦場で槍の白紐を汚さずに敵の将軍の首を簡単に取ったという。
「その伝説の主人公は槍ではなく、英雄の人だ」
「その武器はただの普通の武器だ」
と言いながら、年寄りの職人が弟子の頭を軽く叩く。
弟子は新しく作った槍に白紐をつけてもらった。

☆2

鉄尖槍

ほぼ迫力を感じさせないみすぼらしい武器。
守るべきものがある人や、
己の身一つしか持たない旅人にとっては、
そんな武器でも、十二分に力を発揮できるだろう。

☆1

新米の長槍

モンドでは昔、槍を持つ事は貴族によって禁止されていた。
表向きでは、剣術こそが高貴な嗜みであるためだと言われていたが、
実際は、多くの鍛錬をせずとも扱える槍を
平民の手に渡らないようにし、反乱を防ぐのが理由であった。