バッグ/任務アイテム/本文(Ver1.0~Ver2.3)

Last-modified: 2024-05-05 (日) 03:28:56

物語:キャラ/ア-カ | キャラ/サ-ナ | キャラ/ハ-マ | キャラ/ヤ-ワ || 武器物語 || 聖遺物/☆5~4 | 聖遺物/☆4~3以下 || 外観物語
図鑑:生物誌/敵と魔物 | 生物誌/野生生物 | 地理誌 | 書籍 | 書籍(本文) | 物産誌



!注意!
原文を忠実に写しております。改行誤字・脱字変換ミス句読点やダッシュ等の誤った用法などを全てそのまま記しているため、このページでそれらを発見しても、すぐさま訂正することはやめてください。
まずはゲーム内の原文を確認し、照らし合わせてください。間違っていた場合のみ、訂正を行ってください。
なお、転記ミスと勘違いされやすい誤字などには、その箇所の直後に「*」を記しています。
また、読みやすさの為ページ幅を制限しています。文字サイズにつきましてはブラウザの拡大機能をご利用ください。
■がついているものは内容が不足しているものです。

バッグ/任務アイテム/本文(Ver1.0~Ver2.3)

ヒルチャール語ハンドブック

本文を読む

一族で最も変わった子だが、最も可愛い子でもある我が孫娘「エラ」に残す。

このハンドブックでは、ヒルチャールとの交流に必要なサポートを提供する(自身の責任で使って欲しい)。
ヒルチャール語を学ぶ目的であれば、正規の教材で。例えば私の他の著作など。

あいさつ、礼儀:
『Da/Dada』
1.いい/とてもいい。2.話の途中での相打ち、「あぁ、へぇ」など。3.とても/最も。
ヒント: Dada upaとは、高い/大きな山という意味。

『Ika ya/Ika yaya/Ya ika/Yaya ika』
1.悪い奴/悪い奴ら!
ヒント: ヒルチャールがこの言葉を言ってきた場合、自信があるなら応戦、ないのなら逃げた方がいい。

『Muhe』
1.好き、欲しい。
ヒント: ヒルチャールから好きと言われることはあまりないため、欲しいという解釈の方がいいだろう。

実用単語:
『Gusha』
1.植物 、草、果物。嫌いな物。
ヒント: Mosi gushaは草を食べる以外にも、不機嫌を表す言葉。
しかしヒルチャールが本当にGushaと言ってきた場合、果物や米や麦が欲しいのか、それとも不機嫌なのか、言い方から察するしかない。

『Mita』
1.肉、美味しいの。好きな物。
ヒント: In movo lata mita/Mita in movo lata/Mita movo lata とは、水の中の肉を意味する。 大人になったエラなら意味が分かるだろう。

『Upano』
1.意味が難しいため直接ヒントまで。
ヒント: これは上、高、飛によって構成された単語。虫、鳥、雲、偵察騎士、大柄なヒルチャールに吹っ飛ばされた小柄な仲間などを意味する。とにかく難しい。

『Celi』
1.熱いの。熱い物。火。
2.「太陽」Celi upaのUpaを取っても太陽と指すことがある。
ヒント: 一つ不思議な描写がCeli lataで、冷たくて熱いを意味する。
これは光っているが熱くない物を指す。例えばCeli lata gushaイグサ。
またはCeli lataホタル/星/月を意味する。

『Kucha gusha/Unu gusha』
1.種。
ヒント: この単語を並べるとは自分でも思わなかった。ヒルチャールは専門的に種を植えることはないが、種を蓄える習慣があり、気分が良い時に適当に埋める場所を探す。Kuchaはヒルチャール語で軽蔑の意味を持った「小」で、Unuが数字の一。ヒルチャールの神と原初の物の概念となる神聖な単語。この二つの単語で種を表すとは、実に興味深い。
ちなみに、二はDu、三はUnu Du、四はDudu。では、五はなんだろうか?
正解はMani、同時に手と労働を意味する。

『Sada』
1.固体、固いの。
ヒント: ヒルチャール語でUpa Sadaとは、何かの準備ができたという意味。

『Boya』
1.他の単語と組み合わせて色を表す。
ヒント: 何度か行ったテストから、おそらくCeli boyaが赤、Gusha boyaが緑、Lata Boyaが青、Nini boyaが白、Nunu Boya/Sama boyaが黒、Unu boyaが黄であることが分かった。

時間と方角:
『Aba mosi dada』
1.起床してから昼ご飯前まで。
『Unta mosi dada』
1.昼ご飯から日暮れ前まで。
『Mosi aba nunu』
1.日暮れから深夜まで。
『Unta nunu』
1.深夜。

『Du ya zido dala?』
1.これはどこだ?
ヒント:ハンドブックで方角に関する単語は載せないことにした。ヒルチャールに絶対的な方角概念はなく、すべてが前後左右だけなのである。しかし彼らの前後左右が、君の視点からなのか彼らの視点からなのかは、君たちの関係によって決まる。関係が悪い場合は、ヒルチャール自身の視点に基づく。
最も推薦する方法は地図を持って尋ねること。そうすれば、場所を指してくれるだろう。

神性と共に・序

本文を読む

神と教会の束縛から逃げ出し、テイワットの北陸に着いた時に私たちは確信した。風神バルバトスがモンドから姿を隠した後でも、モンドの民の生き様は依然として数十年前と変わらないことに。モンドの民をよく観察すれば分かってくる。彼らは自由気ままで闊達な気質を持っている。農作に適した気候が最大の理由だろう。衣食が足りていて、穏やかな生活を送っている彼らは余った食料を醸造に使う。そして、大量のお酒がまた彼らをより闊達にする――風神自らは、彼らモンドの民に醸造とお酒の楽しみなど教えていないのに。
では、私たちに神などいらないと読者の皆様に思わせてしまうだろうか。むしろ逆だ。簡単な例を挙げよう。もし風神バルバトスが神の力で温暖な季節風をモンドに導いていなかったら、モンドは今のように有り余るほどの食糧やお酒を持っていただろうか?
答えは否だ。モンドは内陸都市のため、バルバトス様の力がなければ生きていくことすら難しい食料不足に陥っていただろう。モンドの歴史について振り返ってみよう。モンドはかつて氷雪に覆われた土地だった、もし風神バルバトス様がいなければ、お酒のどころか、日常生活すらままならなかったことが目に見えている。
冗長な序章となってしまったが、この見識の浅い本を読む際、読者の皆様には1つの観点を持って読んでいただきたい。確かに、神の力によって私たちの身近な環境は形成された。だが私たちの思考、論理、文化、哲学に影響を与えたのは神そのものではなく、私たちの周りに客観的に存在した環境だ。本書のタイトルと同じように、テイワットの人々は神性と同行するが、それはただの同行を意味しているにすぎないのだ。

風、勇気と翼

本文を読む

世界に最初の風が吹いた時
空に羨望を抱いたスズメは翼があるにもかかわらず
飛ぶことができなかった
彼らは風神に問いかけた
どうすれば 大空を抱きしめられるのかと
一番大切なものがまだ見つかっていないから
そう風神は答えた
風は草原を撫で
蒲公英の種を彼方へと飛ばす
彼らは必死に翼を広げた
ただ草原の風はあまりにも優しく――
足をもつれさせるだけだった
そして 彼らは峡谷を訪れる
吹き荒れる狂風は彼らに自らの力を見せつけた
彼らは勇気を振り絞り谷から飛び降り
うなる風の中で翼を動かす
あの空を自由に飛べるようになるまで ただひたすらに
そして 彼らは嬉々として風神に言った
なるほど 風の強さが足りなかったんだと
風神は答えた
いや 大事なのは強き風ではなく勇気だ
それが君たちをこの世界で初めて飛ぶ鳥にしたと

飛行指南

本文を読む

1、飛行前に心身の健康状態を確認すること。

2、飛び立つ時は風域、または高い地形を利用すること。

3、風の翼を使用する時は風力と風向きに注意して、バランスを維持すること。

4、空中の交通状況に注意して、飛行免許で決められた日に風の翼を使用すること。

5、降下時はバランスを保ちつつ、安全な高度で風の翼を収納すること。

6、飲酒後は風の翼の使用は絶対禁止!

違反事例:

1、娘の機嫌を取るために、ルドルフ氏は自宅の二階から風の翼で飛び降り、左足骨折、臀部の打撲傷などの重傷を負う。ルドルフ氏は1年間飛行禁止の処罰を受けた。

2、観光客のアリスは風立ちの地で風の翼を使って飛び立つ時、風スライムを攻撃して爆破気流を発生させ、風に乗って高く飛び、アクロバティックな技をいくつも繰り出した。民衆の喝采と好評を得たが、10日間の謹慎処分を受けた。

3、お酒仲間に自分の「超絶な琴の腕前」を自慢するため、吟遊詩人ジョセは風の翼で飛行しながらライアーを演奏しようとした。さらにその時、彼は新作の長詩を空で読むことに固執していた。
十分間にわたる耳障りな琴の音を聴かされた後、多くのモンド人が「バルバトスに比肩する六指のジョセ」が空から祈りの泉に落ちるのを目撃した。幸い、バルバトスは身の程知らずな人だろうと気に掛け、見守ってくれている。
ライアーと風の翼の損傷は激しかったが、ジョセ本人は擦り傷程度で済んだ。危険飛行と生活秩序を乱した事実により、ジョセには5年間の飛行禁止処分と3か月の強制的な社会奉仕活動が命じられた。

宝物の手がかり(1)

本文を読む

湖の城に、
六本腕の巨人が三体いる。
二体は神の像を守り、
一体は神々の財宝を守っている。
宝物の手がかり(1)_閲覧.jpg

宝物の手がかり(2)

本文を読む

彼女は彼のことを愛してなどいなかった。
清き泉の情熱はただの虚像。
寂しさに震える時こそ、
彼女の心が見える。
宝物の手がかり(2)_閲覧.jpg

千年孤独

本文を読む

何年も後、ゴドセが自分で仕掛けた罠に足を挟まれた時、彼は父親に連れて行ってもらったバドルドー祭の午後を思い出す。
ゴドセの一生は不幸だった。己の不幸がいつ始まったのかは覚えていない。
彼は子供時代を清泉町で過ごした。泉の精霊の加護の元、ここは狩人にとっては安寧の地だった。
ゴドセが七歳だった年の夏、父はバドルドー祭のサーカスを見るために、彼を連れてモンド城へ行った。ゴドセは生まれて初めて城内に入った。キャンディーと肉の焼ける香り。輝く七色の紙吹雪とランプ。ピエロが操るイノシシと魔術師のマジックショー。全てが彼の目を奪う。
眩しい子供時代の記憶の中で、ゴドセはぼんやりと父が人混みに入り、「積み上げ大会」を大きく書かれたアーチを潜り抜け、自分から遠ざかっていくのを見た。だが、彼の集中力は光り輝く泉の精霊に奪われていた。
彼がもう少し大きかったら、その精霊はたかが20モラで雇われた役者である事に気付けただろう。だが、幼い子供は常に空想に満ちているのだ。
ゴドセは泉の精霊の温かなおとぎ話の中で眠り、終わりのない夢の円環で一人、探索していた。ある冒険者の夢の中で、彼は古いレリーフの口から、鮮やかな虹色の果汁が流れ出ているのを見た。ゴドセがそれに近付いた瞬間、突如、夢の世界が砕かれた。
「逃げろ!」果汁とソースに塗れた父親の大きな顔が、視界いっぱいに広がる。
父親の肩の向こう側で、焼いた肉で出来た巨大な塔が、赤い夕日に照らされそびえ立っていた。塔は観衆の驚きの声と共に、徐々に傾き始めている。

ゴドセの父は走っている最中に、太った中年女性とぶつかってしまった。足がもつれ、そのまま息子の上に倒れこむ。そして、傾いた肉の塔が人々の悲鳴とともに落ちてきた……
騎士団は三日間かけて、広場に散らばった肉、レタス、各種色鮮やかな食材を片付け、肉汁に浸かった観衆たちを運び出し、今年のバドルドー祭を城外で開催する事を発表した。
こうして、一晩でゴドセの家から狩人が二人減り、怪我人が二人増えた。しかも、彼らが唯一手にしたお詫び品は、二日後に届いた金メッキの優勝メダルだった。

アビス教団からの手紙

本文を読む

アビス教団からの手紙_内容.jpg
「闇夜の英雄」へ
※△もう×◆※お前の偽善と自己満足の正義感、■※△●×今よりこの手紙を△▼。俺たちは■◆夜に行動▼※モンドに■$突撃する、その自己満足の正義を証明したいなら、♯※隠れるな、正体を見せろ■×もなければ●&モンドがどうなるか分かってるな。

古華派の兄弟子

本文を読む

常九が書いた小説。才能に恵まれなかった少年がある古華派の家に引き取られ、修行もせずに暮らしていた。その後、古華派は衰退し当主も亡くなってしまう。残されたのは少年と掃除をする老人だけ。少年は自分を引き取ってくれた当主に恩を返すため、古華派に残ることを選んだ。彼は古華派の全ての技を習得し、全ての蔵書を読んだ。神の目と強力な武器を持っていなかったにもかかわらず、彼は数多くの挑戦者を負かしていく。そして、稲妻出身の女性を妹弟子として迎えた。
やがて世界の情勢に変化が起こり、稲妻国出身の妹弟子は別れも告げずに古華派を去る。その時、少年は初めて山を下りることを決意した。そして、最初の目的地は遠く彼方の稲妻…

宝盗団への手紙

本文を読む

宝盗団への手紙.jpg
宝盗団の友へ
ちょっといい話 楽勝でひと稼ぎ
一生に一度 逃したら二度となし
やってやろうか やってやろう
夜が更けたら 俺と会おう
仮面つけたら わかるだろう
お前もつけろ それがいい
間違わないし かっこいい
内部告発 一番嫌い
俺に任せろ 罠じゃない
わかったら 用意しな
みんなかっこよく稼ぐのだ
例の場所で待ってる

グッドウィンの手紙

本文を読む

……璃月港の石山は多くの騎士を惹きつけたが、私はあまり好きではない。あそこの石はキメが粗く、下手すると手が傷つく。それより私は岩葵という花が好きだ。いい香りをしていて触り心地がいい。遠いところに咲く花でなければ、採ってきてあげたい。きっと気に入ってくれるはずだ。

サラの手紙

本文を読む

「…前回のお手紙、拝見しました。ご購入頂いた食材も用意しました。ですが、璃月からモンドまでの距離は近くありません。今回、鮮度をキープしたままの長距離運送となるため、もう少しお時間をください」
注:ピリ辛小魚の作り方は1つだけではありません。ご自身のお好みで調整してください。

ドゥラフの手紙

本文を読む

「…色々考えたけど、やっばり彼に事実を教えるベきだと思います。ティミーも大きくなっていますし、いつまでも黙ってはいられません。時が経つほど受け入れがたくなりますから。
あくまでこれは私の考えです。今までティミーの世話をしてきたのはあなたですから、もし他に考えがあるなら早めに教えてください。
そうだ、ティミーによろしくお伝えください。数日したら会いに行きますから」

璣衡経

本文を読む

天地諸元素、岩が唯一不変である。
固岩の本、正宗にある。
明規善行、名高き岩王。
善悪を定め、清海を浄化。
危厄を退け、妖魔を鎮圧。

衡山を立ち、洪流を鎮む。
加勢する諸仙、先を争う夜叉。
民が勇敢、鬼が悚然。
帝君は岩を掘り、山を作る。
海獣を沈め、勝利を成す。

鎮めた魔物、騒がす魂。
海淵に陥った、蠢く体。
憎悪ゆえの憤怒、憤怒からの無謀。
蔓延する鬼、流れる猛毒。
邪鬼と病、魔物より生まれる。

岩王が遣う、五人の護法。
鬼を駆逐し、悪を治める。
揺れる山岳、放たれた光。
敵を退治し、帰還する一人。
金鵬夜叉、この身を平和に。

これぞ平和の始まり、翌年もまた然り。
諸仙人は、絶雲の間に帰る。
諸夜叉は、終焉が知られず。
幾多の犠牲をもって、亡魂に慰めを。
幾多の灯火をもって、帝君に感謝を。

石書集録・1

本文を読む

当初、岩王が降りて、大波を退治、天衡を立ち、川を鎮める。民が遂に安定し、山を開き、玉を取り、岩を破り四方を繋ぐ。曰く、玉を孕めば山が輝く、故に「山輝砦」と名付けられる。当時、天衡の民は採掘を生業とし、千里に及ぶまで貧困者はいなかったという。

注:山輝砦は現在「山輝岩」と転じ、退廃し岩と化して、当初の風貌を再び拝めることはできなくなった。

塵王魔神の名は帰終という。岩王と親しいが故、「帰終機」という強弩を設置し天衡を守る。また民を率い、天衡の北へと住まい、田を耕す。全盛期は交通が発達し、町や田が石門まで絶えず続いた。帰終は岩王にこう告げる、「我が離の民、皆故郷に帰ったかの如く安穏に暮らしている。ここを帰離原と名付けてはいかがか」と、それに岩王は頷く。これが帰離原の名の由来である。

注:その後、魔神が地位を巡る大乱を起こす。諸仙人が力を尽くし帰離原を死守したが、混乱の中、帰離原も戦の苦難に見舞われ、塵の神も死に至った。故に岩王帝君はその民を率いて天衡の南へと移した。以来、帰離原は廃墟となり、いつしかの繁栄を失ってしまった。

岩王は諸魔神を鎮め、仙人夜叉は本位に戻り、璃月に再び平和が訪れた。魔神千年の混戦で、桑畑が壊され、璃月の民は商業、手工業を生業とした。その内優れたものが手を組み、「七星」という団体を発足。これをもって璃月港の雛形が成り立った。七星の管轄内は八門があり、あらゆる業種を含む。また、千岩軍が七星に仕え、内では民を取締り、外では妖を退治した。これが岩王帝君の統治である。

天衡絶倒集

本文を読む

其の一
囲碁の対局を眺めてみた、この手は無謀であの手も無力。
白黒つけない二人、アホのふりをする私。

其の二
万種の奇石に怪異の草、天然の盆栽が育った。
石珀に美玉に霓裳の木、夢中になった愚かな年寄り。

其の三
俗人にはわからない、絶雲の間の別天地。
千万の絶景に、興味深い話。鳥獣もまた仙人であることに、驚くべし。

其の四
絹のように白く、塩のように細かい。白砂こそが絶妙な骨董だ。
埃ひとつもない我が家、これこそ誇り高いのだ。

其の五
川の音も松の音もうるさい、崖の下で釣りをしたら上で眠る。
隣国の風神が本当に無礼だ、吹き飛ばされる紅葉が邪魔してくる。

其の六
木の枝も春の花も親こそないが、美しいのだ。
秋が訪れたら、荻草を刈り取って衣裳を作りに行こう。

其の七
この山を作った岩王は、物足りずあの湾も作った。
重ね合う崖も橋も、そのあたりの町も、風情があって楽しいよ。

其の八
夏の森は涼しい、風が布団で葉がベット。
いつまでもいたいのに、蚊たちに追い出される私。

其の九
夕飯後砂浜でお散歩、髭を整えて、空を眺める。
海と星空はテントみたいだ。お月様が住んでいるかな。

其の十
名石を拝めたいと、緋雲の丘に登る。
青き石がなぜそこまで高価?やはり玉京台を飲むのがいいのだ。

王と貴族の歴史・序

本文を読む

貴族時代、モンドの僭主たちは一度も歴史を編纂することがなかった。世間では歴史に関わる寓話的な詩の伝播も堅く禁じた。噂によると、彼らは自分たちの堕落を深く知っているから、英勇なご先祖様と同じ歴史に残りたくなかったそうだ。

いずれにせよ、歴史の風は高い壁に塞がれようと流れを止めるわけがない。
本書では、旧貴族時代から今に至る詩歌と伝説をまとめ、整理した。遺跡の考察も加え、列王時代から旧貴族の滅亡までの長い歴史を再び掘り出すことが目的である。細部まで考察できない史実もあり、信憑性に欠けることも免れがたいが、この歴史は後世の人たちを啓発すること、彼らにもっと歴史の解明をしてもらうための励ましとなることを祈る。

本書は三部分に分けられる、「烈風の高塔の王と北風の王狼」は、主にバルバトスが降臨する前、旧モンドで氷結の王たちが争う歴史を語る。「モンドの開拓時代」は、主にバルバトスがモンドに新生をもたらした後、モンドの先住民と貴族の先祖たちがこの大地での開拓史を語る。「僭主、貴族と反逆者」は主に旧貴族が長くモンドを支配する歴史を語る。

本書が後世の人々の殷観(いんかん)になることを望む読者もいるだろうが、これは私の本意ではない。バルバトスから賜った「自由」は過去から解放され、真実を追い求める自由である。本書はできる限り過去で禁じられた物語を読者たちに見せたい一存である。


僭主(せんしゅ):力で奪って君位についた者。君主の名を僭称(せんしょう)する者。
編纂(へんさん):多くの材料を集め、またはそれに手を加えて、書物の内容をまとめること。編集。
寓話(ぐうわ):教訓的な内容を、他の事柄にかこつけて表した、たとえ話。
伝播(でんぱ):伝わり広がって行くこと。広い範囲に伝わること。
英勇:中国語で「大胆・勇敢・猛々しい」。
殷観(いんかん):戒めとしなければならない前例。

グンヒルドの逸話

本文を読む

バルバトスの清き風が読者に澄んだ目を、モンドの自由の風が長く吹き続けるように。

グンヒルド一族の歴史は古い伝説から始まっている。あれは三千年前、「高塔の孤王」デカラビアンと「北風の王」アンドリアスが混戦する時代。荒れ果てたモンド氷原では、グンヒルド一族が流浪の民の中で一番強い部落の首領だった。

グンヒルドの父親はデカラビアンの部下であった。孤王の暴政に耐えきれず、彼は一族を率いて暴風が咆哮する古い城から逃げ出した。しかし城外の荒れ果てた地で生き延びるのは難しい。暴君の手のひらから逃げ出したものの、延々と続く吹雪に閉じ込められたのだった。

一族が絶体絶命の時、千風の中の精霊がグンヒルドの祈りを聞いた。こうして、族長の幼い娘が捧げる敬虔な祈りと、吹雪に見舞われた一族の願いが信仰へと変化した。信仰が風の精霊の周りに集まり、まるで水が泉に流れるよう、風の精霊たちに力をもたらした。やがて、彼はこの一族に小さな避難所を提供し、自分の力を族長の娘に分け与えた。

父親が亡くなった後、グンヒルドがこの名もない一族の族長、そして初めての女祭祀となり、族人を守り続けた。風の神バルバトスが孤王に宣戦布告した時、彼女は一族を率いて神の怒りに直面した。そして、バルバトスが遂に狂風から人々を開放した時、新生の風神に桂冠を被せたのも彼女だった。

それから、風神バルバトスがいなくなった後、モンドの大地に多くの貴族が立ち上がった――神の力を持つ統治者たちは千年後、腐敗と暴虐で知られる。だが、さすがのバルバトスも百年、千年後の未来は予測できなかった。

グンヒルドの子孫もモンドの貴族の一つだった。悪事の限りを尽したローレンス家と違って、グンヒルド家はいつまも*「モンドを守る」という祖先の言い伝えを守り、力を尽くしてモンドの民を守っていた。貴族への反逆闘争が始まった時、彼らはモンドの民衆の味方となり、追放される運命から逃れた。

今のグンヒルド家は、西風騎士団に数多くの偉大なる教士や勇敢な騎士を輩出した。この一族は祖先の理想と風神との約束を守り、永遠にモンドの土地と民を守り続けるのだろう。


教士(きょうし):中国語原文でも教士となっており、中国語で教士は伝道師の意。ここでいう西風騎士団はその傘下である西風教会も含むのだろう。

テイワットサバイバルレシピ

本文を読む

1、角蜥蜴焼き

捕まえた角蜥蜴(つのとかげ)の頭、内臓を取り外し、皮を剥いて細い枝に刺して焼く。両面が焼けたら出来上がり。
角蜥蜴の味は少し臭みと苦味がある。初めて食べるときは、濃厚で強烈な動物の酸味を感じて、まるでアンモニア水に浸かった古いタオルみたいな味だが、無毒無害だからご安心を。できれば調味料を満遍なくふりかけてから食べるのがおすすめ。

2、ダダステーキ

新鮮な生イノシシのステーキを用意し、塩を肉に満遍なくまぶす(汗腺が発達している人はこの手順を飛ばしてよい)、薄い布でステーキを包み、背中に結びつける。朝の激しい運動を経たあとに食べましょう!
イノシシの肉質は歯応えがある。塩分を十分に浸透させた後、体温と日差しの加熱を経て、生肉特有の弾力を保ちつつ、肉の臭みを中和できる。パンとググプラムを合わせて食べると一番美味しい!

3、氷と火の和え物

氷スライムをできるだけ小さい氷の粒に刻み、火スライムを少し大きい塊に切って一緒に混ぜる。そして果物と野菜を加え、塩を少々撒いて、よく混ぜたら出来上がり。
氷スライムの冷たさと火スライムの辛さ、そして新鮮果物の酸味も合わされば、そのさっぱりした味わいは一生忘れられない。
ここで一つ注意。食材の温度に異常がみられた際、包丁の峰、または手元の棒などで気絶させてから処理を続けてください。くれぐれも怪我をなさらないよう気を付けてください。

4、岩焼きの盛り合わせ鍋

石ころを拾って輪の形に並べ、中央に火スライムを置いて、石でかまどを組み立てる。肉類、野菜、蜥蜴(とかげ)、蟋蟀(こおろぎ)、スイートフラワーなどのお好みの食材を鍋に入れ、水と塩を加え、蓋をして煮込む。最短三十分で出来上がり。
この料理はあらゆる味を楽しめる。カリカリした蟋蟀と臭みのない蜥蜴、そして香ばしいお肉とさっぱりした野菜。食べ終わったら火スライムを一口サイズに切り、スープをかけて食後のデザートにすることもできる。費用対効果がとても高い。

護法仙衆夜叉録

本文を読む

古世、璃月は瘴気に満つ。当時魔神戦乱、敗者は盤石に鎮圧され、朽ちて土と化し、天地循環に帰す。屈服なかりし魂妖となりき。妖騒ぎ、瘴気立ち、鬼生まる。土壊し、海荒らす。民はわりなし。妖とは、神の憎しみなり。

【昔、璃月では瘴気が頻繁に発生していた。噂によると、当時魔神たちの戦が延々と続き、敗者は固い石の下に鎮圧され、朽ちた後土となり、天地諸元素の循環に戻ったという。一部(魔神たち)の魂が憎悪に満ち、なかなか屈服せず、やがて妖と変化してしまった。その妖が騒ぎ出すたびに、災難が訪れ、疫病、妖怪、異変などが次々と襲ってくる。(妖どもが)土地を壊し、土はやせ、川と海で乱を起こし、人々を苦しめた。その妖というのは、(負けた)魔神たちが残した憎しみであった。】

岩王帝君は夜叉を召し妖怪退治さす。夜叉とは、璃月の仙獣なり。性格畏し、殺生す。優れしものは五人。曰浮舎、曰応達、曰伐難、曰弥怒、曰金鵬。五人は帝に仕へ、妖怪と瘴気を退治す。人呼ぶ「仙衆夜叉」。

【岩王帝君は夜叉たちを召喚し妖どもを退治するよう命じた。夜叉は璃月の仙獣で、天性凶暴だが戦に強い。岩王帝君の統治を守るため殺生を惜しまない。(夜叉のうち)一番強いのが五人いる。浮舎、応達、伐難、弥怒、金鵬。この五人の夜叉は岩王帝君に仕え、何度も妖と対峙し、疫病や障気を退治していた。世の中の人々は彼らを「仙衆夜叉」と呼んだ。】

「仙衆夜叉」は岩王を守り、諸災禍を鎮む。年が経りき。夜叉強大なれど、業障に囚われ、憎悪に染めらる。ある者は怒に陥り、ある者は恐怖に狂う。ある者は殺し合い、ある者は魔となる。幾千年、五夜叉死ぬものは三、行方知れず一。名無きものはいづらに逃走せり。おくりしは金鵬一人ばかりなりき。

【長年に渡り、「仙衆夜叉」は岩王帝君を守り、世間のあらゆる災禍を鎮め続けた。しかし、夜叉たちは強い力を持ち合わせているが、業障に囚われ、(魔神の)憎悪に染まってしまった。(彼らの中に)言葉で表せない憤怒に陥るもの、形容し難い恐怖に支配され発狂してしまったもの、味方同士で殺し合い死に至ったもの、そして精神が壊れ魔物となったものもいた。数千年の災難に見舞われた挙句、五人の夜叉のうち、三人が悲惨な死を遂げ、一人が行方不明となり、そのほか多くの夜叉たちが死に、あるいはどこかに逃走した。生き残ったのは金鵬一人だけだった。】

金鵬、号「金翼鵬王」、またの名を「降魔大聖」といふ。いづこより出で来て、ことへと行ききや、誰も知らざりき。春海灯祭、孤雲閣上空光あり。璃月民曰く「護法夜叉が魔物を退治せり」笛音が荻花洲より聞こゆ。とぶらふとも見つからず、曰く「夜叉が古き友を呼び戻せり。」

【金鵬というもの、雅号は「金翼鵬王」という、「降魔大聖」とも呼ばれる。彼はどこから来て、どこへ行ったのか、誰も知らなかった。春の海灯祭の時期が訪れ、孤雲閣上空の光をみて、璃月の民はこう言う、「これは護法の夜叉様が魔獣を退治しているんだ」荻花洲の奥深くから笛の音が聞こえる人がいるが、入って探そうとすると、笛を吹く人が見当たらず、「これは夜叉様が古い友を故郷に呼び戻しているのだ」と言う。】

大神通者は定めて大いなる苦痛に苛まる。家族と同胞皆失ひ、業障深い。旧日の忿怨を敵に、報ふることはなく、解放さるることもあらず。餓鬼の苦痛、万劫不滅。

【従って、強い力を持つものは必ず大きな苦痛に苛まれる。(夜叉が)全ての家族と同胞を失い、多くの罪業を溜め、心も永遠に憎しみに支配され続ける。古き日々が残った恨みと憎しみを敵としていれば、報いることがなく、解放されることもない。(このような苦難は)実に漂う餓鬼の苦痛であり、幾多の災難を経験しても、終わりを迎えることがないだろう。】

霖鈴精選詩集

本文を読む

ネコちゃん
橙色の猫がいい、白い猫が愛らしい。猫隊長がニャーニャーと鳴いた。
二つのまなこが見開かれる、害虫は食べ尽くされる!

梟総管
造船所の監督はいっつも怠ける。ぐーぐーといびきをかいて眠り呆ける。
遠くで聞けば岩王が鳴らす腹痛に、近くで聞けばイノシシが鳴らす紛糾に。

海を眺める
美しき大海、まっ青な水で一杯。
長い船には大きなオール、エビの脚に見まがえる。

また海を眺める
毎日海を眺めては心を痛め、時が経っては目を痛める。
詩を書いてから数年が過ぎ去り、読む人もおらず時が過ぎ去る。
小さな船は帆を張り波に乗り、大きな魚は川を越え潮に乗る。
この文才に気づかぬ人は後悔し、いずれ船は転覆し航海を断つ。

夜の町の風景
街灯が星のように灯り、軽食が街に並び。
悲しみに泣き喚く、目に映るだけで心がざわめく。

天衡山
天衡山、巨大な壁となり、璃月の盾となる。
それは妖を阻み、悪人を阻む、圧巻の壁である!

埠頭の春景色
璃月港の霓裳花、春になると咲き誇る霓裳。
それは果たして霓裳か花か、されど由来は霓裳も花。

もつ焼き
中原のもつ焼きはしょっぱくて辛い、辛すぎて口が痛い。
「塩気が強すぎないか?」と苦言を呈すと。
蘇二おばは「口に合わないなら帰れ!」と怒気を露呈す。

ボロボロなノート

本文を読む

この日時計の言葉は千風の神殿の日時計に刻んだ言葉と関連して、四行の言葉を合わせると完成する。

千風の神殿もここも、ある「時間」と関係ある魔神と関わっているはずだ。

おもしろい、時間の神殿が時間の中で消えたと……

それ以外にも、古い典籍の中で一部の学者は「風の神」がこの魔神と関わりあると思っている……

それが本当ならば、ここにも絶対にある痕跡が…一般に言うと、ある元素痕跡が残っているはず…

確かにある時間帯になると周りが変に感じる。具体的に言うと午前2時ぐらいから初めて…5時までかな…

隣にこれほどの日時計があるから、夜明けになったら時計の影がちょうど真下になって、眼立つから覚えやすいんだよ。

にしても、私に「神の目」がないから、異常を感じても当てて見るだけで、詳しい実験ができない。

面倒くさいね、ここ最近「神の目」がないと学者にもなれないんだ…

騎士団ガイドVer.5

本文を読む

本ガイドは西風騎士団共通の指導綱領である。西風騎士団の団員たる者は本ガイドを熟読し、その内容に従い自分を鍛えるべく、模範的な行動でモンドの住民を奉仕するべきである。

西風騎士団の一員として、我々は騎士の三大美徳――謙遜、誠実、自律に従うべきです。この三大美徳はモンドの自由を支える三つの柱。覚えておきなさい。責任を問わない自由に、意味なんてありません。

騎士の美徳は日常生活から現れる。この点において、本ガイドは騎士の皆様に正式で入念な言語行動の規範を提供する:

一、
西風騎士として、常に危機感を保ちながら、モンドを脅かす存在に注意を払うべきである。モンドの民が必要ならば、いつでも手助けをするが西風騎士たる者の責務である。

二、
遠くから来た客人と商人を礼儀正しく招待する。たとえ相手が不審者に見えたとしても、疑ったり敵意を見せたりすることを禁止する。

用語規範:
「モンドへようこそ、見知らず尊敬できる旅人さん/旅人/お客さん!御身分と目的の説明をお願いします。そうすると、西風騎士団が貴方の安全を確保します。」
※注意:敬語を利用する。

悪い例:
1、「おい!あんた、待ちなさい!怪しい者/こそこそする奴/異邦人/正体不明の者、自分をわきまえろう!」
2、「風と牧歌の城へようこそ、異世界の旅人/流浪する野獣/新たな嵐。」
※注意:無礼な言葉を利用しない。特に客人を困らせるような変な単語を利用しない。

三、
モンドの民や客人の前でネガティブな機嫌を見せない、正しい騎士はいかなる時にも民のために身をささげる準備をするべきである。休憩を含めて、娯楽、のらくらする時も騎士の気概を忘れずに、いつでも仕事に戻られるよう待機状態を保つ。

用語規範:
1、(休憩中)「モンドの安全に死角はないか調べなくちゃ。」
2、(飲み会中)「騎士として、皆さんの日常的な需要を分かるのは大切なお仕事です。」
※注意:本当に仕事がなくても、怠惰は禁止。

悪い例:
1、(見張り中)「飲みきれないほどのリンゴ酒があったらいいのに…」
2、(休憩中)「ノー―エ―ール―ー!」
※注意:ノエルに自分の仕事を押し付ける怠惰な騎士については、すでに代理団長が彼女に報告するよう指示している。このような規範に反する行為は休日と手当を削減する処罰に当てはまる。次サボる時は先に代価を考えておくがいい。

四、
いくらモンドが酒の城とは言え、騎士たる者は自律を自覚するべきである。
仕事中に飲酒したり、特に未成年者に酒を勧めることは厳禁する事項である。
※注意:騎士団の未成年者の飲酒を禁止する。酒場などへの出入りは成年者の同行が必要となる。

五、
(近日補充)近頃、城中でファデュイが頻繁に活動をしているため、勤務時間外に第三者と騎士団の活動情報を共有することを禁止する。

六、
予想不可能な災難が発生した場合、騎士たる者は身をもってモンドの民と財産を守るべきである。群衆の詰問に対しても、冷静に対策し自己安全を優先するように注意を加える。

用語規範:
1、「慌てないでください!西風騎士団が必ずしもモンドをお守りします!」
2、「危険な状況に陥った時には慌てず両手で頭を保護しながらしゃがみ、重要部位を守ってください。騎士団の指示に従い迅速に安全地帯まで退避してください。」
3、(近日補充)「ご安心ください。ファルカ大団長が今不在だとしても、西風騎士団が完璧に危機を解決します。」
※注意:3は大団長が留守の間のみ使用可能。

悪い例:
1、「処理したことのない状況ですね……」
2、「この規模の災害は、いくら西風騎士団でも厄介だね……」
※注意:どんな状況が訪れるとしても、民の前で茫然とする状態を見せても、西風騎士団の実力を疑ってもいけない。

七、
遠くから来た客人と商人に接する時には、親切にモンド城の名所や観光地などを紹介し、助けを提供する。

用語規範:
1、「モンドが初めてでしたら、モンドの大聖堂をおすすめします。」
2、「疲れを感じたのであれば、「エンジェルズシェア」という酒場でモンド一番有名なお酒を飲んだらどうでしょう。」

八、
同僚や仲間と接する時にも謙遜と誠実の美徳を備えるべきである。仲間の前では常に謙遜な態度を保ち、誠実に向き合うべし。騎士団の団員は互いの盾となるべきである。

用語規範:
「素晴らしい、さっきの戦いは見たことがない!」
※注意:あまり誇張した口ぶりを利用する必要はない、相手への尊敬と友情をうまく伝えたら十分。

九、
モンドの守護者、風神の盾として、西風騎士団の成員は身をもって範を示すべきであり、決してモンドの各規則や制度に反してはいけない。勤務時間外に行われた公共財産や民の私有財産に対する侵害においては、審査結果によって一定の給料とボーナスを引く。まだ給料のない未成年者に対しては、一定期限の禁足を罰する。
※注意:モンド地区すべての水域の魚介は公共財産と見なされるため、あらゆる理由での破壊行為を禁止する。

十、
西風騎士団の成員として、常に警戒心を保つべきである。見知らぬ人に対しては慎重に接触し、相手に悪意がないとしても、丁寧にモンドの規則と風習を説明する必要がある。
※(近日補充)注意:怪しい動きを取る外国の外交官に対して特に注意を払う。

十一、
西風騎士団の成員は空中にも十分注意し、風の翼による事故に気を配る。騎士団の成員は飛行者の飛行免許が整えているのかを検査し、不法飛行者を発見した場合、即時に強制の手段をとるべきである。
※注意:騎士団の成員であっても、違法飛行をされた場合、庇護をしたりすることを禁止する。必要時には当事者の飛行免許を取り上げる。

付録:騎士団規範用語参考表

1、騎士の美徳
西風騎士の三大美徳は謙遜、誠実、自律である。騎士の成員はこの三つの美徳が互いに補い合う共同体であることを忘れてはいけない。

2、敬語
西風騎士団はモンドの民の公僕であり、外客を奉仕する者である。故に、群衆の前では真っ先に敬語を利用する。礼儀は騎士の必修科目である。

3、職務
西風騎士の職務は民を奉仕し、モンドの自由を守ることである。日常生活において、騎士団の成員は騎士の尊厳を汚すような無責任な言葉をしない。

4、風神
(近日補充)風神バルバトスは風と牧歌の神として、モンドの自由の守護神であり、モンド信仰の中心である。西風騎士団一同は風神の意志を守護し、いつもモンドの自由のために戦う覚悟をする。
※西風騎士団及び教会内部に一部の成員が風神信仰にどうでもいい態度をとっているため、上記を補充する。

5、ファデュイ
スネージナヤの使節としてモンドに来た者たち、外交特権を有する。動きが怪しくて目的も不明である。
※格別に気を配るべし。何か不気味な動作を確認したらすぐ本部に報告。

6、アビス教団
アビスからきた古くて神秘な敵。動機がはっきりしていない。たまにモンド周辺で見かける。
※非常に危ない敵である。遭遇した場合は即時に本部へ報告し、自分の安全を確保する。

7、風龍廃墟
(近日補充)モンド北西方向に位置する古代遺跡。かつて高塔の暴君の都城であったが、近頃風龍トワリンに占拠され、それの避難所になっている。故に、当遺跡を「風龍廃墟」と称する。

分厚いノート

本文を読む

『時と風』、風の神と関わりがあるみたいだが…こいつ、もうちょっと詳しく言っていいのに。この三つの文字で何を研究しろう*って言うんだ?

風神と関わりあるから、手がかりはきっと『風元素』と関係あるだろう。

『時間』と繋ぎ合わせば…そこの日時計にきっと何か隠れてある。

それに、たまに周りが変に感じるけど。うっ、夜明けの二時…何時だっけ?

もう詳しい時間は思い出せない…ただ夜明けの時に日時計の針の影がちょうど真下を指していたんだ

でも…いいか、教令院の先生がよく言った、『神の目』を持たない者は野外調査に行かない方がいいって。

その頃はそれがどういう意味なのか分からなかったけど、やっと分かったよ。『神の目』がない私は見ることしかできないんだ。

冒険者協会の方で『神の目』を持った手伝いを探し出せるかな。

ところで、モンドの冒険者協会は相変わらず狭いな……

山と海の書(復元前)

本文を読む

……

■■■■の助けに感謝する。おかげで■■■■■■■■

■■■■高く険しく、私が■■■■■■■にちなんで■■■■■■■■■■■■観察し■■■■■■■■■■■■■■■■風を利用■■■■■■■■そして■■

……

若者■誰も■■山に■■■■■。たまに■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■彼らは■■■■言う■■■■■彼らの心を■■させた。■■■■■■■四肢も頭も十分■■■■■■■■挑戦■■■山の一つ■■■

……

いい知らせだ。エルリックが■■■山へ■■■■■一人では■■■ていた!

……
この山■■■■登ってから■■■■■■■■■■■まるで、■■彫ら■■■のよう■一族が■■■■食料が■■もつと■■■

……

また■■■■足の傷が■■■■二本の指も■■■■■■■右手は■■完治に■■■■■■今は■諦め■■■■

……

■■■■■エルリックが■なった。■寒さと険し■■■■■■を取りすぎ■■■■彼を■■■葬式■■■■■酒を■■■■■■■一人しか■■吹雪はまだ■■■氷が■閉ざし■■■■登らな■■

……

また■折った■■骨折■■■■■氷を纏った■■■落された■■まだ■■■■■■しめ、■■■■を登り、■■山を下る■■■■
■■■氷に■■■■■岩の間に■■■■■■危なかった■■■傷が開■■■■一年以上は■■■■

……

空が青い。ここ数日は吹雪が■■■■■■■■よりも高い雲■■■■■を見た。■■届かない■■

ハヤブサ■■高い空■■■■

■■■■■■■谷間で■■■■■のように…

……

山と海の書

本文を読む

……

ヴァニーラーレと…の助けに感謝する。おかげで…を越えてこの山まで辿り着けた。

この山は高く険しく、私が名付けるならば、山頂の形にちなんで「とんがり帽子山」にしようと思う。ざっと観察して見たが、東側からロープと杭を使えば登れるだろう。風を利用して、フックをそこに…そして…

……

若者は誰も私とこの山に登りたがらなかった。たまに挑戦者が現れても、すぐに年老いた冒険者に追い返される。「悪夢を征服する事は出来ぬ」彼らはそう口を揃えて言うのだ。先人の失敗が彼らの心を削り、軟弱にさせた。だが、私はまだ老いていない。四肢も頭も十分に動く。とんがり帽子山は、私の挑戦を待っている山の一つに過ぎない。

……

いい知らせだ。エルリックが私と一緒に山へ登ってくれる。私は一人ではないと信じていた!

……

この山を舐めていた。登ってから分かったのだが、道と呼べる物がほとんどない。まるで、精巧に彫られた巨大な石のようだ…一族が用意してくれた食料が山頂までもつといいのだが。

……

また怪我を負った。足の傷が特に酷い。左手の二本の指も凍傷にやられたが、幸いにも右手は無事だ。完治に数カ月かかるだろうが、今はまだ諦める時ではない。

……

悪い知らせだ。今日エルリックが亡くなった。山の寒さと険しさを耐えるには、彼は年を取りすぎていたのだ…私は彼をささやかな葬式で見送り、彼の好きな酒を一緒に埋めてやった。もう私一人しかいない。吹雪はまだ止まない。氷が山を閉ざしてしまう前に、登らなければ…

……

また足を折った。軽い骨折で済んだのが幸いだ。氷を纏った強風に吹き落されたが、私はまだ生きている。私は岩を握りしめ、必死の思いで絶壁を登り、なんとか山を下る道を見つけた…
もしあの時氷に打ち付けられたり、岩の間に挟まってしまったのなら、危なかっただろう…また傷が開いた。恐らく一年以上は山に登れないな…

……

空が青い。ここ数日は吹雪が止んでいる。1羽のハヤブサが山頂よりも高い雲に飛び込んで行くのを見た。私には届かない高さだ。

ハヤブサのように高い空を飛べたのなら…

子供のおとぎ話に出てくる、谷間で飛ぶ練習をする鷹の雛のように…

……

珠玉の鉱山

本文を読む

……

産業や商業は、川と同じように、流れが激しい。人々の心を動かすのは、金と利益に他ならない。十分な力があれば、利益を思うがままに獲得できる。権利とは、すなわちそういう力だ。その力は、不正の抑制、契約の維持、そして利益をもたらすことができる。力とは、強者が弱者をいじめるためのものでも、弱者が強者を求める言い訳でもない。重要なのは、取引の道義と金銭流通の仕組みなのだ。それこそが、一番公正な道理である。
曰く――「職、財産、畑、家、その全てを失った民はどの時代にも多数存在する。その一方で、広間に貴重な宝石、金、銀をたくさん置いている商人も少なくない。こんなことがあっていいのだろうか。」
この言い方は正しくない。人とは海水に流れる砂と同じ、重みがない者は流され淘汰される。しかし一方で、チャンスとは渓水のように、止まることなく流れる。貧困者が長い間貧困に陥ることはなく、富豪が莫大な富を永遠に所持することもない。均衡は自ずと保たれ、国は安全で公正になり、混乱は起こらなくなる。
したがって、民間産業への規制を緩和、市場を拡大、政府部門を改革することが不可欠である。福祉支援が怠惰を生む傾向がある場合、適切に削減するべきだ。千岩軍は外部の盗賊を鎮圧することはできるが、内部の民をなだめることも重要だ。そうするには、人員を追加し、規模を拡大する必要がある。

……

帝君の寿命は長いが、何かが起きた時のために、最善の準備をしなくてはならない。そうすれば、璃月の発展は保たれる。革新に急ぐのではなく、ゆっくりと、岩石の底を削るように発掘していけば、必ずや宝石が見つかるだろう。璃月の発展もそれと同じだ。

古い考察日誌・1

本文を読む


今日も気候はとてつもなく荒い。
吹雪は少し収まったが、まだ到底目が開けられない強さだ。
昔古詩で見た、吹雪を蒼白の剣の舞に例えた描写を思い出す。

しかしランドリッヒの旦那が言ったように、どれだけ困難でも先に進み続けなければならない。
最高の成果をモンドへ持ち帰らなければ。
そうすれば、ランドリッヒの旦那の期待に答えることができ、一族の名をもっと有名にできる。あの反逆者どもの企みも、これで消えるだろう。

当初の計画では、南西部の遺跡の地下を探索することになってたが、今日は碑文に従い、密室に行くことにした。
エバハート坊ちゃまが解読した石碑の銘文には、古代の壁画や、星銀の武器が関わっているかもしれない。
もしそうなら、ここ数十年で最も有意義な考古学的発見になるだろう。

エンゲルベルトの旦那はそう言ってたが――私はそれでも、この吹雪の中で見失った仲間のことが気になってしょうがない。
エバハート坊ちゃまが言ったように、彼らは幼い頃から厳しく訓練された貴族の子供であり、拠点に一人で戻る能力を持っている。それに賭けるしかない。

もうすぐ日向の拠点を離れて、遺跡の中心に入る。
今回は念入りに遺跡の構造を確かめる必要がある。

古い考察日誌・2

本文を読む

なぜなら、以前ここで惨事が起き、日誌も回収できなくなったからだ。
考察の記録を失うのは手痛いが、環境が危険すぎる。

結局、我々はその大きな扉を開けることはできなかった。
壁画も、エンゲルベルトの旦那が期待していた古代の武器も、最後は水の泡となった。
雪山の日向の拠点に戻っても、吹雪の中見失った仲間はそこにはいなかった。
…希望は薄いが、彼らが無事山を下り、補給品と救援を呼んでくれることを祈るしかない。
我々の物資はもうほとんど尽きた。
不運なことに、密室の円型大扉の前で起きた崩落が、ニックと彼に預けていた燃料や食料を全て奪った。
遺跡を探索する時は、構造の整合性を確かめてから進めとあれほど言ったのに…

この数日に起きた出来事が私をこんなにも冷徹に変えてしまったのかもしれない。
これが絶望の下にいる人間なのだ。

だからこそエバハート坊ちゃまはさすがだ。こんなことになっても、冷静を保っている。これが本物の貴族というものだろう。
ランドリッヒの旦那の目に狂いはなかった。
隠し子とはいえ、彼は一族の名を背負っていける人だ。

我々は吹雪が少し収まるのを待ってから、エバハート坊ちゃまの提案通りに、南西部の遺跡の地下に行く。
彼の読みでは、あそこには遥か昔に残された物が眠っている可能性があるという。
普通なら信じられないが、この極寒の環境なら、物資を保存できるのも納得だ。

もういない仲間たちのためにも、必ず成し遂げなければ。
…もちろんランドリッヒの旦那の期待のためにも。
そうでなければ、私は闘技場で魔物と会うことになるだろう。
魔物に勝っても、エバハート坊ちゃまの老僕のように、ローレンス家の赤髪の死神の剣に倒れるだろう…

古い考察日誌・3

本文を読む

そのような歴史がここの風景を寂しいものにしたのか、それとも寂しい風景があんな歴史を招いたのか。
考察の途中で起きたことだからこんな考えが生まれたのか。
失血と極寒が、思考に影響を与えたのか。
どれにせよ、これが最後の日誌になる。

エバハートの計画は失敗…いや、成功とも言えるかもしれない。
今では全て分かった明白な行動だが、当時は誰も見抜けなかった。なるほど、旅の途中で見失った仲間は、すでに彼に殺されているだろう。円形大扉の密室前で起きた崩落も、十中八九彼によって計画されたことだ。

結局それに気づいたのは、私とエンゲルベルトの旦那を南西部の遺跡の地下に連れ込み、長槍を構えた時だった。
「氷雪に封印された古国」も、「天から降りた魔力」も、全てエンゲルベルトの旦那を利用する口実に過ぎなかった。彼を一人にして…
結局、隠し子は隠し子。
「長槍」という貴族らしくない武器を練習したのも、邪魔者を排除し自分が一族の座につくためだったのか。

そう考えると、パルジファル坊ちゃまが「強盗」ゲームにはまったのも、彼の影響なのだろう…

彼がエンゲルベルトの旦那に長槍を突き立てた光景が忘れられない。
あんなに一緒に過ごしたのに、温厚な彼の化けの皮の下に潜む怪物を見抜けなかった。
ランドリッヒの旦那は今回の考察が終わった後に一族の名を正式に彼に与えようとした。彼がもしそれを知っていたなら、こんなことはしなかっただろう…
それとも、知っていたからこそ、後継者の座が欲しくなってそれをやったのか…

もうモンドには戻れない。すまない、プリシラ。

誰がこの日誌を見るのか分からないが、ランドリッヒの旦那に伝えてほしい。
エバハートも重傷を負ったが、モンドに逃げ戻る可能性がある。
モンドに戻れば、彼が最後にやることは一つだけ…


古国(ここく):故国と同語。ふるくからある国。昔あった国。古い国。

岩神の伝説:財神

本文を読む

――富の神――
古来より璃月港は商売の中心地で、商いと富の街であった。今、このテイワット大陸の通過である「モラ」もこの璃月港で鋳造されている。「モラ」という呼び方も岩王帝君のもう一つの呼び名「モラクス」に由来する。そのため、人々は岩王帝君を富と商売の神として敬っている。
商売をする時、人々はいつも岩王帝君に線香を上げ、厄を落とす。これは岩王帝君が世界一のお金持ち、あるいは……最もお金を持っている神だからである。

岩神の伝説:開拓の神

本文を読む

――開拓の神――
璃月港で冒険を愛する者たちは、岩王帝君のことを「開拓の神」として敬っている。
言い伝えによると、先人たちの頑強な開拓精神と岩王帝君の守護により今の璃月港ができたそうだ。
璃月港を出た冒険者たちは、自分たちも始まりの開拓者たちのように、岩のような頑強な意志を持ちたいと願っている。

岩神の伝説:焜炉の神

本文を読む

言い伝えによると、璃月港ができた当初、最初の開拓者たちは岩石で焜炉(こんろ)を積み上げ、石と石の摩擦で火を起こした。これらの硬い岩石に囲まれれば、火は簡単に消えない、人々は火で暖をとり料理をした。やがて璃月港の建設も始まった。開拓者は信じていた、これらの岩石が岩王爺の恩賜だと。その後、璃月港の飲食店も岩王爺を「焜炉の神」と敬い、お店の焜炉の火が永遠に消えないよう、商売繁盛を願った。


恩賜(おんし):天皇・君主から物を賜ること。また、その賜り物。

岩神の伝説:歴史の神

本文を読む

――歴史の神――
璃月港で歴史の研究をする学者たちは、璃月港を片手間に築いた岩王爺を「歴史の神」として敬っている。「百年老舗」と自称する料理屋は「岩王爺がかつてうちにいらっしゃったよ、うちの料理にコメントしてくれた」と自慢し、長い歴史を持っていることを証明する。
だが、もし子供に岩王爺がどれくらい生きているのかと聞かれると、大人たちはこう答えることしかできない。
「とても長くだね……うん、とても長く…」

疑問の残るヒルチャール語単語

本文を読む

Celi dada, mimi nunu!
――「nunu」 は日常挨拶に使われているから・・・この言葉に悪意はなさそう。

Muhe ye!
――この2つの単語、どうやら・・・ある高ぶった感情を表す言葉らしい。

Ye dada!
――直球の褒め言葉、悪い意味はないね。

Ya yika!
――どうやら・・・相手のマイナス面に対して使う言葉らしい。

Nini zido!
――どうやらこれは強烈な脅し言葉らしい。

変なメモ

本文を読む

「巨木は繁茂し、地には百の宝を包む。
正に奇宝を探れる、正道の真ん中。
長い階段の下には、何が隠されている?」

感謝の手紙

本文を読む

誰が残した食料なのかは知らないが、感謝する!
腹が減ってる上に疲労困憊、物資もなくなった。これらの食料がなかったら、前に進めなかっただろう。
今から引き続き山の下に向かう、もうすぐ拠点に着くだろう。
次こそは万全な準備をしてから雪山に…

失われた冒険者のノート

本文を読む

「エリックはもう限界だ…我々は諦めざるを得ない。
このノートはここに残しておこう。お宝はもっと縁のある誰かを待っているのかもしれない。

君らもきっと気づいただろう。入口の装置を誰かが操作していないと、他の装置を操作できないみたいだ。
しかし…その代価は…
入口で装置を操作する人は、危険なリスクを背負うことになる。
もし他の装置を操作する順番を間違えたら、その人は…

一つ忠告をしよう、
それは――たいまつの数は操作順を意味しているのではない。我々はこのような誤解をして痛い目に遭った。
もしくは…順番はたいまつの位置と関係しているのかもしれない…

本当の答えは何だろう?
知りたい、知りたかった…
でもエリックの体はもう…」

ほのかに香る手紙

本文を読む

拝啓
突然の手紙、失礼致します。
ご迷惑でなければ良いのですが。
異邦の知らない人間に手紙をしたためるのは、実は初めてです。
あなたとの出会いは偶然ではないと、私は信じています。
今夜は月がよく見える日です。
もしよろしければ、お会いできないでしょうか。

家臣や守衛のことはお気になさらずに。私が引き離しておきます。
お越しになられることを心待ちにしております。

黄ばんだ手紙

本文を読む

「もし・・・・・・戦争で散り散りになったら、紺田村で待っててください。あそこにはきっと、私たちを待ってくれる安らかな家があります。」

「おみくじ」

大吉、オニカブトムシ

――大吉――
失せ物が戻ってくる日。
音沙汰のなかったことに、良い知らせが来る。
袂を分かった友人と仲直りができるかもしれない。
不意に忘れたことを思い出す。
この世に取り戻せないものはない。
今日がそれを取り戻す日だ。

今日の縁起物: 生きの良い「オニカブトムシ」。
オニカブトムシは平和を愛し、争いを好まない小さき生き物。
平和を求める心はきっと幸せをもたらすだろう。

大吉、馬尾

――大吉――
鞘から抜いた剣に敵はない。剣光も、誰かを照らす光となるだろう。
一本の矢で空中の獲物に命中できる。一撃で遣跡守衛の弱点をつける。
目標がなけれぱ、歩き回ってみるのも良し。意外な収穫があるかもしれない。
運の悪い仲間に運気をお裾分けしよう。

今日の縁起物: 珍しい「馬尾」
馬尾は荻の群れとともに生息するが、荻より真っ直ぐ立つ。
きっと誇り高く生きるあなたに相応しい。

大吉、鳴草

――大吉――
風が吹く日は、何をやってもうまくいくだろう。
身近な人の気分は非常によくなり、争いごとが起こらなくなる。
食ベたかったが、食べる機会がなかった美食を食べれるかもしれない。
仕事も旅行もうまくいく。
好機逸すべからず。

今日の緑起物: すくすく育つ「鳴草」。
鳴草は雷雨を予知する植物であることを、多くの人は知らない。
雷神様の寵愛に憧れ、稲妻列島でしか育つことができない。
鳴草を摘んだ時のビリビりとした感覚は、幸せの味に似ていると言われている。

大吉、烈焔花の花蕊

――大吉――
浮き雲が散り、月が浮かぶ。
明鏡止水の心があれば、求めることが成せる。
気のままに過ごすと良いだろう。
やりたいことも、会いたい人も、今が動く時だ。

今日の緑起物: 熱を発し続ける「烈焔花の花蕊」
烈焔花の熱さは花蕊から。
順調にことを進めるには、心に道を定めること。

中吉、ウミレイシ

――中吉――
十年一剣を磨く。
悪運が消え、運気が戻ってくる。
長年鍛えたものの役に立つ機会がなかった技が、
日の目を見る時がくる。
障害にぶつかることがあっても、
迷わず剣を抜き、気の済むまで戦おう。

今日の縁起物: 長い年月を経た「ウミレイシ」
小さなウミレイシ虫が長い年月で作ったウミレイシ。
目標のために努力する人は、必ず実を結ぶ。

中吉、スミレウリ

――中吉――
空に雲が流れている日は、幸せな気分になれる。
仕事はとても順調で、昼寝の時もいいアイデアを思いつく。
昔からの友達との別の盛り上がる話題が見つかるだろう。
――毎日毎日、前向きに、明るく生きよう――

今日の縁起物: 色鮮やかな「スミレウリ」。
外見と内面が一致していることは一種の美徳。
しかし、スミレウリの鮮やかな外見の下には、謙虚な内面が隠されている。

吉、晶核

――吉――
いつもと変わらない一日。体と心が慣れ親しんだ日常。
失ったものの代わりとなるアイテムが現れ、それが幸せをもたらしてくれる。
よく会う人との関係が良くなり、友達にもなれるかもしれない。
――どんなに日常的な日でも、大切な思い出になる――

今日の緑起物:キラキラ光る「晶核」。
晶蝶は世界の元素を凝縮した小さな生き物。
そして元素は、この世界が人々に贈る祝福だ。

吉、タケノコ

――吉――
春が訪れ、万物が蘇る時。
困ったことがあった時、解決法が見つかる。
迷う時、助っ人が現る。
心を整理し、家を掃除すると良い。
意外な宝物が見つかるかもしれない。

今日の緑起物:成長し続ける「タケノコ」
タケノコには無限の可能性が秘められている。
タケノコがどれほど高い竹に成長できるか、誰にもわからない。
見ていると、未来を期待せずにいられなくなる。

吉、鳥の卵

――吉――
特別なことはないのに、気分が明るくなるような日。
無くしたと思っていたものが、気づかないところで見つかったりする。
食材はいつも以上に新鮮で、道中の風景もキレイ。
――世の中には不思議ですばらしい物に溢れている――

今日の緑起物:温もりをもたらす「鳥の卵」。
鳥の卵には無限の可能性が秘められている。
逆にこの世界も、卵の中の命にとって、
未知で刺激的なものに満ちているだろう。
鳥の卵に優しくしてあげよう。

末吉、電気水晶

――末吉――
穏やかで平和な一日。悲しませることは何も起きない。
久しぶりに会う友人と過去の思い出を離したり、共に笑ったりすることに適している。
食事をすると、昔体験したことの味がする。
――自分の周りの人や物を大切にすること――

今日の緑起物: ビリビリする「電気水晶」。
電気水晶には無限の力が秘められている。
この力を上手く利用すれば、何かを成し遂げることができるかもしれない。

末吉、ナッツ

――末吉――
雲が低く、まだ厚くなりそう。
雷雨がいきなり激しく降るかもしれない。
でも雨が上がれば、虹が見える。
地に足をついて、物事を静観すると良いだろう。大胆に進めても上手くいかないのかもしれない。

今日の緑起物: 木から落ちた「ナッツ」
すベてのナッツが大きな木になれるわけではない。
成長には適した環境と、少しの運が必要だ。
自分を追い詰めることはない。辛抱強く虹を待とう。

末吉、発光髄

――末吉――
雲が月を半分覆い隠し、霧が立ち上る。
顔を上げれぱ月が隠され、俯けぱ霧が濃い。
道に迷うこともあるだろうが、いつかはっきりする時が来る。
今は自分を磨き、月が見える時を待とう。

今日の縁起物: 暗闇に光る「発光髄」
発光髄は弱い光を発する。
他の光源に比べたら弱いが、道を照らすには十分だ。

末吉、ミント

――末吉――
気圧はやや低め、遠い昔の日を思い起こさる。
過ぎ去った青春時代の思い出や、連絡を取らない古き友人との思い出は、
懐かしさと切なさを感じさせる。
――たまに過去を懐かしむのもいいが、心を落ち着かせて末来に立ち向かおう――

今日の縁起物: 爽やかで心地よい「ミント」。
草の生えているところには、必ずミン卜がある。
そう考えると、ミン卜は世界で最もタフな生き物だ。
モンドの雪山にもミン卜が生えているらしい。

凶、海草

――凶――
雨が降る予感、何か悪いことが起こるかもしれない。
来るはずの褒め言葉がなかなか訪れず、店員に間違った料理を出されるかもしれない。
大したことではないと分かっていても、少し悩み事をしてしまう日になる。
――このような日は滅多にない――

今日の緑起物:波に揺れる「海草」。
海草はとてもやさしくて丈夫な植物だ。
苦い海の中でも、自分を変えようとしない。
逆境にいても、優しい心を保っておこう。

凶、霧氷花

――凶――
大切なものをなくすかもしれない。気をつけるべし。
体調に変化があれば、しっかり休養すること。
何かの決定を下す際、しっかり考えて決めること。

今日の緑起物:冷え冷えする「霧氷花」
霧氷花は近寄りがたい冷気を発する。
冷たい性質は、人の気持ちを落ち着かせ、頭を冷やすこともできる。
正しい判断を下し、賢明な行動を取ること。

大凶、トカゲのしっぽ

――大凶――
心が空っぽになる日。強い無力感を感じるかもしれない。
色々なことが頭の中でまとまらなくても、袋小路に入ると病むかもしれない。
何もかもが良くない状態に陥っても、気を落とさずにいこう。
乗り切れば、何か成せるだろう。

今日の緑起物:曲がった「トカゲのしっぽ」
トカゲは危険を察知すると、しっぽを切って逃げる。
どうにもならないことがあったら、断ち切ることも選択肢の一つだ。

常世国龍蛇伝

本文を読む

造化は神秘密とし、太陽と月は吉凶を示さん。
三隅は闇を切り離し、五聖は虚空に隠れん。

「宇宙には、始まりも終わりもない。かつての大地もそうだった。ただ、私たちにとっては何の意味もない。私たちを育んだ土地は、もう終わりなき永遠とは関係がないのだから。」

──唯一の賢者である阿倍良久は、初代の太陽の申し子にそう言った。太陽の申し子は、かねてより阿倍良久を懲らしめるつもりであった。その日、問答のため呼び出したのは、ただ彼を困らせて拘留しようとしたためである。
言い伝えによれば、阿倍良久は常世の大神より啓示を受け、太陽の見えない淵下宮から光を掘り出したという。しかし、太陽の申し子は彼の才能に嫉妬し、最期の時を迎えるまで彼を監禁したそうだ。だが太陽の申し子たちは気付いていなかった、彼が地下に太陽を作っていなければ、自分たちも存在していなかったことを。
「・・・天と地は元々卵のようで、龍と蛇も一つであった。」この言葉を発してすぐ、賢者阿倍良久は待ち伏せをしていた兵士たちに押し倒されてしまった。

太陽の出現により、淵下宮に息をする余裕ができたのはこの時だった。闇に近く、光を恐れる龍の後継者も放埒な行動をできなくなった。それが引き金となり、龍の後継者が人々を支配し、人の命を粗末にする時代は終焉を迎えた。淵下宮の民たちは龍の後継者に抗えるようになったのだ。

しかし、この隠れた災いが根絶する前に、人間の黒い部分が露呈してしまった。人々は「太陽の申し子」 を選出し、彼を王として崇めた。だが彼は信仰者を征服し蹂躙したのである。

数年が経ち、淵下宮のある少年が仲間と賭けをした。たった一人で、龍の後継者の痕跡を避けながら三隅の外へ潜り、龍骨花を探しに行ったのだ。しかし、彼は見たこともないような大蛇と洞窟で出会った。
少年は巨大で不気味な蛇を見ても、なぜか怖さを感じず、むしろ親近感を覚えていた。

「我は蛇神であり、幾百幾千の眷属を従えている、我の影に住む信仰者は一人もいない。今日ここに落ちて汝に出会ったのも一つの縁であろう。汝は我の民ではないが、それでも人間の子である。何か望みがあれば言うがよい。」
「深淵の底にいる我々の神になれるだろうか?」

こうして、太陽の申し子が持つ王権や龍の後継者の侵略へと立ち向かうこととなり、人と蛇の物語が始まるのであった。

珊瑚宮記

本文を読む

珊瑚宮は、最初は海溝だった。大蛇が渡来した際、渦が巻き上がった珊瑚が島になった。故に珊瑚宮の人々は島を「海祇島」と呼び、大蛇を神として祀った。
海祇の人は海民と自称し、大蛇オロバシノミコ卜を祀る。海祇島に将軍奉行の位がなく、神宮を最高権威とし、大小事務は巫女が行う。巫女の長は「現人神の巫女」と呼ぱれ、まつりごとを司る。
往年魔神の混戦中、雷電大御所将軍様が稲妻全土を平定した。皆ひれ伏し、各々の地を治めた。事を起こす者があれぱ、例外なく滅ぼされた。大蛇オロバシノミコ卜と鳴神の領地は西界を境としていた。ある時、大蛇が悪意を持ち、全力をあげて東ヘ侵略しようとした。
過酷な戦で民が苦しんだ。今のヤシオリ島で激しい戦闘が行われ、双方の被害が甚大だった。大御所殿下の愛将である天狗笹百合もこの戦で命を落とした。遂に大蛇は大御所殿下に討ち取られた。
この後、珊瑚宮は降伏し、稲妻幕府を大宗主とするようになった。

神櫻大祓要略

本文を読む

……
「先に天の鳴神を拝し、次に国の海祇を拝す。祝詞を復唱し、神々の怒りを鎮める」
以上定型、全ての祭式、祓式、祝式、呪式の前に執り行うこと。大祓を行う際、前例を踏襲すべし。

雷櫻、神櫻の枝なり。鳴神の分霊であり、大社の分祠である。
彼の時、天より災い、地より妖魔が現れ、土は穢れ、百鬼が跋扈する。大社より枝を折り、不浄を鎮める。
月日重ね、穢れは蓄積する。これを祓うべし。

雷櫻の祓いは、甲子を期とする。小祓を数回行えば、必ず大祓を行うこと。大小祭儀は異なるものである。
小祓の際、天地を拝み、注連縄を界に、「畏伎」の句を唱える。穢れを結界内に留め、里から離す。その後、物を持って鎮める。鳴神五所、次第に執り行うこと。
小祓の旨は穢れを遠ざけること。これにより数年の和を得る。

大祓の際、天地を拝み、目、口、鼻、手、足の順に、五つの鎮物を取り除き、小祓の結界を解く。その後、大神呪を唱え穢を祓う。
大祓の旨は穢を祓い清めること。

ここまでが要略。以下詳説。
(汚れや破損が酷く、ここから先は読めない)

鬼武道

本文を読む

「荒山の城編・第一章」
また同じ悪夢だ、羽川凛子は鬼族が滅びたあの夜に戻った。
漆黒の雲は唸りながら流れ、村を全て呑み込んだ。墨のような炎は燃え広がり、数多くの屋敷を燃やし、地面をたどり海辺まで届いた。海水は沸いて蒸発し、浅瀬の砂は溶けて粘稠な液態となった。
凛子が族長に地下室に放られた時の言葉は雷のように轟き、周りの唸り声を遮った。
「片葉深徹は鬼族を背いて、この災いを招いた!」
凛子は片葉深徹から剣術を学んだ。記憶の中の深徹は穏やかな女性で、いつも微笑んで人と話す。
今日になっても凛子はまだ信じたくない――自分の師匠、尊敬されている剣術の奇才が、あんな残酷なことをするとは。
だが、村の周りに散らばっている呪符も印も、確かな証拠だ。族長の判断が間違っているはずがない…
一体どのような気持ちで片葉深徹と向き合うのか?
凛子はまだ決心できず、長いため息をするしかなかった。
そのため息は隣の白猫を驚かせた。白猫は濁った目を細め、凛子の手に擦り寄った。
「起こしちゃってごめんね、おにぎり。」
凛子はお皿を取って、白猫の隣に置き、猫が水を飲む音を聞きながら、テントの外で夜空を見上げた。
枝や葉の間の隙を通して、月明かりに照らされた料峭たる山影が見える。山脊にある建物の輪郭が複雑に絡み合い、独特な奇観になった。
「荒山の城」は目の前にある。雲の中に高くそびえ立つような山体はくりぬかれ、中から外まで立派な城に建てられた。伝説によると、ここに住んでいる「山の民」は巨人の末裔で、体格は普通の人の二倍もあり、植える作物も非常に大きいらしい。また、「荒山の城」の「荒原軍」はとても強く、周辺の諸国との戦争でほとんど負けたことがない。
だが、「荒山の城」の残虐な領主はそれだけでは満足せず、絶対的な覇権を求めている。
三日前、領主は片葉深徹に軍隊の兵士を訓練させ、鬼族が誇る剣術を授けてもらうために、領主が彼女を「荒原軍」に誘った。深徹は快く受けた…
片葉深徹の目的が何であろうと、今やるべきことは彼女を見つけて、彼女を倒し、罰を与えることだ。
そして、族長の手がかりを元に「死生道」の真意を探し、おにぎりの体内の勾玉で遭難した同族を蘇らせる。
それを考えながら、凛子は篝火にもう一度薪を焼べ、横になった。彼女は浅い眠りにつき、明日の戦いのために体力を蓄えた。
……
「荒山の城編・第十五章」
対時の局面が打破された。
がたいのいい主将は百歩先に現れ、自ら戦争の指揮をして逃走兵を数人斬った。この手の効果は著しく、荒原軍の乱れた陣形も整えられ、領主が暗殺されたことを誰もが口にしなかった。
「慌てるな!あのガキは畑のスミレウリより背が低いぞ!一斉にかかれ!」
兵士たちはただ立ちすくんでいた。主将が令を発したため、彼らは仕方なく再び凛子に向かって突進した。
凛子は全て聞こえていた。刀を握る手は震え、フードの中にいるおにぎりが怯えて小声でむせび泣いてる。
すまないね、鬼族は人里離れた海島に甘んじて、栄養が足りないから背も高くない。あなたたちの敵として、迫力が全く足りない…
だが、迫力だけでは、誰にも勝てない。
凛子は爪立ちしながら回転し、手の中の長剣は彼女と共に舞い踊った。刃縁に赤い光が輝き、光の斑が戦場をすり抜けて、主将の体に刺さった。
「斬先遥閃」。
これは、先代の城主の霊魂が凛子に託した強い剣術である。戦場の距離を無視し、致命的な一刀を振ることができる。

鉄器が破裂する澄んだ音と共に、主将の刀が真っ二つになった。彼は唸り声をあげ、前を向いて倒れた。
主将が戦死した後、荒原軍の攻勢が急転して出られなくなった。兵士たちは前に進むことができず、すぐ乱れた。
「荒山の城」は陥落した。虐げられた人々はすぐ領主の邸宅を占領し、失われたものを取り戻した。
だが、片葉深徹はまだ顔を出していない…
凛子は刀をおさめ、息を消した。何か異様に気づき、山の頂上を眺めた。
やはり、深徹は荒山の城の最も高い処――燃えている塔の頂上で、この戦争を静かに見届けていた。彼女の顔は影に隠れているため、どんな表情なのかは分からない。
凛子と暫く視線を交わした後、深徹は飛び降り、断然と立ち去った。
片葉深徹、彼女はどうしてここに佇んだのか?領主の誘いを受けた彼女は、どうして約束を破り、相手を殺したのか…
彼女に良心はまだあるの?
凛子は頭を構に振り、これ以上考えないようにした。フードにいるおにぎりを慰めた後、荒山の城へ駆けた。
早く追わないと、深徹に振り切られる。
……
「流鉄の檻編・第一章」
しまった、この拠点は巧妙に偽装された罠だ。
片葉深徹は自ら行方を明かし、拠点の中で呪符を大量にかけ、後ろをついてきた羽川凛子をおびき寄せた。凛子は拠点に踏み入った途端、呪符が山体を爆破した。足場を失った凛子は谷に落ちた…
転落による衝撃はそんなに怖くないが、谷の底にある「流鉄の艦」は一番の脅威になる。
この谷は両国国境の要所だった。この惨烈な戦場で、百万人近い人がここで討ち死にした。戦争が終わった後、両国は要路を塞ぎ、廃棄された兵器をこの谷に捨てた。戦死した兵士の魂は血に染まった鉄の欠片に宿り、欠片が荒れ狂って鉄砂の川になった。
地面と鉄砂の間に、はっきりとした境界線はない。生き物が鉄砂の上を歩くと、沼にハマるように逃げられなくなり、うごめいている鉄砂に下から上まで研磨されて粉になる。一歩間違えれば、取り返しのつかないことになる。不気味な鉄砂は藤のように岩壁を覆った。谷の絶壁を登ってここから離れるのも不可能になった。
谷底の道に沿ってゆっくり進めば、ここから脱出できるかもしれない。だが、成功者は誰もいなかった。流鉄の艦に誤って入ってしまうことは、死刑判決が下されるのと同じだ。
凛子はかえってほっとした。これで彼女は確信した――片葉深徹はとっくに憐憫と良心を捨てていたことを。これから深徹に向かって刀を振る時、凛子は精神的な負担を負わなくていいのだ。
それだけではない。深徹は凛子の成長の速度を甘く見すぎていた。ただの流鉄の艦は彼女を束縛できない。少し前に覚醒した強大な能力である「烈風纏織」は、ちょうどここで役に立つ。
凛子が術を掛けようとした時、遠くない岩壁の後ろから二つの小さな頭が突き出してきた。
ボロボロな服を着ている女の子たち、彼女たちの目には希望の光が輝いている。
「外の世界から来たの?」
凛子は領いて、フードからおにぎりを取り出した。おにぎりは女の子たちにニャンニャンと挨拶をした。そして、女の子たちは凛子をある洞窟まで連れていった。凛子はそこで、彼女たちの家族――流鉄の艦に誤って入った可憐な人たちと会った。
「ここに数か月も閉じ込められている。荷車にある食糧、泉水、苔と山菜で、何とかここまで耐えられた…」
その*にいるのは、九人の人間と猫一匹だ。凛子は頭の中で考えた。全力を尽くして編んだ烈風の階段なら、みんなを外へ運べるはずだ。
彼女はみんなを誘った、
「私と一緒にここから逃げる?」
先頭にいるおじさんは凛子の薄紅の鬼の角を見つめ、少しためらった。
「武人さんよ…俺の見間違いじゃなければ、お前には鬼族の血が流れてるだろう?」
凛子は少し不安を感じた。
「そう、私は鬼族だけど、何か?」
……
「流鉄の檻編・第十四章」
おにぎりのしっぽぼはコンパスの針のように、左右に動いた後、右前方を指した。羽川凛子は足を踏み出して、もう一度頑丈な岩の上を踏んだ。
谷の出口は視線の先にある。この速度なら、日が出る前に、おにぎりと一緒に流鉄の檻から脱出できる。
「さすがだね、おにぎり。」
凛子は今日でやっと気づいた――おにぎりの霊視能力は、霊魂を見つけたり、凛子の能力を覚醒させたりするほか、危険を回避することもできる。流鉄の檻の中の冤魂も、おにぎりははっきり見えていたのだ。だから安全な地面を正確に見つけることができる。
恐らく、おにぎりの体内の勾玉…同族の魂が自分を守ってくれてるのだろうか?
もうすぐ脱出できるのに、凛子はちっとも喜べない。
あの人たちの声は、まだ凛子の頭の中で響き、彼女をイライラさせている。
「ここに残って餓死しても、鬼族のことは信じない!」
ひどいよ、鬼族がどうしたっていうの?
みんな優しくて、ただ人里離れた海島で平和な生活を送っている。どうして他族に憎まれなければいけないの?
でも、子供たちはあまりにも可哀想な目をしていて、彼らをこのままに死なせたくない凛子は、自分の食糧を全部残した。その人たちのこれからニ週間の分を確保するために、「鏡中物取」の能力で食糧を何度も複製した。
先ほど歩いてきた道、凛子はすべて覚えている。ここから離れると、彼女は近くの駐屯地に行って、彼らの地図に安全な道を記そうとした。そうすれば、駐屯地の兵士たちが彼らを助けてくれるはずだ。
疲れた、過去に経験したどんな戦闘よりも疲れた。
凛子の瞳に光が消えた、彼女はぼんやりと懐にいるおにぎりを撫でた。
消極的な感情を発散するため、時には元凶を見つけ出すことで、すぐに立ち直ることができる…
朦朧とした人影が凛子の瞼の裏に浮かび、彼女は憎しみを抑えられない低い声でこう言った。
「片葉深徹、全部あなたのせいだ…」
「今度は絶対逃がさない。」
……

巫女曚雲小伝

本文を読む

巫女である曚雲は右名氏の出身であった。この氏族は最初に大御神に従い、再び太陽を目にした大族の一つで、鯨の歌を歌う天賦と海洋生物に親しむ伝統で今も有名である。曚雲は幼い頃に珊瑚宮へと入り、現人神の巫女のもとで海祇巫女の祭祀伝統、歴史知識、政務と島唄を学んだ。彼女の双子の妹、後に「海御前」と呼ばれる菖蒲は、氏族の海女であり、真珠を採集することを生業としていた。
やがて、稲妻幕府によって諸島の統一がされ、その知らせが海祇に届いた時、海祇の民たちの間で曚雲と菖蒲の名はよく知れ渡っていた。現存する島唄の中では、曚雲は知恵と優しさを兼ね備えており、海の民たちのいざこざを仲裁するのが得意だったことが伺える。妹の菖蒲は明るくて勇猛であり、海にいる猛獣と渡り合えるほどの力を持っていたようだ。

海祇大御神が躊躇うことなく、勝算の少ない東征を決意した時、現人神の巫女は曚雲姉妹に珊瑚宮で最初の水軍を率いるよう任命した。そして、曚雲と巨鯨「大検校」の物語もここから始まったのである。

伝説によると、「大検校」は盲目の巨鯨で、その寿命は九百年もあるそうだ。深く暗い海底を住処とし、月のように綺麗なクラゲと深海魚がその従者である。左には護衛である五百頭のイッカク、右には楽師である五百頭のザトウクジラ。ある島唄によると、かの者は一度に珊瑚島を十島は呑み込むことができ、満腹になって眠ると、そのいびきと共に岩礁を五つ吐き出すという…

鯨の歌が得意な珊瑚宮の海の民でも、このような巨獣を前にすれば、無事に帰れる者など一人もいないだろう。だが、曚雲は現人神の巫女の指令を受けた。月が海霧から夜空に昇った時、彼女はきらきらと光る鯨の宮に潜ったそうだ。彼女はどんな方法を使って「大検校」を説得したのか、それは誰も知らない。月が三度空に昇り、潮が引いた時、海祇の民はある光景を目にしたという――巫女の曚雲が「大検校」の巨体に座り、銀色に光る静かな海から浮かび上がってくる光景を。

以後、「大検校」とその海獣の従者たちは、曚雲姉妹と共に大御神のために忠義を尽くして戦った、変えることのできない終焉を迎えるまで…
大御神が「東山王」と共に戦没したと聞き、退却する途中、巫女の曚雲は天狗である笹百合の手下の待ち伏せを受け、巨鯨「大検校」と共に戦死する。そして、その遺体は幕府軍によって奪われた。妹の「海御前」菖蒲は、奮戦の末、鮮やかな赤い海に消えて行方不明になったという。

珊瑚宮民間信仰に関する初調査

本文を読む

一般的に、鳴神と海祇の双方に広く受け入れられている伝説は、次のようなものである。
今から二千年前、稲妻はちょうど魔神戦争の末期であった。
伝説によると、遥か昔、大蛇オロバシは海淵の民を日の光に導くため、体にあった珊瑚の枝を折ったそうだ。不毛の珊瑚島で生きる道を求めて、慈愛と慈悲の心で人々を集めたという。
しかし、小さな人間は先の見えない世界で、苦しい環境に置かれれば傷つき、悲しき不幸を目にすれば心が暗くなっていく。空に輝く明るい光も、穏やかに澄み切った空と海も、巨大な貝の宮殿から放たれる玉虫色の輝きも、神々の優しい教えも…飢えと病による傷を癒やすことはできない。
大蛇は、敗者としての苦い過去を忘れたことはなかった。己の民が二度と見捨てられることがないようにと、厳粛な誓いを立てている。そこで、かの者は巫女に尋ねた。
「我の祝女よ、なぜ海淵の民は泣く。我はすでに龍の後継者を追放し、そなた達が天の光を見られるようにしたというのに」
知恵のある巫女様はこう答える。
「飢饉です」
大蛇は再び尋ねた。
「民を養えないのは実に罪なこと。では我が民よ、そなた達は何を求める?」
正直な民はこう答えた。
「あなた様が私たちに生きる道を示してくれたこと、略奪も迫害も抑圧もない海の国に導いてくれたこと、それだけで私たちは十分に恩義を感じております…しかし、珊瑚島の東には、さらに肥沃な土地があります」
「東にある島々に足を踏み入れる許可をください。自分たちの田畑を確保し、子孫に明るい過去を残して、充実した未来と灰色ではない今をもたらしてください」

しかし、大蛇は何も言わず、ただ黙っていた。
鳴神は常にその武勇を頼りに、東の島々を統一してきた。神が戦いに敗れれば、当然、例外なく天京の法則によって裁かれることとなる。
それから数年間、悲しみに暮れる貧しい人々は幾度となく祈りを捧げた。そして、ついに彼らの魔神は心を動かす。
こうして、大蛇は貧しく弱かった海の民を、強い戦士へと鍛え上げた。鯨の歌に合わせて、船や海獣、波や雲を駆り立て、雷神の国への侵略を布告したのだ…
しかし、海の民たちは知らなかった。海祇大御神は征服ではなく、犠牲の上に成り立つ、勝算の少ない暴力的な争いを始めようとしていたことを。
ある噂によると、巫女が意図的に隠した占いの中に、珊瑚宮の東征は最初から破滅をもたらすものだと書かれていたという。海の民に屈辱と困窮を与えると予言されていたそうだ。

オロバシの動機を明確に記した史料はない。これは占いの内容が判明した時点での推測である。
海祇大御神もまた、それによる死を免れることができないとされたが、その結末を素直に受け入れた。
「信仰」の永遠不滅を実現するには、「犠牲」を選ぶほかない。神が逝去し、この世から永遠にいなくなろうとも、民たちは喜びや豊かさ、苦しみ、喪失の記憶を紡ぎ、一つの信仰として持ち続ける。敗北と従属の屈辱、そしてそれが生んだ激情が、共有する記憶の糧となった。

現在の海祇人の多くは、先祖を生きる道へと導いた大御神が蘇る可能性など信じていない。しかし、海祇人としての高い誇りと、かつて崇められていた神の体が宗主によって鉱物として扱われた苦痛、そして海祇大御神を失った深い悲しみ…これらは世代から世代へと受け継がれ、強い感情となった。そして、それらは文字には残らない歴史となり、海祇人の信仰を築き上げ、そこに忍耐や闘争、犠牲の脚注を付け加えた。

著者が書いたように、珊瑚宮の国は歴史の記述が乏しく、その動機の多くが後世の解釈に委ねられた空想の物語となっている。そのため、この物語の歴史は「記録された実際の歴史」ではなく、「蓄積された意識の歴史」となる。千余年にも渡って共通意識が強化されてきたその民たちが、敬愛する神を失ったにもかかわらず、強大な元素の神を信奉する国へと立ち向かうことができるとは…古いしがらみにこだわり、それを改めようとしない偏屈さとは決して違うだろう。

注目すべきは、過去の「事実」を軽視し、現在の「意識」を重視している点だ。これは海祇の国の大きな欠点の一つでもある。千余年の間、蓄積されてきた不満や耐えてきた恥辱を、この貧困の時代に奸心を持つ者が煽動すれば、国に思わぬ厄災をもたらすかもしれない。

しかし、知恵と忍耐で知られる海祇の民は、本当に生き延びるため、果てしない屈辱に耐えることができるのだろうか。
特に近年、勘定奉行の経済的な搾取を受けて、海祇島の若者たちがその抵抗感や不満について語る機会が増えている。これらの話題は単に過去だけでなく、現在や未来にも重大な影響を与えていることを示しているだろう。

しかし、これら海祇の伝説には別の言い伝えも存在する。
かつて、深海の底にいた海淵の民は、非常に信憑性の高い年代記を持っていた。昼も夜もないため、そうしなければ時間さえも分からなくなってしまうからだ。しかし、これらは大蛇の命令により淵下宮に封印され、持ち出すことはできなかったという。
昔、海淵の民たちの名は稲妻と形式が異なっていた。現在、海祇の民に名字があるのは、大蛇が鳴神の伝統を学ぶよう命じたため生まれたものである。
伝説によると、海祇大御神が海淵の民を海底から連れ出すと決めた時、天京からある通達がなされたという。海祇大御神は、魔神戦争を避けるため、闇の海へと入ろうとする大罪の神。それは、オロバシを処するという天からの下命であった。しかし、それが真実であるかについては謎である。
この世界に海淵の文字を読める者はほとんどおらず、蔵書も淵下宮に封印されていて見ることができない。真実が日の目を見ることはまずないだろう。しかし、「事実」を隠喩したこの伝説は、「意識」を隠喩した前者の伝説に比べれば何の意味もなく、無関係な歴史に過ぎない。

「東王」史論

本文を読む

「東山王」の本名は謎に包まれており、出自も低級であったため、一部の島唄の中では彼のことを「月明かりと潮の遺子」、または「月明かりに忘れられた子」と表現している。おそらく、彼は一族を失った身無し子だったのだろう。あるいは、海流と共に漂流してきた流人の子供だったのかもしれない。

苗字も名前もなく、彼の成長を見守る一族もいなかったが、海祇大御神はこの子を受け入れた。かつて、海淵に囚われた遺民を受け入れた時のように。そして、その男児は曚雲姉妹のもとで、海祇人の鯨の歌と祭儀を学んだ。彼の記憶は珊瑚と貝の宮殿、輝く魚の群れと色鮮やかなサメによって虹色に染まり、体はゴツゴツと粗い岩礁と数知れない波に磨かれ、逞しくなった。

右名氏の島唄の中で、男児が少年となった頃、巫女の曚雲が月明かりと星々の波の中で泳ごうと彼を誘った。寄せては返す輝く潮の中、少年は海獣の言葉と思いを知ることとなる。巫女の優しくて悲しい囁きの中で、少年は進むべき道を決めた。

この夜のひとときの後に、少年は「月曚雲」と「夕潮」という剣術を悟ったという。彼は跡継ぎを残さなかったが、この剣術は海祇の武人たちに受け継がれ、代々洗練されてきたおかげで失われることはなかった。剣術の伝統に乏しい海祇島で、この二つは今でも戦いにおいて実用的な技である。

海祇大御神が帰らぬ東征へ出た時、この少年は海の民が「東山」と呼ぶ島に真っ先に乗り込み、攻め落とした。「東山王」という名も、その功績が認められ海祇大御神が彼に授けた封号だ。だが、現在のヤシオリ島に住まう者たちは、この勇猛で恐ろしい「東山王」のことを、凶暴で残忍な「惡王」という名で語り継いでいる。

最後、「惡王」と彼の主は「無想の一太刀」によって制裁を受けた。かつて月夜の下で共に海を泳いだ曚雲も、一族の嘆きの中、漆黒の鴉羽の嵐によって帰らぬ人となった…
一切が落ち着き、一切のことがその思いと真逆であった。

若くて傲慢であった「東山王」は慕っていた人と結ばれず、平和な未来を享受することもできなかった。だが、今の海祇島の人々が、勇敢な志士たちのことを「東山王の子孫」と呼んでいるのは注目すべき点であろう。

『七人目の武士』台本

本文を読む

第五幕、第三場
「……十三郎は残りの侍を率いて、盗賊と激しい戦闘を繰り広げた……
……十三郎たちの勢いに負け、盗賊たちは散り散りに逃げはじめた。
セリフ:
『久蔵:十三郎!盗賊どもが逃げるぞ!』
『十三郎:そうやすやすと米を諦めるわけがねえ!気をつけろ!』
……盗賊を倒した後、十三郎は茫然と辺りを見回し、叫んだ。
セリフ:
『十三郎:盗賊は?盗賊は?』
『久蔵:皆倒したぞ。』
十三郎は呆然と立ったまま、辺りを見回すと、いきなり号泣しはじめた。」

一通の家信

本文を読む

拝啓 父上様

久しく手紙を出していませんでしたが、家の方はお変わりないでしょうか。
この前の手紙で「泉水子」が子供を生んだとありましたが、多忙ですぐに返信できず、申し訳ありませんでした。今頃子犬たちも成長したのでしょう。そのうちの一匹を研次の家に送ると仰ったこと、とても嬉しいです。私と研次は軍に入隊して、碌に親孝行もできなかったものですから、父上と母上が研次のご両親と懇意にされていることを知り、少し安心しました。
軍での生活は順調です。どうぞご心配なさらずに。食事も十分にありますし、部屋も広くきれいです。最近、松平という友人ができました。機会があれば、家に招いてもてなそうと思っております。
それから、良い知らせがあります。戦場での活躍を評価されて、晴れて一般兵士から旗本に昇格致しました。研次も同じく旗本になりましたが、自分から教えたいそうなので、どうか研次のご両親にはまだ内緒にしてやってください。
戦争が終わって、研次と一緒に村に帰ったら、きっと今までと違う生活になると信じております。その頃の俸禄なら、きっと父上と母上が海に出なくても良くなります。新しい家を建て、新しい船を買って、裕福な暮らしができるでしょう。そのために、引き続き頑張って参ります。
どうかくれぐれもご自愛ください。

敬具 公義

ボロボロな手紙

本文を読む

拝啓 研次様

伝えたいことは沢山あるが、どう書くべきかすごく悩んだ。俺たちは小さい頃から一緒に剣を学び、一緒に軍に入り、どんな時でも一緒だった。俺にとってお前は兄弟同然だ。まさかあんな喧嘩になるなんて思わなかった。
研次、すまない。俺は後悔している。あの時冷静になれたら、強引に行かなければ、お前もあんなに怒らなかっただろう。お前からすれば、俺は将軍様を裏切った恥知らずなやつだろう。だから何も聞かずに拳を振り上げたのだろう。俺は他人からどう思われても気にしない。だがお前にだけは誤解されたくない。だから俺の気持ちを手紙に書くことにした。
軍に入る時の夢を覚えてるか?このご時世だから、剣で名を挙げ、親に楽をさせようって。それに、珊瑚宮の賊は「雷の三つ巴」の旗に剣を向けるなど、許せぬ重罪だと、大人からずっと聞かされてきた。死すべき罪人なら、何も気にせず斬れば良いと、俺はずっと思っていた。あのことがなければ。
ある戦いの後、撤収する時に、俺は戦場で血に染まった手紙を拾った。反乱軍の兵士が家に宛てたものだ。信じられないかもしれないが、送り主はお前も知っている人物だ。軍に入ったばかりの頃、世話になった先輩がいただろう。
あの人だ。手紙には、家の漁船のことを気にしていると、早く戦争が終わって、家に帰りたいと、書いてあった。あの人が反乱軍に入ったなんて思いもしなかった。こんな形で再会することも。
あの手紙を拾って、俺は気付いたんだ。反乱軍の人たちも同じ人間だ。故郷に家族が待っている人間だよ。俺はあの手紙を隠すことにした。いつか先輩の代わりに、家に届けてあげたい。だが何故かそのことが何人かの同士にバレてしまい、ひどく非難された。俺やお前は家も後ろ盾もないのに、戦果を挙げていち早く旗本に昇格したから、前から罵詈雑言はあったが、この一件からさらにひどくなった。戦場ですら、気付いたら背中を守ってくれていた同士が故意に隙を作って、俺は何度も死にかけた。悲しかったよ。たくさん考えて、決めた。幕府軍にいられないなら、敵軍に同情が芽生えたのなら、いっそあちら側につこうと。
研次、お前は真っ直ぐな奴だ。きっとお前は何も気付かなかったのだろう。こうして心の内を伝えたのだが、わかってくれとは言わない。知っていてくれれば、俺には十分だ。今俺は珊瑚宮軍の陣地で、この手紙を書いている。お前がこれを読んだ頃、戦争が終わっていることを願う。その時になったら、また俺のことを友達だと、兄弟だと思ってくれるのなら、一緒に家に帰ろう。モラも、名誉も、何もいらない。俺たちは刀だけ持って軍に入った。家に帰る時も、二人で、二本の刀だけ持って、帰ろう。

敬具 公義

薬師の手帳・一

本文を読む

……
……直子先生が亡くなった。「祟り神」が現れた後、まだ島に残っている医者は私だけになってしまった。
島の人たちは一人、一人病んでいくのを見ていることしかできないのは、とてもつらい。しかし私には「祟り神」の穢れをどうすることもできない。ただスミレウリで甘いスープを作って誤魔化すことしか……

「やさしさも治療の一つよ」
……先生はよくそう言っていた。でもそれはただの医者の自己満足だ……
……

薬師の手帳・二

本文を読む

……
……女の人が診てほしいと訪ねてきた。鉱夫の家族らしい。だが、彼女の病状は極めて特殊だ。私の腕では、断定できそうにない。ただ直感から推測するに、祟り神の力は侵蝕せずに、彼女の体内を自在に流れていると思われる。患者の精神も体も大きく影響されてはいないが、下がらない熱と間欠的に起こる少量の出血を抑えるのは難しい……
……命に関わる症状ではないが……彼女の場合、伝染性があるかも定かではない……
……治療法があるとすれば、スメールの医療機関しか……
……
……彼女に海賊の方に行くように言った。鬼隆のおっさんは金に汚いが、義理堅い男だ。きっと助けてくれる……
……彼女には子供がいるそうだ。長次というらしい。全部終わったら、ちゃんと子供の面倒を見てあげるって……
……でも今は会えない、まだその時ではない……

薬師の手帳・三

本文を読む

……
……異国の人が島に来た。傍らににぎやかな小さき精霊がいる。大変な時に来てしまったね……
……
……異国の友人のおかげで、研究が随分進んだ。こんなに上手くいくとは思わなかった……
……これからヤシオリ島南方の砂浜へ行って、薬の効果を試そうと思う。今度は1回分丸ごとだ……
……結果はどうあれ、助けてくれた人たちに感謝を……

開封した手紙

本文を読む

親愛なる我が子 頭師長次へ

この手紙を読んでくれたら、お母さんのことを許してほしい。
あなたたちを置いていってしまうこと、私もとてもつらいわ。
でも、希望を捨てないで。お母さんに絶望しないで……長次とお母さんがずっとお父さんは生きていると信じるように。
島の「祟り神」は危ないから、くれぐれも自分を大切にして。
「祟り神」が現れたから、きっと戦争ももうすぐ終わる。そしたら、みんなが武器を下ろして、一緒に島の穢れをなんとかしようとするだろう。
もしかしたら、お母さんはその光景を見ることができないのかもしれないけど。

これから悪い人に会うかもしれない、長次を利用しようとしたり、傷つけようとしたりする人もいるかもしれない。でも希望は捨てないで。悪い人ばかりではないのよ。
戦争が終わったら、きっとすべてが良くなる。
でも、絶対、絶対に、私の後を追おうとしないで。急いで会いに来ようとしないで。お母さんからのお願いよ。
お母さんを信じて。
きっと帰って、長次とお父さんに「ごめんなさい」を言うから。
それまで待っていて。

稲葉藤三郎久蔵 絶筆

本文を読む

このような文を残すことを、どうかお許しください。
人生五十年。藤三郎も三十余りを生きました。残りの十数年はこの身に余る故、どうかその分、父上、母上が長寿なさるよう祈っております。
静子よ、どうか怒りも悲しみもなさるな。藤三郎は許せぬ罪を犯した。不甲斐ない夫をどうか忘れてください。
正則、お松、父を許しておくれ。
友人各位に出会えたことを、幸運だと思っております。
申し訳ございません。
藤三郎は武人故、文に長けておらず。しかし別れを告げるにあたり、筆が止まらなくなりました。
この文を読まれる方、どうか長文をお許しください。

十数年前、軍に入ったばかりの頃、藤三郎は大御所殿下に憧れ、百千年前の数々の大義ある戦に憧れ、いずれ自分も真なる「永遠」のために身を捧げることを夢見ていた。
今思い返せば、若い頃は過去の伝説と現実を結びがちだった。大御所殿下のような完璧な英雄になれると信じていた。
しかしいざ戦争になると、敵は魔神の眷属でもなければ、深淵から来る醜い化け物でもなかった。自分たちと何ら変わらぬ、人間だった。
昨日倒した敵が、「目狩り令」が下された日までは烏有亭で盃を交わしていた友かもしれない。今敵に討たれた戦友が、半刻前まで談笑していた相手かもしれない……
同族のはずなのに、和解の可能性を捨て、憎しみを振りかざして、やっと今日を生き残れる。
なんて残忍、なんて残酷だろう。
「大義ある戦」こそ、最大の業であろう。

暴言をお許しください。藤三郎は大御所殿下を恨んでなどおりません。
大御所殿下はおっしゃいました、戦争は「義」と「不義」に分かれると。
「不義」の戦は、「願い」が膨らみ、人心が乱れる故に起きる。
大御所殿下が「永遠」という大義のために「神の目」を回収することは、大昔に大蛇を斬ったことと同様、義のある行動である。
戦争で分不相応の思いを抱く者を排除し、あらゆる「不義」の可能性を終わらせることこそ、最も「大義ある戦」である。

しかしながら、戦争とは残酷なものだ。誰かがその責を負わねばならない。
藤三郎はこれ以上忠義を尽くせそうにありません。この身を持って、大御所殿下のために、一つ業を背負わせて頂きます。
大御所殿下の永遠なる世が一刻も早く実現するよう、祈っております。

稲葉藤三郎久蔵、伏して謝罪致します。

欠けたノート

本文を読む

…戦争は続いている。両方のチラシには空虚な言葉しか書かれていない。私たちのことなど関心する余裕がないんだ…
…緋木村は鉱山から逃げてきた人を受け入れすぎて、食糧が底をついてしまった。今できることは、みんなの財産をまとめて、平等に分け当てる事のみ。海賊から食料を買うためのお金も確保しておく必要がある…
…いずれにせよ、蛇骨付近の祠を管理する人員が必要だ。みんな「祟り神」のような目に見えないものに怯えている。この件は村長の俺がやるしかない…
……
…体調を崩したり、軽い病気にかかった人が大勢いるため、肉体労働が困難になっている。このままではまずい…
…保本という男は詐欺師だ。彼が作ったものはスミレウリと砂糖のみを使ったスープ。何の治療にもならない…
…あいつはあれからぶらぶらしている。やっぱり頼れない…

ボロボロの紙切れ

本文を読む


…村で唯一の医者も精神が異常だったから、彼を縛って地下室に閉じ込めた。これは誰も傷つけないための唯一の方法なのだ…
…今俺たちができるのは祈ることのみ。俺の思いが大御所様の耳に届き、戦争が終わることを願っている…
…みんなを祠に集めないと。こんな状況でみんな必死で頑張っている。村長として自分の無力を痛感しているが、せめて希望を与えられるようなことをしないと…
……
…真吾は「神の言葉」を聞いたと言ってたが、そんな馬鹿なことある訳ない…
…長次の母はまた来ている。彼女は毎日、祠で一人祈っている。病気のため?夫のため?村長として何もしてあげられなかった…
……
…真吾を監禁した。彼は完全にくるってしまい、長次の母親を襲おうとしたのだ!おれは緋木村を代表して、彼女に謝った…
……
…耳の中に誰かが話している。大きな声だ。ここ数日ちゃんと寝ていないせいかもしれない。俺には休憩が必要だ…
…頭が痛く、幻聴はまだ治っていない…

林蔵の手紙

本文を読む

おい、野郎ども!
船長の俺に何年も会っていないが、俺のことを忘れたわけじゃないよな?
恩知らずな野郎どもが!
だがすまないが、この林蔵は引退することに決めた!
野郎ども、これから他の道を求めようと、独立しろうと、何でもいいが、これからの話を忘れるな!
長い話になるかもしれない、それに少し飲みすぎた。だが、俺を頭が回らないくどくどしいやつと思わないでくれよ!

なんだっけ…あ、そうだ、ある子供から話そう。
ハハッ、あの頃、あの子はまだ傷だらけになっていなかったし、腹も各国の強い酒に満ちていなかった。
あの時、海の誘惑と災厄も、無常と定則も、すべて彼と関係がなかった。
彼が持っていたのは、無邪気だけだ、無邪気は一番純粋な幸せだが…一番偽りの幸せでもあるかもしれない。

その後はまあ、とあるじじいが波と共に漂流してきた。彼は浅瀬に寝転がり、ちっとも動かなかった。
じじいの蒼白い体に海草が絡まり、頭にレースのようなわかめが絡み付いた。まるで古き死体、あるいは国王のようだった…

「海の奥に…海の遠くに…」彼はそう言った。
そして…何も話さなくなった〟
夕暮れに照らされた彼の濡れた顔を見て、俺は確信した、彼は異国の国王であると。

海の奥に何があるか? 海の遠くは何を約束したか? 誰も知らない、ゴミだらけかもしれない。
あの時、大人たちはいつもそう言っていた。真夏に海面を見つめすぎると、めまいをして暫く死んでしまうと。
だがそんなことで、頭が単純な子供を止めることなんてできなかった…

よって、あの子は自分でいかだを作り、海に出た。
海の奥、海の遠くは、砂浜から見たあの静かで永遠に変わらないものではない…
小さないかだが暴れる風波に砕かれ、小さな少年が波に投げられた時、彼は自分が愛する相手を見つけた…

彼は海賊になった。
その後の話は、お前らの前で何度も自慢したから…ここでは触れないでおく。
とにかく…とにかくだ、今日まで、あるいは明日の明日まで…俺が一番気になっていることは…
赤穂百目鬼を超え、自由な海賊の国を建てる夢は、まだ遥か遠い先にある。そして俺はそれを、もうすぐ捨て去ろうとしている!
はあ、嘆かわしい…いや、嘆かわしいことでもない!
もう…数多の嵐を経験し、多くの敵や海獣に挑戦した。野郎どもと政府や他の海賊の手から何度も逃げた…
彼は求めていたものを手に入れた。それと同時に、たくさんの物を失った。
彼がやっと海の端、全ての航路の果てまで着いた時、自分がもう若くないことに気付いた。
だから、彼は帰航することに決めた。あのすべてが始まった場所に、海祇島のあの洞窟に帰るのさ。
長年貯めた財産、人工で彫られた宝石も、神体から見つけたモラも…野郎どもよ、お前らの船長は全てをそこの洞窟に置いてきた。

彼のみが所有する、本当の宝物も、あの子はあそこに置いてきた。
野郎どもよ、根性があるのなら、探せ!
俺の大事な宝物はお前らの想像する物とだいぶ違うかもしれない、お前らは失望するかもしれない…
だが俺は気にしない。
俺は全然、まったく気にしない!

なぜなら、それは俺だけの宝物だから、ハハハハハッ!

手紙が入った漂流瓶

本文を読む

オヤジよ! おふくろよ! この不出来な息子、許してくれ!
俺は利益に目が眩み、「海中月」の伝説を信じた。魚一匹で金持ちのお嬢さんを嫁にできると思ってた! 今は泥船に乗って降りられない!
海を何日漂流したか分からない。水も飲めないし、魚を獲る力もない。
このくそったれな海はまだ端が見えないが、この嘉瑋はもう人生の端にたどり着いたようだ!
はぁ、もうどうしようもないだろ? はぁ――
このくそ「海中月」にもし良心というものがあるなら、俺の手紙を岸まで運んでくれ。オヤジとおふくろに、いつまでも俺の帰りを待つのはあきらめろと伝えるんだ。もう俺は、帰れない。
もし来世があるなら、この嘉瑋は逆玉の輿に乗り、両親に安楽な生活を送らせたい!
鷹を娶ったら、空で肉を食ベられる。犬を娶ったら、地で…地で…
(後半は深かったり浅かったりした意味不明のかすり傷しか残っていない。)

天領奉行上奏文書

本文を読む

稲妻の空に輝く光を見上げますと、将軍様の不変の道が彼方の遠海ヘと轟き、威鳴が四方八方へと響いていくのが聞こえてまいります。
天領奉行 九条孝行
「目狩り令」には一片の曇りもなく、広がる様はまさに破竹の如く。将軍様の恩威の下、妄者どもは散り、落ち人は帰郷し、民も康寧たる姿を見せております。これこそ、民心を掴む壮挙でございましょう。
目下、稲妻全土が安寧を迎えしは、すべて将軍様の神威のお陰。「目狩り令」は必ずや、稲妻を永遠のものといたしましょう。

きちんと書かれた手紙

本文を読む

あなたがこの瓶を手に取ったということは、私はもうこの世にいないかもしれません。
あの海賊たちは何らかの手段を持っていて、私を璃月まで送り届けてくれるかもしれないと思ったのです。それでわざわざ彼らの船に乗り込んだのですが、まさか…はぁ、仕方ありません。これもきっと運命なのでしょう。
稲妻に来る前、一人暮らしの母が盗賊に遭った時のことを考えて、長年蓄えていた金券を地図に記された場所に埋めていました。あなたにそれを掘り起こしていただき、銀行でモラに引き換えてほしいのです。そのお金は自由に使っていただいて構いません。ただ、私の母の生活費を少し残しておいていただけないでしょうか。母の名前は源琴美、帰離原に住んでいます。どうか、よろしくお願いいたします。

母よ、すまない…母の故郷で緋櫻毬を見つけたが、残念ながら私はそれを届けることができなくなった。

謎のチラシ

本文を読む

テイワットで一番心優しいお姉さん
優しくて美しくて、どんな質問にでも答えてくれる
誠心誠意、あなたの悩みを解決してくれるでしょう