HOYO-MiX

miHoYoの社内サウンドチーム。コナミの矩形波俱楽部やファルコムのSound Team jdkのようなものと言えばわかりやすいだろう。
原神やほかのmiHoYoゲームのサントラはほぼ全てこの名義でリリースされている。各曲の作編曲・演奏・エンジニアリングなどの詳細クレジットは、中国の音楽配信プラットフォームで確認可能。
ゲームプロジェクトごとにチームが分かれており、原神チームのメンバーは基本的に原神の楽曲しか作らないが、他のゲームに関わる事例もある。
このページでは主に原神チームのメンバーの情報や小ネタを紹介する。

参照（外部リンク）：
VGMdb
みんなで決めるゲーム音楽ベスト100まとめwiki

原神チームの沿革

初期（Ver.1.0～2.3）
Yu-Peng Chenがゲーム内BGMの全作曲を担当。Dimeng Yuanをはじめとする他のメンバーは一部編曲やゲーム外コンテンツ（PVなど）の作・編曲に参加。当時はHOYO-MiX所属外のアレンジャーが関わるケースもあった。

淵下宮～スメール雨林（Ver.2.4～3.0）
Dimeng Yuan、Xin Zhao、Yijun Jiang、Qian Dingの4名がゲーム内BGM作曲チームに本格参画。Yu-Peng Chenは依然として突出した楽曲制作数を維持。

スメール砂漠～ヴェルーリヤ・ミラージュ（Ver.3.1～3.8）
Peijia You、Arcangelo Chen、Ziyu Che、Yuxi Wangが新たに加入。Yu-Peng Chenの名前がボス戦と既発曲のアレンジ以外から消える。おそらくこの時期のどこかで退職したものと思われる。

フォンテーヌ以降（Ver.4.0～）
Yu-Peng Chenが退職を公表し、音楽プロデューサー職をDimeng Yuanが継承。人材補充は継続的に行われ、2025年8月時点では作曲メンバー数が15人に達している。

メンバー

Dimeng Yuan (苑迪萌)

現・原神音楽プロデューサー。初代音楽プロデューサーのYu-Peng Chenとは上海音楽学院の同窓である。
2010年代中盤からYu-Peng Chenの楽曲編曲を数多く手がけ、原神リリース初期ではほぼ全てのキャラPVやバージョンPVの編曲を担当した。
原神での初の単独制作はおそらく煙緋実戦紹介BGMである。Yu-Peng Chenが作・編曲に関与しなかった最初の原神楽曲でもある。本格的なゲーム内BGM制作参加は淵下宮から。
スメールの音楽秘話動画ではすでに音楽プロデューサーとして紹介されていた。
チームメンバーが増えたこともあってか、音楽プロデューサーを引き継いで以降はスーパーバイザーとしての仕事に重きをおくようになったのか、自身の作曲活動は限定的。現在は主に各国のテーマ曲など重要な曲を担当している。
ちなみに『崩壊3rd』第一部のエンディング曲の共編曲を担当し、『崩壊：スターレイル』のオープニング曲（『星間旅行』）の共作曲にも参加した。

Xin Zhao (赵鑫)

淵下宮からゲーム内BGMに参入した四人のうちの一人。最初に手掛けたのは、おそらくver2.0PVの編曲。
フォンテーヌの音楽秘話動画で初めて紹介されたが、スメールの動画でも登場している。
他のメンバーと比べ、キャラクターPVの曲を担当することが多く、多彩な音楽スタイルを見せている。
2010年代初期には上海映画グループに所属し、中国の国産アニメ映画の音楽を手がけていた。またその時期に駆け出しのYu-Peng Chenと同じ映画に参加したことがある。その時期にすでに知り合っていたと思われる。
原神参入直前には、着替えゲーム『ニキ』シリーズの作曲にも参加していた。

Yijun Jiang (姜以君)

淵下宮からゲーム内BGMに参入した四人のうちの一人。こちらもスメールの音楽秘話動画にて、その姿が確認できる。
最初は崩壊3rdチームに所属していたが、後に原神チームに異動した。原因は「電子音楽は得意じゃない」（自己申告）らしい。
『猛然たる風雷』、『夏の夜の幻想』、『ばらばらになった星たち』、『神喰らう巨蛇の乱舞』など、Yu-Peng Chenが離職する前から、数多くの名戦闘曲を手掛けていた。フォンテーヌとナタでも一部のフィールド戦闘曲を作曲した。
フォンテーヌ実装前までの作曲数は二番目に多い。
前職は中国の動画サイトビリビリ動画のサウンドデザイナーである。また、中国語ボーカロイド歌手「洛天依」を使用するボカロPでもあった。

Qian Ding (丁谦)

淵下宮からゲーム内BGMに参入した四人のうちの一人。こちらもスメールの音楽秘話動画に登場している。
フォンテーヌの『嘆きと凱旋』やナタの『トナラマトルの遠征』など、いわゆる原神らしくない一風変わった戦闘曲を手掛けた。
またファデュイ執行官の「博士」と「隊長」のテーマ音楽の作曲者でもある。
バイオリン奏者であり、上海フィルハーモニー管弦楽団に一年ほど所属した。入社前は『崩壊学園』のキャラソンのバイオリン演奏に参加したことがある。

June (刘越)

他のメンバーと比べて、少し独特な立ち位置の人物である。スメールの音楽秘話動画に登場したが、初めて作曲に参加したのはスメールの砂漠地域で、2025年2月時点では手掛けた曲数も十数曲と非常に少ない。
その代わり、Yue Liuという名義で、2022年のオンラインコンサートではプランニングアシスタントとして、2023年のオンラインコンサートではミュージックアシスタントとしてクレジットされるなど、曲作り以外でも活躍している。
さざ波創作秘話の動画で初めて紹介された。
Juneという名義の由来は、おそらく本名「刘越」の中国語読みが「六月」と同じだからである。
入社前はオーケストラ系同人サークル、NFT conFuoco orchestra（2021年に活動終了）の主催をしていた。活動期間中は東方projectの同人アレンジアルバムを何枚かリリースした。

Peijia You (尤裴佳)

2000年代中盤からギタリストとして地元のいくつかのバンドに参加したという経歴がある。（参照）
そのため、作曲に加えてギタリストとしても活躍している。『さざ波』、『燼火』、『いつかその道へ』では演奏に参加しており、『崩壊：スターレイル』のレコーディングにも参加している。
バンドサウンドを得意とし、オーケストラやEDMなど、バラエティ豊かな曲も作る。また、パージョンPVの曲を担当することが比較的に多い。
ちなみに、音楽秘話系動画には登場していないが、ビリビリ動画にアップロードされた『HOYO-MiXメンバーが4.6の音ゲーイベントをやる』という内容の動画に登場した。また、彼が参加したバンドの演奏動画では、右腕に刺青があることが確認できる。

Arcangelo Chen (陈子敏)

スメールの中盤から参入した。参加初期には『六輪一露の狂詩曲』のオーケストレーションを担当した。
古典音楽への造詣が深く、フォンテーヌの音楽秘話動画でも古典音楽の作曲家やスタイルについて言及している。
フォンテーヌでは『終わらぬ盛典』、『白き泉の暮景』、『淡き月のジムノペディ』や『コペリウスの辞別』、『安息の協奏曲』など、実在のクラシック音楽だと思わせる曲を多く作り出し、大活躍を果たした。
入社前はネットドラマやインディーゲームなどに楽曲を提供していた。またソ連時代の作曲家のショスタコーヴィチの大ファンで、氏の生涯や作品について深く研究しており、ソ連の大祖国戦争期における氏の経歴を紹介するコラムを執筆したこともある。

Ziyu Che (车子玉)

女性で、2025年のはじめまでは原神チーム唯一の女性メンバーだった。かの名門バークリー音楽大学卒で、miHoYoへの加入前はニューヨークとロサンゼルスで活動し、CM音楽などを作っていた。
作曲に参加し始めたのはスメールからだが、2022年のストーリーPV『雪晴れに綻ぶ椿』では、すでにBGMのボーカルを担当していた。
甘露花海など、自作他作を問わず透明感のある印象的なスキャットを多くの曲で披露している。フォンテーヌでは水中BGMを大量に作曲しただけでなく、曲中のボーカルのほとんどを彼女が歌っている。
2021年のインタビュー動画では、会社名は明言しなかったものの、miHoYoに入職したのは2021年中盤であり、それが『夢にまで見た仕事』であることに言及した。
octodaddioという名義でボーカルアルバムをリリースしたことがある。

Yuxi Wang (王予曦)

スメールの後期に加入したメンバー。
フォンテーヌ時期には、主に街などのフィールドBGMを制作した。ナタでは自身の初戦闘曲である『蒼き野原のアンセム』を手掛け、予告番組で初披露され、大きな話題を呼んだ。
音楽に関しては独学で、入職前にはビリビリ動画で自作のオーケストラ音楽を上げていた。また、2022年に上海音楽学院とmiHoYoが共同開催した国際デジタルミュージックフェスティバルには、スメールのイメージ曲で応募し、優秀賞を受賞した。余談だが、このフェスティバルには、Yu-Peng ChenやHOYO-MiXリーダーのZoe、Yu-Peng Chenの作曲の師である安栋など、中国国内の音楽家に加え、日本の有名ゲーム作曲家である崎元仁、西木康智、岩垂徳行の三名も審査員として参加した。

Lunan (路南)

本名は吴峥豪。原神チームでは主にEDMを担当している。『寒晶の夢』、『霜烈の競争』、『カタストロフの残影』、『終末の赦祷式』など、強いEDM要素を含む楽曲の制作に参加した。また、ほかのメンバーの楽曲にEDM要素を取り入れる仕事を担当することが多いためか、共同編曲のクレジットが多い。
自作したオリジナル楽曲を路南名義で、miHoYo入社後でもiTunesなどで継続的にリリースしている。

Yang Lee (李洋)

フォンテーヌ中盤より参入。旧日の海エリアのテーマ曲である『栄枯盛衰』を制作した。『そよ風と月』や『夜の花冠』に見られるキャッチーなメロディーがトレードマーク。
入社前は中国のゲーム業界最大手であるテンセントに所属していた。主に『Arena of Valor』というMOBAゲームの楽曲を担当し、会社員でありながら、個人名義でサントラがリリースされている。
音楽秘話系動画には登場していないが、『記憶の旅』の中国版で歌唱を担当した歌手がアップロードした動画に、彼と思われる人物が登場した。

Deer Suo (索德尔)

2025年海灯祭イベントの楽曲編曲でゲーム内BGMに初参加。また、Music Copyistとしてクレジットに載ることが多い。
2023年のオンラインコンサートではSaku名義でCopyistとしてクレジットされた。『崩壊：スターレイル』のコンサートでもエンドロールで名前が確認できる。
また、miHoYoが制作したバーチャルキャラクター「鹿鸣」の動画で使用された原神楽曲のアレンジにも参加した。
東京音楽大学卒で、学校のサイトには2021年時点のインタビュー記事が掲載されている。

Linyao Feng (冯琳尧)

女性メンバー。彼女のLinkedInページによると、miHoYoに加入したのは2025年1月頃。
以前は音源の制作など、楽曲創作以外の職に就くこともある。

Zhenlan Kang (康贞兰)

女性。2024年までは日本で活動していて、会社員としてカプコンで『モンスターハンター：ワールド』や『バイオハザード RE:2』、Cygamesで『ウマ娘プリティーダービー』といった有名ゲームの音楽を手掛けた。
2025年2月にmiHoYoに加入した。

Caroline Luo (罗静怡)

女性メンバー。『ゼンレスゾーンゼロ』のヒューゴのEPの作曲者の一人で、その時点ではまだmiHoYoのメンバーではなかった。

旧メンバー

Yu-Peng Chen (陈致逸)

初代音楽プロデューサーで、原神音楽の基礎を築いた人。稲妻の中期にHOYO-MiXが正式に始動するまでは、キャラクターテーマを除く全曲を一人で作曲していた。氏が生み出したライトモチーフは現在も他の作曲家によって使用され続けている。『致逸』はペンネームで、本名は『宇鹏』(Yu-Peng)である。『中国一番の作曲家になること』が子供時代からの夢だった。
2000年代後半から本格的な活動を開始した。アニメ、ゲーム、特撮、実写映画やドラマなど、多くの作品に楽曲を提供し、知る人ぞ知る作曲家として一部で人気を集めていた。原神のヒット以降、ゲーム音楽の作曲家として世界的に認知されるようになる。
アリスの谷村新司が上海音楽学院の教授をしていた時期に指導を受けており、2005年の愛知万博（愛・地球博）で彼に連れられ演奏に参加したことや、のちに谷村が日本のテレビ番組で上海時代を述懐した際にVTRで紹介されたことがある*1。
ゲーム会社に所属していた作曲家が離職して個人活動を始める事例は多いが、すでに自身で会社や事務所を立ち上げて何年も個人活動を続けてきた作曲家がゲーム会社の社員になるという逆パターンはかなりのレアケース。
制作した楽曲には、巧みなピアノ演奏、躍動する木管楽器、変態的な変拍子といった要素を含む場合が多い。自身はピアノを演奏することが多いが、クラリネットで音楽キャリアを始めたこともあり、『無尽蔵の演劇』のティン・ホイッスル*2など木管楽器の演奏も行っている。『六輪一露の狂詩曲』と『三千娑界の御詠歌』ではボーカルも担当した。
Ver.3.6で公開された砂漠のサントラでのクレジットがこれまでと一転して極めて限定的だったため、進退が注目されていたが、フォンテーヌの実装直後に正式に退職を発表。HOYO-MiXのチームでの制作が軌道に乗ったため、後進に譲るべきと思い始め、自身の音楽の夢を追うチャンスだと考えたからだという。
離職後の動画やインタビューでは原神に感謝の意を述べ、自身に「中国の音楽を世界中に広める」新たな可能性をもたらしたとした。またWeiboの原神4周年お祝い動画にも登場した。
離職発表から約一年後、40歳という人生の節目に、原神時代に培った人脈を最大限に活用し、集大成ともいえるアルバム『FANTASYLAND』をリリースした。その後はフリーランスとしてゲームに楽曲提供するほか、2025年7月にクラシック音楽のレーベルであるドイツ・グラモフォンと契約し、2026年に同レーベルから新アルバムのリリースを予定している。
余談として、さまざまなアーティストにボーカル楽曲を提供してきたが、原神参入前にそれらを集めたセルフカバーアルバムをリリースした。その中の数曲は後に原神のBGMとしてアレンジされ、奇しくもその内の一曲は『旅人』というタイトルだった。（参照：1 2 3）

その他外部協力者

Hsiang Liu（项柳）

歌詞のある楽曲の作詞をよく担当している。遅くともスメール前半(三千娑界の御詠歌)までには参加しており、スメールからナタまでの歌詞がある曲の大半にクレジットされている。
共同作詞を含め、ラテン語、日本語、フランス語、スワヒリ語など多くの言語で作詞をおこなっている。

Jiade He（何迦德）

ver1.x時期やver2.x初期に一部楽曲の編曲に参加した。女性。Dimeng Yuanと同じく、昔からYu-Peng Chenの手伝いをしていた。
一時期miHoYoのメンバーだったが、すでに離れており、最後までHOYO-MiXメンバーとしてクレジットされることはなかった。
近年では、中国のSF小説『三体』を基にしたファンメイドアニメのサントラを手掛けた。

Simai Wang（王斯迈）

初期にわずかな楽曲*3の編曲を手掛けた。
TekNoiseというチームに所属していて、現在は中国製のペルソナシリーズのソシャゲー『ペルソナ5: The Phantom X』の楽曲制作に参加している。

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